堅田電機株式会社

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

堅田電機株式会社
企業名
堅田電機株式会社
PDF
URL
所在地
滋賀県大津市
社員数
228人
(時点:2023年8月)
業種
製造業
事業内容
プリント基板やスイッチング電源などの開発・設計・部材調達・品質保証・配送

働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い

働き方改革に取り組み始めたのは2008年ごろからである。当時は残業が多く、従業員の健康管理の観点から一斉定時退社制度を設けた。家族や友人と過ごす時間や、心のケア・リフレッシュのための時間をもってほしいという趣旨から取組を開始した。

主な取組内容

1 働き方・休み方改善(特に休暇取得促進)に関する方針・推進体制

・業務効率の改善向上を通して、早期終業を促進し、早期終業に伴って見出した時間を家族との余暇ふれあい、趣味、スポーツに費やす等、社員のQOL(生活の質)向上をめざす。

2 働き方改善に関する取組内容

トップメッセージ
・全社員の職業生活と家庭生活の両立を実現するために、オン・オフの切り替えを明確にし、働きがいのある職場環境の形成を目指す。

全社一斉定時退社日(ノー残業デー)の徹底
・導入当初は、毎週水曜日及び金曜日の週2回を一斉定時退社日としていたが、制度が浸透せず、残業する社員が多く見られた。また「客先や取引先が来ているのに帰れない」「時間が来たら仕事を中断して帰るのか」「どうせ100%なんてできるわけがない」などと思っていた。そのため、社員の意識を変え、定時退社を徹底できるよう、次のような取組を行った。
①一斉定時退社日の変更
・当初は毎週水曜日及び金曜日の週2回を定時退社日としていたが、上記の通りなかなか取組が浸透しなかったことから、毎週水曜日の1回に変更し、その水曜日には必ず全社員が定時に退社できるようにすることを目標とした。
②業務効率の改善
・定時退社率100%を達成するため、2014年度の1年間、毎月部長会議において、「業務効率の改善と定時退社の促進」をテーマに取組を行った。取組内容は次のとおり。
・定時退社ができない原因を突き止めるため、①業務の棚卸しの実施、②特定の日に集中する負荷の調整や平準化、③業務量の個人間の差の解消や特定社員に集中している業務負荷のバランスの是正、④日常業務の見直し(整理)、⑤メール作成等に関するルール決め(件名で内容がわかるようにして重要度を判別できるようにすることや送信先の限定等)等を行った。
・特段の研修は行わなかったが、部長の意識を部長会議で共有し、各部長から部員・課員に対し、取組内容を説明し、社員から課題等を吸い上げ、部長会議で共有し、対応を決めるという問題解決サイクルを構築し、それを繰り返すことにより、全社員の意識改革や一斉定時退社への理解を深めた。
③一斉定時退社日の周知
・客先や取引先に対し、「毎週水曜日を一斉定時退社日とする」旨の案内文を出し毎週水曜日の一斉定時退社への理解を得た。
・こうした取組を通じて、2023年度には1年間を通じて毎週水曜日の定時退社率100%を実現することができた。

在宅勤務
・コロナ禍以前より、大多数の従業員へノートPCを貸与していたが、外部から社内ネットワークへ接続するためのVPNのライセンスは数が限られていたため、ライセンスの数を大幅に増やした。また、全社的に固定電話を廃止し、アプリで外線電話対応を可能にしたことにより、自宅であってもネット環境があればオフィスと同様の環境で業務が行えるようにした。
・在宅勤務の事由は特に限定していない。例えば、大雪が予想されており電車の遅延が考えられる際には、前日に在宅勤務の申請を行うなど、柔軟な利用が可能である。
・コロナ禍においては在宅勤務利用率が30~50%程度であったが、現在は出社率が高くなっている。

