社会福祉法人青谷学園

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

社会福祉法人青谷学園
企業名
社会福祉法人青谷学園
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所在地
京都府
社員数
102人
(時点:2023年4月1日)
業種
医療、福祉
事業内容
障害者支援施設、障害福祉サービス事業(特定相談支援事業含む)の運営

働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い

少子化による生産年齢人口の減少、経済情勢や他の業種の動向などにより、福祉人材の確保等は、ますます困難な状況となっている。障害者支援施設を運営している青谷学園は、2017年に「全ての職員が健康で長く働き続けられる職場環境づくりに取り組む」という健康宣言を公表し、女性職員の出産休業や育児休業の取得が自然なこととなり、次の段階として、男性職員も育児に積極的に関わることのできる環境を整えようという思いから、「イクメンのすすめ」を目標に掲げて、さらなる職場環境の改善に取り組んでいる。子育てサポート企業としての「くるみんマーク」を2011年に取得するなど、育休を取りやすい風土づくりに取り組んできているが、2017年から働き方改革を新たに始めた。

主な取組内容

ワークライフバランスへの取組

2017年から始めた働き方改革では、最初に週休3日制を導入した。1日10時間労働とすることで給与は維持され、同時に1日の労働時間が延びたことから定時退勤(終業時刻後15分以内に退社)を奨励し、残業を減らす取組も行い、2020年度の月平均残業時間は15分となった。
週休3日制を導入して年間労働時間を1920時間とし、年間休日は122日から173日になった。2022年度における正規職員の年次有給休暇の取得率は90.6%であり、年間休日と合わせると1年の半分以上は休日となっている。1年の半分が休日となることで、副業を認め、副業先の制限もなく、多くの職員が休日を有効に使って副業や資格取得などで自己研鑽に励んでいる。
中学校を卒業するまでの子を養育している職員は、夜勤なしの1日8時間・週40時間労働、週休2日制(土日休み)を選択できることとしている。なお、制度導入当初は高校生までの子を養育する職員を対象としていたが、子育て中の職員が増えたことで、週休2日制を選択する者が増えてきたため、年齢を中学生までに制限することにした。
また、2019年度から定時退勤を奨励しており、管理職も含めて残業はほとんどない。年次有給休暇は時間単位で取得することができ、状況に応じた休み方ができるようになっている。働き方改革で生じた休日は、家族との時間を大切にしたり、自己研鑽に充てたり、使い方は様々である。

子育て支援施策

2019年度から管理職のイクボスによる育児休業取得支援を開始した。また、育児休業を取った場合の賞与の計算方法を見直し、1か月間休んでも減額は生じないようにした。これらにより、男性職員の育児休業も取りやすい環境が整った。
また、台風や大雨で急に学校や保育所が休みになった場合には、子供を連れて出勤しても良いことにしており、新型コロナウイルスによる一斉休校の際には、休日の職員がボランティアで子どもの勉強や遊びに付き合ってくれたりした。このようなことで、予定通りの仕事ができると職員には大変好評で、法人としても代替え職員を手配しなくてもよくなった。
子の看護休暇の日数は法定通りであるが、そのうち1日の所定労働時間分は有給休暇としており、時間単位で取得することもできるので、仕事への影響を最小限にした看護ができるようになっている。

健康経営への取組

職員の健康保持・増進に積極的に取り組んでおり、毎年継続的に全職員が「いきいき宣言」をし、生活の充実と健康維持の意識づけに取り組んでいる。
7年程前に、腰痛の労災が立て続けに発生したことを契機に、衛生委員会で対策を検討し、2015年4月に腰痛予防対策チームを結成した。対策チームは、まず始業時に腰痛予防体操をすることを始めた。また、腰痛を起こさない介護方法の実技講習会も開催した。そして、職員には腰痛ベルトを配布し、着用を義務付けた。腰痛健康診断は年2回実施し、少しでも不調がある者は産業医と面談することとしている。
最近では、治療と仕事の両立支援に重点的に取り組み、2020年6月に「がん対策推進企業アクション推進パートナー企業」に登録した。がん治療ための特別休暇を新設したり、小冊子「がん検診のススメ」の配布と朗読放送、がん対策推進本部制作のYouTube 動画の視聴、女性の子宮頸がん検診と乳がん検診の費用の法人負担化、乳がん触診モデルを使った触診体験をしたりしている。2人に1人はがんになる時代であり、がんについて正しく知り、がん検診を受けることが何よりも大切である。2021年7月には、Working RIBBON 宣言をし、就労世代の女性に多い乳がん、子宮頸がん対策を重点に予防と早期発見、就労支援に取り組んでいる。治療と仕事の両立支援に全力を挙げて取り組み、がんになっても働き続けられる職場環境とすることを目指している。

