サッポロビール株式会社

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

サッポロビール株式会社
企業名
サッポロビール株式会社
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所在地
東京都
社員数
2,496名
(時点:2022年8月末、直接雇用の従業員(正社員、嘱託社員、準社員、継続雇用社員等))
業種
製造業

働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、2020年3月上旬頃から、物流部門及びライン部門等出社が必須となる者を除く全社員を原則在宅勤務とした。オフィスに出社する際は、事前に所属長の了承を得ることを義務付けた。
同年4月の緊急事態宣言下では、製造部門以外は出社禁止とし、原則在宅勤務を徹底(~5月31日まで)。一方、工場勤務で出社を余儀なくされた社員に対しては、特別手当を支給した。さらに、6月から「新しい生活様式」を踏まえた勤務ルールを策定・実施。その後は各部署や勤務フロア毎に出勤者の上限を定めて対応してきたが、2022年5月に制限を解除した。

<新型コロナウイルス感染拡大への対応状況>
・2020年3~5月
事業継続上出勤が必要とされる業務を除き原則在宅勤務
・2020年6~7月
「新しい生活様式」を踏まえ、部署毎に出勤者50 %上限
・2020年7月~2021年9月
「新しい生活様式」を踏まえ、部署毎に出勤者30 %上限
・2021年10~11月
「新しい生活様式」を踏まえ、勤務フロア毎に出勤者30 %上限
・2021年12月
「新しい生活様式」を踏まえ、勤務フロア毎に出勤者50 %上限
・2022年~
「新しい生活様式」を踏まえた勤務ルール。

都道府県別に判断される新型コロナ感染状況のレベル区分に対応し、
勤務フロア毎に出勤者上限設定。
1/7~1/19:50%上限
1/20~3/21:30%上限
3/22~5/26:50%上限
5/27~:制限解除

主な取組内容

テレワークの実施状況

2021年8~10月における、出社制限の状況下でのテレワーク実施状況をみると(社内アンケート調査結果)、ほぼ毎日~週1回以上実施している割合が約60%、月に数日実施の割合が約10%、ほとんど~全く実施していない割合が約30%であった。

<テレワークの実施状況(2021年8~10月)>
ほぼ毎日実施(18%)
週の半分以上実施(24%)
週に1日以上実施(17%)
月に数日実施(11%)
これまでの期間で数日である(15%)
全く実施していない(16%)

社内アンケート結果からは、出社制限の環境下で、テレワーク中心の勤務となったことによって、「出社しないとできないと思っていたことが、テレワークでできることに気づいた」「業務に集中できる」などのメリットが感じられた一方、「上司や同僚とのコミュニケーションが取りづらい」「周囲のメンバーとの一体感が感じにくい」などのデメリットや課題も浮き彫りとなった。

<テレワークのメリット・デメリット(社内アンケートより)>
テレワークを実施して感じたメリット
・出社しないとできないと思っていたことが、テレワークでできることに気づいた。
・業務に集中できる
・自分の働き方を見直すきっかけになった
・プライベートの時間が増えた
・時間管理がしやすくなった
・会議や打合せが減った
テレワークを実施して感じたデメリット
・上司や同僚とのコミュニケーションが取りづらい
・周囲のメンバーとの一体感が感じにくい
・他部署との何気ないコミュニケーションからの学びの機会がなくなった
・情報収集が難しい
・チームの協働が難しくなった
・若手の育成が困難である

<出社制限の状況下で生じた課題(社内アンケートより)>
・部署をまたいだコミュニケーションロスによるミスやイノベーション機会の喪失
・新入社員をはじめとする若手の育成の機会ロス
・異動者(転入者)がチームワークを発揮するまでに時間がかかる
・他部門の仕事が見えにくくなり将来のキャリアビジョンの幅も狭くなる
・社外と接する機会が減ったことで、情報の質・量ともに少なくなり、情報感度の低下や、外部環境のタイムリーな把握が困難

