C社(2016年度)

(1)企業概要

社名
C社(2016年度)
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業種/事業概要
製造業
従業員規模
約200人
本社所在地
大阪府
労働時間制度
本社9:00~17:30(休憩45分)
製造所8:30~17:00(休憩45分)
24時間運転しているラインについては、シフト制を採用している。
(3交代制、8:30 ~17:00、16:30~25:00、0:30~9:00)

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
以下の取組を実施している。
・就業規則について、産休・育休などについてかみ砕いた資料を経営企画室で作成
・製造所は10時と15時に休憩を勧奨する放送を実施
・労使協議会を設置
・本社は毎週水曜日にノー残業デーを実施
・年次有給休暇の計画的付与(全社一斉の指定有給休暇5日)
・労働局のポスターを掲示
・産業医の面談・保険会社のメンタルヘルスの相談窓口を周知

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
先ずは現状の分析及び課題の明確化、現状社員を含め何となく感じている問題点が本当に問題なのかを明確にしたい。
会社の業績は安定して、売り上げも拡大傾向にある中で、残業は少なく、年次有給休暇も一部で課題はあるものの、全般的には決して取りにくい訳では無い。現状でグッドカンパニーと言える状況の中で、会社そのもの、及び働き方・休み方について、さらにエクセレントカンパニーを目指したいと考えているが、改革を進める際に保守的な発言がある。別に今で十分と思っている人もいるため、物事を進めていくため、外部の専門家から見た問題点・課題を指摘して頂き、改善取組の必要性について社内の合意を得て進めていきたい。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
一部の部署では、年次有給休暇の取得が問題となっている。取得時の業務遂行に支障が出ないよう、主担当・副担当制を採用するように現場にアプローチしているが、人員的にも副担当も業務負荷が限界の状態のため、十分にカバーできていない。
全社的な方向性としては、業務の効率化を検討しているが、数十年来同一手法で業務を進めており、トップダウンで「効率化」といっても、現場では対応しきれない部分がある。
社内で業務効率化のための検討時間を作ることは可能であるが、ミーティングを実施しても、アイデアが出てこない。従業員と経営者の意見交換会の場として、提案制度や意見交換会、社長との直接談話会も不定期ではあるが継続的に実施しているが、現場から特段の不満は出ておらず、過去に実施したES調査についても、傾向としては「大きな不満も要望もない」という状態であった。そのため、従業員の意識サーベイは有効的ではない、との結論になった。従業員には、提案をしても変わらない、といった雰囲気があり、改革を推進している経営企画室と現場の間には大きな壁がある。
中間管理職層に問題があるケースもあり、教育と意識改革が必要である。現場から改善要望や意見が出た場合には現場の中間管理職層が止めてしまう場合もあるため、経営層まで意見があがらないこともある。一方で、経営企画室に意見を伝えると必ず何らかの動きが発生するため、中間管理職層からすると、「自分を飛び越えて施策が決定された」という状態を生んでしまっている。特に現在の部課長クラスは社内に30年前後勤務する長期継続勤務者が多い。彼らは過去の自分たちのやり方でやって好調だった時期を知っているため、いわゆる「足で稼ぐ」ということが勤務における価値観となってしまっている部分があり、意識改革の必要性が高い。
最近、採用の際に女性の方が優秀な人が応募して来るので、女性を増加していきたいと考えており、働き方に制約のある社員に対する対応が長期的には必要であると考えている。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織体制
大きく分けて二つの事業を実施しており、事業部制を採用している。部品関連の事業については、国内においては競合がいない状態であり、グローバル市場で競争を行っている。もう一つの素材事業については、国内においても競合他社がいるが、製品の品質で勝負しており、一定の競争力を有している。
全社の組織は、管理本部、部品関連の事業部、素材事業部の三本部制である。管理本部のトップは常務取締役であり、常務取締役直下に経営企画室という組織がある。グループが課レベルの位置づけであり、室長とグループ長が他社における課長レベルである。部長と製造所長が部長レベルに相当する。製造部門についてはグループの下の単位としてラインがあり、ラインリーダーが存在するが、基本的にはグループが最低単位となっている。
男女比は、全体では7:3で男性が多い。正社員に絞ると、8:2で男性が多いが、今後は女性を増員する予定である。人員については、短期的には増加傾向にあるが、長期的に大幅な増加はしない方向であり、むしろ効率化による人件費削減を意図している。
新卒採用は毎年若干名採用している。中途採用は欠員の補充に留まる。非正社員は定常的に雇用している。工場には非正規従業員が50名程度勤務している。

