オイシックス・ラ・大地株式会社

事例カテゴリ

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  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

オイシックス・ラ・大地株式会社
企業名
オイシックス・ラ・大地株式会社
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所在地
東京都
社員数
1,927名
(2022年3月31日時点)
業種
卸売業、小売業

働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い

1.背景・理由

・社員の多くが子育て世代であり、顧客にも子育て世代が多い。食品宅配事業を展開しているため、顧客の食生活を支えるために事業継続する必要性は高く、2020年4月~5月の緊急事態宣言中でも子どもがいる社員が安心して勤務できる状況を整える必要があった。
・各種の制度は社員の目標達成をサポートし、会社が掲げるものに近づくための手段であると考えており、新たなルールや制度を導入するときには導入の目的を説明して、社員の理解を促すよう留意している。
・人事制度はともすれば手段が目的化しがちだが、常にこのことを頭において検討しており、新型コロナウイルスが感染拡大している中でも、社員が安心して働き目標を達成できるようにするにはどのようなサポートが必要かという視点で新しい働き方の制度を検討した。

2.新しい働き方により目指すこと

・社員を働いた時間で評価するのではなく、アウトプットや設定した目標の達成度に基づいて評価するのが重要と考えている。新型コロナウイルスが感染拡大している中でも、社員が安心して働き目標を達成できるようにするにはどのようなサポートが必要かという視点で新しい働き方の制度を検討し、円滑に導入することができた。
・これらの制度はあくまで当社に合った制度であったということであり、それぞれの会社の目指すことや大事にしているもの等によってどのような制度が適しているかは異なるものだと考えている。
・当社は社会貢献意欲が高い人が多いこともあり、社員が働きがいを持って働けることは非常に重要だと考えている。社員が働きやすい環境を整えたうえで、なおかつ働きがいを感じられる会社にすることで、社員の社外の社会貢献等での活躍につなげていきたいという経営層の思いもある。この点からも、社員が働きやすい環境を整備することは重要だと考えている。

主な取組内容

1.新しい働き方として新規に開始した取組

・新型コロナウイルス感染症対策として、以下の4つの制度を開始した。
・制度を開始するにあたって、代表からほぼ毎週ビデオメッセージを通して制度の目的を伝え、社員の理解を促していた。
・各制度の概要および運用方法は以下の通りである。

【①お子さまお預けサポート】(一斉休校・休園期間中のみ実施。現在は学校が休校になっていないため制度を休止している。)
・実家や知人宅等に子どもを預けて出勤する場合、交通費を会社が負担した。さらに、実家等、子どもの預け先が遠距離の場合は、サテライトオフィスの利用を認めた。
・また、会社に子どもを連れてくることも、緊急対応として容認した。
・一斉休校、休園に対応するために実施した取組であり、2020年4月から5月頃まで継続して実施した。2020年11月時点では、一斉休校、休園が行われていないため、実施していない。ニューノーマルへの働き方の移行期間において、リモートワークがしづらい業務(例:FAX送受信する業務、電話対応、請求書や領収書等紙を使う業務等)も複数あったが、その後大幅に改善され、ほとんどの業務がリモートワーク可能になったことや、まん延防止等重点措置適用期間や休校・休園等がある中、子どもを連れての出勤は控えたいという社員が大半であったことなどから、実施を取りやめることとした。

【②スーパー時差通勤】
・新型コロナウイルス流行以前より、午前11時までの時差通勤が制度化されており、上司や勤怠管理上の申請・承認手続きをしたうえで利用することが認められていた。育児中の社員も多いことから、以前から時差通勤の利用率は高かった。
・新型コロナウイルスの流行を機に、午前11時までの時差通勤では混雑した電車を回避できない等、社員からの要望があったため、従来から存在した時差通勤の制度を柔軟化することとした。具体的には、上司の承認を得られれば、何時に出社してもよいこととした。
・正社員、パート社員いずれも利用できる。
・出勤状況は、チャットツールやスケジューラーで確認し、適宜調整するようにしている。

【③細切れリモートワーク】
・新型コロナウイルス流行以前より、リモートワークを行うことができた。制度化していたわけではなく、必要に応じて、柔軟に対応するという形態だった。元々リモートワークをしやすい環境、職場の雰囲気があった。
・新型コロナウイルスの流行を機に、従来のリモートワークを柔軟化し、1日の中で柔軟に中抜け休憩を取得できるようにした。
・正社員、パート社員いずれも利用できる。
・スーパー時差通勤と組み合わせ、午前中は家で働き、午後は出社して働くこともできるようになった。これによって、子どもの送り迎え等にも対応しつつ、柔軟に勤務することも可能になり、より安心して働けるようになった。
・社員の勤務時間管理は、基本的に自己申告ベースとしつつ、日報や成果物で業務内容を確認し、マネジャーが本人とコミュニケーションをとりながら、それぞれの勤務時間を把握するようにしている。
・リモートワークは2020年11月時点でも継続して推奨しており、出社率を5割以下に抑える目標を掲げ、概ね出社率3割~4割弱で推移している。週2、3日ぐらい出社して、残りをリモートワークしているという社員が多く、定着しつつある。
※2021年2月8日時点では、緊急事態宣言の発令を受け、出社率を2割に抑えている。

