B社(2017年度)

(1)企業概要

社名
B社(2017年度)
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業種/事業概要
サービス業(他に分類されないもの)
従業員規模
117名(内、正社員100名) ※2017/11時点
本社所在地
東京都
労働時間制度
・労働時間制度:通常の労働時間制
・標準始業終業時刻:9:00から18:00(休憩60分)
・標準所定労働時間:8時間
・年間所定休日数:125日(2016年)

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組

働き方改革を行う方針を社長が明言し、働き方・休み方について以下の目標が決定している。
・労働時間は年間の合計時間を2,460時間以内におさめる(有給休暇取得分は除く)
・2ヶ月連続で残業時間が80時間を超える社員を出さない
・2020年の有給休暇取得率70%を目指したい
具体的な取組についてはこれから検討するところ。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ

以前より働き方・休み方について改善したいと思っているが、日常業務に追われなかなか実行できていない。会社として長時間労働への取組をすることは決まっているものの、何からどう始めていいのか困っている。今回モデル企業になることで、後押ししていただき、一緒に職場の労働環境改善を進めていきたいと思い申し込みをした。

(3)働き方・休み方に関する現状・課題意識

1)人事部の課題認識

・繁忙期が個人によってばらついている。職種による業務の偏りよりも、突発対応による残業が多くなっている。
・労働時間を減らしていくことは会社の方針として決まっているが、それだけを掲げると、会社は労働時間を減らして残業代を減らしたいのだと社員にとらえられてしまうことを懸念している。生活の変化も目指しているということを伝えていきたい。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状

①組織体制
・職種は、営業、イベントの設計企画、イベントの運営、事務等。
・総合職と一般職があり、一般職は職種限定。大半は事務職だが一部デザイン職もいる。
・部署として最も大きいのはコミュニケーションデザイン部。部内の構成は、営業10名、イベント納品(企画運営)10名、媒体納品4名、企画マーケティング5名の総勢約30名。イベントごとにプロジェクトチームが組成される。大規模なプロジェクトだと10名程度になるが、小規模なものだと2~3名のこともある。
・営業担当者はイベントの運営に直接的には関わらない。割のよい仕事をとってこようという意識はあるが、最終的に原価管理をするのは納品担当者であり、若干の乖離はある。特に新規案件については、契約時点からの工数のぶれが読めない。
②働き方
・イベントが重なる際への対応は比較的できるようになってきたが、ミスが生じた際のリカバリーのための残業が多くなっている。
・10月はイベントが立て込む時期で、80時間を超えた社員が1名いた。それでも、例年に比べれば少なくなってきている。
③休み方
・子どもをもつ女性社員の中には有休取得率100%の者もいるが、それ以外の社員(特に管理職)はあまり取得できていない状況。2020年に取得率を70%にしたいという目標はあるものの、現状はまったく取得できていない社員もいるので、まずは計画取得の取組を検討している。

3)マネジメント

【トップの意識・組織風土】
・いろんな事情を持つ社員でも活躍できる会社にするため、また社員の健康保持のためにも、長時間労働を改善する必要がある、というメッセージを社長から発信している。
【労働時間についての制度等】
・月ごとに各部のメンバーの労働時間を部長に示し、課題と今後の方針を確認することを検討している。
・子育て中の社員は短時間勤務制度を利用しているが、特に運用ルールはない。目標の決め方は現場に委ねられており、管理職の場合は、短時間勤務であっても質・量ともにフルタイムの社員と変わらないレベルの業務が与えられている。評価についても、短時間勤務に対する考慮はなく、あくまで目標に対してどの程度の達成率かということで評価される。復職者が増え始めたのは3年ほど前からであり、これからルール化が必要である。

4)その他

・スマートフォンでもメールを確認できる環境のため、深夜に顧客からメールがくると対応してしまうことがある。
・在宅勤務の導入を検討しているが、それにより長時間労働にならないためにはどうやって管理すべきか悩んでいる。社員の意識付けと並行して取り組んでいる必要がある。

