株式会社サニックス

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

株式会社サニックス
企業名
株式会社サニックス
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所在地
山形県
社員数
75人
(時点:2024年6月)
業種
サービス業(他に分類されないもの)
事業内容
総合自動車サービス業(自動車の点検整備・鈑金塗装・トラックボデー架装・特殊機械の取付、点検修理)

働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い

働き方改革に取り組んだ背景

・10年以上前は、20名ほどの小さな自動車整備工場だった。2010年に会社合併を行い、従業員が40名以上となり、自動車に関する総合的なサービスを展開できるようになった。2012年に2代目社長が就任した際に、新たな会社の経営方針が発表された。その経営方針の中に「人が輝く会社になる」や「100年企業になる」といった内容が盛り込まれた。
・当時の課題として、離職者が出ると中途採用で補充を行い、新卒採用を受け入れる環境が整っていなかった。「100年企業になる」という目標を達成するためには、若い社員の採用と人材育成が課題として挙げられた。その過程で、働き方も変えていく必要があるという認識を持ち、働き方改革に取り組むようになった。
・学生に入ってもらえる企業になることを目標として、まずは大学生に興味を持ってもらおうと考えた。ただ、大学生とは交流機会を持ったことがなく、何を考えているのかがわからなかった。
・そうした中、中小企業同友会のつながりで、大学生をインターンとして受け入れる話が持ち上がった。手探りの状態だったが、他社事例を参考にしながら、「サニックス(中小企業)の魅力を伝えられるようになること」「大学生に中小企業を知ってもらうこと」を目的に山形大学と連携し「低学年プレインターンシップ」という独自のプログラムを確立した。3日間のインターンシップを実施したところ、自社社員も大きな刺激を受けて、とてもよい手ごたえを感じた。大学生の意見を取り入れることで、その後、職場環境の改善が進んだ。なお、インターンシップは現在も継続して取組を実施している。
・次に、企業説明会を開くことにした。それまではハローワークに求人を出して採用していたが、若い社員を採用するために、企業説明会を通じて当社の魅力を伝える必要があった。企業説明を行う際には、労働時間や年次有給休暇の取得状況を学生に伝える必要に迫られるが、現状のままだと魅力を感じてもらえないだろうと認識し、働き方の改善に関する取組を始めることとした。

2016年当時の状況

・2016年当時、月平均の時間外労働は20時間で現在に比べると残業が多かった。
・部門による偏りも顕著で、ある部門では残業がまったくないが、別の部門では毎日残業が続くことがあった。月の残業時間が40~60時間程度の部門もあった。
・当時、東日本大震災の影響で作業車のニーズが高まっていたこともあり、製造部門では特に忙しく、サービスの部門(車検などを担当)は残業時間が短い傾向にあった。
・休み方についても、現在はかなり取りやすくなったが、以前は休暇も取りづらかった。休みといえば休日出勤の代休というイメージだった。年次有給休暇の取得率は、2016年当時で16.8%だった。
・忙しくてとれなかったということもあるが、休みづらいという雰囲気もあった。まじめで責任感が強く、自分が休むと他の社員に迷惑がかかってしまう、という意識を持っている社員が多かった。
・当時は、1日単位でしか年次有給休暇を取ることができなかったことも不評であった。
・当時、リモートワークは実施していなかった。
・もともと離職は多くなかったが、新卒採用を行っていなかったこともあり、若い社員が少ないという課題感があった。

働き方改革の推進体制

・経営企画(当時は総務部)が中心となって検討を進めた。
・以前は人事部による面談にて、社員からの要望を聞いていた。ただ、なかなか要望が上に伝わらず、その場の相談で終わってしまうという課題があった。そこで、2020年度から、2名で面談をすることにした。一人の面談だと、上司の意見に偏ってしまうので、多面的に評価できるよう、違う部署の上席者にも入ってもらうようにした。
・また、2020年度から、7人ほどのグループになり、社長・役員とグループディスカッションをする、という取組をはじめた。そこで出た問題・課題を紙に落とし込み、幹部会議で進捗状況を確認している。会社の設備や、給与の仕組みがわかりづらいといった声をふまえて説明会を開くなどもしている。

主な取組内容

働き方改善に関する取組内容

・現場の生産性向上の取組として、外部の専門家を活用した。県が実施する「専門家派遣事業」や山形大学が提供する「山形大学シニアインストラクター」の派遣を活用し、専門家のアドバイスの下、社内のIT化や工場の生産性向上のための方法を一緒に検討し、業務の効率化と生産性の向上に向けた取組に着手した。
・インターンシップをきっかけに、大学との関係性が構築され、情報が入ってくるようになった。
・中小企業のため、設備が乏しい状況ではあるが、その中でも生産性を高める工夫として、レイアウトを変更したり、コードレスの電動工具を導入したりした。また、国の融資を受けて工場の設備改善も実施した。
・従来、必要性が乏しいのに、いつの間にか残業をしてしまっている、という状況が散見された。総務部門の残業集計方法が手書きであった為、アナログな管理となり、月末でしか残業時間を知るタイミングがないことが原因のひとつとして考えられた。そこで、残業の事前申請制の運用の徹底と、残業は所属長の命令のもと実施するものであるとの意識改革を図った。
・加えて、所属長が部下のリアルタイムの残業時間を把握できるように、「職場意識改善助成金」を活用し勤怠管理システムを導入した。日々の就業時間を入力することで、集計作業も楽になった。
・他にも、社内のデジタル化を進めている。営業系の残業削減につながることを期待している。例えば、営業系の社員は内勤でも残業が多いが、要因としては見積書の作成が大きい。見積書の作成を効率的にするため、IT化を進めている段階である。また、生産管理システム(見積もりから製造まで一括管理)について、社内でプロジェクトチームを組んで、1週間に1度ミーティングをしながら構築を進めてきた。このうち、見積システムは現在稼働中であり、見積時間の短縮に役立っている。なお、全体的な生産管理システムは現在も構築中である。
・また、同じ会社の中にいただけでは変化が生まれない。そこで、外部の研修会に出たり、中小企業同友会に入ったりして、違う考え方に触れるなかで新しい考え方が身についてきた。以前までは、社外の研修会に出たことはほとんどなかった。