【④オフィスと自宅別々時短】
・オフィスに出社する時は子どものお迎えの時間に間に合うように帰宅し、通勤時間を省ける自宅ではより長く働くことができるよう、それぞれにおいて時短時間を決める働き方を可能としている。
例)オフィス出社時は6時間勤務、自宅でのリモートワーク時は7時間勤務等、別々に設定。

2.新しい働き方を掲げる以前の働き方・休み方や実施していた取組

・新型コロナウイルス感染症が広まる前までに取り組んでいたこととして、年次有給休暇の取得を促すため、2019年度より、期首にアナウンスを行い、上司・部下の間で調整するように促していた。
・新しい働き方において、これまでの取組が活かされている点として、上記の通り、時差通勤やリモートワークは、新型コロナウイルス流行時以前から上司や人事の承認のうえで実施することが可能であり、利用しやすい職場の雰囲気があった。

3.新しい働き方を推進する上で課題だったこと・工夫したこと

・既存の時差通勤やリモートワークを柔軟化する取組であるため、とりわけ以前から時差通勤やリモートワークを積極活用していた部署では、制度が開始されてから早い段階で新しい働き方に慣れることができた。
・リモートワークに関して、自宅の就業環境をいかに整備するかは課題となっている。パートナーや子どもが自宅にいるときに勤務するときに集中しづらいといった課題や、通信環境の課題等があった。通信環境について、機器を貸し出しする等の支援を行った。
・また、リモートワークをしている社員とそうでない社員の間でのコミュニケーションについて、特に新人育成において課題となっていた。新人は週2~3日出社をルールにする等の形で対応を図った。研修のオンライン化も推進した。
・新しい働き方を推進するための工夫として、オンラインでの代表メッセージの展開、ペーパーレス化や押印の廃止などの業務の見直し、上述のとおり働く時間の柔軟化等にも取り組んだ。
・加えて、社員同士のコミュニケーションを促すため、オンライン飲み会等の交流の場を設けた場合、会社が費用負担を行った。新型コロナウイルス感染症の収束時期を見計らい、オフラインで社内外のイベントも実施。社内の飲食を伴うイベントでは、ワクチン接種もしくは事前の抗原検査キットでの陰性確認を参加条件にするなど工夫を行った。
・2022年時点では多くの業務がリモートワーク可能となっており、リモートワーク環境で働く経験を経て、そうした環境下においてもコミュニケーションを適宜行うことへの知見や慣れが身に付き、また、資料作成など集中して行う業務については、リモートワークで高い生産性を発揮できるようになった。一方で、イノベーションに繋がるアイデアの創出や、キャリアの浅い人が人脈を広げることはオフラインの方が適していると認識ができた。これらを踏まえて、職種や部門によって、その時々に応じてオンライン(リモートワーク)とオフラインを組み合わせるハイブリッドな働き方が定着しつつある。

取組の成果・展望

1.新しい働き方による効果

・育児中の社員にも安心して働いてもらうことができたため、事業を継続することができた。
・新しい働き方に取り組んだことは、育児中や介護中であっても安心して働ける会社であるという対外的なメッセージにもなり、求職者からの志望度向上にもつながっている。実際、他社ではリモートワークができないという転職理由で人材を採用できた事例や、配偶者の転勤・介護等で引越しが必要となった社員の離職防止につながった事例もある。
・オフィスと自宅別々時短では、育児で送り迎えの制約もある中、もっと働きたい貢献したい・手取りを増やしたいというメンバーがより活躍できる環境になった。
・スーパー時差通勤や細切れリモートワークの制度は緊急時対応として実施した取組であるが、社員からは今後も継続してほしいという声があがっており、社員の満足度向上につながっている。社員のワーク・ライフ・バランス向上という観点では、リモートワークにより、通勤時間を他の時間に振り向けられるようになった。
・オンライン・オフラインそれぞれの働き方の強み特性を活かしたハイブリットワークにより業務効率化・生産性を高めている。

2.今後の展望

・今後は、より業務効率化や生産性が高まるハイブリットワークの定着を進めていきたい。
・介護をしている社員が増えてきている。介護をしながらでも働きやすい環境を整備していきたいと考えている。
・40代~50代の社内における次のチャレンジの場をどうやって設計するかを検討している。兼業、副業の拡大も考えている。社会貢献をしたいと考える社員も多いため、地元で一次産業に貢献したり、NPO法人で働いたりしやすいようにすることも含めて検討したい。当社でさまざまなチャレンジをしている社員について、モデルケースをつくり、横展開できると良い。

(R4.8)

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