名古屋会場(2016年度)
~企業と社員が一緒に取組む「働き方・休み方改革」の可能性~
平成28年10月17日(月)、ミッドランドホールにおいて、働き方・休み方改革シンポジウムを開催しました。木暮 康二愛知労働局長のご挨拶を皮切りに、本シンポジウムが始まりました。
【第1部】基調講演
「なぜ働き方改革なのか ~生活改革との好循環が不可欠~ 」
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まずはじめに働き方・休み方改革の必要性についてお話がありました。
今、企業に求められているのは、安易に残業に頼る働き方を変えることであり、時間生産性の高い働き方は企業の競争力基盤になる、と述べられました。 - 次いで、ワーク・ライフ・バランスが実現できる職場のあり方について、これまでは残業している社員を評価する面が見られましたが、これからは無駄な仕事の排除、仕事の優先順位付け、過剰品質の解消、仕事の効率化、能力向上が重要であると語られました。
- このほか、「週2日定時退社」という制約を課すことによって、時間効率を高める働き方の意識を社員に持たせる取組の提案や、女性活躍推進との関係から、短時間勤務からフルタイムに早く復帰できるようにするには、フルタイムの働き方の見直しが必要とのコメントがありました。
- また、厚生労働省の働き方・休み方改善ポータルサイトについてご紹介いただき、各社のポジション把握や取り組み等についての診断、他社の取組事例検索の機能の利用を推奨いただきました。
【第2部】事例紹介 働き方・休み方の改善において進んだ取組を実施している企業の事例紹介
「伊藤忠商事の働き方改革~健康力増強による人材力強化~」
- 働き方・休み方改革を行う上では、その目的を会社の中で明確化することが重要、と語られました。同社では、企業の競争力に直結する仕掛けとしてこの改革を位置づけ、「最少人数で最大成果を発揮できる人材戦略」として実施しました。
- 長時間労働削減および徹底的にメリハリある働き方に変えることと、社員の健康力増強により、一人当たりの生産性で他社を凌駕することを目指し、精勤休暇取得促進、業務効率化の促進、朝型勤務の充実、110運動徹底などを展開するとともに、健康管理体制の強化や食事・運動の支援の強化を図っているとのこと。
- 朝型勤務制度などは導入6ヶ月後、導入2年後と時間が経過するにつれて、実施率が高まっており、また、社員の肯定的な意識も高まっていることが示されました。
「新しい働き方への取り組み」
- 女性活躍推進のために「在宅勤務制度」を新設し、現在30名が利用している(育児介護者が対象、男性の利用者は3名)。在宅で勤務することにより、通勤時間の節約のメリット以外にも、出勤する日は打合せ等のコミュニケーションの密度が高くなり在宅では集中してデータ作業や企画書等の作成に打ち込める等、生産性が上がったとの事例報告がありました。
- また、朝型フレックスのトライアル実施について紹介がありました。その結果、若手の出勤時間が早くなることで上司と若手のコミュニケーションが増したという効果があったとのこと。2016年7月より正式に制度として導入し、さらなる深夜勤務時間の削減が期待されています。
「一流の中小企業を目指して」
- まず、働きやすい職場環境づくりに取り組んだきっかけは新卒採用だったと述べられました。働きやすい職場環境をつくらないと中小企業に大学新卒は来ないと考え、職場環境を変えたとのこと。実践してきたのは、①完全週休二日制、②有給休暇の完全消化、③残業ゼロ、休日出勤ゼロ。このような取り組みを継続した結果、200人以上の新卒の応募があるとのことです。年間の社員の残業時間は2時間程度で、有給休暇の完全消化のためには、休暇を取っていない人を掲示する等を経て、現在90数%の取得率となっていると語られました。
- 残業ゼロ、有給取得率100%を目指すために十分な人員体制を確保し、徹底したコスト削減を行っているとのこと。また、顧客の要望(休日出勤等)にすべて応えない等、健全な経営を行うにあたっては常にプラス成長でなくて良いと考え、そのような経営姿勢を社員に説明・理解してもらい、社員はモチベーション高く働いてくれると語られました。
【第3部】パネルディスカッション
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- 【ファシリテーター】
- 【パネリスト】
- 各社の取組に対する補足
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ファシリテーターの佐藤氏より、第2部を補足する内容について、3社へ問いかけを行いました。
伊藤忠商事株式会社の垣見氏より、経営陣への働き方改革や健康経営への理解については、どうしても企業価値や収益との関係がどうなのかという議論になるが、経営陣の関心に対する資料を作成し、説明し続け、まずはやらせてほしいと訴えたことを補足いただきました。また、今年度から新たに導入した組織長評価への追加については、会社の取組について組織長が理解し、実際に行っているかを見ることが重要と考えていること、具体的にはMBOに組織マネジメント力という項目を作成し、朝型勤務の推奨、働き方改革の徹底、部下の管理という文脈で目標を入れるようにすることを義務付けたことを補足いただきました。 - ブラザー工業株式会社の青木氏からは、仕事によって在宅できる人と在宅できない人がいるが、本人が工夫すれば、家でできることを切り分けられることがあること、在宅で行うことで部下がこまめに報告を行うため上司とのコミュニケーションが向上する場合もあること、ある部門では周りの理解を得るために成果報告会を開催したケースがあったことを補足いただき、ファシリテーターの佐藤氏は、「同僚に在宅勤務者がいつ在宅しているか、在宅でどのような仕事をしているかをわかってもらうことは重要、何が在宅に向くかはやってみないとわからない」とコメントされました。
- 有給休暇完全消化や残業ゼロ等の社内理解にどれぐらいかかるかについて、拓新産業株式会社の藤河氏から、社内に徹底してストレートに周知したことにより、3年ほど続けたところ社員が信じてくれたとお話いただきました。また、取引先の理解については、休みの日に携帯電話で担当に直接顧客から要求の電話が入る等のトラブルが発生することはあるが、会社の経営理念が末端まで浸透すると、それが物差しとなり社員が自分で判断できるようになることを補足いただきました。佐藤氏より、「取引先とのコミュニケーションが大事であり、例えば常にすぐに顧客の要求に対応するといったような付き合い方を見直すということも重要」とのコメントがありました。
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ファシリテーターの佐藤氏より、第2部を補足する内容について、3社へ問いかけを行いました。
- 会場からの各社への質問
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- パネルディスカッションの後半では、質問が多数よせられました。主な質問は以下の通りです。
- 伊藤忠商事株式会社の垣見氏には、110運動の徹底について、残業削減をしながら朝型勤務を進めることでの業績への貢献等について質問がありました。
- ブラザー工業株式会社の青木氏に対しては、「今後、業務量を減らすなど全社的な効率化に取り組む」という説明について、開発部門のように残業時間のギャップを設け難い部署対してどのような取り組みを考えているのかという質問がなされました。
- このほか、全員に対して、「メンタルヘルスの改善の効果について」「取り組みが社員の定着率に貢献するのか」「残業削減に抵抗のある社員に対してどのように働きかけ、改革を進めていけば良いのか」等の質問があり、各事例発表者からそれぞれ具体的な取組や効果について回答がなされ、締めくくられました。