日本コムシス株式会社

(1)企業概要

社名
日本コムシス株式会社
PDF
業種/事業概要
建設業
従業員規模
2,901名
本社所在地
東京都
労働時間制度
・労働時間制度:通常の労働時間制(始業時刻6:30~10:30の変形労働時間制あり)
・標準始業終業時刻:8:30~17:00(休憩1時間)
・標準所定労働時間:7時間30分
・年間所定休日数:定休日+20日~25日(勤続年数に応じた年次有給休暇を発行)

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組

経営課題を議論していくなかで働き方に関する課題が多く、取組を全社的に集中して加速化させる必要があった。以前より、人材育成部を中心に女性活躍推進の取組をしてきたが、2017年7月に全社的に働き方改革を推進するため、ワークスタイルイノベーション推進室を立ち上げた。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ

今後、労働力不足への危機感などから女性活躍推進とは別の視点で、働き方を見直そうとしている。離職率が高いわけではないが、工事現場では平日は遅くまで、土日も出勤という働き方になってしまい、この働き方のままでは多様な人材を活用できない危機感があった。
多様な人材の確保・活用をテーマに改革を進めようとしている。生産性の向上や長時間労働の要因対策、業務の見直しと意識改革が重要だと考えている。業界的に、工期があるなど難しい部分があるなかで、どう働き方改革を進めていくべきか手探りの状況である。見識者のアドバイスをもらいたいと考え、応募した。

(3)働き方・休み方に関する現状・課題意識

1)課題認識

工事現場の現場代理人等(工事管理責任者)のリーダー職が長時間労働になりがちである。地域特性や受注形態により、業務の進め方、行動がまちまちである。業務マネジメントを個人任せになっている部分が多い。仕事の棚卸し、プロセスの選別、業務の平準化を行い、集約可能業務のセンター化や自動化により長時間労働者を無くしたい。
年休の取得について、決して取得率が高いわけではないが、まずは時間外労働の削減についてマネジメント強化というトップからのメッセージが出されていることもあり、時間外労働の削減を課題としている。
働き方・休み方について制度は整っているものの、意識改革がまだまだという認識でいる。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状・課題

①組織体制
・事業本部は、NTT事業本部、ドコモ事業本部、ITビジネス事業本部、社会基盤事業本部の4つである。
・4つの事業本部を軸に社会インフラを担う総合建設会社として事業を展開している。
・採用は、毎年50人程度で技術職が95%ほどである。共通的な研修の後、いずれかの事業本部に配属される。
・2017年7月にワークスタイルイノベーション推進室を設立。専任3名のほか、各事業本部の総括担当等が推進室を兼務しており、計12名が参画している。

②働き方
・どの事業本部もプロジェクト単位で仕事をしている。プロジェクトでは現場代理人等(工事管理責任者)が、社内規定に基づきプロジェクトを任される。現場代理人等(工事管理責任者)を目指すことが技術職のキャリアパスとなっている。
・現場代理人等(工事管理責任者)は、作業工程管理から現場の安全確保、発注者との交渉や行政、労基署対応など、役割が多岐にわたる。
・現場代理人等(工事管理責任者)は、プロジェクトの遂行を優先し、自分の労働時間を度外視する傾向の人が多い。仕事にのめり込みがちである。どの事業本部においても現場代理人等(工事管理責任者)の責任感が強い社員が長時間労働になりがちである。
・プロジェクト規模によりまちまちではあるが、小規模のプロジェクトであれば、複数のプロジェクトを兼任する場合もある。
・早ければ20代後半で現場代理人等(工事管理責任者)になる。必ずしも管理職が指名されるものでなく一般職も指名される。
・2017年度の36協定届出時間(年間)は780時間であった。2018年度は720時間にする予定である。

③休み方
・土日出勤を要する仕事も多く、有給休暇を取得する以前に、代休を確実に取得することが優先課題となっている。
・時間単位の休暇取得を認めており、子育て中の社員が保育園の送り迎えなどで活用している。

④マネジメント
【トップの意識】
・トップからワークスタイルイノベーションに関する方針が出されている。
・業務効率化、特に会議の効率化についてはトップが積極的に改善しようとしている。

【社員の意識】
・年1回のメンタルヘルスチェックを行っている。

⑤その他
【女性活躍の状況】
・女性社員数は全体の5%ほどである。
・昨今、技術職の女性も採用しているがほとんどが事務総合職である。

(4)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
ポジションマップ
ポジションマップ
レーダーチャート
レーダーチャート
<レーダーチャート>8つの指標得点詳細
働き方
休み方
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【働き方】

