株式会社大起エンゼルヘルプ

(1)企業概要

社名
株式会社大起エンゼルヘルプ
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業種/事業概要
介護事業
従業員規模
666名(正社員384名、非正社員282名)
本社所在地
東京都
労働時間制度
・労働時間制度:通常の労働時間制
・標準始業終業時刻:事業所により異なる
・標準所定労働時間:8時間
・年間所定休日数:105日

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組

近年人材の確保が難しくなってきており、多様な働き方を可能とすることで企業の魅力を高め、採用数の増加につなげたいと考えている。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ

型にはまった取組ではなく、自社にあった取組についてアドバイスがもらえることを期待して応募した。多様な現場があるので、一つの目標を決めて取り組むというよりも、それぞれの仕事に応じた柔軟な働き方が可能となるような仕組みを作っていきたいと考えており、そうした動きを進めるためのきっかけとしたい。

(3)働き方・休み方に関する現状・課題意識

1)人事部の課題認識

・個人によるばらつきよりも、事業所による偏りが大きい。特に時間外労働が多いのは訪問入浴等の訪問系のサービス。施設系では、人員不足を補うための休日出勤が多くなっている。
・毎年150名程度を採用しているが、同数程度が離職している。離職者の傾向としては、無資格未経験者の早期離職、賃金を理由とした同業他社への転職、異業種への転職が多い。
・働き方を改善することで、人材の確保・定着につなげていきたい。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状

①組織体制
・事業所は、入所系、訪問系に大きく分かれる。
・社員は全体で666名。うち、正社員384名、非正社員282名となっている。
②働き方
・入所系と訪問系で課題が異なる。入所系の施設は、法律で人員配置基準が定められているため、人員が不足している事業所では、基準を満たすために職員が休日出勤をせざるをえないという状況になっている。
・一方、訪問系の事業、特に訪問入浴事業は、利用者の利用時間帯が広がってきており、それに対応するため長時間労働となっている。午前中・午後でシフトをわけることも検討しているが、人員が不足しており難しい。訪問介護は、人員に対して業務量を調整できており、そこまで残業が発生していない。
・1カ月の残業時間が45時間を超える社員は、全社で40名ほど。非正社員を含めた全社員に占める割合としては5~6%となっている。
③休み方
・上述のとおり、特に入所系の事業所で休みがとれないという課題がある。
・雇用形態による違いも大きい。パートの有給取得率は高い。また、退職時に残っている有休を消化する職員が多いため、離職率が上がると有給取得率が高くなる。勤続者に限定して取得率をみると、より低くなる。

3)マネジメント

【トップの意識・組織風土】
・社長としては、全社一律で働き方を変えるのではなく、それぞれの仕事の特性に応じた柔軟な働き方ができるようになるべきと考えている。国の目標達成を目指すのではなく、今の職場の状況に応じた制度を検討していきたい。
・社長や人事部の役割は、現場のバックアップ。現場でアイデアが出てこないときに助言したり、現場の取組を後押しするための制度を検討したりする立ち位置だと考えている。
・事業部ごとに役員が配置されており、それぞれが自主的に動いている。会社が主導するというよりも、各事業部の自主性を重視している。人事部が主導で進めても、現場の賛同が得られにくい。ただ、働き方改革に対して積極的な役員もいれば、そうではない役員もおり、事業部間で取組の温度差はある。

(4)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
ポジションマップ
ポジションマップ
レーダーチャート
レーダーチャート
<レーダーチャート>8つの指標得点詳細
働き方
休み方
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【働き方】

週労働時間60時間以上の雇用者の割合は3.4%であった。

→全国の雇用者の平均値である7.8%(社員規模100人~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%をともにクリアしている。
(36協定で定める労働時間の延長の限度基準である1か月45時間を超える社員は約5%(注1)いる。)
(注1)繁忙期における値。

レーダーチャートの項目では、以下項目が低め。
・項目2 <改善推進の体制づくり> 指標
・項目3 <改善推進の体制づくり> 指標
・項目4 <改善促進のルール化> 指標
・項目5 <意識改善> 指標
・項目7 <仕事の進め方改善> 指標

