Ⅲ.休み方改革の取組の進め方

休み方改革の取組の進め方についてまとめています。

1.年次有給休暇取得を促進する意識啓発

取組1-①
アンケート・ヒアリングなどによる休み方の実態と課題の把握

目的
  • 年次有給休暇の取得促進を進めるためには、いきなり何らかの制度や取組を導入するのではなく、まずは自社における休み方の実態や課題を把握することから始めます。
  • アンケートやヒアリング調査で、働き方や休み方に関する課題や社員の要望を把握し、自社の状況に応じた取組を検討します。
取組方法
  1. 社員に対するアンケートやヒアリング調査を実施し、ワーク・ライフ・バランスに対する満足度や働き方・休み方に関する課題や要望等について把握する。
  2. アンケート調査では、部署・職種・職位など属性ごとに回答の傾向を比較したり、年次有給休暇の取得状況と仕事の進め方等との関係性をみるなど、様々な視点で実態や課題を整理する。
    【主な質問項目】
    1. 自身の働き方・休み方の状況
      • 月あたりの実労働時間(所定外労働時間を含めた実際の労働時間)
      • 直近年(度)における年次有給休暇取得日数
      • 自分の希望どおりに年次有給休暇を取得できたか(希望する日数・時季)
    2. 年次有給休暇の取得しやすさ・雰囲気
      • 年次有給休暇を取得しやすい雰囲気か
      • 職場の上司や同僚が年次有給休暇を積極的に取得できているか
      • 年次有給休暇の取得を促進するために重要だと思うこと
    3. 自身の仕事の進め方や職場の状況
      • 自身が担当する業務量・負担感
      • 自身が効率よく仕事をすすめるために工夫していること・取組
      • 職場全体の業務量・分担状況
      • 職場全体で効率よく仕事をすすめるために工夫していること・取組
  3. 働き方や休み方の実態と課題を踏まえた取組を実施し、一定期間経過後、再度、同様の調査を実施し、取組前の結果と比較しながら、効果や課題を整理し、次の取組につなげる。
参考となる企業事例
事例1 社内向けアンケートを実施し、休み方に関する満足度や課題を把握
株式会社アオアクア/医療・介護(訪問看護・リハビリ、居宅介護支援事業)/社員数30~99人
  • 社員を対象として、休暇取得の満足度や課題を把握するアンケートを実施している。
  • 結果をみると、取得日数に対する不満はないが、希望する時期に取得したいという声が挙がっている。ただ、土日祝日を含めて人員配置をする必要があるため、全員の希望を認めることは難しい面もある。今後の対応について、検討を進めている。
出所)厚生労働省「休み方改善取組事例集(2019年3月発行)」より

取組1-②
トップメッセージによる方針の発信

目的
  • 年次有給休暇の取得が進まない背景の一つに、「休暇を取得したくても、職場の上司や同僚に気兼ねして休めない」など、企業・職場の風土や雰囲気に課題がある場合があります。
  • トップメッセージとして、自社における働き方・休み方改革の方針を明示しつつ、トップや管理職が自ら休暇の取得を進めることで、年次有給休暇を取得しにくい雰囲気を払拭することを目指しましょう。
取組方法
  1. 現状における年次有給休暇の取得状況や、働き方・休み方の課題を踏まえ、自社における方針や取組・実施スケジュールを策定する。特に、自社における年次有給休暇の取得促進を図る必要性や狙いを明確にしておく。
  2. トップメッセージを発信する際は、社内のイントラネットやポスターなども活用し、社員の目に触れやすい環境をつくる。
  3. また、顧客や取引先に気兼ねして年次有給休暇の取得が進まない社員がいる場合は、社外関係先に対して、トップ自ら自社の取組を説明したり、メッセージを発信することで、自社の働き方・休み方改革への理解を促すことも有効である。
参考となる企業事例
事例2 トップメッセージを発信し、社員への意識醸成を図る
株式会社GSユアサ/製造業/社員数1,000人以上
  • 働き方改革に関しては、これまでにも様々な取組を実施してきたが、新しいフェーズに移行するにあたり、「取組を一層進める」という意味を込めて、トップからメッセージを発信した。メッセージのタイトルには、企業理念ともリンクする文言が含まれている。
  • 発信は、全社員を対象とした一斉メールのほか、全社データベースにも掲示し、いつでも閲覧できるようにしている。
  • 今後は、全員が毎日必ず閲覧する勤怠システム画面等、目につきやすい場所に掲示し、さらなる意識付けを促したいと考えている。
事例3 「休み上手は仕事上手」というスローガンを掲げ、粘り強く取組を実施
ボッシュ株式会社/製造業/社員数1,000人以上
  • 年次有給休暇の取得促進に取り組み始めた当初は、社員から「なぜ、休暇を取得しなくてはいけないのか」といった反発の声もあった。
  • しかし、休暇を取得することにより自分の生活を充実させ、リフレッシュすることで、社員が健康で長く活躍できることを重視している旨を伝え、「休み上手は仕事上手」というスローガンを掲げ、粘り強く取組を実施してきた。上司や労働組合の担当者等から、休みを取る必要性について繰り返し説明を行い、少しずつ年次有給休暇を取得することが当たり前という職場風土を醸成していった。
出所)厚生労働省「休み方改善取組事例集(2019年3月発行)」より

取組1-③
社員に対する継続的な周知・PR

目的
  • 年次有給休暇の取得を促進する風土・雰囲気づくりにおいて、トップメッセージの発信は重要ですが、1回限りでは、社員に充分に伝わらない可能性があります。
  • 取組の開始時だけでなく、次の取組ステップに展開するタイミングや、連続休暇を取りやすい時期に継続的に周知し、社員の関心や理解を高めるように工夫しましょう。
取組方法
  1. 年次有給休暇取得促進にむけた取組の開始時や、一定期間経過時など節目の周知・PRの方法
    1. これから取組を開始する場合
      • 取組の開始時は、「自社において、なぜ働き方や休み方の見直しを行う必要があるのか」ということを社員に理解してもらうことが重要。世間的な動きの説明だけに終始せず、自社としての狙いや方向性を示したうえで、取組の概要について周知する。
      • 周知手法としては、社内報・イントラネットなどの媒体や、管理職会議、労使協議会、安全衛生委員会といった会議体など、幅広い社員に対して情報を提供できる手法が望ましい。
    2. 取組を一定期間継続し、次の取組ステップに進める場合
      • 取組を継続するには、小さなことでも、社員に成功体験や達成感を感じ取ってもらうことがポイント。これまでの取組の成果を検証し、年次有給休暇の取得率・日数の変化や、取組によって社員自身の仕事や生活面でどのようなメリットがあったか等、定量・定性的な成果をフィードバックすることで、取組の意義を改めて認識してもらう。
      • 周知手法としては、「①これから取組を開始する場合」と同様、社内報・イントラネットなどの媒体や、管理職会議、労使協議会、安全衛生委員会といった会議体などを活用する。
  2. 夏季休暇・年末年始・ゴールデンウィークなどの祝日が近い時期での周知・PRの方法
    • 年次有給休暇と祝日の組み合わせで、まとまった休暇を取得しやすいタイミングとなる。社員に対して、しっかりと休息を取り、プライベートの充実を図ってリフレッシュするよう、年に数回はまとまった休暇を取ることを推奨する。
    • 周知手法としては、計画的にまとまった休暇を取得しやすいよう、ゆとりを持ったスケジュールで周知する。また、社内報・イントラネットや会議室などへのポスター掲示など、社員の目に留まりやすい媒体を活用する。
参考となる企業事例
事例4 社内広報ツールを活用した意識啓発
株式会社GSユアサ/製造業/社員数1,000人以上
  • 「自分の時間project」と銘打ち、年次有給休暇の取得促進にむけた社内広報を実施している。
  • 社内広報の特集ページを持ち、政府が進める働き方改革・休み方改革の背景や、休暇取得によって期待される効果、当社の取組の方向性を紹介した。
  • また、「休むことは大切なこと」という啓発ポスターを会議室や執務フロアの空スペースなど、貼れる場所にどんどん掲示していき、社員の目に自然に入るようにして意識付けを行っている。
  • 社内報の特集ページ
    社内報の特集ページ
  • 啓発ポスター
    啓発ポスター