週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0.4%であった。

→全国の雇用者の平均値である7.0%(社員規模1000人以上のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%をともにクリアしている。

レーダーチャートの項目では、以下の項目が低め。
・項目4 <改善促進のルール化>指標
・項目5 <意識改善>指標
・項目7 <仕事の進め方改善>指標

【休み方】

年次有給休暇取得率は全社員平均47.3%であった。

→主要産業の平均値である54.7%(社員規模100人~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値70.0%に達していない。

レーダーチャートの項目では、以下の項目が低め。
・項目3 <改善促進の制度化>指標
・項目4 <改善促進のルール化>指標
・項目5 <意識改善>指標
・項目6 <情報提供・相談>指標
・項目7 <仕事の進め方改善>指標
・項目8 <実態把握・管理>指標

<全体傾向>
・働き方については、週60時間以上の労働者の割合は0.4%であり、全体としては労働時間が特に長いわけではないと考えられる。また、貴社提供データによると、2016年4月~2017年3月の平均労働時間は170時間程度であり、長時間労働が常態化している様子は見受けられない。<改善推進のルール>指標や<意識改善>指標、<仕事の進め方改善>指標が低く出ており、一部社員の長時間労働の改善の検討の余地があると見受けられる。
・休み方については、年次有給休暇取得率は47.3%であり、全国平均と比較して低く、課題があると見受けられる。<改善促進の制度化>指標や<改善推進のルール>指標、<意識改善>指標、<情報提供・相談>指標、<仕事の進め方改善>指標、<実態把握・管理>指標が低く出ており、制度面・意識面での改善を検討する余地がある。

※年次有給休暇取得率は、2016年4月~3月実績、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、2017年9月実績で算出した。

(5)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
System(システム)
項目3
改善促進の制度化
(休み方)
改善のための仕組みが十分整っていない
①業務の繁閑に応じた休業日の設定
・閑散期に企業全体・部署毎に休暇を設定する。
・部署毎の休暇設定が困難な場合は、当該部署メンバーが輪番で休暇を取得する。
・各部署の担当毎に、プロジェクトとプロジェクトの間に休暇を設定する。
②誕生日・記念日等の決まった日や申告した日を年次有給休暇とする等の休暇制度の設定
③ゴールデンウィークや夏季・冬季等、機会を捉えた年次有給休暇の計画的付与制度の導入
④時間単位での年次有給休暇制度の導入
⑤5営業日以上の連続休暇制度の導入
項目4
改善促進のルール化
(働き方)
長時間労働を抑制することにインセンティブが働く仕組みが十分でない
⑥部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む
・管理職の評価指標に部下の労働時間等を盛り込み、実際の労働時間の推移と比較し、人事考課に反映させる。
・部署単位で残業時間の縮減率を算出し、賞与時等の評価に反映させる。
・管理職のマネジメントに対して、部下が評価する仕組みを検討する。(回答者が特定されないよう配慮する)
⑦残業を行う際の手続きを厳格化
・残業を行う場合は事前申請を義務付け、管理職が残業の必要性・緊急度を精査し、不要・不急な残業を削減する。
・業務命令が行われない状態での残業を防ぐため、残業を行う際の手続きを厳格化し、実績報告を徹底する。残業が必要な場合は事前申請を義務付ける。
(休み方)
長時間労働を抑制することにインセンティブが働く仕組みが十分でない
⑧部下の年次有給休暇取得状況を管理職の人事考課に盛り込む
・管理職の評価指標に部下の年次有給休暇取得率等を盛り込み、実際の取得状況の推移と比較し、人事考課に反映させる。
・管理職のマネジメントに対して、部下が評価する仕組みを検討する。(回答者が特定されないよう配慮する)
⑨管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握・管理を義務づける
・役員会議等で年次有給休暇取得率の現状把握と取得促進方策の検討を徹底する。
・組織評価の指標として、所属員の年次有給休暇取得率の平均値等を盛り込む
Action(アクション)
項目5
意識改善
(働き方)
社員に対して長時間労働を抑制する意識を高める取組が十分実施できていない
⑩長時間労働の抑制に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
・労働時間を適切にすることと、高い生産性を両立するための管理職研修を実施する。
・管理職への昇進・昇格に長時間労働の抑制に関する教育・研修の受講を要件とする。
・一般社員に対する、仕事の進め方の効率に関する教育・研修を実施する。
⑪長時間労働抑制のための周知・啓発
・長時間の就労ができる社員が評価されるというイメージを払しょくするための職場風土改革を目指した各種情報発信を行う。
・長時間労働の抑制に関する成功事例を社内報に掲載して、関心を高める。
(休み方)
年次有給休暇を適切に取得する意識を高める取組が十分実施できていない
⑫年次有給休暇取得促進のための周知・啓発
・家族と過ごしたり、趣味に興じたり、自己啓発した事例を社内で集め、広く周知することで休暇取得の雰囲気を醸成する。
・年度(年間)計画策定時に、夏季・冬季における連続した年次有給休暇取得美の設定を行い、社内に周知する。
項目6
情報提供・相談
(休み方)
休み方の改善につながる情報提供や相談を十分実施できていない
⑬各自の年次有給休暇残日数の社員への通知
・給与明細に記載する、メールによる個別配信の実施など四半期等定期的に通知する
・本人・管理職に対して年次有給休暇が時効により失効する一定期間前に通知する。
・年次有給休暇取得率の低い(残日数の多い)社員に対し、個別の休暇取得勧奨(人事からのメール送信、パンフレットの配布等)を実施する
⑭制度の利用促進のための情報提供
・年次有給休暇の取得と個人の評価は関係がないことを社員に説明するほか人事評価マニュアル等の規定に明記する。
・上記内容をイントラネット、回覧、ポスター等による周知、職制による周知等の方法により社員の認知度を向上させる。
⑮個別の休暇取得奨励
・人事部等からのメールなどによる個別奨励を実施する。
項目7
仕事の進め方改善
(働き方)
職場において長時間労働の抑制につながる効率的な仕事の進め方が十分に実施できていない
(休み方)
職場において年次有給休暇などを取得しやすい業務改善が十分に実施できていない
⑯長時間労働の抑制を目的とした業務プロセスの見直し
・会議は所定時間内に設定する。(残業前提の会議時間を設定しない)
・会議セッティング時に会議の「ゴール」を明確にすることをルール化する。
・会議の出席者数、時間数、資料の量などについて、見直しの機会を設ける。
・各部署、社員ごとに短期・中長期における業務の優先順位の把握を適宜行う。
・残業が発生した原因の分析を行う。
⑰業務計画、要員計画、業務内容の見直し
・業務ローテーション等による多能工化を計画的に進める。
・緊急性の低い仕事を、終業間際や終業後に部下に指示しないようにする。
・業務の棚卸や要員配置のあり方についての検討と見直しを行う。
⑱長時間労働の抑制を目的とした取引先との関係見直し
・取引先に対して、長時間労働の抑制に向けた取組を説明するとともに、発注時に納期等にかかる配慮について理解を求める。
・著しい短納期等、長時間労働を誘発する発注については取引先に対して組織的な対応を検討する。

