株式会社リコー

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  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制
  • ワークエンゲージメント

企業情報

株式会社リコー
企業名
株式会社リコー
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所在地
東京都
社員数
8,216名(2020年3月期)
業種
製造業
労働時間・休暇制度
■労働時間関連
・エフェクティブ・ワーキングタイム制度(フレックスタイム制度)を基本とし、フレックスタイム制度の利用が難しい職種については、通常の労働時間制度を適用。工場は交替制勤務を適用。
・1日の所定労働時間は7時間30分
・自己啓発、ボランティア、セカンドライフ準備、介護、育児、副業を事由としたショートワーク制度(短時間勤務、短日勤務)
■休暇関連
・年間所定休日数:125日(うるう年は126日)

新しい働き方として新規に開始した取組

1 新しい働き方として新規に開始した取組

・2020年3月以降、新型コロナウイルス拡大防止にむけ、リモートワーク利用の事前申請や利用日数の上限(月10日)を撤廃し、在宅勤務を最大限活用する働き方を進めた。
・2020年8月、ニューノーマル(新常態)への対応として、在宅勤務を含むリモートワークを新しい働き方として標準化した。
・2020年10月、「リモートワークを基本とする働き方(月の半分以上リモートワーク)」の社員には、電車・バス等の通勤定期代を廃止し、出社したときに交通費を実費精算する方法に切り替えた。なお、「リモートワークを基本とする働き方」の社員が出社した場合の交通費を社会保険料の対象にするため、通常の交通費とは異なる申請方法を設けている。
・2021年1月時点において、「リモートワークを基本とする働き方の社員」は、全社員の3分の2を占める。

新しい働き方を推進する背景や目指すこと

1 背景・理由

・1990年代からワークスタイル変革や多様な人材が活躍できる職場環境づくりに取り組み、「ワークライフ・マネジメント」を経営戦略の一つと位置付け、関連する取組を推進してきた。
・「ワークライフ・マネジメント」では「仕事・生活の双方の充実により、個々人のやる気・能力の向上が図られ、高い成果が創出されること」を目指す姿としている。
・2014年にエフェクティブ・ワーキングタイム制度(フレックスタイム制度)、2016年に在宅勤務制度(現在のリモートワーク制度につながる)、2018年にショートワーク制度(短時間勤務、短日勤務)等、働く時間・場所を選択できる制度を順次拡大し、アンケート等で利用状況や課題を検証しながら、利用促進を図ってきた。
・2017年、常識や前例にとらわれない変革に取り組むために、「働き方変革」を社長直轄のプロジェクトとし、様々な部門のメンバーが参画し、互いの経験や知見を活かして活動してきた。
・2020年開催予定だったオリンピック期間中の首都圏混雑緩和に貢献するため、本社を2週間クローズし、他の事業所も可能な限り在宅勤務を行う予定だった。その準備として、2019年、毎月1回程度、一斉リモートワークデーを設定したトライアルを実施し、各部門の在宅勤務における課題の洗い出しや対策の検討を1年かけて実施した。
・コロナウイルス感染拡大防止に積極的に対応するため、2020年3月から原則在宅勤務とした。一時的にリモートワークの利用上限を緩和し、緊急事態宣言中は、在宅勤務が難しい職種の社員を除き、ほぼ全員が在宅勤務を実施した。その結果、首都圏4事業所の平均出社率は7%程度となった。それまでの取組が功を奏し、コロナ禍においても、リモートワークで決算業務、採用面接、新入社員研修等も、大きな混乱なく実施できた。
・緊急事態宣言後、在宅勤務を最大限活用した働き方、生活・健康面の変化について、リコー社員を対象としたアンケート調査を実施した。回答者の8割以上が在宅勤務でも「生産性は維持・向上とした」と回答した。また、生活・健康面においても「維持・向上」と回答する割合が高いという結果となった。
・このような調査結果も踏まえ、ニューノーマル(新常態)への対応として、2020年8月、リモートワークを新しい働き方として標準化するに至った。

2.目指すこと

・「働き方変革」を経営課題の最重要課題の一つとし、時間や場所を自ら選択できる働き方を促進することで、「一人ひとりがイキイキと働き、個人およびチームとして最大のパフォーマンスを発揮し、新たな価値を生み出し続けることができる働き方を実現する」ことを目指している。