取組1-④
管理職の評価項目に自部署の年次有給休暇の取得状況を設定

目的
  • 年次有給休暇取得に関する管理職の考え方やマネジメントによって、各部署における年次有給休暇の取得しやすさが左右されます。
  • 年次有給休暇の取得状況を管理職の評価に反映することで、管理職のマネジメントスタイルの見直しを促し、時間を意識した効率的な働き方を行いながら、年次有給休暇を取得しやすい職場風土の醸成を図ります。
取組方法
  1. 実際に年次有給休暇の取得状況を管理職の評価に反映する前に、管理職に対して、自社の方針や働き方・休み方の見直しに関する理解促進を図る。
    1. トップメッセージや自社の取組について、しっかり周知する(参照:【取組1-②】トップメッセージによる方針の発信【取組1-③】社員に対する継続的な周知・PR)
    2. 評価者研修などを通じて、長時間労働よりも時間意識を高く持ち、仕事の効率・質を高める働き方を評価する目線を持つよう、指導・徹底する。
  2. 既存の人事評価をベースとして、年次有給休暇の取得目標の設定方法を下記の要領で検討する。
    1. 年次有給休暇取得目標の対象者
      • 部下を持つ管理職
    2. 年次有給休暇取得目標の人事評価への組み込み方
      • 目標管理制度を導入している場合は、その目標の1つとして年次有給休暇の取得目標を組み入れる。
      • 目標管理制度を導入していない場合は、目標の達成度をどの評価項目で評価するのか決定する。
    3. 年次有給休暇の取得目標の考え方
      • 全社一律の目標を設定すると、部署によって取得状況にバラつきが大きい場合は、達成が困難になる可能性があるため、部署ごとに目標値を設定する方が望ましい。
      • 各部署の年次有給休暇の取得状況を踏まえ、当該年(度)においてどこまでの改善を図るべきか検討の上、目標値を設定する。
  3. 評価の仕組みや目標値の考え方について管理職を含む全社員に周知し、理解を促す。
参考となる企業事例
事例5 部下の年次有給休暇取得状況を管理職評価へ反映
株式会社ノバレーゼ/生活関連サービス業、娯楽業/社員数1,000人以上
  • 全社員(契約社員や年次有給休暇が年10日以上付与されるアルバイトも含む)の年次有給休暇取得率100%を義務づけている。
  • 部下の年次有給休暇の取得率が100%に到達しなかった場合、管理監督者の賞与の評価において、マイナス評価としている。100%取得していない部下の人数に応じて、マイナス評価が大きくなる。
  • マイナス評価となる対象は、全ての役職者ではなく、管理監督者(ゼネラルマネージャーや部長職)で、全社で40名程となる。
  • 管理監督者となる際には、年次有給休暇100%取得義務や管理職評価への反映について、総務人事部から説明を行っている。
  • この仕組みについて、社員から反対の意見は特になく、安心して休めるようになったという反応が多い。

2.年次有給休暇取得を推進する体制づくり

取組2-①
会社と職場が一体となった推進体制

目的
  • 働き方・休み方改革に対する社員の理解を深め、全社的に年次有給休暇の取得促進を図るためには、会社や職場全体で一体となった体制づくりが重要です。
  • トップによる強いリーダーシップだけに頼るのではなく、働き方・休み方改革を推進する部署やプロジェクトチームを立ち上げ、労使で自社における課題を共有し、解決にむけた取組を推進する体制を構築します。
取組方法
大企業の場合
  1. 大企業など企業規模が一定以上になると、社内で取組に対する合意を得たり、全社を挙げた取組を推進することが難しい可能性がある。
  2. トップメッセージを通じて休み方改革の目的や狙いなどを発信するとともに、働き方・休み方改革推進部署等を設置し、労使で役割分担を行いながら、会社と職場が一体となった推進体制を構築する。主な役割は、下記の通り。
    1. 経営トップ:自社における取組の狙い・方針などを社内に周知・アピールする。働き方・休み方改革推進部署の提案を受け、継続的に取組を支援する。
    2. 働き方・休み方改革推進部署:各部署における働き方・休み方の課題や意見を収集しながら取組の検討を行ったり、各部署における取組を円滑に推進するためのサポートを行う。
    3. 各部署における推進責任者:会社方針を踏まえながら、部署メンバーに対して取組の狙い・方針や、具体的な取組方法について周知し、進捗状況を確認しながら、部署における取組を推進する。
  • 体制イメージ
    大企業における推進体制の図(厚生労働省「休み方改善取組事例集(2019年3月)」より)
中堅・中小企業の場合
  1. 働き方・休み方改革推進の専門部署を設置できない場合、経営トップをリーダーとし、各部署からメンバーとなる社員を集めたプロジェクトチームを設定し、推進組織とする方法もある。
  2. 中堅・中小企業の場合、会社側だけで課題整理や取組の推進を行うことも可能だが、全社的な取組に展開するためには、現場のことを良く理解している社員の意見を取り入れることが重要。
  3. また、自社の課題や取組について、様々な視点から議論・検討するために、性別・年齢・職位・所属部署など、多様な社員からプロジェクトチームのメンバーを任命する。
  • 体制イメージ
    中堅・中小企業における推進体制の図(厚生労働省「休み方改善取組事例集(2019年3月)」より)
参考となる企業事例
事例6 労働時間関連のテーマについて話し合う「専門委員会」の設置
株式会社GSユアサ/製造業/社員数1,000人以上
  • 労働組合3役と会社側の担当部門で構成する「専門委員会」において、随時(最低月1回)、労働時間関連のテーマについて情報交換している。
  • 委員会の内容は、法的な労働時間の問題(36協定に関する状況、長時間労働の社員の状況、残業時間の増減傾向)の他、今後の時間外労働時間短縮にむけた施策等について話し合っている。
  • 特に、社員の残業時間については、月に1回定期的に会合を開いており、労働組合側は、書記長および副書記長、会社側はリーダークラスが出席し、長時間労働者の労働時間データを具体的に確認している。
事例7 労使による時短検討委員会の開催と各事業所での職場労使協議会の開催
ボッシュ株式会社/製造業/社員数1,000人以上
  • 労働組合との間で、労働時間の短縮に関する「労使時短検討委員会」を設けている。年に2~3回程度協議を行っており、全社の年次有給休暇の取得目標や進捗状況、36協定の項目等を確認している。
  • また、各職場では「職場労使協議会」を毎月開催している。労働組合の代表と管理職が集まり、所属員の残業や年次有給休暇取得状況について、確認を行っている。
  • 「職場労使協議会」では、年次有給休暇の取得状況をチェックしており、9月時点で10日未満、12月時点で15日未満の社員に対しては年度後半の取得計画を確認し、取得促進に向けた働きかけを行っている。
出所)厚生労働省「休み方改善取組事例集(2019年3月発行)」より

取組2-②
モデル部署から段階的に水平展開する推進体制

目的
  • 休み方改革の取組について、全体的に社員の関心が低い場合や、従来にはなかった取組を開始する場合など、すぐに全社的な取組に展開することが難しい場合があります。
  • その場合は、特定の部署をモデル部署としたトライアルを実施し、その部署における成果や課題を検証し、モデル部署での事例を契機として、全社への水平展開を図ります。
取組方法
  1. 働き方や休み方に課題を感じている部署や、取組に対して積極的に取り組む意向のある部署をモデル部署として選定する。
  2. モデル部署において、推進責任者、推進メンバーを決定する。
  3. 推進メンバーは部署メンバーの意見やアイディアを収集しながら取組を検討し、職場内での推進役を担う。様々な視点から議論・検討するために、性別・年齢・職位など、多様な社員から推進メンバーを任命する。
  4. モデル部署での取組テーマは、大がかりな準備をしなくても直ぐに着手できる内容が望ましい。小さな取組でも確実に成果を出すことで、モデル部署メンバーの参加意欲を高めるだけでなく、他の部署に水平展開しやすく、全社的な取組につなげることが期待できる。
  • 体制イメージ
    モデル部署をつくり水平展開する推進体制の図(厚生労働省「休み方改善取組事例集(2019年3月)」より)