(6)初回訪問時の提案と検討内容

「働き方・休み方改善指標」に基づく提案をベースに、具体的な取組テーマの検討を実施した。提案内容および検討経緯は以下のとおり。

1)推進体制

①トップのコミットメント
・今回の短期的な取組と中長期的な施策の検討についてトップから情報発信をしてもらう。
②会社全体の推進体制
・ワークスタイルイノベーション推進室が、各事業部と連携して取組を推進する。

2)今回のモデル取組における推進体制

(1)対象部署の設定
・中長期的な施策については、部署を限定せず、全社的に行う。
・短期的な施策(下記の働き方改革トライアル)については、4事業本部ごとに比較的関心のある事業部門や推進力のある人材の在籍する部署を選出し、取組の実施を打診する。

(2)対象部署におけるプロジェクトリーダーの設定
・各部署に働き方推進担当者を設置。

3)中長期的な取組(制度・ワークルールの見直しや業務改善方針の設定等)

①業務の繁閑に応じた休業日の設定
②誕生日・記念日等の決まった日や申告した日を年次有給休暇とする等の休暇制度の設定
③ゴールデンウィークや夏季・冬季等、機会を捉えた年次有給休暇の計画的付与制度の導入
④時間単位での年次有給休暇制度の導入
⑤5営業日以上の連続休暇制度の導入
⑥部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む
⑦残業を行う際の手続きを厳格化
⑧部下の年次有給休暇取得状況を管理職の人事考課に盛り込む
⑨管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握・管理を義務づける
⑩長時間労働の抑制に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
⑪長時間労働抑制のための周知・啓発
⑫年次有給休暇取得促進のための周知・啓発
⑬各自の年次有給休暇残日数の社員への通知
⑭制度の利用促進のための情報提供
⑮個別の休暇取得奨励
⑯長時間労働の抑制を目的とした業務プロセスの見直し
⑰業務計画、要員計画、業務内容の見直し
⑱長時間労働の抑制を目的とした取引先との関係見直し
⑲社員の休暇取得に関する意識や意欲の定期的な把握
⑳管理職による年次有給休暇の取得日数の管理

