F社(2016年度)

(1)企業概要

社名
F社(2016年度)
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業種/事業概要
小売業
従業員規模
1,000人以上(正社員のみ、非正規を含めると3,000人程度)
本社所在地
宮城県
労働時間制度
労働時間は1ヶ月単位の変形労働時間制
本社所定労働時間9:45~18:45(休憩60分、交代制)
販売業務(店舗)はシフト制(三交代制)、休憩時間は昼休憩50分、午後30分の80分で共に交代制
所定休日 全社員共通 年間112日

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
付与から2年経過して、繰越が出来なくなった年次有給休暇残日数の積み立て制度(最大60日)を導入している。
職場環境に関する聞き取り調査を年2回実施。それを踏まえて、働き方や社内制度に関する社員フォローを行っている。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
人材不足が強まりつつある業界において、自社の魅力・価値を高める働き方の多様性の実現に向けて、何ができるかについて検討する中で、ライフステージによって働き方に対する価値観も異なるため、相互コミュニケーションが重要になっていると考えている。
これらについて、第三者の目による意見を活かしたいと考えた。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
長時間労働については、月45時間以上の従業員はゼロだが、年次有給休暇取得日数5日未満が多い。本社は、個人の仕事をコントロールしながら休暇取得が可能であり年次有休休暇の取得がしやすいが、販売の現場(店舗)については、代替要員の確保を必要とするため、公休(所定休日)に追加して年次有給休暇を取得することが難しい。
また、働き方や休み方については、管理職の意識改革の取組が進んでいない。労働組合から、上期下期それぞれ、5連続休暇取得の要望がある。管理職の意識改革により社員の要望に応えられる環境を整えていきたい。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織体制
正社員は約1,500人である。正社員は男性が多く、女性は196人のみである。非正規雇用を含めた従業員数は3,000人程度となっている。非正規雇用には労働時間による区別があり、8時間勤務から3.5時間勤務まで0.5時間刻みに柔軟な働き方を設けている。更に有期の地域限定社員やシニア再雇用が存在する。原則として非正規は有期雇用であり女性が多い。
業務ごとにチームを構成しており、チーム単位で休暇取得やシフト作成を行っている。
勤務シフトは、「顧客が多い時間帯に人員配置を手厚くして適切に接客販売ができる」ように組む。そのため、三交代制の早番・中番・遅番で配置人数が異なり、また売り場の大きさで配置人数が異なる。小規模店舗では最も少ない場合社員5名、非正規雇用4名で運営しており、売り場面積が多いところでは社員25名、非正規で25~30名、全体で50名を超える。店舗の営業時間は立地等により異なるが、基本は10時~21時である(顧客ニーズ(地域周辺の人口構造や働き方等)を分析し検討する)。これらの要素を考慮して、「業務×顧客ニーズ×勤務形態」で作成したシフトパターンは全社で350パターンに上る。
現在の家電業界は買い替え需要が大きく、「壊れたから買い替える」ことが基本の消費行動となっている。近年はエコポイントや地上波デジタルの対応、消費増税等の政策誘導もあり好調であったが、その後、業界全体で売上はやや低調である。また、これらの政策のタイミング等に左右される部分があるため、先の見通しが立てにくい業界でもある。
近年は業界全体として、大型店舗の出店は減少傾向になっており必要な労働者数も減ってきている。営業地域は東北・北海道である。人口減少地域であり購入者数・就労者共に減少傾向にある。
昨年度は一昨年度を超える業績だった。商品の購入単価が上がっていることが、購入者の減少にもかかわらず業績が好調であった要因と考える。
長時間労働の社員は少ないため、企業も課題と認識する休暇取得を中心とした改善提案を検討した。

