株式会社丸井グループ
事例カテゴリ
- 所定外労働削減
- 年休取得促進
- 多様な正社員
- 朝型の働き方
- テレワーク
- 勤務間インターバル
- 選択的週休3日制
企業情報

企業名 |
株式会社丸井グループ
|
---|---|
所在地 |
東京都
|
社員数 |
4,290人
(時点:2024年3月) |
業種 |
卸売業・小売業
|
事業内容 |
小売事業、フィンテック事業を行うグループ会社の経営計画・管理など
|
働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い
・「すべての人が『しあわせ』を感じられるインクルーシブで豊かな社会を共に創る」というミッションの実現に向け社員一丸となって進むべきものを定めた「ビジョン2050」では、「ビジネスを通じて、あらゆる二項対立を乗り越える世界を創る」ことを掲げ、ビジョン実現のために社会課題解決企業への進化を目指している。その実現には、イノべーションを起こしやすい組織風土づくりが不可欠なことから、企業文化の変革に向けた経営戦略として「企業理念」「対話の文化」「働き方改革」「多様性の推進」「手上げの文化」「職種変更異動」「二軸評価」「Well-being」の8つの取り組みを同時に進めてきた。その一つである「働き方改革」は働きやすい環境の実現もさることながら、より深いレベルではこれからの仕事にとって重要なのは価値を生み出すことであって、長時間働くことではない、という仕事観への転換を目的に進めてきた。
主な取組内容
2008年からノー残業デーの取組を開始
・2008年に「働くプロジェクト(通称ハタプロ)」が立ち上がり、一般社員の働き方を変えることを目的に、残業削減や年次有給休暇の取得促進に取り組んだ。
・本社本部では、2008年から毎週火曜日をノー残業デーとして設定し、19:30にすべての照明を消灯している。また、ノー残業デー以外の日についても21:00に消灯を実施し、残業は事前申請を行った場合のみ実施可能としている。
ワークライフバランスデー
・年次有給休暇の取得促進策として、2008年に半期2日の「ワークライフバランスデー」を導入した。それでも部署によって取得状況にばらつきがあったため、2011年には半期3日に拡大し、年2回の3連休の取得を推進することとした。
・その他、連続年休制度として、半期に1度、12日の連続休暇を取得することができ、本人の了承があれば分割して取得することができる。
半日単位年休、時間単位年休の導入
・半日単位の年次有給休暇を2012年に、時間単位の年次有給休暇を2021年に導入した。半日単位の年次有給休暇は年10回分まで、時間単位の年次有給休暇は年5日分まで取得可能である。
・「1時間だけ早く帰れば病院に行ける」といった場合にも取得できるように、柔軟性を高めるという狙いがあった。
柔軟な働き方の推進(テレワーク、フレックスタイム制)
・社会課題解決企業としてインパクトと利益との両立の実現を目指すため、「創造力」を全開にするために「仕事を通じてフローを体験できる組織」をデザインすることで、求める人材の育成とイノベーションを生みやすい企業文化2.0への変革に取り組んでいる。一人ひとりが働く時間や場所を自律的に選択することが創造的な仕事につながるという考え方と育児・介護・不妊治療などの両立支援の観点から、2019年にはテレワーク、2022年にはフレックスタイム制を導入した。
・柔軟な働き方については、業務特性や部署・社員の希望を踏まえて、適用している。
・業務の特性上、組織全体でのフレックスタイム制の導入が難しい部署においては、育児や介護・傷病・不妊治療などの事由がある社員は、個人単位の適用を認めている。
・また、優秀な人材を確保するという観点からも柔軟な働き方を推進している。
短日数勤務制度
・社員一人ひとりの成長や個別の事由に合わせてより柔軟に働くための選択肢を拡充するために、2021年に短日数勤務制度を導入した。勤務日あたりの労働時間は変更せず、勤務日が1日減った分の給与を削減している。育児・介護・自己啓発・副業の特定の事由に限り利用できる。
短時間勤務制度の運用
・短時間勤務・フルタイム勤務ともに昇進制度は共通であり、それぞれの目標数値や発揮すべきバリュー、パフォーマンスのもとで一人ひとりが自律的に働いている。また、人材配置や業務内容は、フルタイムか短時間勤務かどうかに関わらず、本人の特性や強み、成長を考慮して決めている。
・また、管理職になった後も短時間勤務を継続している社員もいる。
特別休暇制度(有給)
・赴任休暇、本人の結婚休暇、パートナーの出産休暇、忌引休暇、公傷病休暇、罹災休暇、感染症法による交通遮断休暇、裁判員休暇・検察審査員休暇、F休暇(生理・PMSにより就業が困難な場合の休暇※月当たり1日が有給)、子の看護休暇、介護休暇、通院・入院休暇をそれぞれ有給で設けている。
休職制度
・出産育児休職(子が3歳になるまで)、介護休職(最長2年3ヶ月)、傷病休職(事由により最長4年)、不妊治療休職(2年)、自己啓発休職(2年)
管理職の働き方改革に関する取組
○管理職の働き方に着目した経緯、推進体制
