C社(2017年度)

(1)企業概要

社名
C社(2017年度)
PDF
業種/事業概要
卸売業,小売業
従業員規模
59名(内、正社員18名)※2017年10月末時点
本社所在地
東京都
労働時間制度
・労働時間制度:1年単位の変形労働時間制
・標準始業終業時刻:
○販売部 包装部 9:30~18:30
○システム部 9:40~18:40
○製造部 8:30~17:30
○(休憩時間 各60分)
・標準所定労働時間:8時間
・年間所定休日数:107日(2017年8月~2018年7月)

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組

有給休暇を確実に取得する取組等をこれまでにも進めており、年間有給休暇取得率は100%に達している。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ

外部のプロからみて、弊社はどのように改善できるかを試したい。

(3)働き方・休み方に関する現状・課題意識

1)課題認識

12月~2月の繁忙期の働き方に課題がある。特に2月のバレンタイン対応は、短期間に大量の注文を処理する必要があり、残業時間が多くなる。業態上やむを得ないところではあるが、一定の時間の範囲内でいかに効率的に働いていくかが課題である。
繁忙期以外の平時については、残業は多くない。閑散期を中心に有給休暇の取得も進められている。女性社員が多いこともあり、育児や介護との両立をスムーズに進められるような制度の検討は今後の課題。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状・課題

①組織体制
・製造部、販売部、包装部、システム部がある(事務総務部は部員ゼロ)。
・製造部は、チョコレートの製造を担っている。繁忙期には残業が最も多くなる。
・販売部は、店舗での販売のほか、電話・インターネット受注の業務を担っている。
・包装部は、商品をラッピングする業務を担っている。
・パートタイマーは全体で40名程度。繁忙期にはほぼ全員が出社する日もある。
②働き方
【繁忙期と繁忙期以外の平時の働き方】
・繁忙期は12月~2月。繁忙期には必然的に残業が多くなるが、残業時間が一定以上になる場合は、強制的に退社させるようにしている。
・繁忙期以外の平時には、残業時間は多くない。
【部門ごとの働き方】
(製造)
・チョコレートを作る業務。職人が中心。
・繁忙期以外の平時でも、製造が追いつかなくなる場合は、残業時間がやや多くなることもある。
(販売:店舗販売)
・店舗での販売業務。
・店舗が開いている時間は店舗に立った販売をしつつ、空いた時間に事務的な仕事をしている。お客様と接する機会をなるべく増やすため、朝と夜の店舗が空いていない時間に事務仕事をするケースもある。
(販売:電話・インターネット販売)
・注文を受け、注文データをまとめて、包装部等に情報を流す業務。
・繁忙期の12月~2月には平時よりインターネット受注の割合が特に増える。
(包装)
・商品の2次包装(箱・リボン等のラッピング)と宅急便発送を担う部門。
・特に2月のバレンタインの直前には、宅急便の発送が急激に増える。
③休み方
・パートタイマーも含めて、年次有給休暇は確実に取得できるようにしている。年次有給休暇が取得できていない社員には、社長自ら声を掛けて有給休暇を取得させている。
・年次有給休暇の取得にあたっては、繁忙期以外の平時に部門内での人数を調整しながら取得するようにしている。夏季休暇も設けている。
④マネジメント
【トップの意識・組織風土】
・働き方・休み方に関する社長の意識が高く、これまでも年次有給休暇は100%取得するようにしてきた。
・今回も、社長自らリーダーシップをとって繁閑期の働き方の改善方法を検討している。
【労働時間についての制度等】
・1年単位の変形労働時間制を採用し、繁閑差に一定程度対応できるようにしている。

(4)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
ポジションマップ
ポジションマップ
レーダーチャート
レーダーチャート
<レーダーチャート>8つの指標得点詳細
働き方
休み方
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【働き方】

週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0%であった。

→全国の雇用者の平均値である8.1%(社員規模30人~99人のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%をともにクリアしている。