3.年次有給休暇の計画的な取得を促す取組

取組3-①
年次有給休暇の取得状況の把握

目的
  • 社員の休み方の実態を把握する際に、年次有給休暇取得率の全社平均値だけでは、解決すべき課題を見落とす可能性があります。
  • 年次有給休暇の取得状況について、全社平均の数値だけでなく、部署・職種、職位、個人によって取得に偏りがないか確認し、休み方に関する実態を体系的に把握するようにしましょう。
取組方法
  1. 直近年(度)における全社、部署・職種、職位、個人単位の年次有給休暇の取得率や取得日数から、年次有給休暇取得の実態と課題について把握する。
    【主に把握する指標】
    1. 全社的な年次有給休暇の取得状況
    2. 部署・職種における年次有給休暇の取得状況と偏り
      • 各部署・職種の平均取得率から、部門・職種における全体的な傾向を把握する。
      • 各部署・職種に属する個人の取得率の分布状況から、取得に偏りがあったり、取得率が低い(例:全社平均値と比較して低い等)社員が多い部署や職種を把握する。
    3. 職位における年次有給休暇の取得状況と偏り
      • 各職位の平均取得率から、職位ごとの全体的な傾向を把握する。
      • 各職位に属する個人の取得率の分布状況から、取得率に偏りがあったり、取得率が低い(例:全社平均値と比較して低い等)社員が多い職位を把握する。
    4. 取得日数・取得率の低い社員の確認
      • 上記②、③から、年次有給休暇の取得日数・取得率が特に低い社員を把握する。
  2. データの取得が可能であれば、直近年(度)の値だけでなく、3年前、5年前、10年前など、過去の値もさかのぼって経年比較し、自社における休み方の傾向を把握する。
参考となる企業事例
事例8 年次有給休暇の取得率を定期的に部門長にフィードバック
ポリプラスチックス株式会社/製造業/社員数100~999人
  • 定期的に年次有給休暇の取得率を部門長にフィードバックしている。昨年同時期における取得状況の比較や、部署別の取得率(取得率の順に並んだリスト)も合わせて共有し、取得促進にむけた働きかけを行っている。
  • 年次有給休暇の年5日の取得が義務化されるにあたり、半年経過時点で年次有給休暇の取得日数が極端に少ない社員に対しては、会社が時季指定することがあり得ることを、予め社内にアナウンスした。部門長に対しては、昨年度の取得日数が年5日以下の社員のリストを送付し、法改正の内容も含め、取得促進にむけた呼びかけを行った。

取組3-②
年次有給休暇の取得目標の設定・フォロー

目的
  • 自社の休み方の現状に応じた年次有給休暇の取得目標を設定することで、最低限クリアしたい、もしくは目指したい年次有給休暇の取得率・日数を社員に対して明示します。
  • また、目標に対する個人ごとの取得状況を適宜確認し、目標に対して取得率・日数が低い社員やその上司に対して年次有給休暇の取得を促すことで、取組目標の達成を目指します。
取組方法
  1. 現時点における全社、部署・職種単位、職位単位、個人単位の年次有給休暇の取得率・日数や、休み方に関する課題を把握する(参照:【取組3-①】年次有給休暇の取得状況の把握)。
  2. 現状よりもさらに休暇を取得しやすい職場を目指すため、労使が一体となって検討し、年次有給休暇の各算定期間における取得率や日数の目標値を設定し、全社員に周知する。
    【目標値の目安】
    • 目標値を設定する際は、一度に高い目標値を掲げるのではなく、現在の状況に鑑みながら、改善にむけた取組を推進し、段階的に高めていくことが望ましい。
      1. 全社的にほとんど取得できていない場合
        • 全社員が年5日以上の取得を目指す目標を設定する。
      2. 全社的に年5日以上取得できているが、世間水準(厚生労働省「就労条件総合調査」(など参照))と比べて取得率が低い場合
        • 現在の年次有給休暇取得に関する課題を踏まえ、中期的な改善の方針や目標を掲げ、各年(度)における目標値を設定する。
      3. 全社的な取得率に課題はないが、部署・職種、職位によって取得率に偏りがある場合
        • 一度に偏りを是正することは難しい場合もあるため、全社一律の目標を設定すると取組に無理が生じる可能性がある。中期的に取得率の格差を是正することを念頭に置きながら、部署・職種、職位それぞれの現在の取得率に応じた目標値を設定する。
      4. 全社的な取得率に課題はないが、個人によって取得率に偏りがある場合
        • 個人によって取得率に差がある場合は、全社一律の目標を設けるのではなく、年次有給休暇取得率の低い社員については、段階的に取得率の目標を引き上げ、中期的に格差是正を図る。
  3. 設定した目標値に対する進捗状況について、四半期ごと・半期ごとなど定期的に把握する。また、社員自身やその上司が年次有給休暇の取得状況を適宜把握できるよう、年次有給休暇の取得管理表などを活用し、年次有給休暇の取得日数の実績が把握できる環境を整えることが望ましい(参照:【取組3-③】年次有給休暇の取得計画(カレンダー)の作成・共有)。
  4. 取得状況が進んでいない場合は、該当者やその上司に対して、今後の年次有給休暇取得予定日を確認したり、業務スケジュールや配分の調整を行うよう働きかけ、年次有給休暇取得目標の確実な達成を目指す。
  5. 当該算定期間の期末時点において、目標に対する達成状況を確認する。目標が達成できなかった社員については、その原因を把握し、次期の目標および取組に反映する。また、達成した場合も、中期的に目指す姿と現状を踏まえた目標を設定する。
参考となる企業事例
事例9 中期アクションプランで年次有給休暇取得目標などを設定
有限会社共栄資源管理センター小郡/サービス業(一般廃棄物収集運搬業)/社員数30~99人
  • 共栄グループ中期アクションプランにおいて、残業時間の前年度比20%減や、年次有給休暇の13日取得(3日連続取得も含む)を目標として設定している。
  • 中期アクションプランは、具体的な活動内容に落とし込み、全社員で目標を確認している。
事例10 年次有給休暇の取得状況に関するアラートメール発信
東亞合成株式会社/製造業・販売業/社員数1,000人以上
  • 年5回、年次有給休暇取得率が一定の値に達していない社員とその上司に対して、アラートメールを発信している。
  • アラートメールの中では、CSR目標として年次有給休暇取得率100%を掲げていることや、年次有給休暇の取得日数・取得率等を確認できる勤怠システムのリンクも掲載している。
事例11 年次有給休暇の取得目標の設定と進捗状況の確認
ボッシュ株式会社/製造業/社員数1,000人以上
  • 年次有給休暇の取得目標は、1984年にまず最低取得6日からスタートし、1992年に最低取得12日、2012年に取得率100%(対新規付与日数分)と、長い期間をかけて徐々に目標を上げてきた。目標達成のために年次有給休暇を取得した結果、職場に過度な負担が生じないよう、現実的な目標を定めて、段階的に目標を上げていくことが重要だと考えている。
  • 新規入社社員や、病気等で長期の休職から復職し年次有給休暇の保有日数が少ない場合については、下記の要領で目標を設定している。
    1. 新規入社社員の場合:最低取得目標は新規付与日数の50%以上
    2. 新規入社者以外で年次有給休暇の保有日数が40日未満の場合:新規付与日数の100%取得もしくは、最低取得日数15日以上のいずれかを選択する(新規付与月の3ヶ月後までに)
    3. 2019年4月からの法律施行による追加措置:2019年4月から9月までの間に入社した者は、入社日から1年以内に最低5日以上の年次有給休暇を取得
  • 子の看護休暇や介護休暇(法定では無給)を有給化することで、年次有給休暇の日数を確保できるようにしている。
  • 年次有給休暇の取得状況については、各職場で労働組合の代表と管理職が集まって毎月開催される「職場労使協議会」において、確認を行っている。
  • 毎月、年次有給休暇の取得状況を「年休取得管理表」にまとめ、進捗が芳しくない社員については、「職場労使協議会」において管理職はその理由を報告する。また、管理職は、必要に応じて業務配分等の調整を行い、当該社員が休暇を取得できるようにする。
  • 「職場労使協議会」では、年次有給休暇の取得率が、9月時点で50%未満、12月時点で75%未満の社員に対しては、年度後半の取得計画を確認し取得促進に向けた働きかけを行っている。
  • 【年休取得管理表】
    年休取得管理表

