日経印刷株式会社

(1)企業概要

社名
日経印刷株式会社
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業種/事業概要
製造業
従業員規模
420人程度(2015年4月現在)
本社所在地
東京都
労働時間制度
始業終業時間
通常の昼勤 8:30-17:30(1日の所定労働時間8時間)
全社的に1年単位の変形労働時間制を採用。部署によっては3組2交代で8:30-18:00という勤務時間もある。
3組2交代は      
  昼休憩11:45-12:30(45分)
  午後休憩 15:00-15:15(15分)
 シフト勤務は
10:00-19:00(1日の所定労働時間8時間)
12:30-21:30(1日の所定労働時間8時間)
その他交代勤務の 夜勤8時間と8.5時間 20:30~朝5:30(8時間)など
機能に合わせた様々なシフトがある。
フレックス・裁量労働制は無い。

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
以下の取り組みを実施している。
・リフレッシュ定時退社制度を設けて、少なくとも月に1度は定時で帰る日を設定
・残業をする場合にはきちんと理由を書いて勤怠管理システムで申請するようにシステムを設計
・残業削減対策アクションプランを策定。平成28年度は6月24日~25日に管理職研修を行ない、部毎に集まり、残業削減のためにどうしたら良いか話し合い実施
・長時間労働の抑制に経営トップが発信
・月1回、月初の部長会の議事録の配信(配信先は課長以上、課内では、それをプリントアウトして回覧。発信したものが、社員まで届いているかどうかは、マネジャー依存・個人依存にはなっている。)
・社内報を1、4、7、10月にパートの方も含めて全員に配布
・毎水曜午前中の経営会議において、働き方の問題も取り上げている
・年次有給休暇は、お互い様なのだから、仕事をシェアして取得すれば良い、と言い続けて浸透してきた(まだまだ課題あるが、だんだん変わってきている。)
・残業時間の数値目標を明確化(少なくとも月42時間以下を達成する、会議に出ている人達には浸透しているが、下まで浸透しているかどうかは判らない。)

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
まずは社外のコンサルタントに当社の現状を見ていただき、第三者的に世間一般と比較して問題点を指摘していただきたい。そのうえで、他社で効果のあった活動など提案いただく事と合わせて、これまでは残業削減に向けての活動を継続的に取り組めていないので、計画的に活動を継続していかれるよう、提案・支援をお願いしたい。また、外部に協力を仰いで残業削減・有給休暇取得促進に取り組むという姿勢を社員に見せることで、この問題の解決に取り組もうとする経営陣および管理部門の本気度を社員に認識してもらい、社員にも本気で残業削減に取り組んでもらいたいと考えている。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
受注産業ということもあり、全体として残業時間は多めではあるが、特に一部の部署において残業時間のばらつきが大きい。早く帰ろうという意識が浸透していないところがある。
製造現場においてはチームでシフトを組んで稼動しているため、有給休暇が取りづらい状況がある。マネジャーの意識の古いところもあり、雰囲気としても「有給休暇を取りたい」と言いづらく、若手社員に不満があるのではないかと懸念している。
今回、働き方・休み方改善取組みにあたり、特に課題分析してみたい部署は、メインは営業である。残業の問題は、どちらかというと非管理職の方が多い。
残業削減対策アクションプランが始まったので、月1回の部長会報告において、総務から各部署・課毎に残業時間の状況を報告している。勤怠管理のシステムでマネジャーが毎日承認しているので残業も必要性を確認して承認してください、と言っている。
生産本部などは残業時間の推移をグラフ化している。しかし、管理はしているものの効果が伴っていない。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織体制
組織は大きく営業本部、制作本部、生産本部、管理本部の4本部に別れている。
営業本部には第一、二、三営業部があり、顧客ターゲット別に分かれている。このほか、営業推進部がある。
制作本部は制作部、製版部、情報システム部が、生産本部は生産管理部、印刷部、製本部に分かれている。
組織体制は、本部-部-課-(部署によって)チーム。
職位は、 本部長-部長-課長-(チームのあるところは)主任。
課長以上が管理職。
従業員うちパート・アルバイト40名程。正規社員は384名で男女比3:1程度。印刷部はほぼ男性で 女性は1名。営業アシスタントは全員女性。生産管理部は若干女性が多いが、概ね男女半々程度。
なお、労働組合は無い。

