東亞合成株式会社

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

企業名
東亞合成株式会社
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所在地
東京都
社員数
1,339人
(時点:2022年12月)
業種
製造業
事業内容
基幹化学品、ポリマー・オリゴマー、接着材料、高機能材料、樹脂加工製品の製造・販売

働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い

従業員の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」の実現を目指し、仕事と家庭生活を両立させて双方に良い影響を及ぼしていけるよう、所定労働時間の見直しや総労働時間の削減、年次有給休暇の取得推進などに取り組むとともに、女性やシニア等の活躍推進にも力を注いでいる。

主な取組内容

1 働き方・休み方改善(特に休暇取得促進)に関する方針・推進体制

・本社の人事部門が旗振り役となり、各事業所の人事部門、職制を通じて、各種の伝達を行っている。
・CSRとして年次有給休暇の取得率100%を目標に掲げたことで、会社として休暇取得促進に取り組む姿勢を明確に発信してきた。

2 働き方改善に関する取組内容

長時間労働の抑制
・2011年にノー残業デー(毎週水曜日)を導入し、2014年には対象日を週3日(毎週月・水・金曜日)に拡大した。また、2014年には常昼勤務者の昼休みを15分短縮した。その後、2015年には常昼勤務者の所定労働時間を15分短縮した。したがって、2014年以前より、休憩時間を含む就業時間は30分間短くなっている。
・2011年のノー残業デー実施当初は、一定の強制性をもって帰宅をうながすような状況であった。労使が協働で声掛けなどを行った。2014年に昼休みを15分短縮するにあたっては社内でも議論があったが、トップの方針に基づいて実施された。2015年の所定労働時間15分短縮についても、経営的には大きなコストを伴うものであったが、トップの方針に基づいて実施された。
・工場勤務者を含め、従業員の勤怠管理にはICカードシステムを活用している。就業時間だけではなく、在社時間を把握するようにしている。
・全社、事業所単位だけでなく、部署単位での労働時間の状況も確認し、場合によっては上長を通じて声掛けをしている。部署単位で在社が長くなっている場合もあれば、個人単位の理由である場合もあるため、きめ細やかに確認し、「気付きを与える」ことを目的としている。
・年次有給休暇の取得についても同様である。
・労働時間の短縮という目的のもと、RPA(Robotics Process Automation)の導入や設備投資を行っている。

テレワーク制度の拡充
・在宅勤務制度は以前から導入していたが、育児等の理由がある社員の自宅勤務に限られていた。コロナ禍で多くの社員が緊急的に在宅勤務を活用するようになり、介護家族の住居など自宅以外での勤務を希望する社員も増加したことから、2021年1月にテレワークとしてより活用しやすい制度に見直しを行った。
・利用回数は1か月に10回まで。半日のみのテレワークでも、1回とみなしている。
・テレワークの際は、上司は時間外勤務を指示しないことを原則としている。そのため、テレワーク導入による深夜勤務や長時間労働等の増加などの問題はない。
・テレワークの利用にあたっては、生産性の維持向上、育児、介護等の事由を選択して上長・人事部長に申請する。その後は、テレワークの都度、勤務管理システム上で申請を行う。その際にあわせて実施する予定の業務内容も記載する。

フレックスタイム制のコアタイム廃止
・フレックスタイム制は以前から導入していたが、2021年にコアタイムを廃止した。背景としては、コアタイムがあることで、育児介護や定期的な通院等のある社員から制度を利用しにくいという声が聞かれるようになったことがある。

3 休み方改善に関する取組内容

年次有給休暇の計画的付与
・年次有給休暇の計画的付与を実施している。夏季休暇や年末年始の休日に引き続いて付与しており、夏季3日、年末1日を目安に設定している。1週間以上の連続した休日・休暇を実現し従業員の心身のリフレッシュを図るため10年以上前に開始した。
・ごく一部、業務の状況によって計画的付与日に休暇を取得できない場合がある。その場合は、別日で取得できるよう調整する。
・2023年度は8月16日・17日・18日と、12月29日が計画年休日である。夏季休日を8月14日・15日に設定しているため、今年は計画年休と合計で10日間の夏季休暇となった。