ICTを活用した業務の効率化

インカム(インターコミュニケーションシステム)を使用した職員間のコミュニケーション、業務関係情報の掲示や連絡などをSNS により職員間で情報共有、様々な業務データや利用者情報・介護記録情報等のクラウド化などで、ICT による生産性の向上と効率化も進めている。

取組の成果・展望

取組の成果

週休3日制の導入により1日あたり10時間勤務となったことで、それ以上労働時間が長くならないよう、定時退社を強く推進した。これにより、時間外労働の削減につながり、定時出社・退勤が当たり前となっている。さらなる業務効率・生産性アップのために、DX化の推進にも取り組んでいる。
年次有給休暇取得率は、2021年度に正規職員で86.5%だったところ、2022年度には90.6%へ上昇した。年次有給休暇については、1日の勤務時間が10時間となったことで、8時間の時に比べて年間の取得時間が最大で2時間×20日=40時間増加した。その一方、取得時間が増えたため、人件費の増大にもなっている。
各職員は、週休3日制の導入により増えた休日を活かして自己研鑽・資格取得に取り組んでおり、法人としても支援している。また、子育て中の職員からは、子どもと一緒にいる時間が増え、行事にも参加しやすくなったと好評である。がん治療など、病気の療養においても、休日が増えたことで治療しやすくなったという声もある。副業・兼業をしている職員も多い。
採用・人材の定着に関しては、週休3日制の導入後、求人応募が増加した。また、正規職員の離職率は、直近3年平均で23.4%となっている。今後はさらに離職防止のための対策を実施し、人材の定着を図る。
なお、自己研鑽・資格取得に関しては、職員のリスキリングを目標に掲げ、主に業務に関連した資格取得を支援している。資格取得でお祝い金1万円~10万円支給したり、福祉士資格手当や職種によって調理師手当や簿記・FP資格手当を支給したり、法人が研修費と交通費を負担し、取得支援するものもある。
ただし、法人から指定した資格だけでなく、職員が自主的に取得した資格であっても、仕事に生かせるものであれば、支援対象として認められる。またFPに関しては、職員皆のマネーリテラシー向上のため、合格すれば全正規職員にお祝い金が支給される。介護福祉士資格のお祝い金+資格手当は非正規職員にも支援している。
職員の健康保持・増進を経営的な視点でとらえて積極的に取り組み、2020年から2022年の3か年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定を受けた。2023年は職員数が100名未満であったため、健康経営優良法人2023中小規模法人部門で14012法人の上位500社として「ブライト500」の認定を受けた。また、「きょうと健康づくり実践企業」の認証を受けており、2019年11月には特別賞を受賞、さらに2020年6月には最優秀賞を受賞した。健康経営の実践で、2012年に建物内禁煙を開始してから、職員が徐々に「禁煙宣言」を職員休憩室に張り出すことを通して、2018年には全職員の禁煙に成功している。

今後の展望

2023年4月より、法人全体で週休3日制を導入する。また、職員の生活設計の多様化への対応と、人事の活性化を図るために選択定年制度を導入する。同時に役職定年の導入により、組織の若返りを図り、新しい感性を取り入れていく。
DEI(Diversity,Equity&Inclusion)を推進することを宣言し、多様な人材が活躍できる環境を目指している。
また、今後男性職員の育児休業取得率を上げていくためには、サポートする側の職員に負担が大きくかからないようにする必要がある。2021年3月に定めた中長期計画では、日頃から3~4人のチームで業務を担当する方針を打ち出し、週休3日制と年次有給休暇を組み合わせて、1か月の休暇を取得するといった活用方法もさらに周知してきている。
安定した福祉サービスの継続と地域共生社会の実現という社会福祉法人の使命は、SDGsの理念に共通している。そして、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」の取組を続けるためには、その源泉となる人材が不可欠である。職員が長く元気で活き活きと働き続けられることは、職員にとっての幸福であり、それが施設の利用者に笑顔で接することにつながるので、職員のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を上げることでエンゲージメントをさらに高め、共に成長していくことを目指している。また、今後も「健康 de 笑顔 大作戦!」をスローガンに掲げ、健康で笑顔あふれる職場を目指している。

(R5.4)

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