②働き方
部品関連の売り上げは9割が海外に依存しているが、海外は代理店を通じての営業となっているため、それほど顧客に密着した勤務実態とはなっていない。海外への対応も顧客の大半が東南アジアのため、時差も少ない。一方で、素材事業部の売り上げの95%が国内のため、こちらの営業職は顧客に密着している。営業職は取り扱う製品によって営業スタイルがかなり異なっている。一般的な製造業における営業職ほど多忙ではない。
工場の働き方については、動かす時と止める時に一番人手を要する為、基本的には休憩時も  ラインを止めない。一方で、全てのラインに人が常時貼りついているという状態ではない。工場については、月末に繁忙を迎えるため、一時的に負荷が高まる。
毎週水曜日にノー残業デーを実施しているが、そもそもノー残業デーが必要なほど残業が多くないことに加え、一週間で業務量を平準化するインセンティブの方が強いため、効果がないのが実態である。残業実施のための手続きは全社で統一していない。

③休み方
年次有給休暇の取得率が特に低いのは「経営企画室」「企画グループ」所属の従業員である。経営企画室は他社における経営企画室に該当し、採用も行っている。企画グループは不動産の管理を行っている。
経営企画室は採用業務を実施しているため、土日に勤務の必要性が生じる。そのため、代休が発生して営業日に休日があるため、代休の消化で休日が十分となり、別途年次有給休暇を取得するインセンティブが働かない。経営企画室に対しては、採用時期の関係から8月頃から4月頃まで繁忙が続くため、閑散期の5~7月に年次有給休暇の連続取得を奨励している。ただし、「仕事が多い」と感じている中で、精神的にも休みにくい傾向がある。また、休暇取得後に業務負荷が一時的に高まる傾向もある。
全体的には年次有給休暇の取得傾向は低くないが、業務が属人的になっている傾向はあるため、担当者が休暇を取得した際に、他者が業務を引き継ぐことは難しい。また、人員にも余裕を持たせているわけではないため、休んだ人を完全にカバーできる状態にはなっていない。合わせて、異動が少ない社風のため、個々人が専門家集団になっており、業務に対して人員の代替性が低い。そのため、休暇取得を勧奨することはできても、休んだ後の業務をどうするのか、という問題が残ってしまう。
製造技術で年次有給休暇の取得が難しいのは、保有している技能との関係で代替性が低く、加えて納期との関係で休みにくい状況が生まれている。製造技術は一製品一担当の体制になっている。実際には、1日~2日の休みによって影響が出るような経営状態ではないものの、日々の新規引き合いや営業案件・開発案件が増える中で、心情的に休みにくい状態になっている。
年次有給休暇を取得することで、イノベーションが直ちに生まれるようなマインドセットにはなっておらず、社員はプラスの連鎖を生み出すことが難しい状態になっている。