取組3-③
年次有給休暇の取得計画(カレンダー)の作成・共有

目的
  • 同僚や上司に気兼ねなく年次有給休暇を取得しやすい雰囲気を醸成したり、個々人が希望するタイミングで年次有給休暇を取得できることを目的とし、年次有給休暇の取得計画表(カレンダー)を作成します。
  • また、年次有給休暇の取得計画表(カレンダー)を共有することで、互いに業務や年次有給休暇の取得時季の調整を行いやすくします。
取組方法
  1. 年間の年次有給休暇取得計画表を活用し、長期的なスパンで取得予定を提示することで、連続休暇・長期休暇を取得しやすい環境をつくる
    【年(度)単位の年次有給休暇取得計画表の活用方法】
    1. 社員氏名や日付の入った年次有給休暇取得計画表(カレンダー)を作成する(年(度)単位)。
    2. 年次有給休暇の算定期間の期初に、各自の取得予定日を記入・申請する。
    3. 全員が記入した年次有給休暇計画表を部署で共有し、業務スケジュールや仕事の分担などと照らし合わせながら、必要に応じて取得日の調整を行う。
    4. 年間で取得計画を立てる場合、後でスケジュールが変更になったり、取得予定日にしていたことを忘れてしまう可能性があるため、月単位の取得計画表も併用しながら、こまめに取得予定日の調整・確認を行う。
    5. 年次有給休暇の算定期間の途中や、期末に近くなった時期に、年次有給休暇の取得日数が少ない社員がいる場合は、上司から声掛けしたり、業務スケジュールや仕事の配分について調整・指導を行い、年次有給休暇の取得を促す。
  2. 社員から「先の休暇予定は設定できない」、「連続休暇ではなく、業務の繁閑をみながらちょっとした休暇を取れるようにしたい」などの声が多い場合は、月単位の年次有給休暇取得計画表を活用し、必要なタイミングに休暇を取得しやすい環境をつくる
    【月単位の年次有給休暇取得計画表の活用方法】
    1. 社員氏名や日付の入った年次有給休暇取得計画表(カレンダー)を作成する(月単位)。
    2. 毎月、締切日までに(例:毎月10日締切など)、次月の年次有給休暇取得計画表に各自の取得予定日を記入・申請する。
    3. 全員が記入した年次有給休暇計画表を自部署で共有し、業務スケジュールや仕事の分担などと照らし合わせながら、必要に応じて下記の調整を行う。
      • 業務スケジュールや仕事の配分の調整
        上司は、業務予定と部下の取得予定日を照らし合わせ、予定した日に取得しやすいように、業務スケジュールや仕事の配分を調整し、部下に指示する。
      • 年次有給休暇取得予定日の調整
        社員が互いの業務予定などを調整しても、当初申請した取得予定日に休暇をとると業務に支障をきたす場合は、お互いに相談しながら、取得予定日の調整を行う。
    4. 月単位で年次有給休暇予定を申請しても、希望通りに取得できていない社員や、年次有給休暇の算定期間を通して年次有給休暇の取得日数が少ない社員がいる場合は、上司から声掛けしたり、業務スケジュールや仕事の配分について調整・指導を行い、希望する時季に年次有給休暇が取得できるようフォローする。
参考となる企業事例
事例12 年次有給休暇の取得計画表の作成
株式会社ノバレーゼ/生活関連サービス業、娯楽業/社員数1,000人以上
  • 当年度に付与された日数相当分の年次有給休暇を100%取得できるよう、個人単位の取得計画表を作成している。
  • 取得計画は、全社員(契約社員や年次有給休暇が年10日以上付与されるアルバイトも含む)を作成の対象とし、管理職(各部門長)とマネージャー、各レストランの料理長に対して、部下および自身の年次有給休暇取得率が100%となるよう義務付けている。
  • 毎年1月に、社員の取得希望日を各部署で聴取し、希望をふまえた年間取得計画表を作成する。個人によって付与日数が異なるため、付与されるタイミングで総務人事部からアナウンスし、計画を更新してもらう。
  • 年次有給休暇の取得計画表を前提として、各月のシフトを作成している。取得予定日数が取得率100%となるか、取得計画表上で総務人事部においてチェックする。
  • 取得計画表には、取得計画と取得実績のほか、年次有給休暇の付与日や、付与日から起算した取得達成期日の入力欄を設け、総務人事部や管理職が閲覧することができる。
  • 取得実績は、総務人事部が毎月入力(勤務管理システムよりデータを取得)し、管理職に対して更新された内容について確認を依頼する。取得計画と実績に差異がある社員については、管理職からフォローしてもらっている。
  • 【年次有給休暇の取得計画表イメージ】
    年次有給休暇の取得計画表イメージ

