株式会社ズコーシャ

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

株式会社ズコーシャ
企業名
株式会社ズコーシャ
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所在地
北海道
社員数
267名
(時点:2023年3月)
※役員・非正規職員含む
業種
学術研究、専門・技術サービス業

働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い

・総合コンサルタントとして、測量業に始まり、現在は幅広く事業を展開しており、土木関連の設計を主に手掛けている。働き方に関しては、専門性の高い業務が多く、業務の属人化・長時間労働が課題であった。事業の中心となる土木分野はチームで仕事を進めるが、年末や年度末に業務が集中し、月50~80時間程度の残業が発生することもあった。長時間労働を美徳とする風土もあり、生産性に対する意識も低かった。
・土木分野を専攻する学生が減少しており、新卒採用に課題を感じていた。昨今は給与よりも働きやすさが重視される傾向があり、働きやすい環境を整備する必要性を認識していた。また、仕事と育児・介護等との両立が困難なことを理由に離職する女性もおり、社員の離職防止も重要な課題であった。
・社会の風潮としても、求職者から働きやすい職場環境であること、キャリア形成が可能であることが重視されるようになっており、自社でも対応する必要があると考えた。
・2016年3月、当時の社長の意向により育児中の社員を対象とした育児者懇談会を発足し、離職防止、職場環境の改善等に係る意見等を聴取し、経営層に伝えた。また、2016年5月に働き方・休み方改善のための取組を制度化するため、プロジェクトチームを発足し、独自の両立支援制度を策定するなど、働き方改革に向けた取組を開始した。

主な取組内容

1 推進体制・労使間の話し合いの機会の有無

・プロジェクトチームは総務部の管理職および担当者2名の計3名から構成され、当時の社長とも連携しつつ、取組を推進した。
・プロジェクトチームからは、2ヵ月に1度の役員会議で働き方・休み方改善の取組を提案し、役員の意識啓発を図った。また、社長からのメッセージの発信、外部講師を招いてのセミナー開催により社内の意識啓発を図った。

2 フレックスタイム制の導入

・2017年、2018年にフレックスタイム制を全社一斉に試行導入した。このとき、運用がうまくいかなかった場合は通常の労働時間管理に戻すという説明のもとで実施した。労働時間管理に不安を持つ管理職も多かった。そこで、より労働時間管理が行いやすいように、既存のシステムを改修した。実際に導入した結果、デメリットよりもメリットの方が大きいことを多くの社員が理解したため、2019年に正式導入することになった。
・フレックスタイム制は、対象者を限定せず、非正規社員も対象とすることとした。対象者を育児や介護中のみの社員に限定してしまうと、周りが不公平に感じる可能性があるだけでなく、対象者自身も両立支援制度を利用しづらくなってしまう可能性があるため、試行導入時より全社員を対象とすることにした。なお、現在のところ、非正規社員の所定労働時間も5時間以上のため、フレックスタイム制を活用できている。

3 在宅勤務制度の導入及び基幹システム・コミュニケーション基盤の刷新

・育児、介護中の社員を対象に、試験的に在宅勤務を導入していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に対象範囲を拡大し、在宅勤務が可能な社員は在宅勤務を実施することとした。
・在宅勤務を試験的に導入した当初は、テレワーク中の社員について、始終業のタイミングで上長にメールやスマホで連絡をすることで在席確認を行っていた。しかし、育児や介護中の社員は中抜けをすることもあるため、始終業時の連絡によって在席確認するのではなく、成果を見て業務にあたっていたかどうかを判断するようになった。
・2022年4月には、持ち出し専用PCを用意し、社外から社内システムを安全に利用できる環境を構築した上で、「在宅勤務制度」を本格導入した。社内の環境整備については、フィールドワークや出張中におけるテレワークを含めた利便性向上を図るため、段階的に推進している。
・2021年12月、人事給与業務にシステムを追加し、給与明細を電子配信に転換。職員の利便性を向上するとともに、社内事務手続きの大幅な効率化を実現したのはもちろんのこと、それにも増して「ペーパーレス(押印の廃止を含む)」と「業務プロセスの変革」が働き方を変える上で必須であると管理部門が示したことに、大きな意義があった。
・また、メールやテレビ会議、チャット等様々な手法を提供することによってコミュニケーションを活性化するため、2022年2月にコミュニケーション基盤を段階的に刷新した。
・同年4月には基幹システムも刷新。セキュリティ基盤を経由することで、社外からでも速やかに情報を登録、更新、参照することができる。これによって管理職、経営層が正確な情報を迅速に入手できるようになり、経営判断の助けとなる。さらに、システム利用をより安全にするためのセキュリティ基盤を構築し、同年5月からは社給スマートフォンによる社外からのシステム利用を可能とした。こうした環境整備によって、誰もが時間や場所に制約されず、多様な働き方で活躍できる職場環境とすることを目指している。
・同じく2022年4月からは各職員が個々にオンライン会議を開催できる環境が整い、採用面接や内定者との懇談、各種研修会の開催・受講等、採用や人材育成においても、オンライン会議システムの活用が増えている。