④マネジメント
36協定は、事業場毎に締結しており、基本となっている管理部では最大延長時間を月40時間、年間320時間、特別条項により月60時間で締結している。
現在、管理職研修は階層的には実施していない。現在設計中ではあるが、管理職研修は研修の方法等、センシティブな部分があるため、設計に時間を要する。
技術の業務は若手従業員が担当しており、製造部門は多能工化を推進している。技術については社内ローテーションを実施しているが、休暇を取得した人の代理で入れるようなレベルで知識をアップデートしているわけではないため、多能工化、という点では今一歩である。
出退勤は、非管理職については、タイムカードによる打刻と出勤簿の併用で管理している。本社勤務の従業員は出勤簿で管理を行っている。
業務の効率化の重要性については経営陣も認識しているが、長時間労働の削減や年次有給休暇の取得については、トップによるメッセージの発信は改めては行っていない。有休カードにて、有休の残日数を把握しているが、個人の休暇取得状況は他者には把握しにくいシステムとなっている。
長期出張などへのフォロー体制は設置しており、特に部品事業はメールベース・提案書ベースの仕事が多いため、共有しやすいが、素材事業は人間関係による営業が多いため、共有しにくい実態がある。
全社的な傾向として、会議が多い。月1回程度の会議が複数存在しているが、報告会になっており、議題を決定する会議は殆どない。担当者レベルでの打ち合わせを実施、その後会議で報告し上長による指摘を受けて、再度担当者が持ち帰る、というサイクルになっている。特に工場でこの傾向が強く、出席人数も多い。
社員の働き方や労働時間に関する意識や意向については定期的に把握しているものの、年次有給休暇取得等に関しては把握していない。
全社・部署・個人等で労働時間、残業時間及び年次有給休暇取得状況等に関する数値目標を設定していない。

⑤その他
真面目な社員が多く、要領が悪い場合もあり、さほど時間を掛けなくても良い業務に全力で取り組んでしまっていることもある。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
残業実施のための手続きは全社で統一していない。

2)休み方
休暇取得時の業務遂行に支障が出ないよう、主担当・副担当制を採用するように現場にアプローチしているが、人員的にも副担当も業務負荷が限界の状態のため、十分にカバーできていない。
業務が属人的になっている傾向はあるため、担当者が休暇を取得した際に、他者が業務を引き継ぐことは難しい。異動が少ない社風のため、個々人が専門家集団になっており、業務に対して人員の代替性が低い。そのため、休暇取得を勧奨することはできても、休んだ後の業務をどうするのか、という問題が残ってしまう。
有休を取得することで、イノベーションが直ちに生まれるようなマインドセットにはなっておらず、社員はプラスの連鎖を生み出すことが難しい状態になっている。
有休カードにて、有休の残日数を把握しているが、個人の休暇取得状況は他者には把握しにくいシステムとなっている。