取組3-④
業務の繁閑に対応した年次有給休暇の連続取得奨励

目的
  • 業務が比較的閑散となる時期にまとまった休暇を取ったり、土日・祝日と合わせた休暇を取ることで、連続休暇の取得を促します。
  • また、予め年次有給休暇を取得する時季が分かることで、出勤できる人員に応じた業務管理や仕事の配分が行いやすくなり、年次有給休暇を取得しやすい職場づくりを目指します。
  • なお、会社が前もって計画的に年次有給休暇取得日を指定する「計画的付与制度」の導入については、「ご参考:計画的付与制度の導入に必要な手続き」をご参照ください。
取組方法
  1. 社員の年次有給休暇の取得状況や要望、まとまった休暇を取得しやすい時季などを踏まえ、年次有給休暇の連続取得の仕組み(取得を推奨する時期、取得日数・取得方法(全て一括取得、分割取得))を設定する。
    【連続休暇の主な設定パターン】
    1. 業務の繁忙状態が続きやすく、年次有給休暇が取得しにくい場合
      • 年次有給休暇を取得する職場風土が根付いていないため、各部署における業務の閑散期に連続休暇を取得することを奨励する(社員が希望する時季に取得しやすいよう、年間の業務スケジュールを踏まえ、推奨する時季を年に数回設定することが望ましい)。
      • 全体的に年次有給休暇の取得日数・率が著しく低い場合は、連続休暇を取得することで、年間5日の取得が可能になる日数(分割取得する場合も、1回あたり2日以上の取得を条件)とすることで、年5日の確実な取得を図る。
    2. 全体的に一定の年次有給休暇を取得できているが、まとまった休暇が取得しにくい場合
      • 既に年次有給休暇を取得する職場風土にあるため、取得を推奨する時期は設定しない。
      • 社員の希望に応じた時季、日数を取得できるよう、「全て一括取得」や「分割取得」の両方選択できるようにする。
  2. 期初の年次有給休暇取得計画表を作成する際に、社員から取得希望時季・日数を提出してもらう(参照:【取組3-③】年次有給休暇の取得計画(カレンダー)の作成・共有)
  3. 希望する時季が重複し、業務に支障が出そうな場合は、上司から声掛けして、業務スケジュールや仕事の配分を調整し、希望する時季に年次有給休暇が取得できるようフォローする。
参考となる企業事例
事例13 年次有給休暇の連続5日間取得奨励
新日本空調株式会社/設備工事業/社員数1,000人以上
  • 年5日間の年次有給休暇取得義務化への対応とモチベーション向上を目的に、2019年度より、連続5日間の年次有給休暇の取得を奨励する取組を開始した。
  • 現場や設計も含め、全部門を対象として実施している。
  • 具体的なスケジュール調整は各事業部にて管理している。イントラネットの休暇カレンダーを利用し、各自が休暇登録するという方法をとっている。休暇取得の実績データは、ワーキングイノベーション室から各事業部の管理職に配信している。
事例14 土日を含む5日間の連続休暇
テクノス三原株式会社/専門サービス業(非破壊検査、構造物調査、消防設備点検等)/社員数100~999人
  • 土日を含む5日間の連続休暇を取得することを義務化した。
  • 連続休暇を取得しやすいように、部門やチームで「連続休暇取得予定表」を作成し、人員の調整を図っている。
  • さらに、社員に対して、年次有給休暇の取得状況を毎月通知し、休暇取得を促し、意識改革を進めていった。
  • 連続休暇を有意義に過ごした場合には、表彰を行い、休むことを奨励する職場風土の醸成を図った。
  • 取組の結果、年次有給休暇の取得率は前年比で約20%向上した。
事例15 「1週間休暇」、「2週間休暇」等の取得による長期休暇の取得推進
フコクしんらい生命保険株式会社/金融業/社員数100~999人
  • 長期休暇の取得は、ワークライフバランス推進と業務継続に対する組織力強化や訓練を目的としている。
  • 各所属において業務効率化をすすめるとともに、休暇取得者の業務を代行できる所属員の育成をすすめ、休暇取得を可能にする環境整備を推進している。
  • 休暇については、年次有給休暇・代休・夏期休暇等特別休暇を使用した、「1週間休暇」、「四半期休暇(四半期毎に2日)」、「2週間休暇(勤続5年ごと、会社が休暇取得者を指名)」の取得を推進している。
  • 計画的に休暇を取得できるように、以下の要領にて所属単位で休暇取得計画を策定し、休暇の取得を推進している。
    1. 毎年度4月に休暇取得促進策の推進について社内に通達を発信。各所属にて休暇取得計画を策定し報告
    2. 計画策定時に、「1週間休暇」および「四半期休暇」の年間休暇取得予定を設定
    3. 各所属にて休暇取得状況を管理
    4. 9月に各所属にて、進捗状況を確認し、必要に応じ取得計画を変更のうえ報告
    5. 第3四半期までに5日の年次有給休暇を取得していない場合、5日に満たない日数の年次有給休暇取得日を第4四半期に指定
事例16 特別連続休暇の取得
一般財団法人損保ジャパン日本興亜スマイルキッズ/医療・福祉業/社員数30~99人
(※2020年4月1日より、「一般財団法人SOMPOスマイルキッズ」「SOMPOスマイルキッズ江戸川橋保育園」に社名、保育園名を変更)
  • 特別連続休暇は、平日の連続した5日間とその前後の土日を併せて、最大9連休を取得させる制度である。
  • 5月頃までに取得予定日を確定させている。
  • 毎年4月に、全員を対象に特別連続休暇の取得希望時季を聴取している。年間行事予定表に特別連続休暇を取得できる期間を30ほど提示し、その中から第3希望まで希望を提出してもらい、希望を調整したのち、5月頃までに取得予定日を確定する。
  • 1週間以上の休みとなるため、自身の業務に影響が少ない時期やタイミング等を考慮して、取得時季を検討することを予めお願いしている。
  • クラス担任が特別連続休暇を取得する際は、保護者に事前に書面(「特別連続休暇の取得は、当園の労務管理上の中心施策ですので、保育士の働きやすさのためにもどうぞご理解下さい」といった内容で、保育士が自分の名前を入れて配布する)でお知らせしているため、この施策が保護者にも浸透、支持されるに至っている。
  • 特別連続休暇の取得について、保育士から保護者に連絡する文面は共通のひな形を園で作成しており、必要事項を記入してコピー・配布できるようになっている。
事例17 リフレッシュ休暇の取得
ボッシュ株式会社/製造業/社員数1,000人以上
  • 1995年から、年次有給休暇のうち年間5日間を連続して取得できる「リフレッシュ休暇」を導入している。5日間全てを連続取得しなくても、2日・3日に分割したり、他の休暇とあわせて5日以上連続して取得することも可能である。
  • 特に、夏休みや年末年始は希望が重なりやすいため、下記の要領で個々人の希望をふまえて上司が調整を行っている。
    1. 年度当初に、職場全員の取得パターン(分割取得、連続5日取得)を上司が取りまとめる。
    2. 業務計画と職場全員の希望パターンに基づき、上司が各月の分割取得・連続5日取得の可能人数を「リフレッシュ休暇予定日調整・確定一覧表」に記入する。
    3. 「リフレッシュ休暇予定日調整・確定一覧表」を職場で回覧し、各人の取得希望日・希望パターンを記入する。
    4. 上司が、希望日等の重複がないか確認・調整を行い、各人の取得予定日とパターンを確定し、職場内に掲示する。
  • この表により、誰がいつ休暇を取るのか予測が立てられるので、代替要員をあらかじめ計画することができる。
  • 【リフレッシュ休暇予定日調整・確定一覧表】
    リフレッシュ休暇予定日調整・確定一覧表

【ご参考:計画的付与制度の導入に必要な手続き】

(厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」より)
計画年休の導入には、就業規則による規定と労使協定の締結が必要になります。
就業規則による規定

計画年休を導入する場合には、まず、就業規則に「労働者代表との間に協定を締結したときは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させることとする」などのように定めることが必要です。

年次有給休暇の計画的付与に関する就業規則の規定例
(年次有給休暇)
第○条
(前略)
  • 前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。
労使協定の締結

実際に計画的付与を行う場合には、就業規則に定めるところにより、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。 なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。
労使協定で定める項目は次のとおりです。

計画的付与の対象者
計画的付与の時季に育児休業や産前産後の休業に入ることが分かっている者や、定年などあらかじめ退職することが分かっている者については、労使協定で計画的付与の対象から外しておきます。
対象となる年次有給休暇の日数
年次有給休暇のうち、少なくとも5日は労働者の自由な取得を保障しなければなりません。
したがって、5日を超える日数について、労使協定に基づき計画的に付与することになります。
計画的付与の具体的な方法
  • 事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。
  • 班、グループ別の交替制付与の場合には、班、グループ別の具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。
  • 年次有給休暇付与計画表等による個人別付与の場合には、計画表を作成する時期とその手続き等について定めます。
年次有給休暇の付与日数が少ない者の扱い
事業場全体の休業による一斉付与の場合には、新規採用者などで5日を超える年次有給休暇がない者に対しても、次のいずれかの措置をとります。
  • 一斉の休業日について、有給の特別休暇とする。
  • 一斉の休業日について、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う。
計画的付与日の変更
あらかじめ計画的付与日を変更することが予想される場合には、労使協定で計画的付与日を変更する場合の手続きについて定めておきます。
労使協定の例(一斉付与方式の場合)
年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定(例)
○○株式会社と○○労働組合とは、標記に関して次のとおり協定する。
  1. 当社の本社に勤務する社員が有する○○○○年度の年次有給休暇のうち5日分については、次の日に与えるものとする。
    ○月○日、△月△日・・・・
  2. 社員のうち、その有する年次有給休暇の日数から5日を差し引いた日数が5日に満たないものについては、その不足する日数の限度で、前項に掲げる日に特別有給休暇を与える。
  3. 業務遂行上やむを得ない事由のため指定日に出勤を必要とするときは、会社は組合と協議の上、第1項に定める指定日を変更するものとする。
○○○○年○月○日
○○株式会社 総務部長 ○○○○
○○労働組合 執行委員長 ○○○○
労使協定の例(交替制付与方式の場合)
年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定(例)
○○株式会社と従業員代表○○○○とは、標記に関して次のとおり協定する。
  1. 各課において、その所属の社員をA、Bの2グループに分けるものとする。その調整は各課長が行う。
  2. 各社員が有する○○○○年度の年次有給休暇のうち5日分については、各グループの区分に応じて、次表のとおり与えるものとする。
    Aグループ ○月×日~△日
    Bグループ ○月□日~×日
  3. 社員のうち、その有する年次有給休暇の日数から5日を差し引いた日数が5日に満たないものについては、その不足する日数の限度で、前項に掲げる日に特別有給休暇を与える。
  4. 業務遂行上やむを得ない事由のため指定日に出勤を必要とするときは、会社は従業員代表と協議の上、第2項に定める指定日を変更するものとする。
○○○○年○月○日
○○株式会社 総務部長 ○○○○
○○株式会社 従業員代表 ○○○○
労使協定の例(個人別付与方式の場合)
年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定(例)
○○株式会社と従業員代表○○○○とは、標記に関して次のとおり協定する。
  1. 当社の従業員が有する○○○○年度の年次有給休暇(以下「年休」という。)のうち5日を超える部分については、6日を限度として計画的に付与するものとする。なお、その有する年休の日数から5日を差し引いた日数が6日に満たないものについては、その不足する日数の限度で特別有給休暇を与える。
  2. 年休の計画的付与の期間及びその日数は、次のとおりとする。
    前期=4月~9月の間で3日間 後期=10月~翌年3月の間で3日間
  3. 各個人別年休付与計画表は、各期の期間が始まる2週間前までに会社が作成し、従業員に周知する。
  4. 各従業員は、年休付与計画の希望表を、所定の様式により、各期の計画付与が始まる1か月前までに、所属課長に提出しなければならない。
  5. 各課長は、前項の希望表に基づき、各従業員の休暇日を調整し、決定する。
  6. 業務遂行上やむを得ない事由のため指定日に出勤を必要とするときは、会社は従業員代表と協議の上、前項に基づき定められた指定日を変更するものとする。
○○○○年○月○日
○○株式会社 総務部長 ○○○○
○○株式会社 従業員代表 ○○○○