休み方改善に関する取組内容

・まずは、半日単位での年次有給休暇を取得できるようにした。これにより、休暇の取得率が上がった。会社としても、半日休んで半日働いてもらえるというのはよいことだと感じている。
・また、年次有給休暇について、年間5日間の取得が義務化される以前から、年次有給休暇の計画的付与制度にも取り組んでいる。他の人が働いているのに休む、ということへの抵抗が大きかったことが背景にある。まずは、計画的な年次有給休暇を取得できる環境整備の一環として、全社休業日を年4日に設定した。お盆や年末年始はもともと休業日だが、これらにプラスして年次有給休暇を取得することとした。ゴールデンウイークやシルバーウィークとも組み合わせている。年度初めにカレンダーに予定を入れており、現場のスケジュールが調整しやすいようにしている。取引先には、その日は休業日ということで周知をしている。
・また、誕生月には1日年次有給休暇を必ずとる、という仕組みも作った。
・働き方改革に取り組み始めてから、休暇管理もシステム化している。
・残業時間や年次有給休暇取得率の目標設定までは行っていないが、年次有給休暇は10日間取得を目標として、会社として取り組んでいる。ただ、目標について改めて呼びかけまではしていない。
・即応予備自衛官が在籍しており、訓練の際には特別休暇を付与している。
・2024年には、年間6日のシフト休日を導入した。

取組の成果・展望

労働時間の削減
・残業時間が減ったという実感がある。社員は、自分のやるべきことが前よりも明確になっており、それを時間内でどう終わらせるか、ということを意識するようになった。
・部門や時期による偏りは、課題として残っている。できる仕事が部署によって異なること、業界として9月・3月が決算時期であることなど、平準化は難しいと感じている。
・東日本大震災以降、車両の登録台数の平準化は少しずつ進んでいるが、冬場は除雪車に関連する業務が大量に入ってくるなど、時期による偏りがある。
【所定外労働時間の推移】
<2018年度>(月平均)15時間
<2023年度>(月平均)10時間

年次有給休暇の取得促進
・年次有給休暇の取得率は大きく上昇したが、年次有給休暇の計画的付与制度と誕生日休暇、半日単位の年次有給休暇の取得を可能にしたことの効果が大きい。
・休暇について、部署による偏りはみられない。ただ、人による偏りはある。
・休暇の取得目的としては、本人またはお子さんなどのための通院や用事が主となっており、リフレッシュ目的の取得はまだ少ない。今後の課題と考えている。
【年次有給休暇取得率の推移】
<2018年度>年間平均取得率:51.2%
<2023年度>年間平均取得率:75.5%

業務効率・生産性
・各人が自分の仕事を見直し、再構築するようになった。無駄な仕事を省き、効率化する方法を考えて仕事ができるようになってきたように感じる。
・仕事の進め方を考える・見直すきっかけとして、インターンシップは大きかった。学生さんに、自分の仕事をわかりやすく教え、実際にやってもらうために、マニュアル化をする必要がある。その過程で、仕事の無駄を見直すことにつながったのではないか。
・新卒採用で若い社員の採用に繋がり、企業の受け入れ担当者は「仕事理解」「自己理解」「企業理解」が深まり、自身のキャリアについて内省することで、改めて「働く意味」や「仕事に対するやりがい」を見出すことが出来た。
・従来は、部門によっては、新入社員も課長も部長も同じ仕事に従事するような業務分担だったため、管理職としては自分でやった方が早い、という考え方が一般的だった。しかし、「管理職はマネジメント業務を優先させる」、「部下に作業を任せる」との方針を徹底したことにより、部下は考える力が身につき、無駄な仕事を省き、効率化する方法を考えて仕事ができるようになった。
・以前より、研修会や自分のスキルアップのための勉強会に出る機会が格段に増えた。

従業員のワーク・ライフ・バランス、モチベーション
・毎年、従業員に対して「働く意識と満足度調査」を実施している。

多様な人材の活躍
・以前は、女性でも育児休業をとれる雰囲気がなく、産前産後休暇のみですぐに復帰するような状況だった。ただ、女性社員が増えてきて、育児休業をとりたいという社員や、育児休業から復職している社員もいる。希望を叶えるために、残った社員が何をできるのかを考え、管理職は部下が働きやすい環境を整えるために何ができるかを考えるようになっている。
・現場社員は男性のみだが、介護をしている社員もいる。社員からの相談があれば、朝の就業時間など柔軟に対応している。

採用・人材の定着
・毎年度、新卒社員が入ってくるようになった。毎年2~3名ほど多いときは4~5名入ってきている。労働時間や休暇取得が魅力だから入社した、というよりも、アットホームであることが魅力だった、という意見が多い。

今後の展望
・グループ会社も立ち上がり、グループ全体では100名規模の会社となった。現在は、若手育成が課題と考えている。
・社員間・部門間の業務量の平準化および社員育成のための業務標準化、育成の仕組みづくりが大きな課題となっている。
・2021年度から、社員育成の環境整備をしようと準備している。
・2024年度は年間休日を6日増加させており、2025年度は更に3日増加させたい。

(R7.3)

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