3)働き方・休み方共通
現状でグッドカンパニーと言える状況の中で、会社そのもの、及び働き方・休み方について、さらにエクセレントカンパニーを目指したいと考えているが、改革を進める際に保守的な発言がある。別に今で十分と思っている人もいるため、問題点・課題を指摘して頂き、改善取組の必要性について社内の合意を得て進めていきたい。
全社的な方向性としては、業務の効率化を検討しているが、数十年来同一手法で業務を進めており、トップダウンで「効率化」といっても、現場では対応しきれない部分がある。
社内で業務効率化のための検討時間を作ることは可能であるが、ミーティングを実施しても、アイデアが出てこない。
中間管理職層に問題があるケースもあり、教育と意識改革が必要である。現場から改善要望や意見が出た場合には現場の中間管理職層が止めてしまう場合もあるため、経営層まで意見があがらないこともある。一方で、経営企画室に意見を伝えると必ず何らかの動きが発生するため、中間管理職層からすると、「自分を飛び越えて施策が決定された」という状態を生んでしまっている。特に現在の部課長クラスは社内に30年前後勤務する長期継続勤務者が多い。彼らは過去の自分たちのやり方でやって好調だった時期を知っているため、いわゆる「足で稼ぐ」ということが勤務における価値観となってしまっている部分があり、意識改革の必要性が高い。
本社勤務の従業員は出勤簿で管理を行っている。
業務の効率化の重要性については経営陣も認識しているが、長時間労働の削減や年次有給休暇の取得については、トップによるメッセージの発信は改めては行っていない。
全社的な傾向として、会議が多い。月1回程度の会議が複数存在しているが、報告会になっており、議題を決定する会議は殆どない。担当者レベルでの打ち合わせを実施、その後会議で報告し上長による指摘を受けて、再度担当者が持ち帰る、というサイクルになっている。特に工場でこの傾向が強く、出席人数も多い。
真面目な社員が多く、要領が悪い場合もあり、さほど時間を掛けなくても良い業務に全力で取り組んでしまっていることもある。
社員の働き方や労働時間に関する意識や意向については定期的に把握しているものの、年次有給休暇取得等に関しては把握していない。
全社・部署・個人等で労働時間、残業時間及び年次有給休暇取得状況等に関する数値目標を設定していない。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0%であった。
→貴社の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である8.2%(従業員規模100~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%ともにクリアしている。
(36協定で定める労働時間の延長の限度基準である1ヶ月45時間を超える従業員は2.9%(注1)いる。)
(注1) 繁忙月
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全従業員平均57.8%であった。
→主要産業の平均値である46.0%(従業員規模100~999人のカテゴリ)を上回っているものの、国の定める目標値70.0%には達していない。
貴社の年次有給休暇の取得率は目標値に達していないことから、休み方の改善が求められる。一方、長時間労働の社員の割合は目標値以上だが、36協定で定める労働時間の延長に関する国の限度基準である1ヶ月45時間を超える社員が若干存在しているため、働き方の改善も求められる。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
現状でグッドカンパニーと言える状況の中で、会社そのもの、及び働き方・休み方について、さらにエクセレントカンパニーを目指したいと考えているが、改革を進める際に保守的な発言がある。別に今で十分と思っている人もいるため、問題点・課題を指摘して頂き、改善取組の必要性について社内の合意を得て進めていきたい。
業務の効率化の重要性については取締役も認識しているが、長時間労働の削減や年次有給休暇の取得については、トップによるメッセージの発信は改めては行っていない。
エクセレントカンパニーのイメージ具体化とその実現に向けた経営トップによる業務の効率化と所定外労働削減・年次有給休暇取得促進を徹底する方針について発信
会社の現在の状況を改めて見直し、将来のエクセレントカンパニーのイメージを、事業領域、物づくりのあり方、働き方・休み方について具体化することが必要と思われる。エクセレントカンパニーの具体的な姿については、経営トップ(社長)から方向性を示し、それを基に、部長クラス、課長クラス、入社後10年程度など様々な階層のメンバーからなるワーキングにおいて意見を出し合い検討していく。
それを踏まえて、エクセレントカンパニーの実現に向け、組織として事業展開、業務効率化と共に、経営課題として所定外労働削減、年次有給休暇取得促進の取組を行う。その取組の方針について、経営トップから全社に向けた発信を行う。