4.年次有給休暇の取得に対する社員の意欲を高める取組

取組4-①
年次有給休暇の活用方法の好事例などの紹介

目的
  • 年次有給休暇の取得日数・取得率の低い社員の中には、「休暇をとっても、どのように過ごせばよいか思いつかない」という理由で、年次有給休暇の取得に消極的な人も少なくありません。
  • 年次有給休暇を活用して、リフレッシュや仕事以外の活動の充実を図っている社員の事例を紹介することで、年次有給休暇取得のきっかけをつくります。
取組方法
  1. 年次有給休暇の過ごし方について情報提供してくれる社員を下記の要領で募り、対象者を決定する。
    1. 情報提供者の募集方法
      • 候補者を推薦してもらう場合:各部署から候補者を推薦してもらう。
      • 幅広く募集する場合:社内報・イントラネット、全社メールなどを活用し、幅広く情報提供を募る。
    2. 対象者の選定
      • 取得理由が育児や介護の社員の事例ばかりだと、その他の社員にとっては、年次有給休暇の過ごし方として参考にならない可能性がある。
      • 自分自身のリフレッシュの目的で取得した社員や、これまで年次有給休暇を取得しなかった社員の過ごし方なども含め、幅広い事例が収集できるように、対象者を選定する。
  2. 対象者に対して、主に下記の内容についてヒアリングを行い、情報収集する。
    1. 取得目的
    2. 取得した時季・日数
    3. 休暇を活用して具体的にどのように過ごしたか(可能であれば、様子が分かる写真などを提供してもらう)
    4. 休暇を取得した感想(特に、あまり年次有給休暇を取得しなかった社員に対して、休暇を取得してみて良かったことなどを聞く)
  3. ヒアリングした内容をもとに、社内報、イントラネットなどを活用して事例を紹介する。明るい雰囲気が伝わるように写真やイラストを用い、極力多くの社員の目に留まるように工夫する。
参考となる企業事例
事例18 社内広報ツールを活用した意識啓発
ポリプラスチックス株式会社/製造業/社員数100~999人
  • 年次有給休暇取得促進にむけた施策の検討は人事部で行うが、制度の周知や取得促進については、広報部門と連携し、全社員向けに毎月発行される「広報ニュースメール」等を活用しながら情報発信を行っている。
  • 社員に対して、「年次有給休暇を活用して、どのように過ごしたのか」を尋ねるアンケートを実施し、その結果と合わせて、社員の年次有給休暇の活用事例を紹介している。ニュースメールの作成は広報に担当してもらい、内容が堅苦しくならないよう写真を掲載したり、楽しそうな雰囲気が伝わるように工夫している。
Q.年次有給休暇をとって、何をする?
回答
一人映画です。割引のある日だったら安く映画が見れます。
編集部
曜日ごとにレディースデーやメンズデーなどお得な割引がある映画館も多いですよね。その曜日を狙ってお休みを取るというのもいいですね!
回答
少し遠方のアウトレットモールへ行って、アメリカ気分を味わう。(平日だとすいてるし、アウトレットモールはアメリカっぽいと思っています!)
酒々井など、近場に温泉施設があるアウトレットモールも…
編集部
いいですね!お買い物だけじゃなく、外国っぽい景色を堪能もできて一石二鳥!近くの温泉にも行けば一石三鳥!!
編集部の体験記

休日はけっこう混んでいると噂の某スパへ行き、岩盤浴でのんびりしました。平日だったおかげで順番待ちもなく、すんなり入れました!それでも夕方ごろには人が増え、満員になっていました。日頃はついついスマホなどを見てしまい、情報を遮断することが難しいのですが、岩盤浴ではもちろん強制的に遮断せざるを得ない状況。ただひたすら頭を空にしてぼんやりできる貴重な時間でした。そして、しっかり温まったおかげか、なんと、最近ひどかった肩と首のコリが治り、思った以上のリフレッシュ効果を得られました!

冷えは万病のもとですね!
事例19 社内広報誌で年次有給休暇の取得の取組や業務効率化の事例を紹介
東亞合成株式会社/製造業・販売業/社員数1,000人以上
  • 社内広報誌において、東亞合成グループのワーク・ライフ・バランスの維持・向上や生産性向上に努める方針を周知している。また、その具体的な施策として、年次有給休暇の取得にむけた取組や、業務効率化の事例を掲載している。
  • 業務効率化の事例としては、会議時間の短縮やメールの書き方、資料作成のポイントなどについて紹介している。

取組4-②
仕事の生産性を高める取組を評価

目的
  • 仕事の生産性を高める工夫や取組を行っていても、残業ありきで仕事を行う社員の方が、時間外手当によって給与が高くなる可能性があり、不公平感が生じます。
  • 仕事の生産性を高め、年次有給休暇を取得しやすい職場風土を維持するためには、残業が減り生産性が上がった分を社員に還元したり、時間あたり生産性の高い働き方を評価することが重要です。
取組方法
  1. 現行の評価項目や評価基準が、時間意識を高めて効率よく仕事することを適切に評価する内容になっているか確認する(もし評価できていない場合は、評価項目や評価基準の見直しを行う)。
  2. 管理職を対象とした評価者研修を実施し、下記の内容を解説しながら、仕事の生産性を高める行動や活動を評価するよう理解を求める(理解を深めるために、事例を用いたり、グループディスカッションを行うことも有効)。
    1. 長時間労働よりも、時間意識を高めて効率よく仕事をすることを評価すること
    2. 仕事の生産性を高めるには、仕事の分担や業務スケジュールを共有しながら、納期に間に合うよう調整する等、管理職のマネジメントの在り方が重要であること
    3. 短時間勤務の社員については、本人の力量も踏まえつつ、働く時間に応じた仕事量や目標を与え、それを基準とした評価を行うこと(短時間勤務を理由に低評価としない)
  3. もともと残業時間がかなり多く、取組により残業が大幅に減少した場合は、減少した残業代の一部を社員に還元する。
    【主な還元パターン】
    1. 賞与原資に加え、組織や個人の評価成績によって配分する(全体的に成果が上がっていれば、一律に還元する)
    2. 昇給原資に加え、個人の評価成績によって配分する(全体的に成果が上がっていれば一律に還元する)
    3. 職場環境の改善、福利厚生など、社員からの要望が高いものに投資する
参考となる企業事例
事例20 年休取得率100%などを評価するインセンティブポイント制度
JSRマイクロ九州株式会社/製造業/社員数100~999人
  • 社内で業務効率化プロジェクトを立ち上げ、無駄な仕事や会議の削減に取り組んだ結果、残業時間を削減することができた。一方で、定時に業務を終えた社員と、そうでない社員の間での給与面での不公平感を取り除くため、社内ポイント制度を導入し、定時で業務を終えた社員に対してポイントを付与し、会社として評価する姿勢を示している。
  • ポイントの付与については、禁煙に成功すると10,000ポイント、定時で業務を終えると100ポイント/日、年次有給休暇取得率100%だと500ポイントなどの項目を設定している。
  • 1ポイント1円として、商品等と交換することができる。ポイントの管理は外部の企業に委託しているため、会社としては、ポイントの付与に該当するかどうかを委託先企業に連絡すればよい。
  • 残業代と比較して金額としては大きくないが、社員から「会社から評価されている」と好評で、社員のモチベーション向上につながっている。
事例21 残業時間の削減に応じた特別手当・賞与支給
テクノス三原株式会社/専門サービス業(非破壊検査、構造物調査、消防設備点検等)/社員数100~999人
  • 働き方・休み方改革に取り組むにあたり、残業時間の削減により減少する収入を補填するために、前年度比で削減された残業時間に応じて特別手当や賞与を全社員に支給している。
  • このように収入面の補填も行うことで、働き方・休み方改革に対する会社の本気度を示し、取組に対する社員の理解が広まった。

