日本航空株式会社

事例カテゴリ

  • 年休取得促進
  • 計画的付与制度
  • 時間単位年休
  • 特別休暇

企業情報

日本航空株式会社
企業名
日本航空株式会社
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所在地
東京都品川区
社員数
12,750名(連結34,003名)(2019年3月時点)
業種
航空運輸業
労働時間・休暇制度
■労働時間関連
・労働時間制度:間接部門は3ヵ月単位のフレックス制度(コアタイムなし)を導入しているが、一部シフト勤務の者もいる。パイロットやCAなどの現業部門はシフト勤務となっている。
・所定労働時間:8時間
■休暇関連
・年間所定休日数:123日
・土日祝日の他、年末年始、5月1日、10月1日が休日。

働き方・休み方の現状と課題

1 働き方の現状(平均所定外労働時間、部署や職位、時季等による偏りの有無等)

・2018年の平均所定外労働時間は月7.9時間(間接部門の一般職に限る)。
・2015年より、年間総実労働時間の目標を1850時間と設定している。ここから換算すると、所定外労働時間は月4時間程度が目安となる。
・以前はフレックス制度を導入している部署とそうでない部署の間で労働時間の差があったが、現在はすべての部署で導入されており、労働時間の差もなくなっている。
・管理職はやや所定外労働時間が長い傾向がみられるが、20~21時にはほとんどが退社している。2018年度より管理職についても時間管理を行っている。
・現業部門など、イレギュラーな対応が発生する部門については、シフト勤務になっていることが多いため、総実労働時間が大幅に長くなるということはない。
・航空券の販売や、決算など4半期ごとに出てくる業務がある月内での勤務時間の調整が難しい部署については、2019年に導入した3ヵ月フレックス制度も活用している。

2 働き方に関する課題(労働時間の長さ、時間や場所の柔軟化、育児・介護等との両立者の働き方等)

・これまでの取組で労働時間は減ってきているが、目標達成までにはまだハードルがある。ただ時間を減らせというだけでは難しいので、捨てる業務や業務プロセスの改善を検討していく必要がある。
・フレックス制度の導入により、時間制約のない社員も含めて全体的に労働時間が短くなっているため、育児との両立をしている人が短時間勤務ではなくフルタイムで復職することができるようになっている。今後は、必要な休暇をとれているか、3歳・6歳の壁を突破できているかといった点についての支援が課題となってくる。
・間接部門の普通勤務者(シフト勤務者以外)は、テレワークを利用できる。上限は週2回・月10日まで。ただし、BCPの観点などからも特別な理由、背景がある場合には、会社方針として柔軟な対応ができる体制を整えている。

3 休み方の現状(平均年次有給休暇取得率(日数)、部署や職位、時季等による偏りの有無等)

・2018年の年次有給休暇取得日数は、間接部門の一般職で平均17.2日(繰り越し分も含む)。
・取得目標としては20日を掲げているが、ここ数年は17~18日で推移している。
・職位や部署による差はあまりない。

4 休み方に関する課題(休暇取得日数、連続休暇取得状況、希望する時季での休暇取得の状況等)

・年次有給休暇については、より取得を促進していく必要がある。まだ休暇を長期間取得することに抵抗がある社員も少なからずいるため、長期での取得の徹底を進めていくとともに、ワーケーションなどの柔軟な取得方法についても提案していきたい。

休暇取得促進に係る取組

1 働き方・休み方改善(特に休暇取得促進)に関する方針・推進体制

・働き方・休み方改革を進めるため、2015年に人財本部内に「ワークスタイル変革推進室(現:ワークスタイル変革推進グループ」を設置した。部署のメンバーは企画担当5名、再雇用や業務統合など具体的業務の担当が5名。企画担当は、業務プロセス改革・RPAとワークスタイル変革推進全体の意識改革の2つをテーマとしている。
・同じく2015年より、ダイバーシティや働き方に関するトップメッセージを発信し、中期経営計画にも盛り込んでいる。
・労働時間や有給休暇取得の進捗管理のため、半期に1度勤務実績報告会を行い、部門ごとの労働時間や休暇取得状況の一覧を共有している。取得が進んでいない部門にとっての意識付けの場となっている。