②働き方
制作本部:仕事が入ってくると取り組まなければならない。計画的に物づくりはしている。製版部については交代制を取っている。
生産本部(印刷、製本):ラインで動いているので、1人だけ休むことが出来ない、残業も1人だけ抜けられない。
営業部:個人差が大きい。残業している人はしている、していない人はしていない。有休取得も同様。

【全般的に】
売上の6割を占めるお客様は出版会社であり、どうしても自分達で校了し、ぎりぎりまで引っ張って、印刷に出すという昔からのやり方になりがちである。それに対応するというのは物づくりの姿勢としては良いが、少し古いのではないかと思う。
皆が皆残業したいわけではないと思うので、仕事のやり方を少しずつ変えていかれるのではないかと思っている。お客さんにも協力を求める。ただどうしても夜に寄ってしまうので、シフトを組んで対応している。製版部では午後から出社で夜勤務もある。24時間土日含め機械を動かしている部署もある。
現場では納期・量が決まっており、余程不具合が無い限り納期遅れが絶対に無いように作業を行なっている。従業員は、納期を守ってずっとやってくれており、残業してでも、休みに出てきてもやらなくてはいけない、突発的な休みはいけない等の意識は高い。印刷部は特に高い。
リフレッシュ定時退社制度を設けたが、働きかけも弱く、マネジャー次第となってしまい、全社にきちんと浸透させられないままになってしまっている。
残業の理由・時間申請できるようシステムを設計したが、利用は一時の動きで終わってしまい、継続していくことができていない。
繁忙期は2月後半~3月、次いで12月。
人員配置については、繁忙期に派遣の方を探すことはあるが、パートを繁忙期の間に限定して採用するということはしていない。日頃適正な人数で、繁忙期に皆で頑張っている。あとは協力会社にお願いしている。
繁忙期だけは土曜日出勤の年間の計画で、変形労働時間制を採用しており、3月第一から第四土曜は出勤、生産管理部は一週間前倒しする制度としている。

【営業】
営業事務処理はお客様のところを回った後に行なう。データ入力がどうしても夕方になってしまうと、その時間までいなくてはならない。
出退勤をきちんと管理しており、「みなし」は実態と合わず「みなし」は使っていない。
昔ながらの管理者は、営業は部下が残業していても、「残業するのが当然」という考え方であり、マネジメントしろと言ってもやらない。意識改革もしていかなければならない。まず管理してみて、次にお客様にお願いする。適正な労働管理を行なわなくてはならない。

【印刷・製本】
印刷部・製本部は、生産管理部からのコントロールは可能。ただ、突発的に入って来た仕事等をやってもらわなければならない時もある。基本的に定時までの仕事も一つ一つの積み上げて見ており、残業までの時間の仕事も見ることは出来るので、そこでのコントロールは可能だと思う。
定時までの仕事で詰めているのに残業になってしまっている場合には、現場としての何らかの不具合で遅れているというところを改善していかないと解決出来ない。その改善を行わないと、いつも残業になってしまう。そこのところのコントロールの裁量は、マネジャーに任せている。出来ないということは無い。

社長へ直接的に意見を伝える仕組みはあるものの、社員の働き方や労働時間に関する意識や意向を定期的に把握していない。

③休み方
夏季休暇を7~9月の間で2日間付与しており、これに3日の年次有給休暇を付けて1週間休む人は多い。年末年始は一斉休暇。
製版・印刷部(夜勤のあるチーム)は、1年の年次有給休暇取得計画を計画的に作ってくれている。
年次有給休暇を取得したいという時に調整できるようにしなさい、と指示している。
インフルエンザ等突発的なものは、対応せざるを得ないので、課長か主任(リーダー)クラス等がカバーしている。
シフトのやり繰りは、マネジャーの気持ちにも依るかもしれない。シフトを組む際に、だいたい年次有給休暇を○日くらい取って、だいたいどんな感じで休むというような「のりしろ」みたいなイメージは持っていないようである。