(4)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
ポジションマップ
ポジションマップ
レーダーチャート
レーダーチャート
<レーダーチャート>8つの指標得点詳細
働き方
休み方
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【働き方】

週労働時間60時間以上の雇用者の割合は15.4%であった。

→全国の雇用者の平均値である7.8%(社員規模100人~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%をともに下回っている。
(36協定で定める労働時間の延長の限度基準である1か月45時間を超える社員は14%いる。)
また、一般社員の残業時間の月平均は29時間、管理職の実労働時間の月平均は185時間である(所定労働時間は月160時間)。

レーダーチャートの項目では、以下項目が低め。
・項目2 <改善推進の体制づくり> 指標
・項目5 <意識改善> 指標
・項目7 <仕事の進め方改善> 指標

【休み方】

年次有給休暇取得率は全社員平均46.8%であった。

→貴社の年次有給休暇の取得率は、主要産業の平均値である45.9%(社員規模100人~999人のカテゴリ)とほぼ同水準だが、国の定める目標値70.0%は下回っている。

レーダーチャートの項目では、以下項目が低め。
・項目1 <方針・目標の明確化> 指標
・項目2 <改善推進の体制づくり> 指標
・項目3 <改善促進の制度化> 指標
・項目4 <改善促進のルール化> 指標
・項目5 <意識改善> 指標

<全体傾向>
・働き方については、週60時間以上の労働者の割合は15.4%と高く、一部の社員が長時間労働になっている実態がうかがえる。課題意識として、業務の属人化、能力の違いにより、業務の偏りが発生し、それが労働時間の偏りにも影響を与えていることが指摘されている。8つの指標においては、Systemに関する<改善推進の体制づくり>指標、Actionに関する<意識改善>指標、<仕事の進め方改善>指標が低くなっている。このため、長時間労働抑制のための推進体制やルールを構築するとともに、長時間労働の抑制に関する社員や管理職向けの教育・研修、業務プロセスや内容の見直しといった取組について、検討する必要がある。

・休み方については、年次有給休暇取得率は46.8%であり、主要産業の平均値と同水準であるが、国の定める目標値は下回っている。課題意識として、サービス内容的に有休が取りにくい仕事があるとのこと。また、8つの指標においては、Visionに関する<方針・目標の明確化>指標、Systemに関する<改善推進の体制づくり>指標や<改善促進の制度化>指標、<改善促進のルール化>指標、Actionに関する<意識改善>指標が低くなっている。そのため、まずは休暇取得推進という方針を明確にした上で、長時間労働の抑制とあわせて休暇取得に関する推進体制を整備し、働き方を見直して休暇時のフォローアップ体制を構築するとともに、休み方の選択肢を増やしたり、管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握を義務づけたりする取組が必要であると考えられる。

※年次有給休暇取得率は、2016年4月~3月実績、労働時間に関する数値は、2017年9月実績(正社員に限定)。

(5)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
休み方について、会社の方針・目標が明確になっていない
・年次有給休暇の取得に向けた経営トップからのメッセージ発信
・年次有給休暇の取得促進を経営や人事の方針として明確化
・全社・部署・個人等で年次有給休暇取得日数、取得率等に関する数値目標を設定
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
働き方・休み方について、改善のための体制ができていない
・長時間労働の抑制・年次有給休暇の取得促進に向けた社内体制の明確化
・労働時間・休暇取得に関する相談窓口の設置
・長時間労働抑制・休暇所得に関する労使の話し合いの機会の設定
項目3
改善促進の制度化
休みを取得しやすくする仕組みが整っていない
・業務繁閑に応じた休業日の設定
・誕生日・記念日等の決まった日や申告した日を年次有給休暇とする等の休暇制度の設定
・ゴールデンウィークや夏期・冬期等、機会を捉えた年次有給休暇の計画的付与制度の導入
・時間単位での年次有給休暇制度等の導入(①)
・5営業日以上の連続休暇制度の導入
項目4
改善促進のルール化
年次有給休暇を取得することにインセンティブが働く仕組みとなっていない
・部下の年次有給休暇の取得状況の管理を、管理職の人事考課(評価)に盛り込む
・管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握・管理を義務づけ(②)
Action(アクション)
項目5
意識改善
社員に対して、長時間労働抑制や休暇取得に向けた意識を高める取組が行われていない
・長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施(③)
・長時間労働抑制・休暇取得のための周知・啓発(④)
・退勤時刻の終業呼びかけ、強制消灯
項目7
仕事の進め方改善
働き方・休み方について、長時間労働の抑制や、年次有給休暇などの取得しやすさにつながる業務改善が、十分実施できていない
・長時間労働や年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し(⑤)
・業務計画、要員計画、業務内容の見直し
・長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進を目的とした目的とした取引先との関係見直し
・休暇・休業時の業務フォローアップ体制の構築(顧客・取引先情報の共有等)(⑥)
・管理職による年次有給休暇の取得日数の管理