【休み方】

年次有給休暇取得率は全社員平均55.5%であった。

→貴社の年次有給休暇の取得率は、主要産業の平均値である45.9%(社員規模100人~999人のカテゴリ)はクリアしているが、国の定める目標値70.0%には達していない。

レーダーチャートの項目では、以下項目が低め。
・項目1 <方針・目標の明確化> 指標
・項目2 <改善推進の体制づくり> 指標
・項目3 <改善促進の制度化> 指標
・項目4 <改善促進のルール化> 指標
・項目5 <意識改善> 指標
・項目7 <仕事の進め方改善> 指標
・項目8 <実態把握・管理> 指標

<全体傾向>
・働き方については、週60時間以上の労働者の割合は3.4%となっており、突出して長時間労働となっている社員はそれほど多くない。しかし、課題意識として、特定のサービスや担当業務によって時間外労働が集中しているとのことであり、実態を確認する必要がある。8つの指標においては、Systemに関する<改善推進の体制づくり>指標、Actionに関する<仕事の進め方改善>指標が低くなっている。課題意識にも総務・人事部や管理者の時間外労働削減に対する意識の低さが挙げられており、長時間労働抑制のための推進体制やルールを構築するとともに、長時間労働の抑制に関する社員や管理職向けの教育・研修、業務プロセスや内容の見直しといった取組について、検討する必要がある。
・休み方については、年次有給休暇取得率は55.5%であり、主要産業の平均値と同水準であるが、国の定める目標値は下回っている。課題意識として、サービス内容的に有休が取りにくい仕事があるとのこと。また、8つの指標においては、<情報提供・相談>指標を除いていずれも取り組まれていない状況となっている。そのため、まずは休暇取得推進という方針を明確にした上で、長時間労働の抑制とあわせて休暇取得に関する推進体制を整備し、働き方を見直して休暇時のフォローアップ体制を構築するとともに、休み方の選択肢を増やしたり、管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握を義務づけたりする取組が必要であると考えられる。

※年次有給休暇取得率は、2016年4月~3月実績、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、2017年9月実績で算出した。なお、対象は非正社員を含めた全社員である。

(5)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
休み方について、会社の方針・目標が明確になっていない
・年次有給休暇の取得に向けた経営トップからのメッセージ発信
・年次有給休暇の取得促進を経営や人事の方針として明確化
・全社・部署・個人等で年次有給休暇取得日数、取得率等に関する数値目標を設定
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
働き方・休み方について、改善のための体制ができていない
・長時間労働の抑制・年次有給休暇の取得促進に向けた社内体制の明確化
・労働時間・休暇取得に関する相談窓口の設置
・長時間労働抑制・休暇所得に関する労使の話し合いの機会の設定
項目3
改善促進の制度化
効率的な働き方を行う仕組みや、休みを取得しやすくする仕組みが整っていない
・労働時間・就労場所を柔軟にする制度の導入(①)
・業務繁閑に応じた営業日・休業日の設定
・勤務間インターバル制度を導入(②)
・誕生日・記念日等の決まった日や申告した日を年次有給休暇とする等の休暇制度の設定
・ゴールデンウィークや夏期・冬期等、機会を捉えた年次有給休暇の計画的付与制度の導入
・時間単位での年次有給休暇制度等の導入(③)
・5営業日以上の連続休暇制度の導入
項目4
改善促進のルール化
長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得にインセンティブが働く仕組みとなっていない
・残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進(④)
・部下の長時間労働抑制や年次有給休暇の取得状況の管理を、管理職の人事考課(評価)に盛り込む
Action(アクション)
項目5
意識改善
社員に対して、長時間労働抑制や休暇取得に向けた意識を高める取組が行われていない
・長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施(⑤)
・長時間労働抑制・休暇取得のための周知・啓発
・退勤時刻の終業呼びかけ、強制消灯
項目7
仕事の進め方改善
長時間労働の抑制や、年次有給休暇などの取得しやすさにつながる業務改善が、十分実施できていない
・長時間労働や年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し(⑥)
・業務計画、要員計画、業務内容の見直し
・長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進を目的とした目的とした取引先との関係見直し
・休暇・休業時の業務フォローアップ体制の構築(顧客・取引先情報の共有等)
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
休み方について、十分な実態把握・管理ができていない
・社員の休暇取得に関する意識や意向の定期的な把握
・管理職による年次有給休暇の取得日数の管理(⑦)