時間単位年次有給休暇の導入
・従業員アンケートや意識調査(近年は毎年実施)の中で、年次有給休暇を半日取得するほどではないが、通院や役所での手続きなどで1時間だけ抜けたいという希望が書かれていたことを受け、休み方の柔軟性を高めるため、2021年に導入した。
・単位は1時間であり、1年間で3日分(1日あたり8時間、合計24時間)利用できる。
・対象者は工場の交替勤務者も含めた全社員。
・2022年度の取得者は、グループ会社を含めて2,500人中275人である。今年度はすでに上期(2023年10月時点)で274人が利用しており、浸透してきている。
・工場勤務者も対象とすることで、職場の混乱が生じるのではないかという懸念が当初はあったが、実際に導入してみると、常識の範囲で職場にも配慮しながら利用されており、特に問題は生じていない。
・WEBの勤怠管理システムを使用しているため、取得時間数は自動的に計算されて管理されており、24時間以上は取れないようになっている。
・中抜け等の職場での調整について、特段人事部でルールの制定はしていない。ただし、半日年休と時間単位年休を組み合わせて使うことはできない。半日以上取りたい場合は、時間単位年休で取得してもらうことになる。
・時間単位年休の導入により、育児をしている社員からは、お迎えに早く行く必要がある時に、フレックスであれば早退などで短縮した分を別日で調整する必要があるところを、時間単位年休であればその日だけで処理が完了するので便利だという声があった。また、午前中から昼過ぎまで用事がある際には、今までは終日休む必要があったが、時間単位年休を取得することで、14時からの出社等が可能になった。

育児休業期間の延長
・2022年1月より、育児休業の取得可能期間を、3歳到達後の3月末日までに変更した。保育園に入園できない社員が一定数いることから、待機児童の問題などをきっかけに離職してしまうのは大きな機会損失であると判断して延長した。

育児短時間勤務の拡大
・2022年1月から、育児短時間勤務の利用対象について、子の年齢を3歳未満から小学校3年生以下までに拡大した。
・様々な事情のある方に配慮するという方針で、法定よりも充実させている。子どものいる社員も増えているため、両立支援の意味で拡大した。
・フレックスタイム制も利用できるが、短時間勤務で働くと伝えることで、周囲にも伝えやすくなり、上司も仕事に配慮できるため、それをメリットに感じて活用する方もいる。

看護・介護休暇の倍増
・2022年1月から、看護・介護休暇の付与日数を1年あたり10日から20日に変更した。年次有給休暇を使い切ってしまっても使える休暇であるため、離職防止につながり、ニーズもあると判断した。

4 働き方・休み方改善に関する課題・工夫

・テレワーク制度は、一部製造現場の社員は利用できないため、他の勤務者だけが働きやすくなるのは不公平ではないかという声はあった。しかし、一部が利用できないからと言って全員が我慢するのではなく、会社全体としてより働きやすくしていくことが重要と考え、制度を改定した。製造現場に対する配慮として、時間単位年次有給休暇を導入するなど、別の方法で働きやすさの向上に努めている。
・制度が柔軟になる一方で選択肢が増え、複雑になっているため、説明会で丁寧に説明したり、新年の社内報で制度の改定内容を掲載したりする等、発信を積極的に実施している。制度を導入して終わりではなく、使ってもらうことを重視している。

取組の成果・展望

1 取組の成果

年次有給休暇の取得促進
・2016年から大きな変化はなく、取得日数・取得率ともに高い水準を維持している。

【年次有給休暇取得率の推移】
<2016年度>年間平均取得日数:18.2日/取得率:92.2%
<2022年度>年間平均取得日数:18.5日/取得率:92.3%

業務効率・生産性
・「理由なく1時間で招集していた会議を45分にする」「社内メールにおいて部署名・定型句をやめる」などを社内報で呼びかけ、文化として定着してきた。

従業員のワーク・ライフ・バランス、モチベーション
・社員向けアンケートにおいて、柔軟な働き方ができることに対する肯定的な回答が、2019年から2022年で10%以上上昇している。テレワークや時間単位年次有給休暇の導入、フレックスタイム制度のコアタイム廃止など、大きな制度改定の実施により、従業員の実感として働きやすくなったという結果がデータにも表れている。

多様な人材の活躍
・以前は育児休業後の離職もあったが、少なくとも直近4年は復職率100%である。
・男性の育児休業も徐々に増加している。産後パパ育休を新設したこともあり、2022年度は子どもが生まれた男性社員の47.3%が育児休業を取得した。取得期間としても、近年は2週間や1か月、半年以上取得する男性社員も徐々に増えている。

採用・人材の定着
・2018年~2020年における新卒採用者の9割以上が定着している。
・年次有給休暇取得率の高さは、採用活動でのアピールにもなっている。

2 今後の展望

・全国各地に事業所があるため転勤があるが、近年は共働きも増えているため、今後の転勤制度のあり方については検討する必要がある。

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