(6)初回訪問時の提案と検討内容

初回訪問における提案と検討内容は以下のとおり。

1)推進体制

①トップのコミットメント
すでに社長からメッセージ発信済。
②会社全体の推進体制
社内での推進体制は明確になっていないため、人事労務グループの中で、働き方改革推進の担当者を決めることを提案。

2)今回のモデル取組における推進体制

①対象部署の設定
人事だけでなく他部署のメンバーも含めたプロジェクトチームを立ち上げ、今回の取組範囲を検討することを提案。
②対象部署におけるプロジェクトリーダーの設定
今後検討する。
③コアメンバーの設定
今後検討する。

3)中長期的な取組(制度・ワークルールの見直しや業務改善方針の設定等)

①時間単位での年次有給休暇制度等の導入
②管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握・管理を義務づけ
Googleカレンダーを共有しており、個人のカレンダーを確認することで休暇の状況を把握することを提案。
③長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
労務管理・部下育成が管理職の役割であることを、研修を通じて周知していくことを提案。
④長時間労働抑制・休暇取得のための周知・啓発
有給休暇の計画取得の方法について、以下3つの方法を提案。取得しそびれることがないよう、年度の初めに長期休暇の取得計画を全員で報告し、調整する。
1.年に数回まとまった長期休暇をとる
2.年に最低5日とる
3.毎月1回取得させる
⑤長時間労働や年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し
プロジェクトベースの仕事の場合、営業・企画の担当者数名で、これからどんな仕事をとっていくかという方針を決めていくということも必要となる。案件の革新性と金額を軸として精査し、両方NGな仕事をやっていないかを確認することも中長期的な取組としては重要となる。加えて、現場のマネジメントの見直しも重要。自分のメンバーや外部パートナーの労働時間を意識して仕事を組み立てる必要があるため、現場のマネージャーで集まり、グループワーク等で意見を出し合うことを提案。
⑥休暇・休業時の業務フォローアップ体制の構築(顧客・取引先情報の共有等)
休暇中や在宅勤務中のワークルールとして、以下5点を提案。
1.カレンダーは、お互いに見られる設定とし、こまめに同僚や上司・部下の予定を確認す
る癖をつける
2.カレンダーには、翌週1週間の予定をなるべく具体的にいれる。会議・外出予定だけで
なく、作業予定(案件名・作業予定時間がわかるように)、帰宅予定時間等もいれる。
3.若手社員には、特に作業予定をしっかり入力することを推奨。上司が時々確認し、案件の優先順位や見積もり時間が適切でない場合、上司からアドバイスする。
4.本人の都合により、就業時間外や休日の社内向けメールを発信することは可能だが、返
信は要求しない(就業時間を待ってからの返信とする)。
5.取引先に残業の多い会社だという印象を与えないため、社外には、就業時間外には、基本的にはメールを発信しない(予約機能等を使って、翌日届くようにする等)。

