株式会社ヒキフネ

(1)企業概要

社名
株式会社ヒキフネ
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業種/事業概要
製造業
従業員規模
95名
本社所在地
東京都
労働時間制度
・労働時間制度:変形労働時間制(営業・研究職はみなし労働時間制)
・標準始業終業時刻:8:30から17:30(休憩60分)
・標準所定労働時間:8時間
・年間所定休日数:106日(2017年)

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組

社員の意識調査を実施したところ、有給休暇がとれない、残業が多いという意見が多く出ていたことから、2017年9月より下記3つの取組を開始した。
①有給休暇の取得促進
・会社の休業日を段階的に増やしていく。昨年までは105日だったが、2017年に106日、2018年に108日とする。
・有給休暇の計画取得を実施。4半期ごとに1日取得日を上司が調整し、必ず取得。計画的付与以外の有給休暇も含め、年間8日は取得することを目標とする。12月より実施予定。
②所定外労働の削減
・定時後に行われている会議について、出席者や開始時間の見直しを行う。
③社内のコミュニケーションの見直し
・言葉遣いに対する不満がアンケートで出ていたため、今後意識啓発を行っていく。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ

上記の取組を始める時期と本事業の応募時期が一致していたため、第三者から見たアドバイスを得られればと思い応募した。

(3)働き方・休み方に関する現状・課題意識

1)人事部の課題認識

・上述のように、意識調査を行ったところ長時間労働と休みがとれないことに対する不満が高いことが明らかになったため、なんとか対応していかなければならないと感じている。採用活動にあたっても、労働環境の改善は重要なポイントになると考えている。
・一方で、残業を減らしたり休みを増やしたりして売上が落ちてしまうことは避けたい。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状

①組織体制
・顧客から受注を受けて製造を行うため、顧客からの発注状況で忙しさが変わってくる。人員が限られているため、急ぎの発注があれば残業や休日出勤で対応せざるをえない。
・社員の男女比は半々。子どもをもつ女性社員も近年増えてきている。
②働き方
・残業は、多い人は月40時間程度、少ない人は0時間。平均すると10時間程度になる。
・忙しさは部署によって異なる。以前からジョブローテーションも検討しているが、専門性の高い業務ということもあり、実現できていない。
③休み方
・小さい子どもをもつ女性社員の有休取得率は高いが、現場の男性社員などはあまり取得していない。アンケートでは、自分が休んでしまうと現場がまわらなくなってしまうのではと感じて取得しづらいという意見が出ていた。管理職も休まないので、若手が休みづらいという雰囲気もあるかもしれない。
・社員によっては、休日出勤をしている者もいる。

3)マネジメント

【トップの意識・組織風土】
・アンケートの結果を踏まえて働き方の見直しを行っていくという方針を、全社員が参加する経営会議の場で社長から伝えている。
【労働時間についての制度等】
・変形労働制をとっており、毎月第2土曜日に経営報告会を行っている。以前は出席が必須であり、子どもの学校行事等で休まざるを得ないときは欠勤扱いであったが、育児中の社員も増えてきたため、今年10月から有休取得を可能とした。
・今年6月から、毎月第1水曜日にノー残業デーを実施している。基本的には全社員が実施できているが、その分、前後にしわよせがいってしまっている。
【会議の状況】
・日中は工場現場の業務があるため、会議は定時以降に行っている。業務後に30分程度のメンテナンスが必要な部署があるため、開始時間は18時になることが多い。一方、メンテナンスが必要ない部署もあり、そうした部署の参加者は会議開始まで時間が30分空いてしまう。
・定例の会議として、月に1回の全社員を対象とした経営報告会議のほか、部課長を対象とした経営会議が月に1回、役員会議が週に1回ある。現場では、品質会議が定期的に実施される。課題の改善ができないと、議題がどんどん増え、長時間になってしまう。

(4)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
ポジションマップ
ポジションマップ
レーダーチャート
レーダーチャート
<レーダーチャート>8つの指標得点詳細
働き方
休み方
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【働き方】

週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0%であった。

→全国の雇用者の平均値である7.8%(社員規模100人~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%をともにクリアしている。
(36協定で定める労働時間の延長の限度基準である1か月45時間を超える社員は数名(注1)いる。)
(注1)繁忙期における値。

