K社(2017年度)

(1)企業概要

社名
K社(2017年度)
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業種/事業概要
卸売業,小売業
従業員規模
267名
本社所在地
大阪府
労働時間制度
・労働時間制度:導入なし
・標準始業終業時刻:
○本社:8時50分 ~ 17時30分(休憩:45分)
○事業所:8時35分 ~ 17時30分(休憩:60分)
・標準所定労働時間:7時間55分
・年間所定休日数:123日(2017年)

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組

次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画において、時間外労働の削減・有給休暇の取得推進について、下記の通り掲げ、取組を進めている。
①所定外労働時間を削減のための措置
・長時間残業者の実態調査の継続
・36協定に定める所定外労働時間の遵守
・「ノー残業デー(各職場ごとに月1回の一斉退社)」の実施、推進
②年次有給休暇取得推進の実施
・全従業員を対象とした年次有給休暇取得の推進(一人当たり年間5日以上の取得を目標)

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ

管理本部が中心となり推進してきたが、手詰まり感があるため、本指標を活用し、課題や改善策を改めて整理したい。

(3)働き方・休み方に関する現状・課題意識

1)人事部の課題認識

一般事業主行動計画にて、時間外労働の削減・有給休暇の取得推進他を掲げ、取組は進めているが、推進していくにあたり、手詰まり感がある。また、事務局が中心となり推進しているが、現場になかなか浸透しない。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状・課題

①組織体制
・管理部門、技術部門、営業部門に分かれる。
②働き方
・残業時間の適正把握が課題である。申請方法は部署によって異なり、残業時間の管理レベルも部署によって異なることが推察される。また、意識レベルが個人によって大きく異なり、残業を付ける人もいれば、付けにくいと思っている人もいるようである。営業部門は直行直帰の場合も多く、メールでの報告など勤怠管理の対応が異なる。
・毎月管理職に残業時間のデータを送っており、3か月や1年間の上限を超えそうな場合は、ライン長に連絡している。そのため、管理職は現場の状況を把握できている。また、PCを23時以降に落とした人については、毎月役員に報告されるようになっている。
・時間外が単月で100時間、2か月連続で80時間を超えた場合は、強制的に医師の面談を受けさせることにしている。
・多くの業務でクライアントと情報漏洩防止に関する誓約書を取り交わしており、情報を一切社外に持ち出せないため、在宅勤務の導入は難しい。
③休み方
・年5日以上の有休取得を目標としているが、現状では、全員が取得できるところまでには至っていない。また、入院で有休を消化してしまい、欠勤になるような社員も出ている。毎年1人ぐらいは入院者が出ており、「いざという時のために年休を取らずにおく」という人もいる。
・労働組合があり、組合に対しても働きかけをしているので、組合員の取得率は比較的高いが、管理職は残業が多く、また有休を5日間取得しなければならないという意識も低い傾向がある。
・年休の時効消滅を一部復活する制度の導入を検討している。まだ確定ではなく、今後組合と調整していく。
・育休の取得率・復帰率には地域性がある。事業所の女性社員は100%復職しており、男性の育休取得も1人出た。一方で、本社では産休・育休取得の実績がほとんどない。以前は結婚を機に退職する女性が多かったが、今は結婚しても子どもを持たずに働き続けているか、独身かである。
④マネジメント
【トップの意識・組織風土】
・今期の社長方針では、「健康経営」をうたっている。
・一般事業主行動計画については全社員に発信し、安全衛生委員会で進捗状況を報告し、議事録はライン長へ回付している。
【労働時間についての制度等】
・完全週休2日制を取っている。
・36協定は、3か月180時間、特別条項で3か月230時間、1年500時間で締結している。

(4)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
ポジションマップ
ポジションマップ
レーダーチャート
レーダーチャート
<レーダーチャート>8つの指標得点詳細
働き方
休み方
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【働き方】

週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0.8%であった。

→全国の雇用者の平均値である7.8%(社員規模100~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%をクリアしている。

(その他働き方に関するデータ)
・非管理職の平均所定外労働時間数:
9時間52分(2017年12月)
・管理職の平均月労働時間数:
175時間45分(2017年12月)
・繁忙期に36協定で定める労働時間の延長の限度基準である1か月45時間を超える社員の割合:8.5%。