5.年次有給休暇を取得しやすい業務体制・仕事の進め方

取組5-①
業務スケジュールの見える化

目的
  • 年次有給休暇取得を予定していても、顧客から急な仕事の依頼が発生したり、上司や同僚から仕事が回ってくると、予定していた休暇取得が難しくなることもあるでしょう。
  • 部署全体で業務スケジュールを見える化し、互いに時間意識の高い働き方を行うことで、希望する時季に年次有給休暇を取得しやすい職場環境を整えます。
取組方法
  1. 部署全体で共有できるスケジューラ(カレンダー)を活用し、互いの予定を共有できる状態にする。また、社員に対して、個々人のスケジュール管理だけでなく、自分の予定を上司や同僚と共有し、予定を先読みしながら効率よく仕事を進めるためにスケジューラ(カレンダー)を活用することを説明し、理解を求める。
  2. 互いの予定を把握しやすいよう、スケジューラ(カレンダー)への入力ルールを決定する。入力ルールの考え方は、下記の通り。
    1. 互いに協力しながら残業を減らしたり、年次有給休暇を取得しやすくするためのスケジュール共有なので、最低限、「予定退社時間」と「休暇取得予定」は入力する。
    2. 会議や外出などのイベントの予定だけでなく、仕事の優先順位・段取りを整理するため、各々の作業予定も入力する。
    3. 窓口業務や電話対応業務など、就業時間のほとんどを顧客対応に費やす部署や職種は、書類作成や企画検討の時間を残業時間で捻出することが多い。極力、就業時間の中で時間を確保するために、電話応対など行わなくてよい「集中タイム」を設定することも有効。「集中タイム」は、メンバー間で時間帯や日を変えて、順番に設定する。
    4. 予定が確定してから入力するのではなく、仮予定の段階でも入力する。スケジュール変更があれば、直ぐにスケジューラ(カレンダー)に反映する。このようにスケジューラ(カレンダー)で予定の一元化を図ることで、うっかり忘れてしまったということを防ぐ。
    5. 1週間や1カ月先の予定を見据えて、仕事の優先順位・段取りを考え、1日の過ごし方を考える。
    6. 会議開催や仕事の依頼は、上司や同僚の予定を配慮して行う。
    7. 上司は、部下の予定を見て、想定した段取り・作業時間になっているか確認し、必要に応じて作業のゴールイメージや手順についてアドバイスを行う。
  3. 定期的にスケジュールの予実を振り返り、優先順位の判断や、作業に要した時間と自分が想定していた時間のズレなどを確認し、その後のスケジュール管理に活用する。
  • 【スケジューラ 入力イメージ】
    スケジューラ 入力イメージ
    出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

取組5-②
業務のカバー体制・複数担当制の構築

目的
  • 安心して必要なときに年次有給休暇を取得するためには、「自分の仕事を代わってくれる人がいない」、「休暇を予定しても仕事が発生してしまったら休暇を取り消すしかない」という状況を変える必要があります。
  • 業務のカバー体制や複数担当制で、休暇を取っても円滑に業務が遂行できたり、顧客対応できる組織としての体制を整えることで、確実な休暇取得を目指します。
取組方法
  1. 部署内の業務をリスト化し(業務項目、業務量、頻度、難易度、現在の担当者、担当可能な者などを整理したリスト)、現在の状況の見える化を図る。
  2. 各メンバーの意見を聞き、カバー体制・複数担当制を検討する対象業務を決める。いきなり難易度の高い業務に着手すると、その業務に新しく加わる者が当該業務を習熟するのに時間を要してしまうため、比較的着手しやすいところから取組を進めることが望ましい。
  3. 対象業務について、各メンバーの現在の担当業務・業務量、職務経験、スキルを踏まえ、特定の社員に負担が偏らないよう、担当者(主担当、副担当など)を決定する。
  4. 対象業務について、標準的な業務手順、担当者間で共有すべき情報などを整理し、業務マニュアルを作成し、明示しておく(業務の標準化については、【取組5-③】業務の標準化の推進を参照)
  5. なお、カバー体制・複数担当制の検討になかなか時間が取れない場合は、当該業務における作業を細分化し、直ぐにサポートを依頼しやすい簡単な作業や付帯作業について作業ポイントをまとめておき、応援体制を整えておく。
参考となる企業事例
事例22 多能工配置による業務のカバー体制
ボッシュ株式会社/製造業/社員数1,000人以上
  • 製造ラインの人員計画を立てる際は、一定の年次有給休暇取得を見込んだ出勤率を基準に作成している。一方で、病気等による突発的な欠員は避けられないため、年次有給休暇中の社員の代理として、さまざまな工程に対応できる「テクニカル・オペレーター」を配置している。
  • テクニカル・オペレーターの人数は、稼働日数(年間約240日)に対して、全社員が年次有給休暇を年間20日取得した場合、不足する人員の割合(20日÷244日=8.2%)に基づき、原則として工程の8%に相当する人員を配置している。
  • テクニカル・オペレーターは基本的にラインの補充に入るが、それ以外の業務として、ラインの工程の改善や、管理的な業務も一部担っている。
  • テクニカル・オペレーターが年次有給休暇を取得する場合は、上位の監督者が代理で入ることとしている。
事例23 チーム制により多角的な支援と休暇を取得しやすい体制の実現
株式会社アオアクア/医療・介護(訪問看護・リハビリ、居宅介護支援事業)/社員数30~99人
  • チーム制を採用しており、1人の利用者様に対して複数名で対応している。そのため、誰かが休んでも対応できる体制となっている。
  • スタッフ1人ひとりが様々なスキルや経験を持っているので、チーム制をとることで、多角的な視点からの支援が可能となり、利用者様にとってのメリットも大きい。
  • ただ、利用者様側から見ると、自分の担当者が何人なのか分かりにくい部分もある。そのため、カンファレンスで、利用者様に対する方針を検討し、臨機応変に対応するようにしたり、利用者様に対して、「スタッフも休まないといけないから、たまに別の人が行きますよ」と伝えたり、工夫している。
  • 利用者様によってチームは様々である。訪問のコースがあるので、家が近い利用者様を組み合わせて、近場のコースで行きやすいスタッフを組んでチームを担当している。チーム編成は管理職とシフト担当者で検討している。
  • 利用者様の電子カルテや、各スタッフがどこを回っているのかといった情報は、会社支給のスマートフォンでどこからでも確認できる状態にしている。