新しい働き方を掲げる以前の働き方・休み方や実施していた取組

1 新しい働き方を掲げる以前の働き方や休み方の状況・取組

【トップメッセージ発信】
・グループ会社共有の働き方変革や「ダイバーシティ&ワークライフ・マネジメント」のポータルサイトにおいて、働き方変革に関する情報やトップのメッセージを発信し、グループのビジョンと活動内容を共有している。
・ワークライフ・マネジメント意識調査を定期的に実施し、両立支援や各制度に関する認知度や社員意識の変化・ニーズ把握等を行い、調査結果を踏まえたアクションプランを策定している。

【総実労働時間低減の取組】
・働くときは集中して働き、休息するときは十分にリフレッシュする「メリハリのある働き方」を推進し、効率的な働き方による残業削減や年次有給休暇の取得促進といった総実労働時間の低減に取り組んできた。
・勤務管理システムを用いて、毎月の所定外労働時間の実績を全部門に送付している。所定外労働時間が月40時間を超えた場合は、本人と直属の上司にアラームを出し、改善にむけた意識付けを行っている。
・年次有給休暇の取得促進については、年次有給休暇の取得奨励月間や奨励日の設定(連休の谷間の出勤日など)、5日間の連続休暇の奨励、時間単位の年次有給休暇により、年次有給休暇を取得しやすい風土づくりを行っている。

【業務効率化の取組】
・組織力向上のための毎期の成果達成目標項目に、ダイバーシティ・マネジメントや生産性向上の観点を設定している。
・「無駄な仕事の削減」、「付加価値を生まない仕事の再検討」、「部門間・部署間の重複業務の削減」という方向性のもと、部門ごとに業務効率化の取組を実施し、好事例については、部門を超えて共有することで、全社的な意識付けを図っている。

【働く時間の選択】
・働く時間を選択する制度として、エフェクティブ・ワーキングタイム制度、ショートワーク制度を導入してきた。
・エフェクティブ・ワーキングタイム制度は、7時から20時をフレキシブルタイムとしたコアタイムなしのフレックスタイム制度である。
・ショートワーク制度は、自己啓発、ボランティア、セカンドライフ準備、介護、育児、副業を事由として、短時間勤務(1日の勤務時間を6時間と7時間から選択)や短日勤務(週4日勤務、出社しない曜日を事前申請)が利用できる制度(利用開始2か月前までに申請)。エフェクティブ・ワーキングタイム制度との併用も可としている。

【働く場所の選択】
・2016年、現在のリモートワーク制度につながる在宅勤務制度を導入した。制度導入時は、生産性の面で懐疑的な意見もあったため、育児・介護との両立や移動時間・待機時間の削減などの効果が見込めるものに適用者を絞り、スモールスタートとした。また、週2日・月5日までの利用上限も設定していた。当時、利用者に対してアンケート調査を行うと、全員が「生産性が維持・向上した」とし、利用者の上司の9割が同様の回答をした。
・2017年からスタートした「働き方変革」プロジェクトの施策の一つとして、2018年に全社員を対象とした「リモートワーク制度」に改定した。利用上限を週3回・月10日(2020年3月に利用日数の上限を撤廃)と設けたが、在宅勤務が可能な職種で、セルフマネジメントができることを前提とし、上司の承認さえあれば、だれでも利用可能とした。
・リモートワークの際は、エフェクティブ・ワーキングタイム制度、ショートワークとの併用も可能としている。なお、エフェクティブ・ワーキングタイム制度の利用が難しい職種については、通常の労働時間制度を適用している。
・社内SNSなどコミュニケーションツール、IT環境の整備により、自宅、サテライトオフィス(各事業所、外部契約しているサテライトオフィス)、移動・出張先のホテルや顧客先、公共スペースでの利用も可能。