“対面・対話”を重視した働き方“Sapporo Workstyle”の策定

出社制限の状況下で生じた課題の解決を図るとともに、新型コロナウイルスの感染拡大状況下であっても、2021年より開始した働き方改革の新たな取り組みである、「働き方カイタク」が目指す従業員のありたい姿(自律、チームワーク、ワークライフバランス)を実現し、また会社の経営目標を達成するための新たな働き方の仕組みについて、働き方改革推進窓口である人事部が中心となって検討を進めることとした。
特に、テレワーク実施状況に関する社内アンケート調査結果を踏まえて、テレワークのメリットを活かしつつ、逆にデメリットを解消する手段として出社勤務をうまく組み合わせることで、より成果創出につながる働き方を検討した。検討の一環として、2021年11月~2022年1月の約3か月間、本社部門に限定して出社勤務とテレワーク勤務を組み合わせた「ハイブリッド勤務」の試行を行った。試行期間は出社頻度を高める観点から「週3日以上出社」とし、その結果も参考にした上で、2022年7月に、「withコロナの“対面・対話”を重視した働き方“Sapporo Workstyle”」を導入・策定した。

<試行期間の出社頻度(「週3日以上」としたこと)への意見(社内アンケートより)>
回答内容
・多い(61%)
・少ない(6%)
・ちょうどよい(19%)
・一律に決めるべきではない(14%)

主な意見
「多い」回答者
・コミュニケーションを取らない日も出てきた。コミュニケーションの質を高めるためには出社日が限定的な方が良い。
・出社必須は週1日で十分だと思う。他の4日は自身の状況にあわせて出社/テレワークを選択。コミュニケーションの問題は出社すればよいというものではなく、逆にテレワーク環境でも可能。
・自分が必要だと感じた時は出社をするため、必須出社日は多くなくて良い。
「少ない」回答者
・テレワークの効果は認めるものの、直接のコミュニケーションが最も早いし、伝わると考えるから。
・コミュニケーション量、質が出社した時の方が高いと改めて感じた。ただのタスクをこなすだけであればテレワークでも良いが、変革や価値創造の業務をするには、気軽なコミュニケーション含めて場とメンバーが必要と感じる。
「ちょうどよい」回答者
・週2日以下では、「部内の人と偶然出会う」「他部署の人と偶然出会う」機会が少なく、それによる化学変化も期待しにくい。
・他部署等とのコミュニケーションを図るには、これ位の適度な頻度での出社が必要と感じるため。
・出社でする仕事、テレワークでできる仕事の組み立てがしやすいと思う。
「一律に決めるべきではない」回答者
・出社orテレワークは手段であり、柔軟に手段を選択できることこそが働き方カイタク実現にとって重要である。
・時期や個人によって業務負荷や業務内容が異なり、一律の週○日ルール設定で逆に不効率になる面がある。

“Sapporo Workstyle”が目指す姿としては、従業員一人ひとりが出社でもテレワークでも力を発揮できる働き方で、「1) 働き方カイタクが目指す姿(自律、チームワーク、ワークライフバランス)の実現」、「2)組織及び個人の生産性とエンゲージメントの向上」、「3) 1)と 2) を通じての会社の経営目標の達成」の実現を掲げた。
また、運用に際しては、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策分科会が策定した「新型コロナ感染状況のレベル区分」毎に、当社で策定した勤務ルールをベースルールとすることとした。

(参考)レベル区分・勤務ルール
・レベル4(避けたい) 内勤原則、出社禁止
・レベル3(対策強化) 内勤原則、出社禁止
・レベル2(警戒強化) まん防発令有:30%以内、まん防発令無:制限解除
・レベル1(維持すべき) 制限解除
・レベル0(感染者無し) 制限解除

テレワーク中心の勤務による課題解消の具体的取組

“Sapporo Workstyle”では、全社共通ルールとして、早期育成の観点から、新入社員は最低 3か月以上の出社を基本とし、また異動後の社員(転入者)及びキャリア入社者に対しては、1か月以上の出社を基本として所属部全体で成長を支援することを定めた。オンライン等を利用する場合は、“対面・対話”を重視する点からカメラオンを基本とすること、労働時間管理ルール他、労務管理を徹底することとしている。
さらに、役職者は“対面・対話”の中心的役割を果たし、迅速な意思決定、相談しやすさ、部署間の連携等の促進を図るため出社をメインとしつつ、役職者も育児、介護等のワークライフバランスの観点からテレワークも適宜活用することとした。
そのほか、出社、テレワークに関わらず、働く上での情報量、コミュニケーション量、評価、サポート体制等をフェア(公平)に保ち、心理的安全性を高めることを意識している。
全社ルールを踏まえて今後の働き方を進めて行くにあたっては、各事業場のミッションや業務特性、メンバー構成等を 勘案して、必要に応じて事業場独自のルールを策定する。“対面・対話”=出社ではなく、「出社とテレワークをうまく使い分けたい」ということであり、出社とテレワークの働き方をルール化する必要がある場合は、事業場ルールにて策定することとしている。なお、2022年7~12月の本社部門の出社率は、平均70%程度となっている。

