東急株式会社
事例カテゴリ
- 所定外労働削減
- 年休取得促進
- 多様な正社員
- 朝型の働き方
- テレワーク
- 勤務間インターバル
- 選択的週休3日制
企業情報
企業名 |
東急株式会社
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URL | |
所在地 |
東京都渋谷区
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社員数 |
1,482人
(時点:2023年3月31日) |
業種 |
不動産賃貸業、不動産販売業、その他事業
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事業内容 |
交通インフラ事業、都市開発事業、生活創造・リテール事業、ホスピタリティ事業など、東急線沿線を中心に、長期視点での「まちづくり」を手掛け、お客さまの生活に密着したさまざまな事業を展開
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働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い
・「ダイバーシティマネジメント(多様性を活かす組織づくり)」を全体戦略として様々な取組を実施し、「働きがい」「働きやすさ」を向上させることで、「誰もが働き続けたい会社」を実現する。
主な取組内容
1 働き方・休み方改善(特に休暇取得促進)に関する方針・推進体制
経営メッセージ・体制
○中期3か年経営計画を更新し、「変革」重点施策
・2021年度を始期とする中期3か年経営計画重点施策として「変革のための原動力として“個”の最大化を支援することにより、企業価値の最大化を図る」ことを掲げ、生産性向上とイノベーション創出を目的として、より一層高いレベルでの働き方改革、ダイバーシティマネジメント、健康経営推進を全社的に宣言している。
2 働き方改善に関する取組内容
勤務時間・場所の柔軟化
・年間を通じて、各自の職務・環境に合わせたスタイルを自ら選択する取組を「スマートチョイス」と命名して社内展開している。従来の働き方に捉われず、創造性発揮や業務の効率化を考え、従業員が主体的に選択することを目的としている。
【勤務時間】
○フレックスタイム制
・2021年4月より全本社勤務員を対象に、フレックスタイム制を導入。フレキシブルタイム5時00分~22時00分の中で各自が、日々の勤務時間、中抜け時間を選択できる(1日平均8時間勤務)。フレックスタイム制(コアタイムなし)により、日々の勤務時間の柔軟性を最大限高める。
【勤務場所】
○テレワーク制度
・2016年9月から、本社勤務員を対象にサテライトオフィス勤務を導入している。当社が展開する会員制サテライトシェアオフィスとその提携店舗が利用できるほか、東急線沿線に当社社員専用サテライトオフィスも設けている。
・また、2020年10月よりテレワーク制度を導入し、「適正な執務環境、セキュリティ環境を確保し、通常と同等の業務効率・成果が期待できる」と上長に認められた場所であれば、働く場所を日数や時間の制限なく柔軟に選択することが可能となっている。
【テレワーク可能な場所の例】
・自宅(在宅勤務)
・実家(育児や介護との両立、故郷への帰省と組み合せて働く、等)
・出張時等の宿泊施設、移動中の交通機関
・レンタルスペース、自習スペース、図書館、喫茶店、ラウンジ、他)
●所定外労働削減(労働時間適正化)
○労働時間実績報告および啓発メールの発信
・管理職が率先して労働時間適正化に取り組むべく、労務管理部門の部長より全部門の部長へ、毎月の労働時間実績の報告と啓発メールを発信。
○PCログを活用した客観的な労働時間管理
・PCログを自動で記録し、勤怠システムと連動させることで、客観的な労働時間管理を行う。従業員がシステムに入力した勤務時刻と乖離が生じた際にはアラートを出すことで、上長および本人に正確な労働時間の入力を促す仕組みとなっている。
●多様な働き方の支援
○短時間・短日数勤務、育児支援
・育児・介護・看護者および自身の傷病等の事情がある希望者が、1日2時間または週休3日を限度として、就業時間や日数を短縮する「Y 職責」(人事制度上の職制の1つで、この働き方を選択している社員の職制には「Y」が付けられる)を設けている。育児は子の23歳の誕生月まで、介護・看護・傷病は事由が終了するまで利用できるのが特徴で、多様なライフスタイルに合わせた働き方が可能となっている。
・また、育児休職の一部有給化(男女問わず育児休職期間中最大53日間の賃金を支給)、複数の事業所内保育所設置(お泊り保育や早朝保育、延長保育も充実)など、様々な育児支援を行っている。
○PIVOTx(社外複業)