2 新しい働き方において、これまでの取組が活かされている点/これまでの環境整備が功を奏している点

・在宅勤務が続くことで、コミュニケーション不足を懸念する意見もあったが、従来から使用していた社内ツールを活用し、意識的にコミュニケーション(雑談含む)を行う動きがみられた。毎日朝礼・夕礼を行う部署や、昼間の方が都合を合わせやすい場合、昼休み前後に昼礼を行う部署もあり、各部署の状況に応じたコミュニケーションの工夫がみられる。
・また、オン・オフの切り分けや、長時間労働の防止を図るため、社内ツールを活用して、始業時と終業時に業務実施予定や実施事項を上司に報告し、部下の仕事管理や勤怠管理を把握する工夫も行われている。
・2018年から「1on1ミーティング」を実施している。実施頻度については、週1回を目標としているが、難しい場合は少なくとも月1回は行うように伝えている。新入社員については、管理職のほか、所属部署のメンバーとの1on1も実施する部署もある。1on1をタイムリーに行うことで信頼関係の構築、頻繁なフィードバックができ、適切な評価に繋がる面もあると考えている。このような取組もあり「リモートワークでは、人事評価がしにくい」という相談はあまり発生していない。

新しい働き方を推進する上で課題だったこと・工夫したこと

1.新しい働き方を推進する上で課題だったこと・工夫したこと

・緊急事態宣言後の社員アンケート結果を踏まえ、国内リコーグループ向けに、新しい働き方のガイドライン「これからの働き方ガイド 創ろう!My Normal」を発行した。
・また、社員アンケート調査結果から導きだした職種ごとの最適な出社率を設定した。本社をはじめとするスタッフやソフト開発部門、システムエンジニアなどの職種では30%、これまでリモートワークが難しいとされてきたハードウエア開発や生産関連の間接部門においては50%以下としている。これにより、全社一律ではなく、職種や仕事内容に合わせて柔軟に出社とリモートワークを組み合わせた最適な働き方の実践を目指している。
・社員アンケート調査から、ポジティブな意見があった一方で、契約書や請求書など紙書類の対応が自宅ではできない、自宅が落ち着いて仕事を行う環境でない、通信環境が十分でないなどの意見も寄せられた。
・リモートワークが不慣れな社員に対しては、チャットボットを通じた問い合わせサービスを利用してもらい、業務をフォローした。また、ブロードバンド回線を持たない社員に対し、Wi-Fiルータを貸与することで対応した。なお、福利厚生のカフェテリアプランにおいて、ディスプレイやキーボードを購入することができる。
・社員から、リモートワークで運動不足になったという声がよくあがる。そのような中、健康管理の担当部署によるエクササイズの動画や、社内のテニス部やラグビー部によるトレーニング動画などが配信され、運動不足解消の取り組みが実施されている。
・産業医が各事業所に常駐しており、残業時間が多い人には面談の申し出をしている。管理職に対して、部下のメンタル不調のきっかけを見つけたら、産業医に連携することを伝えている。

現状の課題・展望

1.新しい働き方の実現状況

・リモートワークの利用者は、2018年度末時点で3,163人、2020年2月時点で6,328人、2021年1月時点では約6000人が月の半分以上リモートワークする状態になっており、定着してきた。
・リモートワークは、出社中心の働き方に比べて、スケジュール調整を行いやすいので、参加者が大勢いる会議やイベントでも開催しやすくなった。リモートワークが標準的な働き方になったことを受け、さらに意識的にコミュニケーションを取るようになったため、以前よりもコミュニケーションが取れているという話も出てきている。
・時間と場所を選べる働き方により通勤など移動にかかる時間が節約され、「ワークライフ・マネジメント」を実現しやすい環境になった。時間外労働は減少傾向にあり、2019年度は月平均15.4時間、2020年度は月平均11時間くらいで推移している。
・一方、コロナ禍において年次有給休暇の取得状況が低下しつつある。旅行や外出が行いにくい状況ということもあるが、これまで用事を済ませるために年次有給休暇を取得していたところ、働き方が柔軟になり、休暇を取ってまで対応する必要性が低下したことが背景にあると考えられる。

2.今後の展望

・今後も、オフィスありきの働き方ではなく、自分の生活や業務に合わせた効率的な働き方を今後のニューノーマル(新常態)として考える。
・新しい働き方に適応したオフィススペースの変更や、アナログな業務プロセスをデジタル変換する等の環境整備により、生産性向上を図る。

(R3.3)

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