発信の内容としては、目指すべきエクセレントカンパニーの姿、そこで働く社員の姿についてイメージを共有できるもの、その姿の実現のため長時間労働の削減や年次有給休暇取得促進は業務の効率化と表裏の関係にあること、従って、限られた時間で如何に効率よく仕事を進めるか、限られた人員で如何に生産性を上げるか、そのための業務の効率化、仕事の進め方の改革が必要であることを示す。併せて、所定外労働削減、年次有給休暇取得促進が社員皆の「生活と仕事」の質の向上につながること、などの方向性を示すものとする。また、具体的な対策を推進するため、次項目2「中間管理職を巻き込んだ改善推進体制の構築」にあるワーキングなどを設置して検討を行い、あわせて、その体制で推進することも全社に発信する。
発信の媒体は社内イントラネット、社内報など様々な媒体を活用し、全社員に届くよう工夫する。
全社・部署・個人等で労働時間、残業時間及び年次有給休暇取得状況等に関する数値目標を設定していない。
全社・部署などで残業時間や年次有給休暇取得に関する数値目標を設定
全社又は部署単位で残業時間や年次有給休暇取得に関して目標を設定し、その目標に対する達成状況を評価して、問題点の明確化に役立てる。あわせて、達成状況を後述の提案項目4改善促進のルール化における「管理職の人事評価に部下の労働時間・年次有給休暇取得の状況を評価項目に入れる」に活用する。
数値目標の設定にあたっては、所定外労働については、例えば「所定外労働を前年比○%削減」、「月間45時間を超える人数を0人」など、年次有給休暇取得については「毎月1日全員取得」、「半期に3~5日全員取得」、「年次有給休暇取得率○%」などという形で、各部署の置かれた仕事の状況、繁閑の差など考慮し、運用しやすいよう設定する。
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
中間管理職層に問題があるケースもあり、教育と意識改革が必要である。現場から改善要望や意見が出た場合には現場の中間管理職層が止めてしまう場合もあるため、経営層まで意見があがらないこともある。一方で、経営企画室に意見を伝えると必ず何らかの動きが発生するため、中間管理職層からすると、「自分を飛び越えて施策が決定された」という状態を生んでしまっている。
全社的な方向性としては、業務の効率化を検討しているが、数十年来同一手法で業務を進めており、トップダウンで「効率化」といっても、現場では対応しきれない部分がある。
中間管理職を巻き込んだ改善推進体制の構築
前項目1の「トップによる所定外労働削減・年次有給休暇取得促進を徹底する方針について発信」をもとに、経営会議や取締役会の下部組織として中間管理職などから構成される委員会又はワーキングなどを設置し、現在から将来にかけての市場環境、採用環境の中で、一層働きやすく魅力ある会社にするため、会社として業務の効率化、長時間労働の削減、年次有給休暇取得促進に取り組むことの必要性、問題点、具体的な対策の検討を行う。取りまとめた対策は経営会議や取締役会などに報告し、対策推進の検討を経て実施し、その達成状況も報告することとする。経営企画室は事務局として検討を実りのあるものにするため、資料や討議のポイントなど整理して提供する。これによって、中間管理職層が主体的に改善に取り組む意識付けを行う。
中間管理職層に問題があるケースもあり、教育と意識改革が必要である。現場から改善要望や意見が出た場合には現場の中間管理職層が止めてしまう場合もあるため、経営層まで意見があがらないこともある。(再掲)
働き方・休み方改革に向けた労働組合と協力推進体制の整備
長時間労働の抑制及び年次有給休暇取得促進に関することを含めて、現場からの様々な改善要望があるにも係わらず、経営層まであがってこない。これに関しては、労働組合としての従業員の意見の収集を期待し、労使協議会など労働組合と経営層との直接的かつ定期的な意見交換の場を設けて、取組の推進に協力してあたる体制を構築する。意見交換を通じて、会社にも従業員にも望ましい仕事の進め方、望ましい働き方・休み方を検討し、その姿に向けて取組を推進する。
項目3
改善促進の制度化
残業実施のための手続きは全社で統一していない。
所定外労働事前許可申請制度
所定外労働の事前許可申請制度を設けて、残業時の申請を義務づける。申請にあたって、上司はその必要性について十分チェックした上で許可することを徹底する。
有休を取得することで、イノベーションが直ちに生まれるようなマインドセットにはなっておらず、社員はプラスの連鎖を生み出すことが難しい状態になっている。
年次有給休暇の計画的付与制度導入
年次有給休暇を取得することによる「生活と仕事」の質の向上は、実際に経験すること無しには実感できない。非管理職層はもとより、中間管理職層についても、年次有給休暇を、年次有給休暇付与日数のうち5日を超える分について、毎月1日ないし半期に3~5日などと利用しやすい取得方法を決めて取得するよう、計画的付与制度を設ける。導入にあたっては、就業規則による規定と労使協定の締結を経て制度を設けたうえで、事前に各社員と上司の間で計画的付与の取得日を決め、その日に取得できるよう業務のスケジュール等も調整し、取得を義務づける。