②働き方
現場の職制は、担当→副主任→主任→部門長→店長代理→副店長→店長となっており、副店長以上が管理監督者の位置づけである。
一月の勤務日数は21.08日、21.08×8時間を一月の標準的な勤務時間で想定してシフトを作成している。
東北地域は年始の初売りが最大のイベントである。早い段階から調整を始めるが、12月1月は繁忙期であり残業時間が通常時期の2倍になる。
閑散期は2月、10月である(閑散期に社内研修を実施している)。
商品知識については、e-learningで情報を提供している。家電メーカーの店舗担当者による研修もある。商品知識の取得はそれほど難しくないが、知識の提供と「購入」を主眼においた商品説明をすることは異なるため、OJTを通してテクニックを習得する。メーカー主催の勉強会については、労働時間として出席する。
顧客コミュニケーションを重視したサービス提供のため、個人別売上ノルマの設定はなく、店舗・商品種別単位で目標を設定するに留まる。
正社員には転勤もある。転居を伴う転勤は総合職、転居のない転勤は一般職と分けられている。総合職・一般職のコース転換は自由で、復帰も可能である。処遇は、一般職が総合職の給与の0.9掛けである。

③休み方
公休(所定休日)はきちんと休むことができている(公休日112日)。
他店舗への応援対応を行うが、休暇取得等に伴う人員確保の為に多店舗応援対応を行うことは想定されておらず、インフルエンザ等に伴う出勤停止・自宅待機等の理由に対して、一時的に応援を行うためのものである。全店のオペレーションが統一されているため、他店への応援対応が実現できている。
店舗はシフト制を採用しているため、年次有給休暇を取得した際には代替要員を確保する必要があり、管理職の中に、「年次有休取得の取得などとんでもない」と考える社員が一定数存在する。その為、休暇取得のしやすさなどは現場の店長の意識・方針に大きく依存している。
「休暇取得に積極的な店舗の売上が下がった」との話はない。現場の工夫によってうまく運営できているようである。
他の制度として、永年勤続のリフレッシュ休暇(勤続年数比例)がある。
「休んでもすることがない」と話す社員はいる。

④マネジメント
トップから働き方・休み方に関するメッセージは出されるものの、具体的な提案・指示ではない。
36協定は、法定時間外労働の最大延長時間を、月45時間、年360時間、特別条項は月80時間、年720時間で締結している。
人材の確保は、地域によって需給のミスマッチが生じており、地域によっては小売業界による奪い合いが生じている。
正社員は新卒採用及び契約社員からの転換によって確保しており充足している。一方、現場で接客販売を担う人材(主に非正規が担当)は不足している。思うように非正規採用ができない場合、正社員が接客販売業務を担当する等の対応が必要になる場合もある。
新卒採用は高卒から大学院了まで実施しており、初任給は全国の地域によって異なる。内定後、学校卒業までの間に、アルバイトとして従業する学生は多い。入社後に現場でOJT経験し、その後適性を考慮して配置を決定する。
シフト作成は3ヶ月単位で店舗の部門ごとに行い店長が承認する。現場から、シフト作成自体の負担について不満などはない。
全社平均の残業時間は1ヶ月で10時間未満である。
個人の成績については、1日の接客人数を把握するようにしている。評価は年2回実施、自己評価→一次評価者(店長代理)→二次評価者(店長)による評価、の3段階評価である。面談を通して上長と課題・目標を設定する。評価は年2回の賞与に反映され、2回の評価の平均を通年評価として、翌年4月の昇給・昇格に反映させる。
労働時間・残業時間・年次有給休暇に関する、数値目標などはない。
労働時間の抑制や、年次有給休暇の取得促進に向けた社内の体制が明確でない。
誕生日や記念日等の決まった日を年次有給休暇とするような制度はない。
5日以上の連続休暇制度はない。
年次有給休暇取得日数が少ない社員に対して、個別に取得の奨励や、ポスター、パンフレット資料等を作成・配布するなどの取得奨励は行っていない。
管理職の評価項目に、部下の労働時間・年次有給休暇のマネジメントに関する項目はない。
長時間労働抑制、年次有給休暇の取得促進に向けた、一般社員向け・管理職向けの研修はない。
社員の休暇の取得についての意識・考えを把握していない。