2 導入している休暇関連の制度及び取組内容

・各部門において、組織長が中心となり個人の休暇取得実績と労働時間を一覧化し、誰がとれていないかを細かく確認している。
・法律に対応するため、年末の時点で5日間取得できていない社員に対してはアラートを出して取得の時期を決めてもらう予定である。
・7~9月の時期は夏休みとして1週間程度の長期休暇取得を推進している。自身の予定に合わせ一斉取得ではなく、一定期間内でそれぞれ取得してもらうようにしている。
・有給休暇取得促進のための取組の一環として、2017年の夏からワーケーションを実施している。休暇中の旅行先での仕事を勤務時間として認めるというもの。長期休暇を予定していても仕事の都合で変更せざるをえなかったり、そもそも休みをとりづらいという声が多かったため、導入した。
・ワーケーションの申請は、上司と相談したうえで通常の休暇申請と同様に行う。勤務時間管理はテレワークと同様で、始業・終業時に上司に連絡をすることとなっている。半日休暇と組み合わせた利用が多い。
・ワーケーションの利用実績は、2017年夏期11人日、2018年夏期78人日、2018年総計174人日。帰省にあわせて利用したり、週末の旅行と組み合わせて利用する人が多い。
・2019年5月からは、出張と休暇を組み合わせる「ブリージャー」(businessとleisureの造語)を導入した。もともと出張と休暇は組み合わせられないという規程だったが、これを見直したもの。多数の社員が取得しており関心の高さがうかがえる。

3 休暇取得促進に係る課題(取組を進める上での失敗談など)及び改善に向けた工夫

・ワーケーションを実施するにはテレワークをすることが前提となるが、テレワーク向けの仕事を行う人が多く、テレビ会議の活用がなかなか進まなかった。今後の取り組みのさらなる促進やBCPの観点においては、まずは一度やってみてもらうことが重要だと考え、テレワークデイズをきっかけとして部署で一斉にテレワークを行い、テレビ会議を試してもらうという取組を行った。その結果、テレワークの実施率が5割を超えた。

4 社員の休暇の質を高める取組(休暇の事前計画、休暇中の連絡ルール等、安心して休むための工夫、休み方のアドバイス、自己啓発・家族との時間の確保等)

・ワーケーションを広めるため、観光と仕事を組み合わせた体験ツアーを企画している。これまで、和歌山、徳之島(鹿児島県)、2019年度については、北海道、愛媛、オーストラリアで実施した。2019年度の企画についてはそれぞれの地域でボランティアや農業体験などのアクティビティと、業務を行えるワークスペースを用意した。日々のワーケーション取得についての費用は社員の自己負担が前提だが、当企画については、一部宿泊費の補助を行った。応募はすぐに集まり、ニーズの高さを感じている。

休暇取得促進による効果(職場における変化や、社員満足度への貢献等)

・ワーケーションの導入により、休暇の計画を前もって立てられるようになり、長期休暇がとりやすくなったという感想が聞かれている。
・また、実際に地方に行って様々な体験をすることで、自分の考えを深めることができ、仕事にも役立ったという声もある。
・所定外労働時間削減や有給休暇取得を進めることで、業務の優先順位を考え、社内資料の過剰な作り込みなど無駄な業務を減らしていこうという機運が社内全体として高まっている。特に管理職層の意識の変化が大きいと感じる。

働き方・休み方改善(特に休暇取得促進)に関する今後の展望

・会社や管理職に命じられるのではなく、社員ひとりひとりが広い視野を持ち、自分の働き方・休み方をマネジメントできるようになることが理想。そのために必要な社内制度を整えていきたい。
・取得日数だけでなく、休みを取りたいときに取れているかも重要。また、今後は現業に近い間接部門の特性も意識した取組を行っていく必要があると考えている。
・ワーケーションを進めていくには、旅行先に働ける環境があることが必要条件となるため、全国的にこの取組が広がっていくとよい。

(R2.3)

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