札幌会場における開催状況について
(2018年度)
平成30年12月11(火)、札幌国際ビル 国際ホールにおいて、働き方・休み方改革シンポジウムを開催しました。北海道労働局雇用環境・均等部長 鈴木 里美のご挨拶を皮切りに、本シンポジウムが始まりました。
【第1部】基調講演
「『休み方』のデザインを通じた『働き方』の変革」
- はじめに、近年の年次有給休暇の取得状況を確認したうえで、年次有給休暇の取得率の二極化が進んでいることを指摘。休みにくい理由を提示したうえで、休みにくさは、個人の問題ではなく、人事部門や管理職の課題であることを示されました。休みにくさの解消のためには働き方の見直しが必要であることから、「休み方」に取り組むことが「働き方」を見直す1つの切り口になる、と述べられました。
- 続いて、「休み方」を改善するうえでの3つのポイントを解説されました。1つめのポイントは、現状の人事制度の改善の余地を検討することでした。既存の「休み方」に関する人事制度をより使いやすくできないかという視点を持ったり、既存制度の導入時期と現在では、生活環境や従業員のニーズが変化していることに注意を向けたりするべき、ということでした。
- 2つめのポイントは、取組を誰に対しても一様に行うのではなく、ターゲットによってアプローチの仕方を変えることでした。休みを取らせるのではなく、休みを取った人が「取ってよかった」と思える休み方の成功体験を積むことができるかが重要、ということでした。
- 3つめのポイントは、「休み方」の改革のためには人材育成の視点が必要、ということでした。しっかり休み、しっかり働く従業員を育てることが重要で、例えば、残業をする日としない日といったスケジュールを立てられることや、仕事から物理的・心理的に離れられることを自分で調整できる人材を育成していくことが求められる、と述べられました。
【第2部】事例紹介 働き方・休み方改革の取組事例紹介
「働き方・休み方改革の取組みについて」
- 三越伊勢丹グループのひとつで、月給社員が650名程度の規模である。しかし、月給正社員の離職が続き、人材不足による売り上げの低下を招いた。そこで、待遇面だけでなく、働き方を変えることで、社員のロイヤリティーを高めようと、働き方改革の取組を始めた、という経緯を説明されました。
- 長時間労働の解消に向けて、具体的な取組として、年間休日数の拡大(114日→120日)、年末年始の店舗の休業日の拡大、基本営業時間の短縮などを図ってきたということでした。店舗の休業日を、営業時間が短くする代わりに、営業時間中の販売員の配置を手厚くし、より質の高い接客・サービスを提供できるようにしている、と説明されました。他に、ノー残業デーにおけるPCのシャットダウンの取組や、現場のサポート体制を充実することで、販売現場での付帯業務の軽減を図る工夫をご紹介されました。また、年次有給休暇の取得促進に向けて、7日間の連続休暇を半期に2回取得するよう、社員に働きかけているということでした。
- また、働き方改革の推進のため、「無理・無駄・ムラをなくす」をスローガンに取り組んでいる、ということでした。送信先を含めた社内メールの簡素化、会議資料の枚数制限の設定、資料の修正は1回で済ます、などの具体的な取組が紹介されました。これらの取組の達成状況は、部署ごとに評価され、マネージャーの評価に反映される、ということでした。
「(無題)」
- はじめに、自身および同社のこれまでの経験の紹介がありました。佐々木氏自身は従来より、休みが多い方がよく、働きに見合った報酬を得る働き方が好ましいと考えており、その理想を実現するため、自らが会社の代表になった、ということでした。
- 取組を始める以前はサービス残業がみられたため、現在はきちんした労務管理のもと、1分単位で残業代の支払いを行い、同時に持ち帰り仕事を禁止した、ということでした。また、仕事を離れた時には仕事のことを考えないこと、仕事のときには100%の力で利用者に向き合うことを意識づけたしてきた、と述べられました。
- 次に、離職が多いといわれる介護や福祉業界であっても、長く働いてもらうために、勤続年数に応じて、傷病休暇を付与したり、看護休暇の対象となる子の年齢の引き上げを行うなど、取組を紹介されました。また、「働く社員の幸福追求する会社であること、その結果として利用者へのサービスと質の向上につなげる」旨を企業理念として明文化した、ということでした。取り組みをした結果、一時的にコストは増えたものの、職員からは、「自社のように休みをとれる会社はない」という声も聞くようになった、と述べられました。
【第3部】パネルディスカッション
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- 【ファシリテーター】
- 【パネリスト】
- 現場とのコミュニケーションについて
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- 株式会社札幌丸井三越の尾田氏から、確かに現場の声を直接聴くことは難しい、というコメントがありました。続けて、尾田氏より、株式会社札幌丸井三越では本人と人事部との面談の際に、労働組合の担当者が同席することが紹介され、その理由として、本人と人事部だけでは本人が気兼ねしてしまうから、という説明がありました。
- 会社の規模による違いについて
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- 株式会社札幌丸井三越の尾田氏からは、大きな会社の取り組みにくさとしてトップダウンでの浸透が難しいことが挙げられました。有限会社真心の佐々木氏からは、小さな会社では人が少ないことで休みがとりづらい一方で、トップダウンで推進しやすい、というコメントがありました。
- 業種による違いについて
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- 株式会社札幌丸井三越の尾田氏から、店舗やフロア、職種、扱う商品が多様であるということ、さらにこうした、違いのなかで公平性を持つことの難しいというコメントがありました。有限会社真心の佐々木氏からは、福祉の業界では奉仕の精神が強調されがちであるが、それだけでなく、コスト管理と労務管理がやはり重要である、というコメントがありました。
- 今後について
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- 株式会社札幌丸井三越の尾田氏から、今後も休日を増やしていくことを検討しているが、現場からは1日の拘束時間を短くしてもらいたいという要望が強い、という実態の説明がありました。シフトの見直しを含めて、今いる人員のなかでいかに生産性を高めるかということについても検討していきたい、と述べられました。
- 有限会社真心の佐々木氏は、改革を進めて、週休3日を確保できる体制を構築したい、改革全体のスケールアップを図りたい、と述べられました。
- 最後に、ファシリテーターの坂爪氏より、会社の規模も業種も違うが、両企業ともにコツコツと進めることで、効果が現れた事例として参考にすることができるのではないか、とのコメントがありました。
【第4部】法律説明
「働き方改革関連法(労働基準関係)の概要」
- 第4部では、厚生労働省より、働き方改革関連法(労働基準関係)の概要について説明が行われました。