株式会社WORK SMILE LABO

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

株式会社WORK SMILE LABO
企業名
株式会社WORK SMILE LABO
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所在地
岡山県
社員数
28名
(時点:2022年8月16日)
業種
卸売業、小売業
事業内容
笑顔溢れるワークスタイル創造提案業

働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い

1 働き方の状況

・創業112年であり、先代の頃は、オフィス用品やOA機器販売を中心的な事業としていた。リーマンショック時に経営危機に陥り、新たなビジネスモデルの模索を続けるなかで、従来のオフィス用品等の販売だけではなく、ITツール等も活用して、主に中小企業を対象として働き方の提案を行うことも始めた。
・働き方改善に取り組んだきっかけは、現在の代表が就任した際に、経営理念に「働くに笑顔を」を掲げ、「中小企業の笑顔溢れるワークスタイルモデルカンパニーになる!」ことを目指したことである。まず自社の働き方改善に取り組み、そこで有用だった取組や失敗したことも含めて、自社の取組を「モデル」として他社に提案・共有していくという現在の事業の原型ができた。

2 働き方に関する課題

・上述のとおり、ビジネスモデルの転換を契機として働き方改善に取り組むことになったが、その起点は、「社員がいま困っていること」にあると考える。社員の声を集めるため、全社員が参加する会議を月1回設け、必要な制度、ルール・ツール等の導入・トライアルを随時進めている。
・例えば、テレワークの導入前は、小さな子どものいるパート社員が子どもの急な病気で休むことが多く、休む社員だけでなく、他の社員にも負荷がかかり残業が発生することが課題となっていた。それが導入のきっかけとなった。
・顕在化している課題のほかに、そもそも課題とも考えられず、いわば潜在化している課題もある。当社は、全社員のミッションとして、「一人一人がより幸せになれるワークスタイルを追求する」ことを掲げており、取組には終わりがないと考えている。

3 休み方の状況

・年次有給休暇の取得は進んでおらず、休暇を取得しづらい雰囲気もあった。

4 休み方に関する課題

・事務用品の販売の他、保守メンテナンス等の業務も担っていたため、人手不足の状態にあった。そのため、年次有給休暇の取得は進んでおらず、休日出勤が発生した場合も、代休取得ができないことも多かった。
・慢性的に休暇を取得しづらい状況にあることで、会社の雰囲気そのものが、休暇を取りづらい雰囲気になるという、悪循環に陥ってしまっていた。

主な取組内容

1 推進体制・労使間の話し合いの機会の有無

・働き方・休み方改善の取組は、社長が中心となって進めている。
・働き方・休み方改善に関して社員から提案を受け、話し合いを行う会議(「ワクスマ改善ミーティング」)を月1回設けている。全社員が参加し、毎回平均10個程度の改善提案が挙がってくる。制度やツールの導入に関する内容だけではなく、日々の業務の中でのちょっとした課題が挙げられることもある。挙げられた提案に対して、優先度を設定しつつ改善に取り組み、トライアンドエラーを繰り返し、自社での取組を蓄積している。そうした自社での経験が顧客への提案にもつながっている。

2 働き方改善に関する取組内容

・働き方の提案を行うというビジネスモデルであることから、クラウドツールの活用なども含めると、取組の内容は70程度に上る。
・主な取組として、テレワークの導入が挙げられる。2016年に導入した当初は事務職員3名を対象とし、日替わりで1名がテレワークをするという勤務形態とした。これにより、常時誰かがテレワークをしていることを前提として、業務が行われるようになった。
・育児との両立で困っている社員の課題を解決するためにテレワークを導入したことで、子どもの都合にあわせて働きやすいということ以外にも、時間にゆとりができて、とても助かるという声が社員からあがった。会社への感謝から、当該社員のモチベーションも非常に上がった。
・事務職員への導入から1年後、外勤メンバー(営業職)にもテレワークを拡大した。その際、初めは全員週2回、テレワークを行うことを義務付けたが、さまざまな社員がいる中で一律のルールとしたところ生産性が下がる社員もみられた。そこで、週2回の義務化は中止し、現在は希望する場合は、全社員がいつでもテレワークできるようにしている。
・会社としては、テレワークを数ある働き方のひとつと考えており、「生産性を維持しながら働けるのであれば、テレワークを活用してください」というスタンスである。
・さらに、2020年のコロナ禍を経て、それ以前は営業社員は顧客先へ訪問することが当たり前で、地域的にも「Face to Faceの付き合い」が重視されていたところ、感染症予防の観点から顧客から「来ないでほしい」という要望もあり、社員の安心・安全のためにも訪問を禁止してオンライン営業(インサイドセールス)へ移行。オンライン商談ツールを新たに導入し、訪問しなくても営業ができる環境を整えた。これによって生産性も向上し、ガソリン代・駐車場代等の負担は減り、顧客にも社員にも負担をかけない営業活動が出来るようになった。
・評価制度については、「時間当たりの生産性」を重視するルールを導入した。社会的にも働き方改革の機運が高まるなか、当社でも過去に退社時刻を早めようと、19時全員退社というルールを定めたことがあったが、テレワークが可能なため社員が仕事を持ち帰ったり、顧客対応に課題が生じたりすることがあった。そこで、法律の範囲内の残業時間に収めることは大前提であるものの、「長く働くこと」が悪いのではなく、「だらだらと生産性が低い働き方をすること」が悪いのだ、という思いを強くした。こうした価値観を社員にも共有・浸透させるため、「時間当たりの生産性」を重視するよう評価制度の見直しを行った。
・当初は不満を持つ社員もいたが、結果的に、働く「時間」ではなく働く時間の「質」を社員が意識するようになった。長く働くのであれば、中身が伴っていないと時間を使うだけ評価が下がることになるため、残業をするにしても「本当に今日残業する必要があるのか」「残業せずに終わらせることができなかったのか」を考えるようになった。
・評価制度ではこのほか、社長が中心となって、残業時間の削減や、習得すべき業務についての目標をいくつ達成できたかなど定量的な目標を設定している。会社の働き方・休み方改善に関する取組に積極的に取り組んでいるかどうかも、評価項目のひとつとしている。