社長へ直接的に意見を伝える仕組みはあるものの、社員の休暇取得に関する意識や意向を定期的に把握していない。

④マネジメント
36協定は、最大延長時間を月42時間、年間320時間、特別条項により月80時間、年間400時間で締結している。
正社員について、いくつか部署を回って総合的に全体を把握していくローテーションは特に行っていない。他の職種への異動はない。
40名くらいの非正規社員のうち、長年勤めていて、正社員に近いスキルを持っている人が居る。フルタイムに近い働き方をしている人で、高校卒業して入って来た正社員と同じ仕事内容を行なっているパターンも有る。
パートでも、機械セッティングはできないかもしれないが、セッティングをした後に機械が回っている間近くで帯掛け作業をしてもらう(近くで様子を見る)等はある。そこから簡単な調整等スキル上がってくる部分はあるかもれない。
そういった人を上手く活用して増やしていくというのも手かもしれない。そういう人が居てくれると良い。
勤務形態別に、現場から勤怠の出勤のカレンダーのようなデータをExcel等でもらい、総務で設定する。個々人の残業時間把握は、シフトの情報と出勤退勤のデータで日々計算されている。
労働時間の管理については、社内の色々な情報を管理する基幹管理システムがあり、その中に勤怠管理システムも入っており、PCでシステム立ち上げて出勤・退勤のボタンを押すと打刻される。データベース的なところに勤怠も入れてある。
残業の申請は、登録画面に理由入れるようにした。現場においてシステムで申請を上げて毎回チェックするように指示しているが、チェックしているかどうか把握できていない。また、果たして申請の時間までの残業が必要なのか中身をチェックしているかというと、何とも言えない。残業予定時刻の管理をきちっと行なっている部署と行なっていない部署は、部署・マネジャーによって違う。マネジャーの管理を、きちっと行なっているところに統一させようとすると、マネジャーの研修が必要かと思うが出来ていない。
現場では、仕事が遅れるときは、何故仕事が遅れるのかということを日々見て、何が原因か1つずつ見て究明しないといけない。それがマネジメントだと思うし、やれると思っている。それは本部内研修などを通じて現場の改善はずっと行なっていかなければならない。マネジメントの役割として、知識・スキルを身に付けて欲しいと思っている。
生産・製本部で、顧客の違い、造るものの違いはあるが、課長のマネジメントによって部下の労働時間が増減する。生産本部というくくりの中に生産・製本・製版とあり、その本部会議が月2回午後丸々使って行なっているので、良い取組みのマネジメントのヒントを水平展開出来ると思う。
月1回、月初の部長会の議事録を課長以上に配信しており、課内では、それをプリントアウトして回覧しているが、発信したものが、社員まで届いているかどうかは、マネジャー依存・個人依存にはなっている。

⑤その他
市場競争において会社の強みは以下の4点にある。

ⅰ短納期(このために残業になっていると言えるが)スピーディー
ⅱ営業が技術的な知識を持って提案(営業マンに訊けば分かるという育て方している)
ⅲ皆が支え合っている
ⅳものづくりにこだわっている

メインターゲットのお客様、印刷物の種類は、売上の3割が出版社、3割が同業、学校・予備校等教育機関1割、官公庁(白書の約6割取扱い)、医薬・製薬会社、   金融系・証券など。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
一部の部署において残業時間のばらつきが大きい。早く帰ろうという意識が浸透していないところがある。
リフレッシュ定時退社制度を設けたが、働きかけも弱く、マネジャー次第となってしまい、全社にきちんと浸透させられないままになってしまっている。
残業の理由・時間申請できるようシステムを設計したが、利用は一時の動きで終わってしまい、継続していくことができていない。
営業事務処理はお客様のところを回った後に行なう。データ入力がどうしても夕方になってしまうと、その時間までいなくてはならない。
昔ながらの管理者は、営業は部下が残業していても、「残業するのが当然」という考え方であり、マネジメントしろと言ってもやらない。意識改革もしていかなければならない。
現場では、仕事が遅れるときは、何故仕事が遅れるのかということを日々見て、何が原因か1つずつ見て究明しないといけない。それがマネジメントだと思うし、やれると思っている。それは本部内研修などを通じて現場の改善はずっと行なっていかなければならない。マネジメントの役割として、知識・スキルを身に付けて欲しいと思っている。
生産・製本部で、顧客の違い、造るものの違いはあるが、課長のマネジメントによって部下の労働時間が増減する。生産本部というくくりの中に生産・製本・製版とあり、その本部会議が月2回午後丸々使って行なっているので、良い取組みのマネジメントのヒントを水平展開出来ると思う。
残業の申請は、登録画面に理由入れるようにした。現場においてシステムで申請を上げて毎回チェックするように指示しているが、チェックしているかどうか把握できていない。また、果たして申請の時間までの残業が必要なのか中身をチェックしているかというと、何とも言えない。残業予定時刻の管理をきちっと行なっている部署と行なっていない部署は、部署・マネジャーによって違う。マネジャーの管理を、きちっと行なっているところに統一させようとすると、マネジャーの研修が必要かと思うが出来ていない。
月1回、月初の部長会の議事録を課長以上に配信しており、課内では、それをプリントアウトして回覧しているが、発信したものが、社員まで届いているかどうかは、マネジャー依存・個人依存にはなっている。
労働組合は無い。
社長へ直接的に意見を伝える仕組みはあるものの、社員の働き方や労働時間に関する意識や意向を定期的に把握していない。