検討経緯

①については、プロジェクトとプロジェクトの間に休暇を取得するように奨励している。
②③⑤⑬⑮⑲については、決まった日を休暇として設定することや、計画取得することをしていない。夏季休暇については、7月~9月の平日4日間と年次有給休暇取得を推奨している。休暇の取得率向上のための具体的な施策について検討する。
④については、既に時間単位での年次有給休暇制度を導入しており、女性を中心に利用実績もある。
⑥については、検討をする。
⑦については、4事業本部ごとに最適な申請方法を検討する。
⑧⑨⑳については、⑥と合わせて検討をする。
⑩については、今後の働き方改革の進め方によって検討することとする。
⑪⑫⑭については、周知・啓発はこれまでにも行われている。また、今後は社内報や社内ポータルサイト等にて働き方改革全体の動きの紹介とともに、長時間労働抑制や休暇取得について周知することとしている。
⑯⑰⑱については、すぐには実行できないものの、業務の効率化と長時間労働抑制をするためには見直していく必要があるため、検討課題とする。

4)短期的な取組(職場の働き方改革トライアル)

①在宅勤務トライアル
②会議効率化トライアル
③退社時間計画トライアル

(7)改善提案の活用

改善提案の検討の結果、今後実施・検討することになった取組は以下の通り。尚、既に取組を始めているものについては、実施状況も併せて記載する。

1)主な取組(推進体制)

1.トップのコミットメント
・今回の短期的な取組と中長期的な施策ついて、トップから情報を発信する。

2.会社全体の推進体制
・専任3名、兼務9名(各事業本部の総括担当等)からなるワークスタイルイノベーション推進室を中心に、全社的な働き方改革を推進する。
・2018年1月には、全国9支店にワークスタイルイノベーション部門を新設した。本部との連携と支店内での取組を推進していく。
・中長期的な施策については、推進者会議や委員会を設置し、各課題に関するワーキンググループにおいて検討を進める。例えば、働き方については「JOBの再定義とIT武装化」をキーワードに仕事の棚卸と業務プロセスの見直しを検討していく。

2)主な取組(中期的施策)

【休暇・休業の取得促進】
①誕生日・記念日等の決まった日や申告した日を年次有給休暇とする等の休暇制度の設定
②ゴールデンウィークや夏季・冬季等、機会を捉えた年次有給休暇の計画的付与制度の導入
③5営業日以上の連続休暇制度の導入
④年次有給休暇取得促進のための周知・啓発
⑤各自の年次有給休暇残日数の社員への通知
⑥個別の休暇取得奨励
⑦社員の休暇取得に関する意識や意欲の定期的な把握
・休業日や祝日等を数日の営業日がまたぐ際に休暇を取得するブリッジ休暇を促進することとした。全社的に取得を促すため、前もって日程と業務を調整する必要がある。現在は、2019年の年始に年次有給休暇の計画的付与を計画している。
・夏季においては、夏季休暇に加えて年次有給休暇を付与することで(プラスワン休暇)、長期休暇の取得促進を進めていくこととした。

【長時間労働抑制や年次有給休暇取得ための周知・啓発や情報提供】
⑧長時間労働抑制のための周知・啓発
⑨制度の利用促進のための情報提供
・適正労働時間WGによる月次管理
・推進者会議にて各事業本部の抑制施策を情報共有
・繁忙事業所への業務支援により業務の平準化


【業務の見直し】
⑩長時間労働の抑制を目的とした業務プロセスの見直し
⑪業務計画、要員計画、業務内容の見直し
⑫長時間労働の抑制を目的とした取引先との関係見直し
・推進者会議や委員会、ワーキングを通じて検討をしていく。

【管理職の人事考課への反映等】
⑬部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む
⑭部下の年次有給休暇取得状況を管理職の人事考課に盛り込む
⑮管理職による年次有給休暇の取得日数の管理
・推進者会議や委員会、ワーキングを通じて検討をしていく。

3)主な取組(短期的施策):退社時間計画トライアル

対象:4事業本部、管理職や現場代理人(プロジェクトリーダー)を含む111名
期間:2018年1月の1ヶ月間

トライアルの進め方
・トライアル実施にあたり、ワークスタイルイノベーション推進室が各部署に対して説明会を行い、トライアルの趣旨を説明した。トライアルにあたっては、事前・事後アンケートを実施し、トライアルの効果を測ることとした。