(6)初回訪問時の提案と検討内容

初回訪問時の提案と検討内容は以下のとおり。

1)推進体制

(1)トップのコミットメント *必須
・すでに社長から方針は発信済み。
(2)会社全体の推進体制 *必須
・事業部ごとに役員をトップとした働き方改革に関するチームを作り、それぞれ自分の部にあった働き方改革の取組を検討してもらいながら、人事部は事務局として、働き方改革につながる情報を提供し、事業部ごとの取組をサポートする体制をつくるとともに、全社的な雇用制度の改革を検討することを提案。
・あわせて、職員をうまく巻き込めるよう、キャッチーなプロジェクト名・チーム名をつけたり、わかりやすい目標を設定し、ポータルサイト等で周知をすすめることを提案。

2)今回のモデル取組における推進体制

(1)対象部署の設定 
・事業部ごとに検討。
(2)対象部署におけるプロジェクトリーダーの設定
・事業部ごとに検討。
(3)コアメンバーの設定
・事業部ごとに検討。

3)中長期的な取組(制度・ワークルールの見直しや業務改善方針の設定等)

①労働時間・就労場所を柔軟にする制度の導入
②勤務間インターバル制度を導入
③時間単位での年次有給休暇制度等の導入
④残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
・管理職の人事考課への項目追加等によって、労働時間を把握するだけではなく、部下が抱えている仕事を把握し、整理することが管理職の仕事だと伝えることを提案。
⑤長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
・Eラーニング等を活用し、最低限管理職が知っておくべき労務管理上の知識については学べる体制を整えることを提案。
⑥長時間労働改善や年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し
⑦管理職による年次有給休暇の取得日数の管理
・管理職による部下の休暇日数把握とともに、職員個人単位での有給休暇の計画取得を提案。

検討経緯

①は、訪問入浴事業部で、1日8時間週5日勤務と、1日10時間週4日勤務を選べるようにすることで、残業時間を減らすことを検討中。
②は、施設系の事業所について、現在夜勤の場合16時間拘束(うち2時間休憩)となっているが、12時間に減らすことを検討中。
③は、人員配置基準の関係上、職員全員を対象とするのは難しいとのこと。特に、実は一人数で基準が定められているグループホームでは難しい。ただし、訪問介護や事務職などは問題なく導入できる。訪問入浴は、3人一組で動くことから、1日の前半と後半でメンバーを入れ替えることで休暇を取得しやすくできないか提案。
④は、特に残業が多い訪問入浴事業部については、社長や人事部も加わって対策を検討し、改善を促している。
⑤は、全管理職を集めての研修をすることが難しいとのことから、Eラーニング等を活用した研修の実施を提案した。
⑥は、移動時間の長さが課題となっている訪問入浴事業部と福祉用具事業部において、拠点の分割および他拠点を活用した直行直帰の取組を検討中。
⑦は、年に1回、5日間程度の連続休暇の計画取得ができないか検討している。訪問入浴では夏が忙しい(入浴回数が増えるため)、訪問介護ではパート社員が多く、子どもが休みの時期に休暇取得者が多くなるなど、事業部によって年間の繁閑差があるので、それぞれの事業部の特性に応じて計画取得を行う時期を決める。

4)短期的な取組(職場の働き方改革トライアル)

①在宅勤務トライアル
・現在のところ在宅勤務は導入していない。
②会議効率化トライアル
・各事業所に取組に関する資料配付。
③退社時間計画トライアル
・各事業所に取組に関する資料配付。
・福祉用具の部署で取組を検討中。1ヶ月のうちに定時帰宅する日を個人で決める。