レーダーチャートの項目では、以下項目が低め。
・項目4:改善促進のルール
・項目8:実態把握・管理

【休み方】

年次有給休暇取得率は全社員平均51.8%であった。

→主要産業の平均値である45.9%(社員規模100~999人のカテゴリ)と国の定める目標値70.0%の間に位置している。

レーダーチャートの項目では、以下項目が低め。
・項目3:改善促進の制度化
・項目5:意識改善
・項目6:情報提供・相談

<全体傾向>
・働き方については、2017年9月時点における週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0.76%であり、時間外労働が突出して多い社員はいない。しかし、貴社の問題意識によると、一部の部署において長時間労働の傾向にある状況である。
・休み方については、年次有給休暇取得率は全社員平均51.78%であり、比較対象の水準(主要産業、社員規模100~999人の平均値)45.9 %をクリアしている。
・働き方や休み方のレーダーチャートおよび現状の取組から課題として挙げられるのは、「働き方」では改善促進のルール (項目4)、「休み方」では、改善促進の制度化(項目3)、意識改善(項目5)、情報提供・相談(項目6)となっている。
・働き方の見直しをさらに推進するためには、まず、残業時間や年次有給休暇の残日数を上長や本人が認識できるようにすること、残業申請の運用ルールを厳密化し、労働時間管理の適正化を図る取組が想定される。また、所定の労働時間の中で段取りよく仕事を進めるよう時間管理・仕事管理に対する意識の醸成を図る。さらに、休み方の見直しとして、業務の繁閑に応じて計画的に休暇が取得できるような制度の導入についても検討する余地があると考えられる。

※年次有給休暇取得率は、2016年4月~3月実績、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、2017年9月実績で算出した。

(5)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
System(システム)
項目3
改善促進の制度化
休み方について、休み方の選択肢や休みを取りやすい制度が整っていない
①業務繁閑に応じた休暇の設定
・部署メンバーが輪番で休暇を取得する
・部署メンバーがプロジェクトとプロジェクトの間に休暇を設定する
項目4
改善促進のルール化
働き方について、長時間労働の抑制に対するインセンティブが働く仕組みが充分でない
①残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
・様々な機会で管理職に説明を実施し、繰り返し啓発を行うことにより、定時退社に対する意識を促す
・特定の社員に業務が集中しないよう業務配分を見直す
・定時退社等について率先垂範するよう管理職を指導する
②残業を行う際の手続きの厳格化
・残業を行う場合は事前申請を義務付け、管理職が残業の必要性・緊急度を精査し、不要・不急な残業を削減する
・業務命令が行われない状態での残業を防ぐため、残業を行う際の手続きを厳格化し、実績報告を徹底する。
Action(アクション)
項目5
意識改善
休み方について、年次有給休暇を適切に取得する意識を高める取組が十分実施できていない
①年次有給休暇取得促進のための周知・啓発
・家族と過ごしたり、興味に興じたり、自己啓発した事例等を社内で集め、広く周知することにより、休暇取得の雰囲気を醸成する
・年度(年間)計画策定時に、夏季、冬季における連続した年次有給休暇取得日の設定を行い、社内に周知する
項目6
情報提供・相談
休み方について、年次有給取得の向上につながる情報提供や相談を十分実施できていない
①年次有給休暇取得率の低い社員に対する個別の休暇取得奨励
・社員の取得率のデータ等を提供し、休暇取得が少ないことを伝える
・人事部等からメールなどにより年次有給休暇取得を個別勧奨する
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
働き方について、労働時間管理が適正に把握・管理されていない
①タイムカードやICカード等の客観的な方法により労働時間を管理・把握 *特に営業本部
・タイムカードやICカード等、客観的な方法で労働時間管理を実施する
・自己申告による労働時間管理を行っている場合は、実際の労働時間と合致しているか、必要に応じて実態調査を実施
・管理職が部下の労働時間を把握する

(6)初回訪問時の提案と検討内容

「働き方・休み方改善指標」に基づく提案をベースに、具体的な取組テーマの検討を実施した。提案内容および検討経緯は以下のとおり。

1)トップのコミットメントと推進体制の構築

①トップのコミットメント
これまでの取組の中で実施済み。
②会社全体の推進体制 
事務局が、これまでに引き続き、全社的な取組を中心的に推進する。

2)今回のモデル取組における推進体制

①対象部署の設定
・全社ではなく、特定の部署をモデル部署にすることを検討。
②対象部署におけるプロジェクトリーダーの設定
・対象部署決定後に設置の有無を検討。
③コアメンバーの設定
・対象部署決定後に設置の有無を検討。

3)中長期的な取組(制度・ワークルールの見直しや業務改善方針の設定等)

①業務繁閑に応じた休暇の設定
②残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
・残業時間の把握・管理が管理職の責務であるという認識を持たせ、勤怠管理が適切に行われることを促す必要がある。
・「退社時間計画化トライアル」は比較的取り組みやすい。日々定時に退社するのは難しいかもしれないが、退社時間を意識したスケジュールを設計し、目標を立てることから始めればよい。例えば、退社時間を宣言して、それができたかどうかを上司に報告するなどでもよい。特に営業部門の部署で実施していただきたい。
③残業を行う際の手続きの厳格化
・残業時間を適正に把握できていない部署がある場合は、客観的なデータの取得による対応と是正が必要である。
④年次有給休暇取得促進のための周知・啓発
・全社で一律にルールを決めるよりも、個々に計画しやすいルールのほうが、取得率は高まる。
・時間単位休暇のニーズは、個々の生活の背景にもよるので、組合との常用共有の際に意見を聞いて、検討の要否を考えるのもよい。
・時効消滅の一部復活についても、実施について今後組合と検討・調整される予定なら、その方向で進めていただきたい。
⑤年次有給休暇取得率の低い社員に対する個別の休暇取得奨励
・上長が有休の残日数を把握し、多い人に取得を促すことが考えられる。
・一般事業主行動計画の推進体制において、ご検討頂きたい。
⑥タイムカードやICカード等の客観的な方法により労働時間を管理・把握
・労働時間の定義づけと、客観的なデータの取得についての検討が必要。外勤が多い社員の数もそれなりに多い場合は、さらに働き方の多様化が進むと、内勤だけを前提とした管理方法では対応できなくなる可能性もある。

