ライオンパワー株式会社

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

ライオンパワー株式会社
企業名
ライオンパワー株式会社
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所在地
石川県小松市
社員数
107名
業種
製造業
労働時間・休暇制度
■労働時間関連
・労働時間制度:勤務時間は8時30分~17時5分(休憩時間10時~10時5分、12時5分~12時55分、14時55分~15時5分、1日7時間半勤務)
【設計部門】
・月によって忙しさが異なるため、1年単位の変形労働時間制を導入。月あたりの勤務日数が平均22日となるように設定している。
■休暇関連
・年間所定休日数:101日
・年次有給休暇の半日取得が可能。
・特別休暇として独自に赴任休暇を設定している。

働き方・休み方改善の取組をはじめた背景や課題

1 働き方の状況

・働き方改善の取組を始める前は、年度末など仕事が集中する時期に、社員の平均残業時間が月80時間を超えることもあった。
・特に設計部門では、顧客の要望を聞きながら開発を行うため、納期直前に忙しくなる傾向があった。

2 働き方に関する課題

・残業時間が長くなってしまう背景として、仕事の属人化と不要な残業があると考えられたため、そうした点に着目してアプローチを進めていった。
・設計部門の労働時間の偏りに対応するため、2020年度より1年単位の変形労働制を導入した。しかし、年度当初に立てた予定通りに仕事が進むわけではないため、事務手続きの手間がかかるわりにあまり効果がないと感じている。

3 休み方の状況

・働き方改善の取組を始める以前は休日出勤も多く、休みをとりづらい雰囲気があった。
・取組が進むにつれて年次有給休暇の取得日数が増加し、近年は平均10日ほどとなっている。
・社員によって取得日数にばらつきはみられる。20日間すべて取得する社員もいるが、多くは用事があるときに数日取得しているようである。
・特に子どもの学校行事(入学式や卒業式など)の際に取得する社員が多い印象。創業時から、家庭の用事があるときはしっかり休みを取るということが組織風土として定着している。

4 休み方に関する課題

・現状として、休み方に関する大きな課題は感じていない。社員からも休みを増やしてほしいという声はあまり出ていない。

働き方・休み方改善の取組経緯・取組内容

1 働き方・休み方改善の取組経緯(きっかけ、当初の目的や計画)

・2014年の下半期に仕事が集中し、社員の半分以上が月80時間以上残業するという状況になった。その結果、翌年若手社員の離職が3名続いた
・十分に休みがとれないことが離職理由になっていたため、これではいけないと考え、社長主導で働き方改善を進めることにした。

2 推進体制・労使間の話し合いの機会の有無

・特に推進のための組織は設けず、社長主導で取組を進めていった。
・まずは社長直轄の部署でモデル的に取組を開始し、実際に残業時間が減少したという効果を示すことで他の部署にも取組を広めていった。
・労働時間を減らすように、と社長から指示を出すだけでは取組が進まないことはわかっていたため、まずはモデルを示すことが重要だと考えた。全社に取組が浸透し、効果が出るまでには3~4年ほどかかることを想定していた。
・そうした中で、政府が働き方改革の方針を打ち出したことが、取組の追い風になった。

3 働き方改善に関する取組内容

【多能工化】
・まず、製造現場の残業を削減するため、多能工化に着手した。社長直轄の部門の中心的社員1名に依頼し、その社員から他の社員に仕事を教えることで、1人ができる仕事の量を増やした。もともと、中心的社員は多種の生産装置を操作できるが、他の3名は1人1機種の操作しかできなかったため、他の社員は手伝うことができず、中心的社員のみが残業することになってしまっていた。そのため、この中心的社員が扱っていた少し難しい装置の操作を、他の社員も少しずつ出来るようにしていき、この部署で使用している生産装置のほとんどを全員が操作できるようにした。
・中心的社員に対しては、いきなり1人が2人分の仕事をできるようにすることを目指すのではなく、1.4人分程度の仕事ができるようにしてほしい、と伝えていた。
・通常業務に加えて仕事を覚える時間が必要となるため、取組を始めた当初はなかなか労働時間の変化は出なかったが、下期から効果が出てきて、残業時間が大きく減少した。
・また、慣れない仕事を担当するためミスや顧客からのクレームも一時増加したが、そうした問題への対応はすべて社長が行い、社員に余計な負担をかけないようにした。
・1年間取り組んで効果が出たことを受けて、翌年からは他の部署も多能工化に取り組むようになった。なかなかついてこない部署もあったが、そうした部署に関しては負担となっている業務をすでに取組が進んでいる部署で分担するようにした。それでも取組が進んでいる部署では残業が増えなかったため、その様子を見て他の部署も取り組むようになってきた。