・従業員の「個」を伸ばし、他社での経験や得た知見を是非当社に活かして欲しいという思いから、社外複業のガイドラインを2021年4月に制定。当社業務に軸足を置きつつ、業務外でも多様な自主活動が可能。
●再雇用に関する取り組み
○カムバック制度
・妊娠・出産・育児、介護、配偶者の海外赴任および自己研鑽を目的とした就学を事由に退職した社員が、働くことができる状況になった時に社員として復職できる制度。
○再入社窓口(リジョイン採用)
・他社での経験を再び当社で発揮して欲しいという思いから、自己都合により退職した方に対する採用専用窓口を2021年4月より設置(面接等の選考あり)。
●東急グループ「働き方改革」への取り組み
・当社が幹事となり、東急グループ約50社で、現状の働き方に関する課題の共有や、各社取り組み事例の紹介を行う「人事労務情報交換会」を年2回開催。
3 休み方改善に関する取組内容
半休・時間休・保存年次有給休暇・特別休暇の活用による休暇取得促進
・年次休暇を0.5日分として取得する半日休暇制度、年次休暇のうち年間5日分(40時間分)を限度に、任意の1時間を1単位として取得する時間休暇制度を実施している。
・有効期間経過後の年次有給休暇は保存年次休暇として積み立てられるようになっており、育児や介護、自己研鑽、ボランティア活動への参加など様々な用途で使用可能。
・その他、勤続3年以上の満35・45・55歳の社員に、休日を除き連続5日(有給)のライフプラン休暇(特別休暇)を付与している。更に、傷痍・疾病・看護等に留まらず、ボランティア活動・子の行事参加などにも保存年次休暇(有効期間経過後の年次休暇、最大50日積立)を使用できる。
休暇取得促進施策として、「早トリ5」をスタート
・個人の取得ニーズを踏まえた計画的な年休取得を促すため、2023年度より「早トリ5」(”早めに計画してとりましょう年休5日”の略)を導入。年休取得予定日を予め5日計画し、予定表で周囲への「見える化」を図ることで、従業員の自律的な計画年休を促し、組織内の意識改革および全社で年休を取得しやすい環境整備を行っている。
4 働き方・休み方改善に関する課題・工夫
・労使協議やアンケートを通じて従業員ニーズ(ファクト)を把握した上で施策に反映することに注力している。
・また、制度をつくって終わりではなく、活用されるために風土・マインド醸成に注力している(情報発信・人事の後押し施策など)。
取組の成果・展望
1 取組の成果
労働時間の削減
・フレックスタイム制・テレワーク制度導入に伴う働き方の柔軟化、そして制度導入過程において全社的に促進された業務の大幅な見直し・デジタル化等により、業務効率・生産性が向上し、労働時間削減につながっている。
・ただし、在宅勤務だと「帰宅」がないため、残業に対するハードルが低くなり、残業増加の懸念もある。PCログを活用した客観的な労働時間管理等で一定カバーしている。
【所定外労働時間の推移】
<2019年度>(月平均)23.9時間
<2022年度>(月平均)16.1時間
※所定外労働時間の長さの改善理由
・働き方改革施策の成果(テレワーク制度、フルフレックス制度、部門別業務効率化PDCA施策、等)
年次有給休暇の取得促進
・年休5日以上取得に向けた各施策・発信の強化により、休む文化や休みやすい風土ができてきている。
・一方、フレックスタイム制(コアタイムなし、中抜け可能)やテレワーク制度の活用により、特に半休・時間休のニーズ・取得率が減少している。
業務効率・生産性
・出社とテレワークを組み合わせる働き方「ベストハイブリッド」方針や、フレックスによる業務に合わせた労働時間の意識向上(ただ定時内いればいいわけではない)により、業務のメリハリができ仕事の効率が向上した。
・ただし、テレワークでのコミュニケーション不足、状況把握難による生産性低下のリスクという課題もみられる。
従業員のワーク・ライフ・バランス、モチベーション
・柔軟に時間および場所を選択して仕事ができるため、移動・準備時間の削減を含め、プライベートの時間の確保に有効である。
多様な人材の活躍
・テレワーク制度、フレックスタイム制度およびY職責制度(短時間短日数)等の導入により、仕事と私的事情の両立をしやすい環境となり、多様な私的事情を抱える社員が勤務継続しやすくなっている。(子育て・共働き世代、介護、治療、復職直後等)。
・一方、私的事情が少ない社員に出社や仕事量が偏ってしまうなど、柔軟な働き方制度活用の社員間格差の懸念もある。
採用・人材の定着
・採用競争力、多様で優秀な人材確保の点で良い影響となっている。
その他
・複業(業務外活動)ガイドラインは、国の指針も踏まえ展開しているが、業務内・外での人生の自己実現を後押しする施策として好評である。当社を退職せずとも、やりたいことができる環境がある。
2 今後の展望
・休暇取得促進施策「早トリ5」の浸透に向けて、継続的な社内周知を実施。