⑤その他
会社の方針として、CSよりもESを重視している。
結婚・出産・育児等のライフイベントについては、社内で規定する制度の周知から始めている。育児休業等の休職期間中は代替要員を確保しており、1年後など育児休業から職場復帰する社員が殆どだが、営業地域が広いため、夫婦と両親の別居が理由となって退職する社員がいる。
管理職によっては、女性のライフイベントによる勤務変更に消極的な人もいるため、教育中である。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
働き方・休み方に共通する課題欄に掲載している。

2)休み方
他店舗への応援対応を行うが、休暇取得等に伴う人員確保の為に多店舗応援対応を行うことは想定されていない。
管理職の中に、「年次有休取得の取得などとんでもない」と考える社員が一定数存在する。その為、休暇取得のしやすさなどは現場の店長の意識・方針に大きく依存している。
年次有給休暇取得日数が少ない社員に対して、個別に取得の奨励や、ポスター、パンフレット資料等を作成・配布するなどの取得奨励は行っていない。
誕生日や記念日等の決まった日を年次有給休暇とするような制度はない。
5日以上の連続休暇制度はない。
社員の休暇の取得についての意識・考えを把握していない。

3)働き方・休み方共通
労働時間・残業時間・年次有給休暇に関する、数値目標などはない。
労働時間の抑制や、年次有給休暇の取得促進に向けた社内の体制が明確でない。
管理職の評価項目に、部下の労働時間・年次有給休暇のマネジメントに関する項目はない。
長時間労働抑制、年次有給休暇の取得促進に向けた、一般社員向け・管理職向けの研修はない。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0.0%であった。
→貴社の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である7.5%(従業員規模1,000人以上カテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%ともにクリアしている。
(36協定で定める労働時間の延長の限度基準である1ヶ月45時間を超える従業員もいない(注1)。)
(注1) 繁忙月
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全従業員平均25.7%であった。
→主要産業の平均値である52.2%(従業員規模1,000人以上カテゴリ)をクリアできていない。
貴社の長時間労働の社員の割合は目標値以上である。しかし管理職は、働き方についての意識改善が必要である等一定の改善余地がある。一方、年次有給休暇の取得率は主要産業の平均値にも達していないことから、休み方の改善が強く求められる。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
労働時間・残業時間・年次有給休暇に関する、数値目標などはない。
トップメッセージとして労働時間の削減目標や年次有給休暇取得促進を目標数値と共に掲げる
トップから働き方・休み方に関するメッセージは出されるものの、具体的な提案・指示ではなく、数値の目標もない。
働き方・休み方改善の取組をより一層図ることは、社是である「全社員の幸福の創造」や、貴社の掲げる社会的役割のうち「従業員とその家族の感謝の具現化」をより実現に近づけるために必要不可欠と考える。その為の取組の推進にさらにトップダウンによる一定の力を与えることが貴社の働き方・休み方改善の鍵であると考える。
そこで、トップメッセージに数値目標を示して、働き方・休み方の改革を明言する。
具体的な目標数値の設定には、次の「数値目標の設定」に示す安全衛生委員会等、労使による協議の場の活用が有効である。
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
労働時間の抑制や、年次有給休暇の取得促進に向けた社内の体制が明確でない。
働き方・休み方の具体策を話し合う労使協議の機会の設定
既存の労使委員会(例えば既存の安全衛生委員会)でもよいから、働き方・休み方改善の具体策について労使一体で話し合う機会を設ける。
例えば、「会社」、「部署」、「個人」の労働時間数や年次有給休暇の取得目標の設定を行う。
仮に、個人別の目標設定に決定し、実際の数字は個人で現状を理解した上で決定する場合、個人目標及び評価にまで落とし込むことで、目標達成の意識を高める。また、部署目標の場合には次項の管理職の評価とリンクさせることにより、管理職の意識を高める。
※全社目標であれば社内だけではなく、社外へも自社の取組として公表するなど、社内外にトップの本気度を伝える。また、公にすることにより、トップ自身の働き方・休み方に関する知識・意識(情報へアンテナを張る意識等も)をより高める。
項目3
改善促進の制度化