検討経緯

①は、今回は検討しない。
②は、現在個人での利用が中心となっているGoogleカレンダーをさらに活用していくことを検討する。
③は、現在会社としてどのような働き方をしている組織を評価するかという基準を定め、表彰制度を設けることを検討中。その基準を通じて、管理職に対する期待役割を示していく。
④は、2018年度より有給休暇取得奨励日を設定する予定。具体的には、5月1・2日、8月16・17日、1月4日、3月22日の6日間。休暇を取得することで、長期連休になる日を設定している。今後全社的に広報をして周知を図っていく予定。
⑤は、2018年1月に組織改編を行い、営業、制作といった部署の他にプロジェクトを差配する担当部署を設置したため、今後はその部署が中心となって業務量の調整を行っていく。
⑥は、現在スマートフォンでメールが確認できるため、深夜や休日にも返信をしてしまいがちな状況があることから、深夜・休日のメール返信は控えるようにする等のルールを検討していく。なお、ワークルール設定に際しては、全社共通のルールとして細かく決めすぎると息苦しさが出てきて、結局守られないことになりかねないので、管理職の意識付けを行った上で職場ごとにルールを決めてもらう部分と、会社の規則として必ず守る必要のある部分をわけることを意識する。

4)短期的な取組(職場の働き方改革トライアル)

中長期的な取組と併せて、1~2ヵ月程度で実施できる「職場の働き方改革トライアル」として、在宅勤務トライアル、会議効率化トライアル、退社時間計画トライアル実施を提案。

検討経緯

検討の結果、現在導入を検討中の在宅勤務についてトライアルを実施することとなった。在宅勤務については社員からの要望もあり、経営陣から推進するよう求められているが、セキュリティ上の課題が解決していない。短期的なトライアルを通じて、課題を洗い出し本格導入に向けての道筋をつけていく。

(7)改善提案の活用

改善提案の検討の結果、今後実施・検討することになった取組は以下の通り。尚、既に取組を始めているものについては、実施状況も併せて記載する。

1)主な取組(推進体制)

①会社全体の推進体制
会社創立20周年プロジェクトとして、全社横断的に「働き方改革チーム」が組成され、リモートワークの推進と表彰制度について議論が進められている。このプロジェクトの活動は今年度限りであるため、来年度以降は人事部主導で取組を推進していく予定。

2)主な取組(中期的施策)

①有給休暇取得奨励日の設定
2018年度より有給休暇取得奨励日を設定する予定。具体的には、5月1・2日、8月16・17日、1月4日、3月22日の6日間。休暇を取得することで、長期連休になる日を設定している。今後、全社的に広報をして周知を図っていく。
②休暇取得時等のワークルールの設定
会社単位・職場単位で具体的にどのようなルールを設定するか検討する。
③表彰制度
現在、全社横断的なプロジェクトチームで検討中。会社として望ましい組織のあり方を示すことで、管理職に対する期待役割を示す。
④業務配分の見直し
2018年1月に組織改編を行い、営業、制作といった部署の他にプロジェクトの組成を差配する担当部署を設置した。案件のアサイメントにおいて量的・質的な偏りを防ぐと同時に、プロジェクト運営に関する情報の共有化をはかる狙いがある。過重労働を防ぎ、育成に資する取組でもある。ただし、営業、制作といった現場の管理職に対し、プロジェクト組成担当者がしっかりと影響力を行使できるかどうかが課題である。

3)主な取組(短期的施策)

①在宅勤務トライアル
・2018年3月より実施予定。管理職を対象として実施し、全員が月4回在宅勤務を実施することを目標とする。
・持出を可能とする資料の範囲など、管理ルールについては今後検討する。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

今後順次実施し、効果を確認する予定。

対策案の提案状況

  働き方 休み方
1.Vision ①方針・目標の明確化
2.System ①改善推進の体制づくり
②改善推進の制度化
③改善推進のルール化
3.Action ①意識改善
②情報提供・相談
③仕事の進め方
4.Check ①実態把握・管理

提案内容の概要

中長期的な取組

  • ・時間単位での年次有給休暇制度等の導入
  • ・管理職に部下の年次有給休暇の取得状況の把握・管理を義務づけ
  • ・長時間労働抑制・休暇取得に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施
  • ・長時間労働抑制・休暇取得のための周知・啓発
  • ・長時間労働や年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直し
  • ・休暇・休業時の業務フォローアップ体制の構築

短期的な取組

  • ・在宅勤務トライアル
(H30.3)

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