株式会社山下組
事例カテゴリ
- 所定外労働削減
- 年休取得促進
- 多様な正社員
- 朝型の働き方
- テレワーク
- 勤務間インターバル
- 選択的週休3日制
- ワークエンゲージメント
企業情報
企業名 |
株式会社山下組
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所在地 |
三重県
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社員数 |
47名(役員含め51名、うち男性44名、女性7名)
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業種 |
建設業
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労働時間・休暇制度 |
■労働時間関連
・労働時間制度:1日8時間 ・勤務時間は、事務所は8時~17時、現場は7:30~17:10(休憩は午前・午後各20分、昼1時間)。 ・毎週日曜日、第2・第4土曜日を休みとしている。 ・以前は変形労働時間制を採用していたが、土日休みに変更する際に廃止した。 ■休暇関連 ・年間所定休日数:105日 ・時間単位での年次有給休暇の取得は可能だが、半日とか時間単位での休暇は子どもや介護などの事由が多く、育児休暇等を取得していることが多い。 ・土日が通常の休みで、お盆、GW、正月に年次有給休暇を消化している。ただし年休5日分は従業員に残るようにし、新入社員や年休が足りない従業員には特別有給休暇を付与している。 |
働き方・休み方改善の取組をはじめた背景や課題
1 働き方の状況
【所定外労働時間の長さ、部署や時季等による偏りの有無】
・事務員には固定残業代を支払っているが、実際の残業は月5時間程度である。
・職長にも固定残業代を支払っており、たまに固定残業時間を超えることもあるが、平均すると残業時間は月50時間を超えない程度である。
2 働き方に関する課題
・昔は休みもなく働くような状況が当たり前であった。
・残業の定義だが、職人の場合、当社の倉庫が集合場所となる。出社は倉庫に集合し、トラック等で現場に向かい、倉庫に戻ってからの退社となるため、その間の時間が勤務時間となる。勤務時間から就業時間の8時間を引いた時間を残業としており、遠い現場の場合、倉庫から現場までの移動時間が往復で3時間となるため、月の残業時間に影響している。
3 休み方の状況
【年次有給休暇取得状況、部署や時季等による偏りの有無】
・人材の流動が激しい業界でもあり、以前は年休のことについて従業員にあまり説明ができていなかった。
・雇用契約は期間の定めはないが、1年間働くと昇給する旨を契約書に記載している。1年に1回、社長と面談を行っており、年休についても説明しているが、認識している人は少ない印象である。
4 休み方に関する課題
・職人は休もうという意識があまりないと感じている。
働き方・休み方改善の取組経緯・取組内容
1 働き方・休み方改善の取組経緯(きっかけ、当初の目的や計画)
・当社のある志摩市は、10数年前の合併で公共工事が増えたが、あと1、2年で仕事が減少することが見えていた。ゼネコンの仕事にも下請けで入り、どうにかして売上を確保しようとしていた。
・そのため人員を増やそうと考え、当初はコマーシャルやチラシ等で求人を行うも、人が集まらない状況であった。建設業の就労者は少なく、高齢化が進んでいることもあった。
・4年ほど前から、世間的に評判がよくないのだろうと発想転換し、現在当社で働いている従業員がアピールすることが効果的なのではないかと考えた。
・そこで、給与をアップしたり、日給制を月給制に変えたり、働きやすい環境を整える取組を行った。作業員や監督を増やし、戦力を確保した上でゼネコンの仕事を受注し、売上を確保するという戦略的な目標を掲げた。
2 推進体制・労使間の話し合いの機会の有無
・社長のトップダウンにより取組を進めている。
3 働き方改善に関する取組内容
・昔は休みもなく働くような状況が当たり前であった。しかし、世間も変わってきたこともあり、まずは日曜日を休むこととした。さらに3年ほど前に、当社のある地域で週休2日制を目指すという宣言がされ、第2・第4土曜日を休むこととした。