その際、後述項目5意識改善の「中間管理職層を含めた全社員に対する定時退社、年次有給休暇取得によるoffの時間確保とそれによる社外の様々な活動への参加推奨」を踏まえ、休暇を自己啓発や休養、趣味なども含めて、人間性を高めるために使うこととする。
項目4
改善促進のルール化
中間管理職層に問題があるケースもあり、教育と意識改革が必要である。現場から改善要望や意見が出た場合には現場の中間管理職層が止めてしまう場合もあるため、経営層まで意見があがらないこともある。一方で、経営企画室に意見を伝えると必ず何らかの動きが発生するため、中間管理職層からすると、「自分を飛び越えて施策が決定された」という状態を生んでしまっている。(再掲)
管理職の人事評価に部下の労働時間・年次有給休暇取得の状況を評価項目に入れる
企業の発展のためには、人材確保・人材育成を長期的視点でとらえることが重要である。
このため、効率よく仕事を進め、リフレッシュして、自己啓発することが出来る働き方を重視し、それが可能となる働き方を実現できるマネジメントを評価する。このため、部下の労働時間及び年次有給休暇取得の状況、連続休暇としてのリフレッシュ休暇取得状況などを項目に設定し、管理職の意識改善を促す。
Action(アクション)
項目5
意識改善
有休を取得することで、イノベーションが直ちに生まれるようなマインドセットにはなっておらず、社員はプラスの連鎖を生み出すことが難しい状態になっている。
中間管理職層に問題があるケースもあり、教育と意識改革が必要である。現場から改善要望や意見が出た場合には現場の中間管理職層が止めてしまう場合もあるため、経営層まで意見があがらないこともある。一方で、経営企画室に意見を伝えると必ず何らかの動きが発生するため、中間管理職層からすると、「自分を飛び越えて施策が決定された」という状態を生んでしまっている。(再掲)
管理職層に対するマネジメント力向上等を目的とした実習型研修
管理職層に対して、エクセレントカンパニーの実現に向け、組織として事業展開、業務効率化と共に、経営課題として所定外労働削減や年次有給休暇取得促進に向けた取組の推進、自身及び部下のワーク・ライフ・バランス、創造的な業務遂行の意義などについて講義を行う。
次に、研修を通じて、部下の労働時間管理は業務遂行と共にマネジメントの基本的な要素であることの認識を深めさせる。併せて、業務の効率化に向けた研修を行い、効果的・効率的な仕事の割り振り・時間管理について習得させ、マネジメント力の向上を図る。
その後、具体的な職場における様々な取組について、グループワークなどによる実際に即した対策を討議し、取組内容を策定する実習型の研修を行う。
なお、自社の業務効率化・働き方・休み方改善の好事例を事前に収集した上で、研修の中で参考事例として取りあげることも検討する。
有休を取得することで、イノベーションが直ちに生まれるようなマインドセットにはなっておらず、社員はプラスの連鎖を生み出すことが難しい状態になっている。
特に現在の部課長クラスは社内に30年前後勤務する長期継続勤務者が多い。彼らは過去の自分たちのやり方でやって好調だった時期を知っているため、いわゆる「足で稼ぐ」ということが勤務における価値観となってしまっている部分があり、意識改革の必要性が高い。
中間管理職層を含めた全社員に対する定時退社、年次有給休暇取得によるoffの時間確保とそれによる社外の様々な活動への参加推奨
社長のメッセージにあるとおり、「幅の広いイノベーション・ダイバーシティ・グローバリゼーションを展開することで、コア技術を通して新たな信頼と安心と革新を創造していく」という方向性を実現するため、「仕事への姿勢についても、仕事以外のより幅の広い分野での経験や好奇心を通して仕事のもプラスになるような人間力を向上」を行う必要がある。
これを踏まえ、定時退社や、計画的付与制度などにより年次有給休暇を取得することにより、家族と過ごす時間を大事にし、自己啓発や休養、趣味なども含めて、人間性を高め、自分の仕事を見つめ直すことを推奨する。その際、休暇中に何らかの活動を行うこととする。必要に応じて、それら活動の情報提供を行う。
あわせて、そのoffの活動の際の社員のいきいきした姿、その活動によって得られるものなどの情報について社内報などを通じて提供する。
1日~2日の休みによって影響が出るような経営状態ではないものの、日々の新規引き合いや営業案件・開発案件が増える中で、心情的に休みにくい状態になっている。
真面目かつ不器用な社員が多く、全ての業務に全力で取り組んでしまっている可能性が高い。
一般社員向けの意識改善に向けた研修
真面目な社員が多い中、年次有給休暇を取得してリフレッシュすることの重要性を理解してもらう。