レーダーチャートの項目では、以下項目が低め。
・項目2 <改善推進の体制づくり> 指標
・項目4 <改善促進のルール化> 指標
・項目5 <意識改善> 指標
・項目7 <仕事の進め方改善> 指標

【休み方】

年次有給休暇取得率は全社員平均21.3%であった。

→貴社の年次有給休暇の取得率は、主要産業の平均値である45.9%(社員規模100人~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値70.0%にはいずれも達していない。

レーダーチャートの項目では、以下項目が低め。
・項目2 <改善推進の体制づくり> 指標
・項目3 <改善促進の制度化> 指標
・項目5 <意識改善> 指標
・項目7 <仕事の進め方改善> 指標
・項目8 <実態把握・管理> 指標

<全体傾向>
・働き方については、週60時間以上の労働者の割合は0%であり、時間外労働が突出的に多い社員はほぼいないものと考えられる。しかし、課題意識としては、受注が多い時期の長時間労働や、定時外の会議による拘束時間の長さが指摘されており、8つの指標においては、Systemに関する<改善推進の体制づくり>指標や<改善促進のルール化>指標、Actionに関する<意識改善>指標、<仕事の進め方改善>指標が低くなっている。このため、長時間労働抑制のための推進体制やルールを構築するとともに、長時間労働の抑制に関する社員や管理職向けの教育・研修、業務プロセスや内容の見直しといった取組について、検討していく余地があるものと考える。

・休み方については、年次有給休暇取得率は21.3%であり、主要産業の平均値を大きく下回っている。課題意識として、人員が限られており、本人が希望する時期に休暇を取得できないという状況が挙げられている。また、8つの指標においては、Systemに関する<改善推進の体制づくり>指標や<改善促進の制度化>指標、Actionに関する<意識改善>指標、<仕事の進め方改善>指標、Checkに関する<実態把握・管理>指標が低くなっている。そのため、長時間労働の抑制とあわせて休暇取得に関する推進体制を整備し、働き方を見直して休暇時のフォローアップ体制を構築するとともに、休み方の選択肢を増やしたり、業務繁閑に応じた休暇を設定したりする取組が必要であると考えられる。

※年次有給休暇取得率は、2016年4月~3月実績、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、2017年9月実績で算出した。

(5)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
働き方・休み方について、改善のための体制ができていない
・長時間労働の抑制・年次有給休暇の取得促進に向けた社内体制の明確化
・労働時間・休暇取得に関する相談窓口の設置
・長時間労働抑制・休暇所得に関する労使の話し合いの機会の設定
項目3
改善促進の制度化
休みを取得しやすくする仕組みが整っていない
・業務繁閑に応じた休業日の設定(①)
・誕生日・記念日等の決まった日や申告した日を年次有給休暇とする等の休暇制度の設定
・ゴールデンウィークや夏期・冬期等、機会を捉えた年次有給休暇の計画的付与制度の導入
・時間単位での年次有給休暇制度等の導入(②)
・5営業日以上の連続休暇制度の導入
項目4
改善促進のルール化
長時間労働を抑制することにインセンティブが働く仕組みとなっていない
・残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進(③)
・部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む
・残業を行う際の手続きを厳格化
Action(アクション)
項目5
意識改善
社員に対して、長時間労働抑制や休暇取得に向けた意識を高める取組が行われていない
・長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施(④)
・長時間労働抑制・休暇取得のための周知・啓発(⑤)
・退勤時刻の終業呼びかけ、強制消灯
項目7
仕事の進め方改善
働き方・休み方について、長時間労働の抑制や、年次有給休暇などの取得しやすさにつながる業務改善が、十分実施できていない
・長時間労働や年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し(⑥)
・業務計画、要員計画、業務内容の見直し
・長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進を目的とした目的とした取引先との関係見直し
・休暇・休業時の業務フォローアップ体制の構築(顧客・取引先情報の共有等)(⑦)
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
休み方に関する実態を把握できていない
・社員の休暇取得に関する意識や意向の定期的な把握(⑧)
・管理職による年次有給休暇の取得日数の管理