4 スキルマップ作成による能力開発・多能工化

・部署によって専門分野が異なるため、スキルマップを作成し、毎年、本人と上司が面談で能力開発の目標を決め、その達成具合を評価するようにしている。能力開発に対する評価は昇進・昇格とも関わっている。また、業務の複数体制化にも取り組んだ。こうした取組により、多能工化にもつながっている。

5 休み方改善に関する取組内容

・年次有給休暇の時間単位取得を導入した。
・両立支援制度として、子の看護休暇の対象年齢拡大と有給化、介護休暇の有給化を図った。
・連続休暇制度として、全社員を対象に、期初の時点で休日を含めて連続した7日間以上の休暇取得計画を立ててもらうようにし、連続休暇の取得を推進した。
・休み方改善の取組についても、上記と同様の理由から、非正規社員を含む全社員を対象とすることとした。

取組の成果・展望

1 働き方の現状と取組の成果

【所定外労働時間の長さの変化】
・働き方改革に取り組む以前の2016年は、月平均約30時間であったが、取組後の2019年度は、月平均約20時間まで減少した。また、2019年度は、年間を通じて月80時間の残業があった社員は1名だけであり、全体的に長時間労働が是正された。

【生産性、メリハリのある働き方】
・管理職が仕事の配分を意識し、平準化を図るようになった。
・フレックスタイム制の導入によって、メリハリをつけ、効率的に働いて、その分を早く帰る意識が浸透してきた。上司や本人の労務管理の意識が向上し、時間外労働の削減、労働時間の平準化等に繋がっている。以前は残業を美徳とするような風土もあったが、社員の間でも生産性高く働くことへの意識が高まった。

【時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の実現】
・フレックスタイム制度を導入していたことで、誰もが時間にとらわれない働き方を実現するため、コミュニケーション手法を工夫する文化が既にあった。
・コロナ禍を経て、コミュニケーション基盤を刷新し、チャットやメール、あるいはそれら機能を横断的に活用し、情報をシームレスに展開する機能など、様々な仕組みを活用できる環境にしたことが、時間や場所にとらわれない働き方を実現するための基盤となっている。

2 休み方の現状と取組の成果

【年次有給休暇の取得状況の変化】
・年次有給休暇の取得率はおおむね約7割の水準で推移しており大きな変化はないものの、仕事のメリハリを意識するようになり、また、子の看護休暇、介護休暇を有給化してもこれまでどおりの取得率を維持できていることから、会社としては前向きに捉えている。
・管理職の間でも、子の看護休暇、介護休暇を取得するなど、休暇取得の意識が高まった。
・また、管理職が休暇を取得するようになったことで、一般の社員も休暇を取得しやすくなり、お互いに休暇中の仕事をカバーするような雰囲気もできてきた。とりわけ連続休暇制度では、全社員があらかじめ連続休暇の取得計画を立てているため、気兼ねなく休むことができている。

3 上記以外の働き方・休み方改善による成果

【多様な人材の確保・定着(採用の状況、離職率の変化など)】
・育児、介護のほか、病気の治療、自己研鑽、社会活動等と仕事の両立がしやすくなり、仕事へのモチベーションの維持・向上はもちろん、多様な人材の定着・活躍が、より期待できるになった。
・働き方改善の取組について、北海道による働き方改革推進企業認定制度で、最高位認定・知事表彰を受け、メディアにも取り上げられたため、会社の知名度や社員満足度が向上している。また、健康経営にも取り組んでおり、それに関する表彰や認定も求職者へのアピールになっており、求職者数の増加や、当初課題となっていた社員の離職も防止することができている。
・自社の取組が地元新聞で取り上げられたため、親が就職活動中の子どもに対して当社を勧めてくれたり、女性からの関心が高まったりするといった効果があった。働き方改善に取り組んでいることで、学生や若い世代に好印象を持ってもらえているのではないか。
・就職氷河期に新規採用をしてこなかったため、30代後半から40代前半の人材が少ない。そのため、中途採用や非正規社員の正社員転換を進めている。

【その他】
・業務効率や生産性向上については、導入後あまり時間は経過していないが、社内の基幹システム等の刷新を図ることで、ペーパーレスや業務プロセスの変革、さらには経営判断に必要な情報の迅速な入手等に寄与していると考える。
・働き方改善と並行して能力開発にも取り組んできたため、勤務時間中に資格取得の指導を受けたり、外部研修に参加したりする社員が増えた。試験を受けるための旅費や受講料は、会社が負担している。
・eラーニングを業務中に受講するなど、時間を有効に使えるようになってきた。

4 今後の展望

・定年の延長を含め、労働力の確保や技術の伝承をしていく必要があると考えている。
・少子高齢化、人材不足が継続すると想定しており、育児・介護事由以外でも利用可能な短時間勤務制度(短時間正社員制度)の導入等、新たな仕組みの導入や既存の仕組みの拡充を進める。
・コミュニケーション基盤や基幹システムを刷新し、時間や場所に制約されず、誰もが多様な働き方で活躍できる業務環境を整えてきた。施設・設備に依存する業務(研究所の実験室における各種分析業務等)についてはやむを得ないが、情報に関してはペーパーレス及び業務プロセスの変革によって、オフィス機能をデジタル化し仮想オフィスに置けば、場所にとらわれずに業務遂行することが可能となる。今後はさらにこれらを推進し、コラボレーション基盤を構築することが現在の目標である。

(R5.3)

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