株式会社リコー
事例カテゴリ
- 所定外労働削減
- 年休取得促進
- 多様な正社員
- 朝型の働き方
- テレワーク
- 勤務間インターバル
- 選択的週休3日制
企業情報
企業名 |
株式会社リコー
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所在地 |
東京都
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社員数 |
7,613人
(時点:2022年3月末) |
業種 |
製造業
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事業内容 |
オフィスプリンティング、オフィスサービス
商用印刷、産業印刷、サーマル、その他 |
働き方・休み方改革に取り組んだ背景と狙い
2017年から社長直轄の全社横断プロジェクトにおいて、「働き方変革」に取り組んでいる。「一人ひとりがイキイキと働き、個人およびチームとして最大のパフォーマンスを発揮し、新たな価値を生み出し続けることができる働き方を実現する」ことを目指して、時間や場所を自ら選択できる働き方の制度を段階的に拡充してきた。
2020年8月からはリモートワークを新しい働き方として標準化し、社員一人ひとりの生活や業務に合わせた効率的な働き方を推進している。当初は「創ろう!My Normal」をスローガンに、自分自身の働き方をデザインしようという機運を醸成してきたが、社員間のコミュニケーションを促進する目的から、2021年11月に「創ろう!Our Normal」という表現に変え、現在はリモートワークと対面のハイブリッドな働き方で、組織・チームとして最適な働き方を模索している。
主な取組内容
リモートワークと対面のハイブリッドな働き方に向けたトライアルの実施
コロナ禍以降、工場勤務者や、開発・実験等の部署を除いて、全社員の約3分の2がリモートワーク中心の働き方に移行した。全社的に、リモートワークの上限日数や出社制限は特に設けていない。オフィスに出社したほうが業務に集中できるという社員もいるため、どこで働くかは個々人の裁量に任されている。首都圏のオフィス系拠点の出社率は、もっとも低い時期で2020年5月頃は10%程度だったが、同年6月以降、概ね20~30%程度で推移している。
一時期に比べて出社率が上昇してはいるものの30%以上にならない理由として、社員の多くがリモートワークで必要な業務を行うことができ、通勤時間削減やワーク・ライフ・バランス確保の面でメリットが大きいためと思われる。
一方、リモートワークのデメリットとして、社員意識調査等で「コミュニケーションがとりづらい」、「私生活と仕事の境界がつきづらい」などの声も挙げられるようなり、とりわけ対面のコミュニケーションの必要性が浮かび上がってきた。そこで、2021年11月から2022年1月までの3か月間、ハイブリッドな働き方を模索するためトライアルを実施し、その後検証を行った。具体的な取組内容としては、全社的に目安として月2回、部署メンバーの出社日を合わせて対面でコミュニケーションをとることを呼びかけたほか、部署ごとの取組を社内システムに登録してもらい、他部署の取組内容を見られるようにした。
トライアル終了後には、各部署でどのような効果があったかをシステムに入力してもらい、社員の声を集めた。その結果、様々な意見がみられた。例えば目安を月2回に設定したことについて、「出社することでリフレッシュになった」、「対面のコミュニケーションでちょっとしたことでも聞きやすかった」という声や、「新入社員と初めて対面で会えた」ということもあった。
ただ、部門ごとに業務内容が異なり、最適な出社頻度は全社一律ではないことから、チームでどう出社やリモートを組み合わせて働いていくかを継続検討し、チームに最適な働き方を模索している。
管理職向けのマネジメントカレッジの開催
リモートワークを中心とした働き方において、マネージャーは部下に健康的に働いてもらいつつ、組織の業務効率も維持・向上していくことが求められるため、大変な役割と認識している。そこで、社内のマネージャー教育を強化するため、2020年度下期から管理職を対象とした「マネジメントカレッジ」を始めた。毎年、今のマネージャーに必要なことをピックアップし、オンライン研修やe-learningを用いて教育を行っている。
「どこでも勤務」によるワーケーションや単身赴任の解消
社員が自律的に働く時間や場所を選択できる働き方を促進する一環として、2020年10月からは「どこでも勤務」により、旅行先や帰省先での一時的な業務(ワーケーション)や、単身赴任の解消も可能とした。