取組5-③
業務の標準化の推進

目的
  • 属人的な仕事の進め方をしていると、必要以上に作業工数を取って過剰品質になったり、周囲の社員が代替しにくい状況を作ってしまいます。
  • 個人ごとに仕事の進め方やフォーマットが異なるものについて標準化を行うことで、部署全体の仕事の効率化を図ります。
取組方法
  1. 各メンバーの意見を聞きながら、下記の視点を参照し、標準化すべき業務を選定する。
    1. 複数人が担当しているが、人によって手順や品質にバラつきがある業務
    2. 特定の人しか携わっておらず、代替人員が必要な業務
  2. 選定した業務について、下記の要領で標準手順を検討・設定する。
    1. 当該業務の担当者のうち、最も業務の品質が高く効率的に遂行している担当者の作業手順や成果物(資料など)を確認する。
    2. 上記①の手順を確認しながら、他の担当者からのアイディアや工夫をくみ取り、標準的な手順、アウトプットイメージについて検討する。
    3. 検討した結果を踏まえ、業務マニュアルを作成する。作成する際は、初めて担当する人や経験の浅い人でも理解できるような説明文とし、必要に応じてイラストや写真も掲載する。
  3. 定期的に業務マニュアルに記載した手順で業務を行っているか確認し、効率よく質の高い仕事を行うための手順の徹底を図る。
  4. 手順確認の際に、手戻りが起こりそうな箇所やコツがいる箇所があれば、その内容を追記し、業務マニュアルの更新を行う。
参考となる企業事例
事例24 資料のテンプレート作成による業務の標準化
一般財団法人損保ジャパン日本興亜スマイルキッズ/医療・福祉業/社員数30~99人
(※2020年4月1日より、「一般財団法人SOMPOスマイルキッズ」「SOMPOスマイルキッズ江戸川橋保育園」に社名、保育園名を変更)
  • お便りなどの資料の作成は、作りこみたい人やPCのスキルによって作業時間に差があり、残業の原因になっていた。作業の標準化の1つとして、職員会議で話し合い、月のお便りのテンプレートを作成し、所要時間の目安を90分と定めた。保育士からは、テンプレートを示してもらってよかった、という声もあった。
  • また、イベントの企画書についても、保育士同士で情報を共有しやすいように、全てPCで作成するようにした。お互いにファイルが活用できるため、業務の効率化につながっている。
  • 職員会議でも、日頃から休暇を取得することの必要性や、資料を過度に作り込むことがないようにすることなどを伝えている。
  • テンプレートには、①上段・中段・下段のおおまかなレイアウト案、②それぞれの枠に記載する内容・留意点、③写真の枚数・全体が分かる写真や集合写真を使うこと、④イラストは原則昨年度のものを活用すること、⑤90分程度の所要時間で作成すること、といった目安になる情報も掲載している。
  • 標準的なものを示すことで、求められる資料の水準を明らかにし、「これでよい」という安心感を持ってもらうことにつなげている。
【お便りのテンプレート イメージ】
お便りのテンプレート イメージ

取組5-④
多能工化・人材育成

目的
  • 年次有給休暇を取得した時や急な欠勤があった場合でも、業務に支障が出にくい状況を作るには、幅広い業務に対応できたり、業務の習熟度の高い人材を一定数確保することが重要です。
  • 幅広い職務を遂行できる人材の育成には時間がかかるため、ジョブローテーションやOJTを通じて、計画的に人材育成に取り組みましょう。
取組方法
  1. 部署内の業務リスト(業務項目、業務量、頻度、難易度、現在の担当者、担当可能な者などを整理したリスト)を作成し、現在の状況の見える化を図る。
  2. 上記1のリストをベースとし、各業務における各メンバーのスキルレベルを記載する。
    【スキルレベルのイメージ】
    • レベル5:指導が可能
    • レベル4:標準的な時間で独力で実施可能
    • レベル3:やや時間はかかるが独力で実施可能
    • レベル2:指示やサポートを受けながら実施可能
    • レベル1:実施したことがない
  3. 欠勤や休暇取得者がいても円滑な業務運営を行うために、各業務について「レベル4(標準的な時間で独力で実施可能)」の人員が何名必要か記載し、上記2で記載した各メンバーのスキルとのギャップを明らかにする。
  4. 各業務について「レベル4(標準的な時間で独力で実施可能)」の人員を必要人数確保するため、OJTやジョブローテーションを通じて、計画的に人材育成を行い、幅広く対応できる人材を育成する。
参考となる企業事例
事例25 多能工「テクニカル・オペレーター」の育成
ボッシュ株式会社/製造業/社員数1,000人以上
  • 製造ラインにおいて欠員が出た場合、多能工の「テクニカル・オペレーター」が代替要員として対応する。
  • 1つのラインの中でもさまざまな工程があるが、そのいずれも対応できる多能工の人を「テクニカル・オペレーター」としている。
  • テクニカル・オペレーターの育成は、OJT、OFF-JT双方で行っている。OJTでは、ラインごとにスキルチャートが作成されており、各社員は1年間でどのスキルを伸ばすのか目標を設定し、育成している。
事例26 多能職化で全ての職種を全員でカバー
株式会社お佛壇のやまき/仏壇・墓石等の販売業/社員数30~99人
  • レジ担当、設計担当等と職種が分かれていたため、1店舗に3~4人配置という環境で休暇を取得する社員がいると、不在の職種をカバーできない状況であった。
  • そのため、どの職種の社員が休暇を取得しても、レジ、設計、営業、経理の全ての職種を全員でカバーできるよう、多能職化を進めた。
  • 多能職化前に各業務を担当していた社員がそれぞれ集まり、誰が見ても仕事の内容が分かるマニュアルを作成した。
  • さらに、社員の多職能化に対応して、売上管理やレジ、勤怠管理などのシステムも、当社の業務内容に合わせたものをカスタムメイドで開発している(開発は外部に発注している)。

取組5-⑤
業務の繁閑や休暇を踏まえたシフト設定

目的
  • シフト勤務を行う職場の場合、業務の繁閑と人員配置のバランスを取るために、事前に業務スケジュールや勤務可能な人員数の情報を把握することが重要です。
  • 業務スケジュールを互いに共有しつつ、各メンバーからの休暇取得希望を予め確認することで、年次有給休暇を取得しやすい職場環境づくりを行います。
取組方法
  1. 予め、年間の年次有給休暇計画表を作成し、各メンバーの年次有給休暇の取得の希望時季・日数を把握する(参照:【取組3-③】年次有給休暇の取得計画(カレンダー)の作成・共有)。
  2. 毎月、各メンバーに対して翌月の年次有給休暇取得予定日に変更がないか確認し、勤務可能な日程を把握する。
  3. 翌月の業務スケジュール・業務量を踏まえた日々の必要人員数を算定する。なお、必要人員数の算定には、急な欠勤が発生することも勘案した人数とすることが望ましい。
  4. 上記2、3を踏まえた勤務シフト表を作成し、人手が足りない日・時間帯が発生した場合は、各メンバーと下記の調整・相談を行いながら、勤務シフト表を確定する。
    1. 前後日程も含め、その日の業務スケジュール・量を調整する
    2. 幅広い職務が担当できるメンバー(多能工)に応援を依頼する
    3. その日に年次有給休暇の取得を予定しているメンバーに対して、他の日に変更可能かどうか相談する
  5. 確定した勤務シフト表を各メンバーに周知する。
参考となる企業事例
事例27 業務の繁閑や休暇を踏まえたシフト設定
一般財団法人損保ジャパン日本興亜スマイルキッズ/医療・福祉業/社員数30~99人
(※2020年4月1日より、「一般財団法人SOMPOスマイルキッズ」「SOMPOスマイルキッズ江戸川橋保育園」に社名、保育園名を変更)
  • 全職員(非正規雇用職員を含む)から、月の初めに翌月の「勤務シフト希望票」を提出してもらう。
  • 「勤務シフト希望票」には、年次有給休暇、振替休日(土曜日に出勤した場合)、半休、出勤シフト(時間帯等)の希望を記載してもらい、それをふまえて翌月のシフト勤務表を作成する。
  • 勤務予定を確定することで、計画的に休暇を取得することができる。また、休暇を取得する際は、事由を聞かないようにしており、申請しやすいよう配慮している。
  • 勤務シフトは、①毎月上旬(10日頃まで):「勤務シフト希望票」の提出、②毎月20日過ぎ:翌月のシフト表(第1案)を提示、③毎月月末まで:修正版を配布・確定(1回か2回は修正が出る)、の手順で作成している。
  • 正規雇用職員が休暇を取得する場合、フリーの保育士(非正規雇用職員)が代替で入る。休暇を取得しやすくするため、フリーの保育士を手厚く雇用している。
  • 保育士によって、乳幼児、幼児、幅広く対応可能など適性が異なるので、シフトを作成する際にその点にも配慮している。時には不慣れなクラスを担当してもらうこともある。
  • 年次有給休暇は、毎月1~3日程度のペースで取得する職員が多いが、消化日数が少ない職員には園長から声がけをしたり、シフト作成時に個別に相談し、計画的な取得を促している。