内容については、仕事は所定内で終えるのが基本であり、効率的に仕事を遂行して早く退社し、又は年次有給休暇を有効に活用することを通じて、家族と過ごす時間を大事にし、自己啓発や休養、趣味なども含めて、人間性を高めるために使うことを推奨する研修を実施し、社員の意識改善を図る。研修の実施に当たっては、ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方は、仕事の質の向上につながることを実感できるようなものとし、その実例についても紹介することを通じて、年次有給休暇取得や残業削減に向けた意識の変革を図る。
項目7
仕事の進め方改善
社内で業務効率化のための検討時間を作ることは可能であるが、ミーティングを実施しても、アイデアが出てこない。
全社的な傾向として、会議が多い。月1回程度の会議が複数存在しているが、報告会になっており、議題を決定する会議は殆どない。担当者レベルでの打ち合わせを実施、その後会議で報告し上長による指摘を受けて、再度担当者が持ち帰る、というサイクルになっている。特に工場でこの傾向が強く、出席人数も多い。
会議・ミーティングの活性化
会議・ミーティングを行っても意見やアイデアが出てこないという状況は、会議の運営そのものに課題があると考えられる。会議・ミーティングの本質的な意義は、人が集まって議論することによって、新たな知識を生み出し、意思決定を行うところにある。その目的を達成するためには、会議の前に、その会議の目的、議題、決めるべきことなど明確にして会議参加者に伝え、発言すべきことを考え・用意して参加するようにする。
また、会議の進行役を決めて、進行役は
1.会議参加者の緊張を和らげる
2.会議の目標設定する
3.現状を明確にして共有する
4.意見の食い違いを明確にする(ただし、人が意見を言うと、必ずそれに対して批判的な指摘をする人がいるが、そのような場合は、建設的な意見が出るよう、進行役が発言をコントロールする)
5.次の行動を決める
6.会議・ミーティングの評価する
と言ったことに留意して会議を運営する。
会議の効率化と必要性の検討
会議の効率化に関しては、出席している会議に完全に集中する(メールや電話は禁止等)、貴重な時間を最大限有効に活用するように会議を実施(明確な意思決定、会議に必要な人のみが出席等)等の取組を行う。また、会議の必要性に関しても検討し、連絡・周知の目的であれば他の手段に代替することなど検討する。
休暇取得時の業務遂行に支障が出ないよう、主担当・副担当制を採用するように現場にアプローチしているが、人員的にも副担当も業務負荷が限界の状態のため、十分にカバーできていない。
業務が属人的になっている傾向はあるため、担当者が休暇を取得した際に、他者が業務を引き継ぐことは難しい。異動が少ない社風のため、個々人が専門家集団になっており、業務に対して人員の代替性が低い。そのため、休暇取得を勧奨することはできても、休んだ後の業務をどうするのか、という問題が残ってしまう。
業務の組織的遂行体制の構築
業務が属人化していることは、例えば、その社員が不在になれば業務が停滞するなど、会社組織としてリスクを含んでおり、また、働き方・休み方の改善に向けた課題とも考えらえる。このリスクを回避するため、業務を組織的に遂行する体制を整備する。
休暇取得時の業務遂行に支障が出ないように主担当・副担当制を採用するよう働きかけているものの機能していない。また、個々人が専門家として業務を遂行していることから、他者が業務を引き継ぎにくい。これを変えるためには、ある程度複数業務を経験させて、いわば多能工型の育成・業務経験の取得をさらに進める必要がある。このような多能工型の複数業務が遂行できる育成を行い、あわせて、業務範囲を他のメンバーとダブらせるなど、協力しあう体制を検討する。
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
本社勤務の従業員は出勤簿で管理を行っている。
本社勤務の従業員についての適正な労働時間の把握
本社勤務の従業員についてもタイムカードの打刻による労働時間の把握、又は勤怠システムなどへの入力により、適正に労働時間を把握し、課題の把握と改善に役立てる必要がある。なお、勤怠システムへの従業員の自己申告入力の場合は、別途、その自己申告時間が実態と齟齬が無いかを確認できるよう、入退室記録やパソコンのオンオフなど客観的なデータによってチェックできる体制を整える必要がある。
社員の働き方や労働時間に関する意識や意向については定期的に把握しているものの、年次有給休暇取得等に関しては把握していない。
社員意識調査の実施・分析
社員の働き方や労働時間に関する意識調査は行っているので、これを拡充して、モラール、働きがい、働き方、休み方、評価、処遇について社員の意識を定期的に把握し、分析することで、働き方・休み方改善のための施策を検討する際の資料とする。
上記の社員意識調査以外にも、長時間労働や年次有給休暇の取得が低調な部署、個人に対して、ヒアリング等の方法により実態を把握し、分析することで、改善の取組の実効性を高める。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。