単身赴任の解消は、業務上出社が必要な場合は出社に応じるという条件の下で個別に判断しているが、これまでに適用された社員は数十人にのぼる。いずれも、自宅からリモート勤務に移行している。
エフェクティブ・ワーキングタイム制度(フレックスタイム制度)の拡充
働く時間の柔軟化に関しては、エフェクティブ・ワーキングタイム制度(7時から20時をフレキシブルタイムとしたフレックスタイム制度)のコアタイムの廃止が挙げられる。
従来は10時~15時をコアタイムとしていたが、リモートワークが普及して家で仕事をすることが多くなる中で、子どもがいる家庭などでは中抜けをして対応することが頻繁に起きるようになった。感染予防のために学童保育や保育園が休園してしまうケースも増え、平日日中に家族の世話をしなければならない状況に対して、より柔軟に対応できるようにするため、2021年1月からコアタイムを廃止することとした。
ただ、長時間労働を防止するため、フレキシブルタイムの7時~20時以外に働く場合は、直属の上司へ申請し、承認を得ることを義務付けている。社員の中には深夜や休日にも働いてもかまわないという意見の人もおり、フレキシブルタイムを22時まで延長することを検討したこともあるが、長時間労働になる懸念もあり、勤務間インターバル制も考慮し、20時までに据え置いた。
エフェクティブ・ワーキングタイム制度があることによって、自分で働き方を決めるという組織風土醸成への効果は大きく、社員には日頃から自身が最もパフォーマンスを出せる働き方を考えてほしいと伝えている。一方、残業をしすぎないようにすることとのバランスも重要と考えている。
<テレワークに関する取組の変遷>
2020年度
・リモートワークの利用日数、利用者の制限を撤廃し、原則在宅勤務。
・「どこでも勤務」によりワーケーションや単身赴任解消が可能に。
・管理職向けマネジメントカレッジを開催。
・フレックスタイムのコアタイムを廃止。
2021年度
・チームワークを重視し、「創ろう!My Normal」のスローガンを「創ろう!Our Normal」へ。
・リモートワークと対面のハイブリッドな働き方を模索するトライアル実施。
2022年度
・2021年度に実施したトライアルの継続について部署ごとに検討し、必要に応じて実施。
・遠隔地居住のルールを制度化
・ワーケーション実施ガイドを作成
出社率
20~30%程度(2022年12月時点首都圏のオフィス系拠点のみ)
勤務間インターバル制度の導入
勤務間インターバル制度は社員の健康の維持・確保を目的として、コロナ禍前の2019年4月から試験導入を行っており、2022年4月から正式導入した。管理職を含む全社員を対象とし、インターバル時間は11時間に設定して運用している。いわゆる働き方改革関連法において勤務間インターバル制度の導入が努力義務となったことや、リモートワークを拡大していたタイミングであったことも本格導入の後押しとなった。
ショートワーク制度の運用
2018年に導入したショートワーク制度は、自己啓発、ボランティア、セカンドライフ準備、介護、育児、副業を事由として、短時間勤務(1日の勤務時間を6時間と7時間から選択)や短日勤務(週4日勤務、出社しない曜日を事前申請)が利用できる制度である。制度を利用する際は、2か月前までに人事部に申請を行う。
週4日勤務は育児中やシニア社員による利用が多く、育児・介護等の時間制約のある社員を含め、多様な人材の活躍につながっていると考えている。シニア社員は、週1日はセカンドライフのために使いたいというケースが多い。
取組の成果・展望
リモートワークの推進やコアタイムの廃止等を通じた柔軟な働き方による効果としては、特に、社員のワーク・ライフ・バランスの向上や、業務効率の向上が挙げられる。前者については定期的に実施している社員意識調査で、男性社員から「家族と夕食を一緒にとれるようになった」、「保育園のお迎えに行けるようになった」といった声が多くみられている。また後者については、業務のシステム化・オンライン化が進み、紙を使った業務や煩雑な作業が削減できている。また、オンライン会議により資料の印刷や会議室の確保等が不要となったこと等、効率化が進んだと感じている。ただし、前述したようにコミュニケーションやマネジメントがやりづらくなっている点もあるため、その点をカバーするための工夫については、引き続き行っていく。ただ、新入社員は柔軟な働き方に対する関心が高いため、逆にリモートワーク等の柔軟な働き方ができない企業は、今後学生などから選ばれなくなるのではないかと感じている。
今後の展望としてはリモートワークを継続していくと同時に、「Our Normal」=組織・チームとしての最適な働き方を模索していきたいと考えている。
また、リモートワークが進んだことで遠方に住んでいても業務への支障が少なくなっているが、どこまで対象範囲を広げていけるかも、今後の検討事項である。