検討経緯

①は、これから産休・育休に入る社員がいるため、復帰後に業務を在宅でできる体制を整えられないか検討中。
②は、すでに会議の効率化(時間短縮や回数削減等)に多くの事業所で取り組んでおり、あまり課題とはなっていないとのこと。
③は、福祉用具事業部にて取組を検討中。

(7)改善提案の活用

初回訪問における検討を踏まえた改善提案は以下のとおり。

1)主な取組(推進体制)

①会社全体の推進体制
・各事業部で役員をトップとしたワーキングチームを立ち上げ、対象部署、各部署の推進リーダー、コアメンバーを選定する。
・人事部は事務局としての推進体制をつくり、情報提供等のサポートを行う。

2)主な取組(中期的施策)

①労働時間・就労場所を柔軟にする制度の導入
・訪問入浴事業部で、1日8時間週5日勤務と、1日10時間週4日勤務を選べるような採用を開始した。目的は、1日の拘束時間を長くすることで残業時間を減らし、採用につなげること。現在の状況で実施してしまうと人手が足りなくなるため、徐々に実施していく。
②勤務間インターバル制度を導入
・施設系の事業所について、現在夜勤の場合16時間拘束(うち2時間休憩)となっているが、12時間に減らすことを検討していく。
③時間単位での年次有給休暇制度等の導入
・導入が可能かどうか、事業部ごとに検討する。
④残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進 
・特に残業が多い訪問入浴事業部については、社長や人事部も加わって対策を検討し、改善を促していく。
⑤長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
・Eラーニング等、全管理職が受講できるような体制作りを検討する。
⑥拠点の見直し
・訪問入浴事業部では、事業所~訪問先間の移動時間の増加が残業時間の長さにつながっていたことから、訪問先に近い社内の別事業所に車を停め、直行あるいは直帰してもよいという取組を試験的に1ヶ月間実施している。まずは1週間のうち1日取り組むこととしている。
・福祉用具の部署でも、これまで1拠点で都内全域を担当していたところを、東西2拠点に分割した。非効率な移動時間を減らすことで残業時間の削減につなげていく。
⑦有給休暇の計画取得
・事業部ごとに繁閑差に応じて、年に1回5日間程度の連続休暇の計画取得を実施する。

3)主な取組(短期的施策)

①退社時間計画トライアル
・福祉用具の事業部で実施予定。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

今後実施・検討することになった取組のうち、2017年度に効果が確認できたものは以下の通り。

1)主な取組(推進体制):会社全体の推進体制

①主な効果
・これまでは人事部が全社一律の制度を検討することが主だったが、今回は各事業部が管理職を中心として主体的に課題や取組を検討してもらった結果、現場に当事者意識が生まれ、事業部ごとに独自の取組案も出てくるようになった。
②今後に向けての課題・方向性
・多くの事業部に共通した課題や、一事業部での解決が困難な課題については、人事部が集約した上で全社的な検討を行い、制度の見直し等を行っていく。

2)主な取組(中長期的施策):拠点の見直し

①主な効果
・福祉用具の部署では、拠点の分割により、移動時間が削減でき残業時間が減少した。拠点を分割したことで、拠点間にいい意味での競争意識も生まれている。
②今後に向けての課題・方向性
・現在、訪問入浴事業部で他拠点を活用した直行直帰の取組を試行している。取組の結果、他拠点の利用が多いことがわかれば、その場所に訪問入浴の拠点を新たに設けることも検討していく。

対策案の提案状況

  働き方 休み方
1.Vision ①方針・目標の明確化
2.System ①改善推進の体制づくり
②改善推進の制度化
③改善推進のルール化
3.Action ①意識改善
②情報提供・相談
③仕事の進め方
4.Check ①実態把握・管理

提案内容の概要

中長期的な取組

  • 労働時間・就労場所を柔軟にする制度の導入
  • 勤務間インターバル制度を導入
  • 時間単位での年次有給休暇制度等の導入
  • 残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
  • 長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
  • 長時間労働改善や年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し
  • 管理職による年次有給休暇の取得日数の管理

短期的な取組

  • 退社時間計画トライアル
(H30.3)

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