2)休み方
製造現場においてはチームでシフトを組んで稼動しているため、有給休暇が取りづらい状況がある。マネジャーの意識の古いところもあり、雰囲気としても「有給休暇を取りたい」と言いづらく、若手社員に不満があるのではないかと懸念している。
インフルエンザ等突発的なものは、対応せざるを得ないので、課長か主任(リーダー)クラス等がカバーしている。
シフトのやり繰りは、マネジャーの気持ちにも依るかもしれない。シフトを組む際に、だいたい年次有給休暇を○日くらい取って、だいたいどんな感じで休むというような「のりしろ」みたいなイメージは持っていないようである。

社長へ直接的に意見を伝える仕組みはあるものの、社員の休暇取得に関する意識や意向を定期的に把握していない。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0.3%であった。
→貴社の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である8.2%(従業員規模100~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%ともにクリアしている。
(36協定で定める労働時間の延長の限度基準である1ヶ月45時間を超える従業員は39.6%(注1)いる。)
(注1) 繁忙月
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全従業員平均46.3%であった。
→主要産業の平均値である46.0%(従業員規模100~999人のカテゴリ)とほぼ同水準であるものの、国の定める目標値70.0%には達していない。
貴社の長時間労働の社員の割合は目標値以上だが、36協定で定める労働時間の延長に関する国の限度基準である1ヶ月45時間を超える社員が存在しているため、働き方の改善が求められる。一方、年次有給休暇の取得率は目標値に達していないことから、休み方の改善も求められる。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
月1回、月初の部長会の議事録を課長以上に配信しており、課内では、それをプリントアウトして回覧しているが、発信したものが、社員まで届いているかどうかは、マネジャー依存・個人依存にはなっている。
経営陣及び管理部門主導の「残業削減対策アクションプラン」の確実な遂行と社内末端までの浸透・定着
 現在、経営陣及び管理部門の指示で部毎に残業削減アクションプランを策定し、推進しているところであり、この確実な遂行と定着を図る。
 経営会議及び部長会でもこの進捗状況の報告がなされ、部長会の議事録も各課長には配信して、課内で回覧しているが、社内末端までの浸透・定着を図るため、トップメッセージ及び残業削減対策アクションプランの進捗状況とあわせて、残業削減対策アクションプランに沿った様々な活動・工夫を含めて、発行している社内報などでも採り上げ周知する。
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
労働組合は無い。
働き方・休み方改革に向けて従業員代表等との協力推進体制の整備
長時間労働の抑制及び年次有給休暇取得促進に関して、会社側からの視点とは別に、従業員代表など現場の従業員と定期的な意見交換の場を設けて、取組の推進に協力してあたる体制を構築する。あわせて、会社としての従業員意識調査等とは別に、従業員代表としての従業員の意見の収集を期待し、意見交換の場での会社にも従業員にも望ましい働き方・休み方を検討し、その姿に向けて取組を推進する。
項目3
改善促進の制度化
製造現場においてはチームでシフトを組んで稼動しているため、有給休暇が取りづらい状況がある。マネジャーの意識の古いところもあり、雰囲気としても「有給休暇を取りたい」と言いづらく、若手社員に不満があるのではないかと懸念している。
「記念日休暇」、「誕生日休暇」等のメモリアル休暇の設定
年次有給休暇を取得しにくい状況を改善し、社員一人一人が年次有給休暇の取得を増やすことが出来るよう、記念日や誕生日等に年次有給休暇の取得を促すメモリアル休暇制度を設ける。誕生日休暇は、その性格上全ての社員に権利を提供できるため、他の休暇に先駆けてスムースな導入がしやすい。誕生月が繁忙である場合などは、前後の月への休暇の振替を前もって行うルールを設けておく等柔軟な対応を行い、業務への影響を最小限に抑える。
なお、チームでシフトを組んで仕事をすることに伴う業務への影響を抑えるため、後述項目5意識改善の「管理職層に対するマネジメント力向上等を目的とした実習型研修」、項目7仕事の進め方改善の「シフトを組む際のメモリアル休暇など計画的年休取得予定の反映を徹底する」と併せて実施することにより、シフトの組み方を始め、マネジメントのあり方の改善と組みあわせて効果を発揮すると考えられる。