誕生日や記念日等の決まった日を年次有給休暇とするような制度はない。
「誕生日・誕生月休暇」等の休暇の設定
誕生日・月等に年次有給休暇の取得を促すメモリアル休暇制度を設ける。
誕生日は必ず誰しもにあり、また、事前に部署で情報共有できる休暇予定である。
ただし、例えば誕生月が年間における繁忙月であれば、前後の月への休暇の振替を前もって行うルールを設けておく等柔軟な対応を行い、業務への影響を最小限に抑える。
まずは、1~2日の休暇取得ニーズへの対応の手掛かりとして計画的に誕生日休暇を推進することを検討する。
5日以上の連続休暇制度はない。
「5日以上の連続休暇」の検討
従業員(労働組合)から、5日以上の連続休暇制度の導入の要請がある。
上期・下期それぞれ5日ずつ取得できるように要請があるが、先ずは上期・下期の閑散期に年1回5日以上の休暇を取得する制度の導入のため、人員的にそれが可能かも含め検討を行ってはどうか。
もし、難しいと判断する要因があるのであれば、その要因を探り、できない原因をクリアにしていくための検討を行う。
また、連続休暇の対象としては、非組合員であるフルタイムで勤務する非正規労働者も含めるなど、正規・非正規労働者間に、不公平が無いような運用を行うことも検討する。
項目4
改善促進のルール化
他店舗への応援対応を行うが、休暇取得等に伴う人員確保の為に多店舗応援対応を行うことは想定されていない。
人員不足に対する現状の応援体制ルールの適用要件を拡充する
現在、店舗間の人員応援制度があるにもかかわらず、適用要件は伝ぱ性のある疾病等に限られている。
ヒアリングでも、「オペレーションが標準化されており店舗間応援ができる」と説明いただいており、当該ルールを年次有給休暇の取得者の代替要員としての応援に拡充することにより、年次有給休暇の取得促進に有効に活用できると考える。
特に少人数で運営が行われる店舗では、一人あたりの責任、作業量等が重要であるため、休暇を取得したくとも他者を気にして(後ろめたさから)休暇取得は不可能と考えてしまう者もいるはずであるが、近隣他店舗から応援要員が派遣できれば、休暇取得による「後ろめたさ」を感じることなく休暇の取得申請ができるようになる可能性は高い。
伝ぱ性のある病気の場合、いつそれが起こるかわからない状態であるが、それにも関わらず、近隣店舗の店長間では不足する社員を補うための相互コミュニケーションが図られている。自身の意思による年次有給休暇の取得は、伝ぱ性の病気による出勤停止等より、計画して応援要員を派遣することが可能であり、現状で運用できているルールであれば、拡充による運用はできると考える。
管理職の評価項目に、部下の労働時間・年次有給休暇のマネジメントに関する項目はない。
管理職の人事評価項目に本人及び部下の労働時間や年次有給休暇の管理に関する項目を設定する
特に、店長の考えかたによって店舗の年次有給休暇取得率等に差がある。また、管理職の中には「年次有給休暇の取得などとんでもない」と考える社員もいるなど、トップが働き方・休み方についてメッセージ発信を行っているにも関わらず管理職層の意識の欠如が見られる。
適正な労働時間の管理、年次有給休暇の取得促進は、社員の労働生産性を高め、質の向上、優秀な人材の確保その他さまざまな効果が期待できる。
部下を持つ管理監督者の働き方・休み方への意識を高めるためには、本項の通り、評価と紐づけることも有効である。人事評価に管理職本人及び部下の労働時間や年次有給休暇取得の管理についての項目を組み込み、上位層になるにつれこの項目の評価の重要度を高める。
実施に当たっての一例として、労働時間及び年次有給休暇の取得について、管理職本人や組織としての目標値を設定し、併せて部下一人ひとりの目標値を設定したうえで、評価の一部に組み込む等、数値目標の設定があると目標が明確で遂行しやすい。現在、貴社は年次有給休暇の取得目標は設定されていない。例えば、貴社としての目標を設定したならば、その目標値を部門・管理職個人の評価の基準とする等、目標値達成度などを評価とリンクさせる意義はあると考える。
また、一般事業主行動計画からは、女性の育児等後の職場復帰・活躍への期待が伺える。今後、より一層女性の活躍の機会・場を拡大したいと考え、そして、その活躍を企業成長の原動力として期待するのであれば、所定外労働削減とともに、年次有給休暇の取得推進を進めることが必要である。
女性の活躍を推進するにはワーク・ライフ・バランスマネジメントが重要であること、部下の労働時間は上司のマネジメント能力によるところが大きいことなどについて、後段の研修等により理解を深め、評価への紐付けの意味を納得できるようにする。
また「項目8」の、社員意識調査にて現状把握を行うなど、多角的に取組を行う事が必要である。
Action(アクション)
項目5
意識改善
管理職の中に、「年次有休取得の取得などとんでもない」と考える社員が一定数存在する。その為、休暇取得のしやすさなどは現場の店長の意識・方針に大きく依存している。