【残業時間のボーナス反映】
・働き方改革の取組を始めてから3年目のとき、より労働時間の削減を進めたいと考え、残業時間を点数化してボーナスに反映する取組を開始した。
・具体的には、17時に退社すると10点、17時30分だと9点、18時だと8点、というように、残業時間が増えるほどもらえる点数が減るという仕組みを設けた。
・また、20時をすぎるとマイナス3点、21時でマイナス6点、それ以降はマイナス9点となり、月の合計がマイナスになるとボーナスが20%カットになる。そのため、21時以降まで残業をした場合は、翌日には必ず17時までに帰宅する(前日ポイント-9と当日ポイント+10の合計が+1となりマイナス数値を回避することが出来る)というインセンティブが働くようになった。
・この取組は全社的に効果があったが、残業削減賞与には組織業績も反映されるため、組織業績が悪い部署では、残業時間を減らしてもどうせボーナスは上がらないという思いから、あまり取組が進まなかった。
・そのため、翌年からは組織業績を残業削減ボーナスに反映することをやめ、個人の残業時間のみを査定対象とすることにした。
・これにより、取組が進まなかった部署でも残業が減ってきた。

【仕事指導のポイント化】
・多能工化や残業時間のボーナス反映といった取組を進めてきて、不要な残業については削減することができたが、忙しい人への業務の偏りについてはまだ改善できていなかった。
・そこで、取組を始めて5年目から、仕事が多い社員が自分の業務を他の社員に教えることにポイントを付与し、仕事を教えることへのインセンティブを設けた。
・しかし、この取組はあまりうまくいかなかった。仕事を教えるために時間を割くと、その分残業時間が増加してしまうため、ボーナスに影響が出てしまった。また教わる側の社員の力量も足りなかった。そのため、この取組は1年でとりやめた。現在も仕事の偏りについては課題として残っている。

4 休み方改善に関する取組内容

・毎月の経営層の会議で社員の年次有給休暇取得日数を確認しており、特に取得が遅れている社員に対しては上司から呼びかけを行っている。

働き方・休み方改善による成果

1 働き方の現状と取組の成果

【所定外労働時間の長さの変化】
 <取組前>(月平均)約60時間(2014年)
 <取組後>(月平均)約30時間(2019年)
・多能工化や残業時間のボーナス反映を進めることで、全体としての残業時間は大きく減らすことができた。
・2019年度の平均残業時間は、製造部門では長くても1日2時間程度、月あたり30時間以下となっている。設計部門でもほとんどの社員が月40時間以内におさまっている。総務や営業といった部門では、ほとんど残業ゼロの状況。

【部署や時季等による偏りの解消】
・上述のとおり、部門による忙しさの差は残っている。
・また、部門だけでなく人によっても偏りがみられる。設計部門では、今も月80時間以上の残業となってしまう社員もいる。この点へのアプローチは今後の課題である。

【生産性、メリハリのある働き方】
・働き方改革法の成立を背景に、従来のように深夜残業による対応はできなくなる、ということを取引先に伝えたところ、8割方は理解を示してくれた。
・売り上げはやや減少したものの、残業時間が減少した分残業代を減らすことができたので、結果的に利益は上がりボーナスが増え、財務状況(特に資金繰り)も好転した。

2 休み方の現状と取組の成果

【年次有給休暇の取得状況の変化】
 <取組前>約6日(2014年)
 <取組後>約10日(2019年)

3 上記以外の働き方・休み方改善による成果

・取組開始以前は年間4~5人が離職していたが、現在は年間1人程度と大きく改善した。
・また、働き方改革の主目的として社員の健康を掲げており、残業時間が減少した分を健康改善にあててもらおうと考えた。
・そこで、会社にエアロバイクやランニングマシーンなどを設置し、就業時間後に利用できるようにした。また、近くのスポーツクラブからインストラクターを呼んでエアロビやヨガなどを行った。こうした取組は社員に好評で、運動不足の社員を減らすことにつながった。
・健康診断で要注意となった社員は1日当たり3時間以上の残業を禁止した。

働き方・休み方の現在の課題・働き方・休み方改善に関する今後の展望

1 現在の課題

・残業時間を削減する中で、もっと働きたいという社員の希望に応えられないことが悩みである。
・また、業務量の偏りを改善するためには人材育成が必要だが、それには時間がかかる。労働時間の制約の中でどうやって効果的に人材育成を進めるかが課題である。

2 今後の取組予定

・外国人材の採用を予定している。現在は地元の高校とのつながりもあり、定期的に人材が確保できているが、それが難しくなったときを想定して、今から外国人材と一緒に働く体制を整えていきたいと考えている。
・本来であれば2020年度から受入を開始する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で1年見送りとなっている。
・また、今後はアフリカへの展開も考えており、5~6年後をめどに支店を出したいと考えている。

(R3.3)

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