時間単位での年次有給休暇取得制度による年次有給休暇取得促進
「有給休暇を取りたい」と言いづらい状況の中で、少しでも休暇を取りやすくするために、1日フルに休めなくても良いので、どうしても必要な時間だけ年次有給休暇取得を可能にすることにより、年次有給休暇取得を促進することも考えられる。
年次有給休暇は日単位で取得することが原則ではあるが、労働者が有効に休暇を活用できるようにするため、半日又は時間単位での取得の制度を設け、取得しやすくすることも考えられる。
なお、時間単位の年次有給休暇取得制度導入にあたっては、使用者と労働組合(又は従業員代表)との間で労使協定を結ぶ必要がある。この協定では、次の事項を定めることが必要。
・対象労働者の範囲
・時間単位年休の日数
(年5日以内。前年度からの繰り越し分がある場合は、繰り越し分を含めて5日以内)
・時間単位年休1日の時間数
(1日の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するか。1時間に満たない端数は1時間単位に繰り上げる)
・1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
(2時間単位、4時間単位等の整数の時間単位で。ただし、1日の所定労働時間数と同じ、又はこれを上回ることはできない)
項目4
改善促進のルール化
リフレッシュ定時退社制度を設けたが、働きかけも弱く、マネジャー次第となってしまい、全社にきちんと浸透させられないままになってしまっている。
残業の理由・時間申請できるようシステムを設計したが、利用は一時の動きで終わってしまい、継続していくことができていない。
マネジャーの意識の古いところもあり、雰囲気としても「有給休暇を取りたい」と言いづらく、若手社員に不満があるのではないかと懸念している。(再掲)
管理職の人事評価に部下の労働時間・年次有給休暇取得の状況を評価項目に入れる
企業の発展のためには、ワーク・ライフ・バランスにも配慮して人材確保・人材育成を長期的視点でとらえることが重要である。
リフレッシュ定時退社制度が全社に浸透していない、残業申請仕組みがきちんと機能していない、年次有給休暇取得を言い出しにくいといった状況を改善するため、マネジャーに対して、リフレッシュ定時退社制度の実施状況、残業申請の適正な運用、部下の労働時間及び年次有給休暇取得状況などを人事評価項目に設定し、管理職の意識改善を促す。
Action(アクション)
項目5
意識改善
昔ながらの管理者は、営業は部下が残業していても、「残業するのが当然」という考え方であり、マネジメントしろと言ってもやらない。意識改革もしていかなければならない。
一部の部署において残業時間のばらつきが大きい。早く帰ろうという意識が浸透していないところがある。
リフレッシュ定時退社制度を設けたが、働きかけも弱く、マネジャー次第となってしまい、全社にきちんと浸透させられないままになってしまっている。(再掲)
現場では、仕事が遅れるときは、何故仕事が遅れるのかということを日々見て、何が原因か1つずつ見て究明しないといけない。それがマネジメントだと思うし、やれると思っている。それは本部内研修などを通じて現場の改善はずっと行なっていかなければならない。マネジメントの役割として、知識・スキルを身に付けて欲しいと思っている。
管理職層に対するマネジメント力向上等を目的とした実習型研修
管理職層に対して、所定外労働削減や年次有給休暇取得促進に向けた取組の推進、自身及び部下のワーク・ライフ・バランス、創造的な業務遂行の意義などについて講義を行う。
次に、研修を通じて、部下の労働時間管理は業務遂行と共にマネジメントの基本的な要素であることの認識を深めさせる。併せて、業務の効率化に向けた研修を行い、定時に仕事を終えることを前提とした仕事の割り振り・時間管理について習得させ、マネジメント力の向上を図る。
その後、具体的な職場における所定外労働削減に向けての取組について、グループワークなどによる実際に即した対策を討議し、取組内容を策定する実習型の研修を行う。
なお、後述項目6情報提供・取得奨励の「成果を挙げつつ残業削減を始めとするワーク・ライフ・バランスを達成出来ている要因の分析とその優良事例の共有」における自社の働き方・休み方改善の優良事例を研修の中で参考事例として取りあげることも検討する。
製造現場においてはチームでシフトを組んで稼動しているため、有給休暇が取りづらい状況がある。マネジャーの意識の古いところもあり、雰囲気としても「有給休暇を取りたい」と言いづらく、若手社員に不満があるのではないかと懸念している。(再掲)
一般社員向けの意識改善に向けた研修
一般社員向けの研修内容については、仕事は所定内で終えるのが基本であり、効率的に仕事を遂行して早く退社し、又は年次有給休暇を有効に活用することを通じて、家族と過ごす時間を大事にし、自己啓発や休養、趣味なども含めて、人間性を高めるために使うことを推奨する研修を実施し、社員の意識改善を図る。研修の実施に当たっては、ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方は、仕事の質の向上につながることを実感できるようなものとし、その実例についても紹介することを通じて、残業・年次有給休暇に対する意識の変革を図る。