長時間労働抑制、年次有給休暇の取得促進に向けた、一般社員向け・管理職向けの研修はない。
管理職向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
管理職の意識改革が重要であることを認識している。
そこで、①管理職本人の働き方・休み方改善を推進するための研修を行う。
また、働き方・休み方に課題のある部下の長時間労働の抑制及び年次有給休暇取得を促進するため、②部下の働き方・休み方のマネジメントに関する教育・研修を行う。
上記の研修は、集合研修に限らず、個別研修やe-ラーニング等でも可能である。例えばe-ラーニングシステムによる座学と、習熟度テストによる理解度チェックにより、研修を進めることもできる。ただし、e-ラーニングで行う場合は、研修受講・習熟度テストの最終期限を定め、受講が完了していない社員には、人事や上司から研修受講を促すようにする。※資料の回覧等で終わらせるのであれば実効性に乏しく効果は期待できない。
「なぜ取り組みが必要であるのか」を理解した上で働き方・休み方の改善推進を行うのでなければ、取組自体も、そしてそれが評価に紐づいていることも社員には単なるストレスとなる。
また、「休んでもすることがない」との社員の声もあるが、何かを行うために休む、という意識ではなく、身体を休めるために休む(何もない日でも休んでのんびりする)という意識の醸成を行うことにより、休暇取得の促進に繋げる。
長時間労働抑制、年次有給休暇の取得促進に向けた、一般社員向け・管理職向けの研修はない。
一般社員向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
長時間労働と健康・仕事効率の関係、休養の重要性などを従業員に認知してもらうため、全社員の受講を義務とする教育・研修を行う。
上記の研修は、集合研修に限らず、個別研修やe-ラーニング等でも可能である。例えばe-ラーニングシステムによる座学と、習熟度テストによる理解度チェックにより、研修を進めることもできる。ただし、e-ラーニングで行う場合は、研修受講・習熟度テストの最終期限を定め、受講が完了していない社員には、人事や上司から研修受講を促すようにする。※資料の回覧等で終わらせるのであれば実効性に乏しく効果は期待できない。
また「なぜ取り組みが必要であるのか」を理解した上で働き方・休み方の改善推進を行うのでなければ、取組自体も、そしてそれが評価に紐づいていることも社員には単なるストレスとなるため、従業員の業務量等、仕事や働き方・休み方について「項目8」にて提案している、「従業員の意識を把握」しつつ行うように注意する。
また、「休んでもすることがない」との社員の声もあるが、何かを行うために休む、という意識ではなく、身体を休めるために休む(何もない日でも休んでのんびりする)という意識の醸成を行うことにより、休暇取得の促進に繋げる。
項目6
情報提供・相談
年次有給休暇取得日数が少ない社員に対して、個別に取得の奨励や、ポスター、パンフレット資料等を作成・配布するなどの取得奨励は行っていない。
ポスター等の掲出物の作成・掲出や社内メールを利用した情報の提供を行う
例えば、トップメッセージとしての年次有給休暇取得に関する目標値等、会社のトップが掲げる全社目標等を掲出することで、社員が常に働き方・休み方の改善を意識しながら働くことができるような環境を整える。