・女性イキイキ指数(女性活躍推進に関する同社の指標)の一つであった「上位職志向」を、2014年3月からは男女ともに成果指標として導入した。2019年頃から性別を問わず上位職志向が低下していることに問題意識を抱き、その要因を検討するようになった。
・2020年度に管理職の働き方に関する実態把握(詳細は後述)を開始したところ、データからも労働時間や年次有給休暇の取得率、テレワーク率などに差があることが明らかになった。また、2023年7月に実施した調査の結果、新型コロナウィルス感染拡大の影響により働き方に対する価値観が「変わった」・「どちらかというと変わった」という回答は全体の67%にのぼり、このうち「テレワークできるかどうか」や「ワークライフバランス」を重視するようになったという声が非常に大きかった。また、特にライフイベントに突入する世代が管理職になりたくないと考えていることが明らかになり、管理職の働き方を変えていかなければならないと問題意識を抱いた。
・こうした状況を踏まえ、2023年8月に「コロナ以降の働き方検討イニシアティブ」が発足し、まずは管理職の働き方の見直しから着手することとした。各グループ会社で働く管理職が挙手制で10名集まり、3か月に1回程度、社長や人事担当役員などの経営メンバーと対話し、活動を報告している。
○アンケート調査による実態把握
・社内では部長層・課長層(G1職・G2職)を対象とした調査を実施し、管理職の半数以上は時間外を減らしたいと思っており、理想は20時間未満と考えていることが明らかになった。管理職の残業が多くなる理由として、会議・打合せが多い、会社から求められる提出物やトラブル・急な依頼業務が多いこと等が挙げられ、管理職の役割分担の明確化・見直しの必要性が明らかになった。
・また、管理職一歩手前の層(G3職)を対象とした「G3アンケート」も実施し、一般社員から管理職(GM職)がどのように思われているかを調査した。結果、遅くまでの残業や毎日の出社など、今の働き方への違和感を抱いている人もいることが明らかになった。
○管理職共有会(GM職共有会)
・2024年2月には、管理職全員が一体となって取組を進める土台づくりのために、管理職共有会を計4回対面で開催した。対象者は役員を除く部長層・課長層(G1・G2職)全員であり、計250人程度が参加した。
・当日のプログラムは、イニシアティブ発足の目的と経緯の説明、これまでの取組内容の紹介、意見交換・質疑応答、アンケートの結果の共有、計2回の対話(テーマは自らの働き方の実態と課題、今後管理職に求められる役割の方向性)という構成だった。
・アンケート結果については、管理職の方が働きがいの数字が高い一方、管理職になりたくないという一般社員が多いことや、自分たちは一般社員と大きく異なる働き方をしているという現状を認識してもらった。
・また、組織構造がピラミッド型からフラット型に変化していくことに伴い、管理職に求められる役割も変わってきていることを認識してもらった。
・対話の中では、管理職の業務範囲の見直しや、マネジメント業務以外の移管、管理職業務の複数名での分担、管理職の年次有給休暇の取得目標の設定、管理職の休暇取得時のカバー体制の構築といった改善案が出され、「事態が深刻であることを実感した。できるところから始めたい。」という声が聞かれた。
取組の成果・展望
労働時間の削減
【法定外労働時間の推移】
<2007年度>(月平均)11.0時間
<2023年度>(月平均)5.3時間
年次有給休暇の取得促進
・特にシフト制勤務である営業店において、以前は休みを取得しづらい状況があった。そこで、ワークライフバランスデーなどを導入し、全員が取得するものとしてルールを変えたところ、当たり前に取得できるようになった。管理職も含めて取得を推進している。
【年次有給休暇取得率の推移】
<2014年度>年間平均取得日数:8.8日/取得率:52.0%
<2023年度>年間平均取得日数:14.1日/取得率:73.0%
業務効率・生産性
・フレックスタイム制の活用により、残業削減や生産性の向上につながった。
・テレワークの利用率は、導入可能な部署を分母とすると3、4割程度であり、コロナ禍後は低下している。会社としては自律的にテレワークと出社を選べる職場環境を推進しており、各自が自律的に判断し、出社をしている社員もいれば、テレワークをしている社員もいる。
社員のワークライフバランス、モチベーション
・育児や介護をしている社員からは、フレックスタイム制やテレワークの活用により、子どものお迎えや病院の付き添いに行った後も、家で仕事を再開できるといったメリットが聞かれる。また、そのような事情のない社員にも、余裕のある日に早く終業する等の形で活用されている。
・柔軟な働き方については、仕事と生活の境界線が曖昧になるといった懸念の声はあがっておらず、男性社員も家事や育児の時間を取れるようになった、体調が優れない場合もテレワークで対応できるといった肯定的な意見が多くあがっている。
今後の展望
・テレワークは可能だが、出社しなければいけない雰囲気のある一部の職場の風土改善、フレックス適用部署の拡大を検討している。またキャリアの見つめ直しや社員の成長やチャレンジを支援するための半年から2年程度長期休職制度導入を予定している。