項目6
情報提供・相談
生産・製本部で、顧客の違い、造るものの違いはあるが、課長のマネジメントによって部下の労働時間が増減する。生産本部というくくりの中に生産・製本・製版とあり、その本部会議が月2回午後丸々使って行なっているので、良い取組みのマネジメントのヒントを水平展開出来ると思う。
成果を挙げつつ残業削減を始めとするワーク・ライフ・バランスを達成出来ている要因の分析とその優良事例の共有
残業削減対策アクションプランで、部毎に様々な対策を策定して推進中である。その取組実施状況を踏まえ、各部で効果があると評価される取組について、その効果のある理由、推進する上での工夫、推進する上で苦労した点などを報告してもらい、管理部門で分析して優良事例として取りまとめる。
その優良事例を社内のイントラネットなどを通じて社内で共有する。あわせて項目5意識改善における「管理職層に対するマネジメント力向上等を目的とした実習型研修」、「一般社員向けの意識改善に向けた研修」において教材として活用する。
項目7
仕事の進め方改善
インフルエンザ等突発的なものは、対応せざるを得ないので、課長か主任(リーダー)クラス等がカバーしている。
業務の組織的遂行体制の構築(ペア制など)
 営業については、一人ひとりの担当者はそれぞれの顧客に対応しており、担当者が休暇を取得した場合、課長か主任クラスがカバーしている。しかし、個々の顧客を社員一人で抱え込む状況は、その社員が不在になれば担当業務が停滞する、又は課長等に負荷がかかるなど、会社組織としてリスクを含んでおり、また、業務の抱え込みそのものが働き方・休み方の改善に向けた課題とも考えらえる。
そのため、業務を組織的に遂行する体制を整備する。
 既に、残業削減対策アクションプランにおいても「ペア制」として採り上げられているが、例えば、営業先顧客について主担当、副担当等複数で担当することとし、主担当が休んだ場合は副担当がバックアップする等組織的に対応する体制を構築する。
あわせて、人事評価において組織的な業績を評価の対象とするよう検討する。
営業事務処理はお客様のところを回った後に行なう。データ入力がどうしても夕方になってしまうと、その時間までいなくてはならない。
労働時間制度の工夫又は翌日に処理を持ち越す
 営業事務処理について、営業担当者が顧客先から会社から戻ってからデータ入力の業務が発生することから、どうしても夕方以降に負荷がかかることになって残業の発生要因となっている。これが残業にならないようにするためには、可能であれば入力処理を翌日朝に持ち越すことが考えられる。
ただし、翌日の営業活動を始める際の検討に必要な情報であるということもあるので、その場合は、多様な労働時間の仕組みを活用して、朝の出勤時間を遅くしたシフトを採用することにより、残業時間を発生しないように工夫する。この場合には労働組合又は労働者代表との間で十分意見交換を行った上で導入する。
製造現場においてはチームでシフトを組んで稼動しているため、有給休暇が取りづらい状況がある。マネジャーの意識の古いところもあり、雰囲気としても「有給休暇を取りたい」と言いづらく、若手社員に不満があるのではないかと懸念している。(再掲)
シフトのやり繰りは、マネジャーの気持ちにも依るかもしれない。シフトを組む際に、だいたい年次有給休暇を○日くらい取って、だいたいどんな感じで休むというような「のりしろ」みたいなイメージは持っていないようである。
シフトを組む際のメモリアル休暇など計画的年休取得予定の反映を徹底する
 シフトを組む際に、年次有給休暇取得日数、時期などについてのイメージはあまり持っていないようであるとのことから、メンバーの年次有給休暇取得予定の情報を管理部門で収集・整理してマネジャーに提供し、シフトを組む際に必ず考慮するように徹底する。
 年次有給休暇取得を計画的に進める仕組みとシフトの組む際の休暇予定情報をあわせることによって、業務の遂行に問題が発生しない形で年次有給休暇の取得促進が可能になる。
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
社長へ直接的に意見を伝える仕組みはあるものの、社員の働き方や労働時間及び休暇取得に関する意識や意向を定期的に把握していない
社員意識調査の実施・分析
社員から直接社長に意見を伝える仕組みはあるものの、テーマを設定して社員全員からの意見を定期的に把握しているわけではない。意見を出しやすいよう無記名で、項目を決めて、モラール、働きがい、働き方、休み方、評価、処遇について社員の意識を定期的に把握し、分析することで、働き方・休み方改善のための施策を検討する際の資料とする。
上記の社員意識調査以外にも、長時間労働や年次有給休暇の取得が低調な部署、個人に対して、ヒアリング等の方法により実態を把握し、分析することで、改善の取組の実効性を高める。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。