(6)初回訪問時の提案と検討内容

「働き方・休み方改善指標」に基づく提案をベースに、具体的な取組テーマの検討を実施した。提案内容および検討経緯は以下のとおり。

1)推進体制

①会社全体の推進体制
基本的には社長をトップとする経営会議で方針を決定していくとのことだが、現場の社員にも案を提示し、意見を聞くことを提案した。

2)今回のモデル取組における推進体制

①対象部署の設定
全社で実施する。
②対象部署におけるプロジェクトリーダーの設定
総務課を中心に取組を推進する。
③コアメンバーの設定
特になし(総務課を中心に呼びかけ)

3)中長期的な取組(制度・ワークルールの見直しや業務改善方針の設定等)

①業務繁閑に応じた休業日の設定
②時間単位での年次有給休暇制度等の導入
③残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
④長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
自身のタイムマネジメントに関する意識を高める研修や、どういった働き方をしている人を評価するかという人事評価に関する研修(管理職向け)などの実施を検討することを提案した。また、コンプライアンスに関する内容等、必ず管理職層が学んでおくべきものについては、Eラーニングを活用することも提案した。
⑤長時間労働抑制・休暇取得のための周知・啓発
⑥長時間労働や年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し
⑦休暇・休業時の業務フォローアップ体制の構築(顧客・取引先情報の共有等)
⑧社員の休暇取得に関する意識や意向の定期的な把握
⑨(新規検討)年間を通した育成計画の策定
ベテラン層への業務の偏りを改善するため、若手の育成計画を策定することを提案した。閑散期に集中して若手社員の教育を行い、ベテラン社員が持つ高度なスキルを伝えていくことで、多能工化につながり業務の偏りが解消されると考えられる。あわせてスキルマップを作成し、習得が必要なスキルの明確化をすることを提案した。

検討経緯

①、⑤は、すでに有給休暇の計画取得の取組を2017年12月より開始すること、また2018年にかけて年間休日数を増やすことが決定しており、その取組を着実に実施する。
②は、まずは1日単位の有給休暇取得をすすめることを優先するため、今回は見送りとする。
③は、ストレスチェックの結果がよくない部署について、管理職に結果を伝え、改善の取組を促している。
④は、2017年12月より研修制度を導入し、さまざまなカリキュラムを社員が自主的に受講できるようになっている。その中に人事評価等に関する講座もあるため、管理職層に受講を薦めていくことを検討。
⑥は、毎月第2土曜日に実施していた経営会議について、これまで欠席の際は欠勤扱いとしていたが、2017年10月より有休取得を可能とした。
⑦は、有給休暇の取得予定を事前に共有することで、休暇取得者が出ても業務に支障が出ないよう部署間で調整することを検討。また、同じ等級であっても担える業務の種類が多様な社員をより高く評価する制度の導入を検討。
⑧は、意識調査をこれまでに2回実施済み。

4)短期的な取組(職場の働き方改革トライアル)

①会議効率化トライアル
会議効率化トライアルとして、開始時間・終了時間を守る、事前に自部署分だけでも資料に目を通すという取組を実施することを提案した。また、開始時間が所定時間外となっていたため、所定時間内に会議を開始することを提案した。

(7)改善提案の活用

改善提案の検討の結果、今後実施・検討することになった取組は以下の通り。尚、既に取組を始めているものについては、実施状況も併せて記載する。

1)主な取組(トップのコミットメントと推進体制の構築)

①会社全体の推進体制
中心となるのは社長と総務部取締役。方針を役員会議で検討し、部課長会議で意見を聞いて具体的取組を決定。その後、全社員が参加する経営報告会で説明する。

2)主な取組(中期的施策)

①休暇取得促進のため、以下の取組を推進
1.有給休暇の計画取得(3ヶ月に1日):各部署に所定のフォームを配付し、取得予定を記入
2.経営報告会(毎月第2土曜日)を有給休暇取得可能とする
3.年間所定休日の増加(2016年:105日、2017年:106日、2018年:108日)

②ストレスチェックの結果を踏まえた管理職への指導、改善促進
ストレスチェックの結果がよくない部署について、管理職に結果を伝え、改善の取組を促す。

③長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
2017年12月より導入した研修制度を活用。人事評価やマネジメントに関する講座の受講を管理職層に薦める。また、全体の受講状況を定期的に社員に伝えるなど、受講意欲をもってもらえるような働きかけを行う。