ただし、繁忙期には残業時間が非常に多くなる。

【休み方】

年次有給休暇取得率は全社員平均100%であった。

→貴社の年次有給休暇の取得率は、主要産業の平均値である43.7%(社員規模30人~99人のカテゴリ)及び、国の定める目標値70.0%をともにクリアしている。

<全体傾向>
・働き方については、月ごとの繁閑差が大きく、ポジションマップに記載している2017年9月の週労働時間60時間以上の労働者の割合は0%であるが、繁忙期には、残業時間が非常に多くなる。12月~2月は、歳暮・バレンタイン等に生産・販売量が大幅に増えるため、これらの繁忙期の働き方の課題が大きい。貴社では、変形労働時間制を導入しており、繁閑に応じた労働時間・休日の設定もしているが、依然繁忙期の働き方には改善の余地がある。また、8つの指標においては、<方針・目標の明確化>指標、<改善促進の制度化>指標、<改善促進のルール化>指標が低めに出ている。
・休み方については、年次有給休暇取得率は、100%であり、データ上は大きな課題は見受けられない。8つの指標においては、<改善促進の制度化>指標が0%である等、一部低めに出ている指標もあるが、貴社の規模や既に社長が自ら年次有給休暇取得のフォローをしていることを勘案すると、取組の優先順位としては低いと考える。

※年次有給休暇取得率は、2016年4月~3月実績、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、2017年9月実績で算出した(いずれも、パートタイマー含む)。

(5)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
長時間労働の抑制の重要性を企業として十分に表明できていない
・経営や人事の方針として長時間労働の抑制を明文化
・全社・部署・個人等での労働時間・残業時間等に関する数値目標の設定
System(システム)
項目3
改善促進の制度化
効率的かつ効果的な働き方を行う仕組みが整っていな
・労働時間・就労場所を柔軟にする制度(フレックスタイム制、朝型の働き方、テレワーク制度、在宅勤務制度等)の導入
・ノー残業デー、ノー残業ウィーク等、定時退社期間を設定
項目4
改善促進のルール化
働き方について、長時間労働を抑制することにインセンティブが働く仕組みが十分でない
・残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
・部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む
・残業を行う際の手続きを厳格化
休み方について、年次有給休暇の取得にインセンティブが働く仕組みが十分でない
・部下の年次有給休暇取得状況を管理職の人事考課に盛り込む
・管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握・管理を義務付ける
Action(アクション)
項目7
仕事の進め方改善
長時間労働の抑制や、年次有給休暇などを取得しやすくするための業務改善が、十分実施できていない
・長時間労働の見直しや、年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し
・長時間労働の抑制や年次有給休暇取得促進を目的とした取引先との関係見直しを行っている(発注方法やスケジュール等の見直し)
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
休暇に関する実態(意識・意向)が常に把握できていない
・社員の休暇取得に関する意識や意向の定期的な把握
※労働時間に関する意識・意向の把握も併せて実施

(6)初回訪問時の提案と検討内容

「働き方・休み方改善指標」に基づく提案をベースに、具体的な取組テーマの検討を実施した。提案内容および検討経緯は以下のとおり。

1)トップのコミットメントと推進体制の構築

①トップのコミットメント
日頃より働き方・休み方の改善は社長より直接フォローがされているが、今後新たに取組を実施するのと併せて、適宜メッセージを発信することも提案した。
②会社全体の推進体制 
全社での推進体制を構築することを提案した。

2)今回のモデル取組における推進体制

①対象部署の設定
②対象部署におけるプロジェクトリーダーの設定
③コアメンバーの設定
今回の取組とあわせて、プロジェクトリーダーとコアメンバーを選定し、今後の「全社での推進体制」とすることを提案した。また、今回のモデル取組は全社を対象とするが、具体的な取組内容は部門ごとに検討することを提案した。

3)中長期的な取組(制度・ワークルールの見直しや業務改善方針の設定等)