1)エクセレントカンパニーのイメージ具体化とその実現に向けた経営トップによる業務の効率化と所定外労働削減・年次有給休暇取得促進を徹底する方針について発信
  実施に向けて検討。会社にて自社におけるエクセレントカンパニーとは何かの定義付けを検討し、あわせて社員が求めるものの把握を行う。

2)全社・部署などで残業時間や年次有給休暇取得に関する数値目標を設定
  実施に向けて検討。小集団活動にて残業時間削減に向けて取り組んでいるため、数値目標の設定の提言を行う。

3)中間管理職を巻き込んだ改善推進体制の構築
  取り組み始めた。GLを集めた会議を実施。GL会議において「現状から何を改善していかなければならないか」議題を提案。 

4)働き方・休み方改革に向けた労働組合と協力推進体制の整備
  今後、実施に向けて進めていく。

5)所定外労働事前許可申請制度
  実施に向けて検討。直接部門においてはすでに導入済みと認識。(事前許可がないと残業としては認められない)ただし、本社・営業部門では、これがあいまいに運営されていることは確かであり、全社的なルールの設定・周知に取り組む。

6)年次有給休暇の計画的付与制度導入
  取り組みを始めた。指定有給制度を実施。

7)管理職の人事評価に部下の労働時間・年次有給休暇取得の状況を評価項目に入れる
  すぐに実施は難しいが、検討したい。

8)管理職層に対するマネジメント力向上等を目的とした実習型研修
  実施に向けて検討。現在管理職研修に関わるマーケティング実施中。

9)中間管理職層を含めた全社員に対する定時退社、年次有給休暇取得によるoffの時間確保とそれによる社外の様々な活動への参加推奨
  実施に向けて検討。小集団活動にて取組中。社外活動への参加推奨までは行えていないため、テーマとして提言。

10)一般社員向けの意識改善に向けた研修
  すぐに実施は難しいが、検討したい。現状実務ベースにて意識改善実施中も、全体に向けての研修を検討。

11)会議・ミーティングの活性化
  取り組み始めた。会議コンサルの導入検討。会議の状況分析実施予定。

12)会議の効率化と必要性の検討
  取り組み始めた。会議コンサルの導入検討。会議の状況分析実施予定。

13)業務の組織的遂行体制の構築
  すぐに実施は難しいが、検討したい。

14)本社勤務の従業員についての適正な労働時間の把握
  実施に向けて検討。タイムカードの導入検討中。

15)社員意識調査の実施・分析
  取り組みを始めた。社員の働き方に関するアンケート実施。それに基づき課題分析及び対策検討。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

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(平成28年度事業)

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