<テレワークに関する取組の変遷>
2020年度
・事業継続上、出勤が必要とされる業務を除き原則在宅勤務。
・「新しい生活様式」を踏まえ、部署毎に出勤者上限を設定(2021年度も継続)。
2021年度
・本社部門に限定して2021年11月~2022年1月の約3か月間、出社とテレワークを組み合わせた「ハイブリッド勤務」を試行実施。
2022年度
・2022年7月よりwith コロナの“対面・対話”を重視した働き方“Sapporo Workstyle”導入。新入社員は3か月以上、異動後の社員等は1か月以上、役職者は原則出社の方針を示す。
出社率
70%程度(2022年7~12月平均 本社部門のみ)

スーパーフレックス制度等の柔軟な働き方の推進、出社対応が必要な業務の見直し

コロナ禍で新たな働き方を推進するにあたっては、それ以前から推進してきた働き方改革の取組が活かされている。具体的には、2017年から2020年にかけて取り組んだ「働き方改革2020」において、「仕事の生産性向上」「生活の向上」「心身の健康」を目的に据えて、より柔軟で生産性の高い働き方を可能にする改革を進めていた。
社員が働きやすい環境の整備として、テレワーク制度、スーパーフレックス制度、勤務間インターバル、時間有休制度等を導入し、柔軟な働き方を可能としていたり、これらの制度を活用可能とするため、モバイルPC・モバイルステック、携帯電話等の機器を多くの社員に支給していた。
また、出社制限が長期に亘ったため、そうした状況下でも業務遂行に支障が生じないよう出社して対応する必要のある業務の見直し(捺印業務の簡素化、会計伝票・請求書のペーパーレス化・電子化 、会議・研修のリモート実施)等を行ったことも、新たな働き方の推進に寄与した。

<柔軟な働き方に関する制度・運用等>
・テレワーク制度(2017年10月導入)
 2013年に導入された在宅勤務制度を改定。
場所、回数の制限撤廃、申請手続きも簡略化(当日OK)
・スーパーフレックス制度(2017年12月導入)
 2013年に導入された制度を改定。
コアタイムの設定無し。フレキシブルタイムは5時~22時とする。
・時間有休制度(2017年12月導入)
 1時間単位での有給休暇の取得を可とする。
ただし、最大使用回数は年間40 時間(5日間)までとする。
・勤務間インターバル(2018年4月導入)
 正式な制度ではなく、勤務ルールとして運用。
前日の終業時間から翌日の始業時間まで10 時間以上空けること。

取組の成果・展望

“Sapporo Workstyle”の導入によって、社内アンケート等では、上司や同僚とのコミュニケーションの取りずらさ、周囲のメンバーとの一体感が感じにくいこと、他部署との何気ないコミュニケーションからの学びの機会がなくなったこと、情報収集やチームの協働の難しさなどについて、一定程度、解消できたという声が挙げられている。
一方で、部署をまたいだコミュニケーションロスによるミスやイノベーション機会の喪失、新入社員をはじめとする若手の育成の機会ロス、異動者(転入者)がチームワークを発揮するまでに時間がかかること、他部門の仕事が見えにくくなり将来のキャリアビジョンの幅も狭くなること、社外と接する機会が減ったことによる情報感度の低下や外部環境のタイムリーな把握ができないといった課題に対しては、十分な対応ができているわけではないと感じている。
今後はWithコロナの新たな働き方として、“ Sapporo Workstyle ”の浸透・定着を図っていくとともに、定期的にアンケート調査等により状況確認を行い、その結果を踏まえて必要な見直しや、Sapporo Workstyle ”のスパイラルアップに取り組んでいきたいと考えている。

(R5.3)

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