インサイドセールスの様子
インサイドセールスの様子

3 休み方改善に関する取組内容

・労働基準法の改正に伴い、2019年に年次有給休暇の年5日間取得が義務化されたが、その背景には、自ら創意工夫して、自然と5日間取得できるよう働く環境を改善しようというメッセージが込められていると考えている。
・一週間休んでも困らない体制を整えるにはどうすればよいか、働き方を変えていくことを目的として、昨年度は全社員に5日間連続で年次有給休暇を取得することを義務付けた(土日と合わせて9連休)。
・実際に連続休暇を取得しようとすると、顧客から連絡が入った場合に備えてデータベースの作成が必要になったり、他の社員が対応できるよう業務の引き継ぎ体制を整える必要が生じたりするなど、課題が明らかになった。これらは組織的に取り組むことが重要であるため、こうした取組を進める際も評価項目に落とし込んで、会社がやろうとしていることに社員の意識を向けさせるようにしている。

取組の成果・展望

1 働き方の現状と取組の成果

【所定外労働時間の長さの変化】
・2016年度から2017年度にかけて、残業時間が約40%削減された。さらに、直近の2022年度は、月14時間程度と削減後の水準を概ね維持できている。
<取組前>(月平均)40.3時間(2016年6月)
<取組後>(月平均)17.6時間(2017年6月)
<直近>(月平均)14時間(2022年7月)

【生産性、メリハリのある働き方】
・残業時間の削減により、2016年から2017年にかけて生産性は約8%上昇した。
・テレワークの導入によって、社員の生産性向上につながった。事務職員においてはシフトを組んで、常に誰かが在宅勤務をしている状態であったため、在宅でできる仕事はその日の在宅勤務者が担当するなど、業務の見直し・分業を図ったところ、チームとして残業時間の削減が実現した。
・生産性向上以外の成果としては、病気がちな子どもがいるパートタイマーの離職防止につながったり、通勤時間の削減や休憩時間の自由な活用が実現したりするなど、社員の働きやすさにつながった。
・また、テレワークができることで職場への満足度が高まり、会社に貢献しようという意欲が向上するという効果もあった。

総務省「「働く、が変わる」テレワーク~先進事例のご紹介~」令和元年12月11日

2 休み方の現状と取組の成果

【年次有給休暇の取得状況】
66%(2022年7月実績)

【連続休暇の取得状況、休暇の質】
・2019年度、年次有給休暇の5日間連続取得に取り組んだが、「いかに成果を落とさず、休暇を増やせるか」というチャレンジであると捉えている。2020年度も継続して実施している。

3 上記以外の働き方・休み方改善による成果

・取組当初は、働き方の見直しについて反発する社員もいたが、働き方・休み方改善への取り組み姿勢を評価する仕組みを整えているため、自然と浸透していった。
・「時間当たりの生産性」を重視するようになったことで、業務の質が向上してきたと考えている。今日行わなければいけない業務かどうか、本当に残業しなければ終わらなかったのか、など、自身の業務を振り返る社員が増えた。

【多様な人材の確保・定着(採用の状況、離職率の変化など)】
・求人において、テレワークができることをPRしたところ、応募が3倍近くに増えた。そこで新卒採用でもPRするようになったところ、就職したいランキングの上位に上がるようになり、良い人材を採用できるようになった。「働き方・休み方改善に取り組んでいるから楽に働ける会社だ」と考えている社員はおらず、ビジネスモデルを理解し、熱意がある人を採用できている。いかに成果を出せる人材を育成できるか、それを集結させて会社を成長させていくモデルをつくることが当社のミッションである。
・「働きやすさ」をアピールする会社は多いが、良い人材を採用するためには、残業が少ない、年次有給休暇の取得率が高いといった点だけではなく、「働きがい」を伝えていくことも重要である。例えば、テレワークを導入しているということは、「家でいつでも仕事ができる」ということだけではなく、「結婚・出産後も正社員として長く活躍しつづけられる働き方ができる」ということである。そういう働き方ができることに共感した人材を採用できていると感じる。

4 今後の展望

・社員から挙げられる課題に対応しながら、ビジネスモデル上、自社の働き方・休み方改善に継続的に取り組んでいく。
・新たな働き方・休み方改善のツールにキャッチアップしていこうと考えている。当面は自社でICTツールの活用等を進め、それを事例として他社に提案し、経営課題の解決につなげていきたい。中小企業へのテレワーク導入支援を行っているが、自社の事例を伝えていることで共感が得られている。
・コロナ禍でのテレワークでは、生産性が下がった企業が多かったというニュースを見聞きするが、あらかじめ環境を整える間もなく、社員自身の意向にも関わりなくテレワークが導入されているケースが多く、そうした状況下であれば当然の帰結だろうと感じる。運用次第で、テレワーク導入によって生産性向上につなげられるということを、今後も伝えていきたい。

(R5.3)

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