トライアル実施要領
・参加者には、退社目標時間をスケジューラーに入力してもらった。個々人の目標時間を周囲の人がみられるように、どの参加者にも社内ポータルのスケジューラー機能を活用してもらった。
・スケジューラーへの入力ルールは、「毎日の退社時間を個人ごとに設定する」「始業時には当日の帰宅予定時間が入力されている」「予定変更等に合わせて都度更新する」「プライベート及び時間外勤務の予定が見えているものについては事前に入力する」「終礼にて残務と業務分担や進め方を確認する」を基本ルールとした。その他に部署ごとの個別ルールを決めてもらった。

トライアル実施状況
・参加者のおよそ7割が週4日以上、退社目標時間を設定した。退社時間の目標とすべき時間帯についてルールは設けなかったが、参加者の65%が19時台以前の退社を目標とした。
・トライアル期間中、参加者の9割以上がスケジューラーを活用した。
・トライアルの中間地点で、参加者からの意見収集を行った。
・トライアル達成率は、達成率(退社時間を設定した日数に対して、目標時間までに退社できた日数の割合)が5割以上だったのは、一般社員の7割、現場代理人の5割であった。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

今後実施・検討することになった取組のうち、2017年度に効果が確認できたものは以下の通り。

1)主な取組(トップのコミットメントと推進体制の構築)

-

2)主な取組(中期的施策)

⇒今後順次実施し、効果を確認する予定

3)主な取組(短期的施策):退社時間計画トライアル

①主な効果
・トライアルの中間時点で、意見収集を行ったところ、若手社員や50代以降の社員からは「帰りやすくなった」との意見が多く聞かれた。
・事前アンケートと事後アンケートの結果を比較すると、在社時間の若干の短縮がみられた。
・トライアルを始める前には6割超の社員が、「締め切りや納期内に業務が終わらない」という不安を感じていた。しかし、トライアル期間中に実際にそのような問題が生じたと回答した社員は3割未満であり、業務に対する認識の変化がみられた。
・現場代理人への効果に着目すると、在社時間には大きな変化がみられなかったが、仕事と生活の満足度に若干の改善がみられた。
・トライアルを含めた働き方改革の取組の仕事への効果として、参加者の2割が「メンバー間でのコミュニケーションが増え、チームワークが向上した」と回答しており、組織として働き方改革に取り組む効果がみられた。一方、全体の4割がトライアルを含めた働き方改革の取組の仕事への効果について、何も効果を感じられなかったと回答しており、効果は限定的であった。

②今後に向けての課題・方向性
・意見収集時に聞かれた意見や、アンケートでの自由回答では、スケジューラーの使いづらさを指摘する声があった。また、スケジューラー以外にもシステム環境の改善要望がみられた。この点については、中長期的な検討をしていく必要がある。
・退社時間計画の手法は今後、他部署への展開を検討している。まずは、今回のトライアルの成果と改善点を各参加部署と整理する。また、社内ポータルにて今回の取組を周知する。
・属人的に仕事が偏っている状況があるため、業務の進め方や役割分担の見直し、仕事の棚卸し等が課題であり、退社時間計画の展開とセットで行っていく。

対策案の提案状況

  働き方 休み方
1.Vision ①方針・目標の明確化
2.System ①改善推進の体制づくり
②改善推進の制度化
③改善推進のルール化
3.Action ①意識改善
②情報提供・相談
③仕事の進め方
4.Check ①実態把握・管理

提案内容の概要

中長期的な取組

  • 誕生日・記念日等の決まった日や申告した日を年次有給休暇とする等の休暇制度の設定
  • ゴールデンウィークや夏季・冬季等、機会を捉えた年次有給休暇の計画的付与制度の導入
  • 5営業日以上の連続休暇制度の導入
  • 年次有給休暇取得促進のための周知・啓発
  • 各自の年次有給休暇残日数の社員への通知
  • 個別の休暇取得奨励
  • 社員の休暇取得に関する意識や意欲の定期的な把握
  • 長時間労働抑制のための周知・啓発
  • 制度の利用促進のための情報提供
  • 長時間労働の抑制を目的とした業務プロセスの見直し
  • 業務計画、要員計画、業務内容の見直し
  • 長時間労働の抑制を目的とした取引先との関係見直し
  • 部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む
  • 部下の年次有給休暇取得状況を管理職の人事考課に盛り込む
  • 管理職による年次有給休暇の取得日数の管理

短期的な取組

  • 退社時間計画トライアル
(H30.3)

事例を評価する