3 休み方改善に関する取組内容

年次有給休暇の取得促進
①年次有給休暇の計画的付与制度の活用
・2006年より導入。当初は3日のみだったが、2021年度からは年5日付与している。子どもの休みにより多く一緒に過ごせるよう、夏季休暇等に年次有給休暇と組み合わせた長期休暇の取得を促進している。
・入社直後の従業員も休暇を取りやすいよう、年次有給休暇のうち7日分は入社時に付与することとしている。
・導入以前は年次有給休暇の取得に人によるばらつきもあったが、計画的付与の付与日数を5日としたことで、全社員の取得日数の底上げにつながった。年次有給休暇の年5日取得義務の進捗管理も容易になっている。
・2022年度の年次有給休暇取得率は9割弱であり、2013年度に7割弱だった頃より大きく伸びている。また、長期休暇の実現が社員の生活の質の向上にもつながっている。

②時間単位の年次有給休暇制度の導入
・個人の事情に即した年次有給休暇の取得を可能とし、働きやすい環境づくりを促進するために、2012年より導入。職場の近くに住んでいる従業員から、子どもの学校の行事などの際に短時間のみ休暇をとりたいという声があり、人事部からの提案で導入した。
・付与日数は年3日を上限としている。
・従業員個人が年次有給休暇の残数を管理しづらくなることが懸念されたが、毎年、年次有給休暇の付与時に日数管理ができる紙のカードを渡し、管理しやすくした。また、現在は勤怠管理システムを導入したため、管理はさらに容易になった。導入により、年次有給休暇の取得率が向上すると共に、ワーク・ライフ・バランスの向上にもつながった。

健康アクション宣言
・社員一人ひとりが心身ともに健康で活き活きと働ける職場環境の整備に組織全体で取り組むことを宣言した(2017年5月1日宣言)。
・具体的には、①健康づくり担当者の設置、②健康に対する従業員への教育機会の提供、③定時退社順守率100%の継続、④保健指導及び特定保健指導の機会提供、⑤メンタルヘルス不調者への支援体制の整備等に取り組む。

アンケートの実施
・全社一斉定時退社日の浸透により、見出した時間をどの様に過ごしているかのアンケートを全社員に実施している。その結果を基に、今後もQOL(生活の質)の更なる向上に向けて、引き続き取組を推進する。
・全社員へのアンケート結果:
→夕食を家族と一緒に食べることができた。
→子どもとお風呂に入ることができた。
→読書等自己啓発の時間が増えた。
→スポーツや趣味の時間に使えた。
→今日あった出来事を家族とゆっくり話ができた。
→早く帰宅できるので、家事片づけがはかどった。

4 働き方・休み方改善に関する課題・工夫

・社内連絡アプリが複数あり、人によっては見ていないものもあったが、全社的に連絡アプリの一元化を図ることにより、コミュニケーションの促進に繋がった。
・また、在宅勤務下では社用スマホを持っている者しか外線通話ができなかったが、上記アプリでオフィスと同様に外線電話をかけられるようにした。

取組の成果・展望

1 取組の成果

労働時間の削減
・2023年度には1年間を通じて毎週水曜日の定時退社率100%を実現することができた。

年次有給休暇の取得促進
・年次有給休暇の計画的付与日数を3日から5日へ増やしたことにより、長期休暇の日数が増え、ワーク・ライフ・バランスの向上に繋がっている。

【年次有給休暇取得率の推移】
<2013年度>年間平均取得率:66.9%
<2022年度>年間平均取得率:85.47%

業務効率・生産性
・DX化を進めたことにより、社外でも行える業務が増え、業務効率の向上、業務遅滞の減少につながった。
・ただし、新システムであるため、社員が慣れるまでは大変である。特に、PCに慣れていない人にとってはハードルが高い。

従業員のワーク・ライフ・バランス、モチベーション
・上述の定時退社の取組についてのアンケート結果をみると、90%以上の従業員が自己啓発・健康保持促進、QOLの向上につながったと回答した。

多様な人材の活躍
・ライフステージに合わせて柔軟に働き続けられることは企業としてもPRになり、人材の確保につながっている。

採用・人材の定着
・ライフステージに合わせて就業継続可能なことや、7年連続で健康経営優良法人に認定されていることは人材確保につながっている。

2 今後の展望

・残業削減や年次有給休暇の取得には引き続き取り組んでいく。健康と心身のケアの観点から、職場だけでなく社外でも充実した生活が送れるよう、今後も継続していきたい。
・男性の育休について実績はあるが、取得人数はまだまだ少ないため、社内周知とともに取得しやすい雰囲気づくりに努めていきたい。

事例を評価する