検討経緯

①については、病気休養など、いざという時のために取得を控える傾向が見られるが、現在検討中の時効消滅の一部復活等も活用し、取得促進を検討する余地がある。
②③⑥については、部署による管理方法・管理レベルの差異を是正するための取組を検討する余地がある。
④⑤については、年5日以上の有休取得を目標としており、労働組合に対しても働きかけをしている。

4)短期的な取組(職場の働き方改革トライアル)

1~2か月程度で実施できる「職場の働き方改革トライアル」として、会議効率化トライアル、退社時間計画トライアルの実施を提案した。

検討経緯

会議効率化については、効率化が必要と思われる会議がないため、スケジューラーを活用し、「退社時間を意識したスケジュール設計の定着」を主目的とした取組を実施することとなった。(詳細後述)

(7)改善提案の活用

改善提案の検討の結果、今後実施・検討することになった取組は以下の通り。尚、既に取組を始めているものについては、実施状況も併せて記載する。

1)主な取組(トップのコミットメントと推進体制の構築)

-

2)トップのコミットメント

これまでの取組の中で実施済み。

3)会社全体の推進体制

全社的な推進体制を整備済み。

4)主な取組(中期的施策)

中期的施策としては、さらなるワークライフバランスの向上を目指し、健康経営企業の認定取得に向けた取組の実施を検討する。
①加盟する健康保険組合における健康優良企業の認定制度で、認定を取得する(既に、健康づくり環境の整備や「心の健康」維持への取組等の実施を組合に宣言し、取組に着手している)。
②経済産業省の「健康経営優良法人認定制度」 における「ホワイト500」の認定を目指す。

5)主な取組(短期的施策):退社時間計画トライアル

短期的施策として、「退社時間計画トライアル」を実施した。
①推進体制
・対象部署:事業所の各部署
・対象部署におけるプロジェクトリーダー:事業所長
・コアメンバー:各ライン課長
②取組内容
以下のルールで、スケジューラーへの記入を行った。
・スケジューラーに、予定のほか、勤務開始・終了時間を入力する(予定は公開)。
・直行・不帰社の場合は、勤務開始・終了時間の前後に「直行」「不帰」と記入する。
・前週金曜日に翌週の月・火・水の予定、水曜日に木・金・(土・日)のスケジュールを入力する(直前に入力した時間は変更不可)。
・予定/実績記入シート(別添Excel表)に、出社時間と退社時間を記入し、実際の退社時間が予定時間を過ぎた場合は、理由を記載する。
③実施期間
2017年12月。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

今後実施・検討することになった取組のうち、2017年度に効果が確認できたものは以下の通り。

1)主な取組(トップのコミットメントと推進体制の構築)

今後も継続的に取組を進める予定である。

2)主な取組(中期的施策)

今後、認定取得に向けた取組をさらに具体化し、順次進める予定である。

3)主な取組(短期的施策)退社時間計画トライアル

①主な効果
・これまでタイムマネジメントを意識して仕事をしていなかったので、トライアルの実施により、業務効率が上がったと感じている。
・以前よりも意識的に優先順位を決め、仕事を行うようになった。
②今後に向けての課題・方向性
・働き方・休み方の改善に関する取組に対する意識に差があるため、全社的に浸透させるための働きかけを継続的に実施する必要がある。
・今後はトライアルを踏まえた取組の範囲を全社に拡大し、引き続き実施していく予定である。

対策案の提案状況

  働き方 休み方
1.Vision ①方針・目標の明確化
2.System ①改善推進の体制づくり
②改善推進の制度化
③改善推進のルール化
3.Action ①意識改善
②情報提供・相談
③仕事の進め方
4.Check ①実態把握・管理

提案内容の概要

中長期的な取組

  • 業務繁閑に応じた休暇の設定
  • 残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
  • 残業を行う際の手続きの厳格化
  • 年次有給休暇取得促進のための周知・啓発
  • 年次有給休暇取得率の低い社員に対する個別の休暇取得奨励
  • タイムカードやICカード等の客観的な方法により労働時間を管理・把握

短期的な取組

  • 退社時間計画トライアル
(H30.3)

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