現在、一般事業主行動計画では、社内メール等による介護有給休暇制度の周知実施を行うとされている。その社内メールは、休暇の取得を促進するためのものであるから、通常の年次有給休暇取得促進のための周知啓発のツールとしても利用する。情報は、社内報のように、休暇を取得して成長できたこと、楽しかったこと等、休暇取得の好事例を社員から募集して掲載したり、国の目標値と自社の現在の状況を比較して訴えるような記事、労使委員会における決定事項など(労組で記事の検討を行ってもよい)多様にある。
また、総務人事部では、年次有給休暇の取得が進む店舗の売り上げが低いわけではないことを認識している。それをデータで店舗に提供し、また、年次有給休暇が取得できている店舗の「社員の声」を集め、上記の社内報の「店長向け版」のようなものを別で作って配布するなど、数字を心配する店舗管理者に、年次有給休暇の取得と売り上げの関係などを示すなど、有益な情報を提供することにより、休暇取得への意識改善に繋げる努力を行う。
全社で年次有給休暇取得が低調な社員をリスト化し、当該社員に伝える
本人が、自分自身が周りに比べて休んでいないこと、周りは休暇を取得して仕事以外に自分の時間を使っている事を自覚していない場合もある。
そこで例えば、「○%以下の年次有給休暇取得率の社員は個別面談を行う。」など一定の閾値を設定して、該当者の割出しと本人への情報提供を行う。
その後の、休暇取得の実効性確保案として、前述の評価の他、チーム・店舗を対象とした目標達成報奨の設定を行うことも有効である。
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
社員の休暇の取得についての意識・考えを把握していない。
働き方・休み方についての意識調査を社員に対して定期に行う
労働組合から上・下期1回ずつ5連続休暇取得の要望が出ていることから、組合員は休暇の取得について様々な意見・要望を持っていると考えられる。そこで、働き方・休み方に関する個々の意識調査を定期的に実施し、社員が自身の働き方・休み方にどのような意識・考えを持っているかについて、把握した情報を時系列化し変化を把握・分析する。
また、各回の分析結果は、働き方・休み方についての労使による委員会(例えば衛生委員会)において検討のテーマに設定したり、労務管理の施策に反映することで、改善の取組を推進させる。
定期的な意識調査により、社員の満足・不満足を把握することは雇用管理改善に繋がり、有能な社員の流出の防止に寄与する。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。
1)トップメッセージとして労働時間の削減目標や年次有給休暇取得促進を目標数値と共に掲げる
年次有給休暇に関してはトップメッセージとして年度内に発信予定。
労働時間(所定時間)に関しては今後の検討課題。
労使共通認識をもって進めていく。
2)働き方・休み方の具体策を話し合う労使協議の機会の設定
上記と同様である。
3)「5日以上の連続休暇」の検討
現在、労使共通認識で取組中
4)管理職向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
取り組み内容検討中
5)一般社員向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
管理職向けの意識醸成後または並行して行うか検討中

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

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(平成28年度事業)

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