①経営や人事の方針として長時間労働の抑制を明文化
②全社・部署・個人等での労働時間・残業時間等に関する数値目標の設定
必要に応じて、繁忙期の残業時間が一定時間を超えた際には、社長から現場の管理職に早めにアラートを出し、対応を検討することを提案した。
③ノー残業デー、ノー残業ウィーク等、定時退社期間を設定
④残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
⑤部下の長時間労働の抑制や有給休暇取得状況を管理職の人事考課に盛り込む
⑥残業を行う際の手続きを厳格化
⑦管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握・管理を義務付ける
⑧長時間労働の見直しや、年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し
⑨長時間労働の抑制や年次有給休暇取得促進を目的とした取引先との関係見直し(発注方法やスケジュール等の見直し)
2017年度の繁忙期に備え、「繁忙期の仕事の進め方改善」として、具体的にできることを検討することを提案した。
⑩社員の休暇取得に関する意識や意向の定期的な把握(※労働時間に関する意識・意向の把握も併せて実施)
働き方に関する課題意識を広く把握するため、アンケートを実施することを提案した。
⑪(新規検討)柔軟な働き方のニーズ把握・検討
育児・介護と仕事が両立できる環境をつくるために、販売部等で在宅勤務のニーズがあるかを把握することを提案した。併せて、グループウェアの導入可能性も併せて検討することを提案。また、働く時間を柔軟にする制度のニーズや導入可能性可否の検討も提案した。

検討経緯

今回のモデル取組にあたり、社長と各部門の代表メンバーを中心に推進体制を構成し、各部門でのニーズ把握や具体的な取組内容を行うことになった。
①、②については、繁忙期の残業時間が一定時間を超えた際には、社長から現場の管理職に早めにアラートを出すことになった。
③~⑦については、平時には残業が恒常化している状態ではなく、また有給休暇の取得率も問題がないため、新たな取組は不要と考えた。
⑧、⑨については、2月のバレンタインに向けた短期的な取組として、具体的にできることを検討・実践することとなった。
併せて、繁忙期が終わった後にアンケートを実施し、働き方・休み方に関する課題意識や、取組アイデア、繁忙期の取組の効果をアンケートで把握することになった(⑩)
また、⑪については、今後の育児・介護と仕事が両立しやすい環境づくりを目指して、在宅勤務や時間単位の年次有給休暇、シフト制等の働き方のニーズの有無や運用上の課題等をまずは把握・検討していくことになった。

4)短期的な取組

上記のとおり、2月のバレンタインに向け、具体的にできることの検討・実践を「短期的な取組」として実践することを提案した。

(7)改善提案の活用

改善提案の検討の結果、今後実施・検討することになった取組は以下の通り。尚、既に取組を始めているものについては、実施状況も併せて記載する。

1)主な取組(トップのコミットメントと推進体制の構築)

①トップのコミットメント
引き続き、社長が直接労働時間や休日の取得状況等を確認し、適宜フォローしていく。働き方・休み方改善の具体的な検討は、来年度以降に実施することになるが、社長も検討に加わる。
②会社全体の推進体制 ※今回のモデル取組も以下の体制で推進する
社長と各部門の代表メンバーを中心に、以下の通り推進体制を構築した。
・プロジェクトのトップ:社長
・プロジェクトの推進リーダー:販売(電話・インターネット販売)の代表メンバー
・プロジェクトのメンバー:製造、販売(店舗販売)、包装部からの代表メンバー
(※代表メンバーは、管理職も含む)
今回のモデル取組においても、社長と上記の代表メンバーで集まり、改善アイデアを出しあった。

2)主な取組(中期的施策)

①残業時間のモニタリング・アラート発信
繁忙期を中心に、残業時間が一定時間を超えた際には、社長から現場のリーダーに早めにアラートを出すようにする。
これまでにも実施していた取組であるが、特に繁忙期には早めのアラートを心がけ、人員面等での対処がしやすいようにする。
②アンケートによる働き方・休み方に関する社員の課題意識・取組アイデアの把握
来年度以降に具体的な取組検討を行うにあたり、社員を対象にアンケートを実施し、課題を把握する。アンケートでは、平時の働き方と繁忙期の状況を両方聞くだけでなく、日頃の仕事の進め方や上司の取組、ワーク・ライフ・バランスの課題、仕事・生活の満足度等も把握できるようにする。アンケートは、繁忙期が終わった後に実施する。
③柔軟な働き方のニーズ把握・検討
柔軟な働き方については、どの程度ニーズがあるかを部門毎に把握するところから始める。ニーズの把握は、プロジェクトのメンバーが各部門で周囲の意見を集める形で実施する。
在宅勤務は、セキュリティ面の課題も懸念されるため、グループウェアを試行的に導入してみるのと併せてセキュリティ面の確認も行う。
また、時間単位の年次有給休暇やシフト制についても、現場で運用が可能かを確認する。併せて、製造現場での機械の稼働時間とのバランス等も踏まえ、これらの制度の導入が働き方・休み方の改善に効果があるか検討する。