1)経営陣及び管理部門主導の「残業削減対策アクションプラン」の確実な遂行と社内末端までの浸透・定着
  2016年度実施した残業削減対策アクションプラン遂行状況を踏まえ、2017年度のアクションプランを策定して1月より実施している。社内への浸透については部長会議事録、社内報を利用して周知していく。

2)「記念日休暇」、「誕生日休暇」等のメモリアル休暇の設定
  実施に向けて検討。制度案の検討を進めていく。

3)時間単位での年次有給休暇取得制度による年次有給休暇取得促進
  実施に向けて検討。制度案の検討を進めていく。

4)管理職の人事評価に部下の労働時間・年次有給休暇取得の状況を評価項目に入れる
  すぐに実施は難しいが、検討したい。管理職の人事評価に部下の残業時間、年次有給休暇取得の状況を入れることに、否定的な意見もあるため、引き続き検討。

5)管理職層に対するマネジメント力向上等を目的とした実習型研修
  2017年度の管理職研修のテーマとして検討。

6)一般社員向けの意識改善に向けた研修
  実施に向けて検討。ただし、一般社員全体に向けた研修ということではなく、階層別研修において実施する予定。

7)成果を挙げつつ残業削減を始めとするワーク・ライフ・バランスを達成出来ている要因の分析とその優良事例の共有
  すぐに実施は難しいが、検討したい。情報発信としては社内報が活用できるが、まずは優良事例を収集することからはじめたい。

8)業務の組織的遂行体制の構築(ペア制など)
   すぐに実施は難しいが、検討したい。現場と相談の上、引き続き検討。
 
9)労働時間制度の工夫又は翌日に処理を持ち越す
   現場と相談の上、引き続き検討。ただし基本的には納期に間に合わせる必要があるため、翌日に持ち越せる処理がどの程度あるか見極めが必要。
 
 10)シフトを組む際のメモリアル休暇など計画的年休取得予定の反映を徹底する
   実施に向けて検討。制度案の検討を進めていく。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

-

(平成28年度事業)

事例を評価する