④年間を通した育成計画の策定
ベテラン層のスキルを若手に伝え、業務量の平準化を図るため、年間を通した育成計画を年度当初に策定する。上司がどの若手にどういったスキルをどの時期に習得させるかという計画を立て、ベテラン層を指導役としてOJTを実施。繁閑差を見越し、業務が落ち着いている時期に集中的に育成を行う。また、どのようなスキルが必要なのかを明確にするため、スキルマップの作成も検討する。

⑤人事制度の見直し
休暇取得時のフォローアップ体制の構築に向けて、同じ等級であっても担える業務の種類が多様な社員をより高く評価する制度の導入を検討する。

3)主な取組(短期的施策):会議効率化トライアル

短期的施策として、「会議効率化トライアル」を実施した。
①推進体制
•対象部署:全社(特定の会議において実施)
•対象部署におけるプロジェクトリーダー:総務課
•コアメンバー:今回は特になし(総務課を中心に呼びかけ)
②取組内容
•会議効率化に向けて、最初に会議グランド・ルールを以下のとおり設定した。
1.開始終了時刻を守る。
2.事前または冒頭に前回のアウトプットを確認してから会議を進める。
3.5W1Hを記録して終了。
•その上で、定例の安全衛生委員会をコア会議として設定し、トライアルを行った。
•まず安全衛生委員会について、生産を優先するために18時開始であったものを、16時半開始に変更した。定時は17時半であり、これまでは終業時刻後に会議を実施していた。
•会議の参加人数も減らした。会議開始時間の16時半は工場業務を行っているため、これまで一部署から2名出てもらっていたところを1名にし、会議の内容は朝礼で伝達してもらうようにした。
③実施期間
2017年12月~

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

今後実施・検討することになった取組のうち、2017年度に効果が確認できたものは以下の通り。

1)主な取組(中長期的施策):有給休暇の計画取得

①主な効果
•12月~2月の期間においては、現在のところ全員が計画通りに取得できている。事前に部署間で調整しているため、特に休暇取得による混乱も起きていない。職場全体として、休暇を取得しやすい雰囲気ができつつある。
②今後に向けての課題・方向性
•計画的な休暇取得は問題ないものの、突発的な休暇取得に対する対応はまだ十分とはいえない。

2)主な取組(短期的施策):会議効率化トライアル

①主な効果
・会議のやり方として、今までは前回の進捗確認に10~15分ほど時間を要していたが、会議開始前に前回の議事録の中に実施状況を書き込んでもらうようにしたところ、1~2分で終えられるようになった。
・また、会議の最後に決定事項を記入する5W1Hの表を作成するようにした。それによって、取組事項が明確になり、実施状況の確認も容易になった。今は、その表を全社に公開している。
・他の会議でも同様の取組を実施している。会議の効率化への意識は全社的に出てきている。参加者からも、時間内に効率的に意見を出して終わらせようという意識が感じられる。
・以前は、生産が最優先で、会議等は終業時刻後にやるのが当たり前という意識があった。そうした考え方を変えることができた。会議が日中の開催でも、事前に分かっていれば、現場の業務を工夫して対応できるということが実感できた。
②今後に向けての課題・方向性
・参加者の中には、まだ議事録の事前確認を行っていない者もいるので、今後徹底したい。
・他の会議にも同じ取組を展開していきたいが、会議によっては複数の生産ラインからの参加者が必要となるため、業務時間内での開始が難しいものもある。

対策案の提案状況

  働き方 休み方
1.Vision ①方針・目標の明確化
2.System ①改善推進の体制づくり
②改善推進の制度化
③改善推進のルール化
3.Action ①意識改善
②情報提供・相談
③仕事の進め方
4.Check ①実態把握・管理

提案内容の概要

中長期的な取組

  • 業務繁閑に応じた休業日の設定
  • 時間単位での年次有給休暇制度等の導入
  • 残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
  • 長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
  • 長時間労働抑制・休暇取得のための周知・啓発
  • 長時間労働や年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し
  • 休暇・休業時の業務フォローアップ体制の構築(顧客・取引先情報の共有等)
  • 社員の休暇取得に関する意識や意向の定期的な把握
  • 年間を通した育成計画の策定

短期的な取組

  • 会議効率化トライアル
(H30.3)

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