塩野義製薬株式会社
事例カテゴリ
- 所定外労働削減
- 年休取得促進
- 多様な正社員
- 朝型の働き方
- テレワーク
- 勤務間インターバル
- 選択的週休3日制
企業情報

企業名 |
塩野義製薬株式会社
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所在地 |
大阪府
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社員数 |
2,117人
(時点:2024年3月) |
業種 |
製造業
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事業内容 |
医薬品、臨床検査薬・機器の研究、開発、製造、販売など
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働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い
・中期経営計画で掲げた2030年Vision「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」を実現するために、従業員が目指すべき人材像として「Shionogi Way:他者を惹きつける尖った強みを持ち、新しいことにチャレンジを続ける人」を策定した。社員一人ひとりがチャレンジし、自律的に能力を磨いて成長していくために、どのような働き方や制度が望ましいかを考え、働き方改革を進めてきた。
・その一環として近年様々な制度の見直し・導入を行っており、高度プロフェッショナル制度の導入(2019年4月)、自己投資支援制度の導入(2019年10月)、スーパーフレックスタイム制度・在宅勤務制度の導入(2021年4月)を行ったほか、2021年10月には所定労働時間の見直し、裁量労働制・事業場外みなし労働の適用廃止、選択的週休3日制(社内の制度呼称は「選択週休制度」。以下同様)の導入、副業基準の見直し等を実施している。
主な取組内容
スーパーフレックスタイム制度・在宅勤務制度を導入。柔軟な働き方が可能に
・社員一人ひとりが自律的に能力を磨いて成長していくために、スーパーフレックスタイム制度・在宅勤務制度の導入や所定労働時間の見直しを通じ、柔軟な働き方が可能な環境を整備した。
・2021年4月にスーパーフレックスタイム制度と在宅勤務制度を導入した。以前からフレックスタイム制は導入していたが、より柔軟にすべくコアタイムを廃止した形である。24時間フレキシブルタイムであるが、健康面に配慮し、原則5時~21時の範囲での勤務を推奨している。なお、海外との業務があるため、上司に事前申請のうえ深夜に勤務することも可能としている。また、1日最低3時間は勤務することを定めている。
・在宅勤務制度については、研究職・製造職は業務上出社が必要になることが多く、主にスタッフ職が活用している。これらの制度導入にあたり、いつどこで働くかが把握しづらくなるため、あらかじめ時間も含めた業務予定を立てて共有する仕組みにしている。
・2021年10月には、裁量労働制・事業場外労働のみなし労働時間制を廃止し、従来これらの制度を適用していた社員はスーパーフレックスタイム制度に移行した。働く時間を意識しつつ成果を出してほしいと考えたことが背景にある。特に、これまで事業場外労働のみなし労働時間制を適用していた営業の現場では、労働時間の捉え方がこれまでと大きく異なるため、人事部の担当社員が営業所を回って研修を行うなど制度理解・周知を図っている。
所定労働時間の見直しを実施。働き方の意識改革を促進
・2021年10月に、1日の所定労働時間を7時間45分から7時間、1か月あたりの所定労働時間は155時間から140時間に短縮した。制度変更に伴い、短縮した1か月あたり15時間分は先払いの固定残業代として支給し、月例給与の水準は維持している。短縮した15時間分を使って新たなチャレンジ等をしてほしい、所定労働時間を短縮した分、働き方や業務効率を見直すといった意識変革につなげてほしいというメッセージを発信し、制度変更の狙いも伝えている
・1日あたり7時間で仕事をするという意識が働いたのか、制度導入直後には残業時間が減少する傾向がみられた。ただ、他の制度変更も含め、制度を導入するだけでは改革にはならないため、今後個々の社員が制度の理解をより深めていく必要があると考えている。
選択的週休3日制の導入と副業基準の見直しを併せて実施。社外での学びの還元を期待
・多様な働き方・柔軟な働き方を目指していきたいという思いや、社外に目を向けてそこでの学びを本業に活かしてもらいたいとの考えから、約1年間の検討を経て2021年10月に選択的週休3日制を導入した。併せて、副業基準の見直しも行った。
・選択的週休3日制の検討にあたっては、給与も働く時間に応じて削減するという方針を採ることにした。制度を利用する場合、所定労働時間は5分の4になり、給与は原則80%相当となる仕組みである。適用期間は1年間だが、制度適用解除の申請をしない限り、次年度も継続して適用となる。月曜日から金曜日までのうち、社員自身が固定の曜日を選択し、申請することとしている。なお、選択的週休3日制の利用者もスーパーフレックスタイム制を活用することができる。
・入社3年未満とマネジャー職以上を除く正社員が制度の対象であり、中途採用者は組織判断で適用される場合もある。2024年度には国内連結で32人が利用している。
・「他者を惹きつける尖った強みを持ち、新しいことにチャレンジを続ける人」を育成するための施策のひとつとして導入しており、育児・介護等に限らず、事由を問わず利用可能としている。選択的週休3日制の利用を希望する場合、まずは上司に相談し、現場でよく話し合ってもらうようにしている。制度を利用しやすくするため、利用申請にあたり利用事由は特に確認をしないことにしている。
・導入の際には、社内でどの程度の選択希望があるかについても議論があり、特に製造職では製造ラインの確保やシフト勤務調整の関係から、希望する社員が多いと業務運営が難しくならないかという懸念もあったが、現状では問題なく運用できており、選択的週休3日制に対する不公平感等も特に聞かれていない。
・副業については、他社で副業を経験することで人材の流出につながってしまわないか、という懸念もあったが、「外を知る」ことで当社の良さを知ることもあるだろうと考えた。一方で、労務管理が煩雑になるため、まずは雇用契約のない業務を認める形にしている。また、同業他社や、医薬品を取り扱う施設等での業務は承認しないことにしており、認められないケースを示して該当しないことを確認している。副業は、170人程度から申請が出てきており、コンサルティングや、教育・学習支援等、内容は様々である。
・そのほか、2019年10月には自己投資支援制度を導入しており、年25万円を上限にセミナー受講等の学びのための費用を支給する制度も導入し、社外での学びを費用面からも支援している。
取組の成果・展望
・エンゲージメントサーベイの「ワークライフバランス」に関するものをはじめ、いくつかの項目で良好な結果が見られる。ただし、やみくもに「働きやすさ」を追求するのでなく、社員の主体的なチャレンジにつながるような「やりがい」の向上も同時に追求していきたいと考えている。
・また、社内において多様な働き方を尊重しつつ、成果創出につなげるべく、社員同士のコミュニケーションやコラボレーションをより強化する方向で現在検討を進めている。
・エンゲージメントサーベイ結果の改善や、自己投資支援制度の利用率が毎年上昇していることなどから、社員のワークライフバランスや学び直しの促進につながっていると考えている。会社からは制度導入のメッセージとして、学び直しや目指す人材像の実現に向けて活用してもらいたいといった点を積極的に発信しており、副業基準の見直しや自己投資支援制度と併せて、社外での学びを仕事に活かすことを期待している。
・他の制度も含め、働き方改革に関わる大きな変更を行ったところであるため、社員への制度の浸透や、理解度を深めるための周知が当面の課題であると考えている。選択的週休3日制については、制度設計に様々な可能性・パターンがある。それぞれの会社にあった制度を検討していくことが重要と考えている。