3)主な取組(短期的施策):2月のバレンタインに向けた繁忙期の仕事の進め方改善

短期的施策として、「2月のバレンタインに向けた繁忙期の仕事の進め方改善」を実施した。
①推進体制
・対象部署 :全社
・対象部署におけるプロジェクトリーダー&コアメンバー:上記「会社全体の推進体制」と同じ
②取組内容
・取組内容の検討にあたっては、社長と各部門(製造/販売(店舗販売)/販売(電話・インターネット販売 )/包装)の代表メンバーで集まり、改善アイデアを出しあった。
・部門ごとに実施した主な取組は以下の通り。
(一部、自社内で以前より検討・実施していた取組も含む)
→(製造部門)新たな機械を投入し、効率的に活用できる方法の検討をすすめた。また、パートタイマーも増やした。
→(販売部門)納品書をペーパーレス化し、商品に同梱・郵送せずにWeb上で印刷する(11月から実施)。
→(包装部門)期間に業務が集中する宅急便発送業務をヘルプする体制・作業場所を整えられないか検討する(状況に応じて検討)。
③実施期間
2017年1~2月(一部取組は、既に導入・実施しているものを継続)

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

今後実施・検討することになった取組のうち、2017年度に効果が確認できたものは以下の通り。

1)主な取組(トップのコミットメントと推進体制の構築)

⇒プロジェクトメンバーを中心に、ニーズの把握・取組の検討等を引き続き実施していく。

2)主な取組(中期的施策)

⇒プロジェクトメンバーを中心に、ニーズの把握・取組の検討等を引き続き実施していく。

3)主な取組(短期的施策):2月のバレンタインに向けた繁忙期の仕事の進め方改善

①主な効果
製造部門の機械の投入・パートタイマーの増員、販売部門の納品書のペーパレス化等により、繁忙期の業務改善に効果があった。この効果もあって、今年は、繁忙期に残業時間も一定程度抑えられた印象がある。
・(製造部門)機械の投入により、投資は必要だったが、生産の効率が上がった。パートタイマーを増やしたこともあり、よりスムーズに商品を供給できるようになった。今後、機械の稼働時間も踏まえてどのように人を配置すれば全体の効率が上がるかも検討し、効果の最大化を図っていく。
・(販売部門)納品書のペーパーレス化により、作業時間が減っただけでなく、作業スペースの問題が解消され、作業ミスも減った。発送までの作業がスムーズに実施できるようになった。
②今後に向けての課題・方向性
・今後社内でアンケートを実施し、効果や負担軽減のためにできること等を把握していく予定。アンケートでは、平時の働き方についての課題や改善案についても聞き、来年度以降の検討の参考とする。
・今後実施するアンケートの結果や、今回実施した「2月のバレンタインに向けた繁忙期の仕事の進め方改善」の効果・課題等も踏まえ、プロジェクトメンバーで集まって改善アイデアを出し合いながら具体的な取組を検討していく予定。

対策案の提案状況

  働き方 休み方
1.Vision ①方針・目標の明確化
2.System ①改善推進の体制づくり
②改善推進の制度化
③改善推進のルール化
3.Action ①意識改善
②情報提供・相談
③仕事の進め方
4.Check ①実態把握・管理

提案内容の概要

中長期的な取組

  • 経営や人事の方針として長時間労働の抑制を明文化
  • 全社・部署・個人等での労働時間・残業時間等に関する数値目標の設定
  • ノー残業デー、ノー残業ウィーク等、定時退社期間を設定
  • 残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進
  • 部下の長時間労働の抑制や有給休暇取得状況を管理職の人事考課に盛り込む
  • 残業を行う際の手続きを厳格化
  • 管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握・管理を義務付ける
  • 長時間労働の見直しや、年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し
  • 長時間労働の抑制や年次有給休暇取得促進を目的とした取引先との関係見直し
  • 社員の休暇取得に関する意識や意向の定期的な把握(※労働時間に関する意識・意向の把握も併せて実施)
  • 柔軟な働き方のニーズ把握・検討

短期的な取組

  • 繁忙期の仕事の進め方改善
(H30.3)

事例を評価する