・取引先には社長自らが交渉した。
・職人を10人ほど配置する大きな現場では、年間休日カレンダーが配られるが、当社の休みと違っている場合には月6休を確保するよう監督に指示。
・ただ、土曜日を休みにすることに反対する職人もいた。
・日給月給制を月給制にする際には、平均賃金を比較、最大年収の時の月の休日数を算出して、月収としては以前より上がるように設定した。
・月6休に変更することで、工程が厳しくなったと現場監督からクレームが挙がってきたが、実態として工期が足りないということはなかった。月16時間分の作業時間がなくなっても問題なく、場合によっては16時間分について残業を分散させればよいということで説明した。
・なお作業効率を高めるために、ICT化を推進している。事務員と監督には業務用スマートフォンを貸与。工事日報や勤怠管理は業務用スマートフォンで行い、事務所では顔認証で勤怠管理を行っている。また職長にはタブレット端末を貸与し、タブレット端末で、誰がどの現場に行くか、どの車に乗るか等の管理を行っている。
4 休み方改善に関する取組内容
・積極的に年休を取得するよう方針を出しているわけではないが、会社から年休利用を提案している。現場の監督には月70時間程度の定額残業代を支給しているが、平均すると残業時間は月50時間を超えない程度である。現場が稼働している間は残業が増えることもあるため、現場が終わったときは休むように言っており、年休とは関係なく1週間休みを取得することも多い。
・GWやお盆、年末年始の連休で年休を15日取得できている。
働き方・休み方改善による成果
1 働き方の現状と取組の成果
【所定外労働時間の長さの変化】
<取組前>(月平均)64時間(2015年)
<取組後>(月平均)49時間(2019年)
・労働時間は取組前とさほど変わっていない。労働時間をきちんと管理するようになった。
・夏場は1時間に1回は休憩を入れるように言っており、労働時間としては10分程度減っている。
・また雨で休みの際は休業補償(60%)を行っている。
・年収あたりの労働時間はかなり減っているはずである。
2 休み方の現状と取組の成果
【年次有給休暇の取得状況の変化】
<取組前>38.5%(2015年)
<取組後>91.6%(2019年)
・10年前と比べ上がっている
・昨年度の取得率は平均で91.6%。低い人で60%、多い人では270%というケースもあった。
・なお、お盆やGW、正月の長さで取得率は変わる。
・10年前は日給月給制だったため、正確な記録がない。
3 上記以外の働き方・休み方改善による成果
・人員数は微増だが、高齢者作業員に引退してもらうことができず、70歳超で再々雇用した従業員が2人いる状況である。
・ただ、世間の評判としては良くなってきているという実感はあり、会社のイメージがよくなってきたためか、これまでなかった地元からの仕事の依頼がくるようになってきた。
【多様な人材の確保・定着(採用の状況、離職率の変化など)】
・監督や30歳くらいの作業員の定着はいいが、若い男性の離職率は高い。OJTが中心で、現場作業の安全管理のために注意叱責する結果、辞めてしまう人がいる。働きにくいといった要因での離職はない。
・一番大事にしているのは、女性作業員の雇用育成である。作業員が少なくなっている中で、業界が男社会のイメージでは、募集しても人が集まらないところがある。現在、女性の作業員は1名、監督も1名いるが、10数年前に女性の監督が入った際は、働きやすい環境を整えるためにどうしたらいいか、対話しながら進めた。今回も同様に取り組んでいるところである。
働き方・休み方の現在の課題・働き方・休み方改善に関する今後の展望
1 現在の課題
・1現場に1人しか作業員がいない現場だと、代休を取得することができない。
・また完全週休2日が目標であるが、会社としては実現はできても、発注者(官公庁、民間)がそういう状況にない。
【ニューノーマルへの対応について(あれば)】
・地方のため関心はさほどではないが、除菌や体温測定等の対応は行っている。
・在宅勤務ができるような仕事はあまりなく、またそのためのコストも考えると、今のところは取り組んでいない。
2 今後の取組予定
・毎年給与を引き上げたり、制度を改善していく考えだが、給与についてはやるべきことはやりつくしたと考えている。