Q社(2015年度)

(1)企業概要

社名
Q社(2015年度)
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業種/事業概要
製造業/ゴム製品
従業員規模
正社員約14,000名(うち女性社員約1,000名)※2016年3月末時点
本社所在地
非公表
労働時間制度
始業終業時間
本社 9:00~18:00(休憩1時間)所定労働時間8時間
工場(3交替制の場合) 8:15~16:35
            16:15~0:35
    0:15~8:35 
フレックスタイム制を適用しており、コアタイムは10:00~15:00
本社、技術センターの開発企画職上級職(大卒入社約8年以降)については裁量労働制を適用

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
36協定の限度時間を超過している長時間労働者の人数を組織別に見える化し、工場においては全管理監督者が出席する会議で情報を共有している。また、本社では、個別に該当社員の所属長に対する注意喚起を行う等、過重労働の防止に努めている。
管理監督者に昇任した社員を対象に、年2回「新任基幹職研修」や「新任主任研修」等を行い、労務管理や所属長として管理すべきポイント等を指導しており、あわせて、全所属長に対し、Eラーニングを活用した労務管理のポイント、留意点などに関する研修を行っている。
毎年12月に労働組合の代表者と会社側の人事労務担当(課長・部長クラス)で集まり、その年の所定外労働時間や年次有給休暇取得状況などについて自由に討論する場を設けている。
本社では、四半期ごとに部単位で労働時間の状況を確認し、一定基準を超える部署を重点管理部署に設定して、会社側の人事労務担当から所属長等に対して、労働時間の削減に向けた改善依頼を行っている。
年次有給休暇取得率の低調な社員がいる場合は、当該社員の所属長に対し、休暇の取得促進に向けた働きかけを行っている。
年に1度社員満足調査を実施し、年次有給休暇、所定外労働時間、業務の負担感、所定外労働が減らない理由などについての意見を調査している。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
所定外労働の削減に向けた業務の効率化に関して、具体的な策に落とし込めていない。現時点では内部情報しか持っていないため、他社と比べた相対的な当社の位置づけ、評価手法を知りたい。他社が一般社員から役員等までそれぞれのレベルの意見をもとに、どのようにしてコンセンサス形成し、どのような策をとっているか、当社と比較してどうか、について第三者からの意見を聞きたい。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
人員計画上なるべくスリムな人員体制が望まれているために、年次有給休暇取得時の他の社員によるカバーが不十分。
同じ内容の指示が複数の部署から来ることがあり、統合してほしいという声があるが、具体的な問題点を把握して対策を実行するまでには至っておらず、会社全体として業務の効率化に取り組むことができていない。
スタッフ系職場においては、仕事が個人に紐づき、属人化してしまっているために、その社員がいないと仕事が回らないということが起きている。そのため業務の見える化・標準化を進めているが、部門によって取り組みレベルにバラつきがある。
長時間労働の抑制のため、所定外労働時間に目標を設定することも検討しているが、目標を達成することそのものが目的化してしまうことが懸念され、対策を講じることができていない。また、業務効率化と生産性の改善による長時間労働の抑制に関して、どのようにコンセンサスを作りつつ発信、明文化に繋げていけばよいか思案している。
今後、多様な人材が能力を発揮できる環境の整備に向けて、与えられた時間の中で効率よい業務遂行、従来のやり方の見直し、時間当たり生産性を評価する組織風土への変革を進めること、また、柔軟な働き方を支える勤務制度を更に整備していくことが重要な課題と考えている。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織体制
職種は、基幹職(管理職)、開発企画職、事務企画職、技能職(工場)、監督職(工場)に分かれている。
工場では、製造係→職長→主任→課長→工場長(部長・本部長相当)となり、課長以上が管理職である。
管理職は、課長→部長→本部長であり、その上に執行役員かいる。
職長は約20~30名程度の部下をもち、主任は80~100名、課長は現場では100~400名、本社では4~15名ほどの部下をもつ。
女性社員はここ10年間で着実に増加しているが、まだ全体的に割合は少ない。

②働き方
所定外労働について、月80時間以上は繁忙期以外では発生しないが、月45時間以上は年間平均で全社員の3.7%であり、特に技術系専門職の社員に多い。
本社の若手社員にフレックスタイム制を適用しており、開発企画職の場合は大卒入社後約8年で上級職へ昇任する。本社、技術センターの開発企画職上級職は裁量労働制の適用対象となる。事務企画職と呼ばれる原則として転勤のない社員はすべてフレックスタイム制が適用される。
所定外労働時間数は、部門毎で差がみられ、財務部門や生産管理を行う部署は所定外労働時間が多い傾向が強い。
技術系の一部の部門では所定外労働が多い。主な理由として、カーメーカーからの設計依頼業務への対応があり、近年他社との競争がより激しくなってきているため、コンペに向けた設計や作りこみ等で多忙となる。また、品質保証部門も、品質トラブルが発生したときの原因分析・対策・顧客への報告業務を即時に対応する必要があるため、所定外労働が発生する。
36協定の順守のため、協定した最大延長時間以上は、一般社員に所定外労働をさせられなくなるため、管理職が代わりに業務を引き受けざるを得ない状態も見られ、近年管理職の労働時間が増加している。
毎年行っている社員満足度調査によれば、周囲が残業している中で早く帰れる雰囲気にないという意見が多数存在し、また、資料作成が非常に多く、所定外労働の原因として最も多く声が挙がっている。特に社内向けの資料は細かい文言まで指摘を受けるため、作り直しも多く時間がかかる。年間を通して資料作成に追われており、資料作りに追われ他の業務に手が回らないのでは本末転倒だという意見が出てきている。
5年前より、ワーク・ライフ・バランスの実現のため在宅勤務制度を導入している。週3日まで利用することができ、一定の普及が進んだ結果、利用者は月30名程度である。育児・介護以外の理由でも利用することができるが、在宅勤務制度の利用条件等に関する認知度は低く、育児と仕事の両立などの必要に駆られて在宅勤務を選択したという人がほとんどである。利用者は圧倒的に女性社員が多く、男性社員にはほとんど利用されていない。
2011年より、会社全体で、ノー残業デーを実施し、該当日に定時退社を促す館内放送や労使での巡回が行われている。しかし工場では効果があるものの、本社や技術センターでは3割ほどしか定時退社していない。
また、サマータイム制も実施しており、5月から9月までの5ヶ月間は、本社も工場に合わせる形で、始業時間を8:15に前倒ししている。これに伴いコアタイムは10:00~14:00へ1時間短縮しているが、残業が長い部署ではサマータイムもあまり定着していない。

③休み方
年次有給休暇取得日数が5日以下という社員は少なく、全体の取得率は69.5%である。これは毎年会社全体の目標日数を設定し(2015年は14.5日)、その目標の達成のために、月次で取得日数の少ない社員に上司を通じて取得を促すなど、地道に個別のフォローをするような取り組みをした結果といえる。年次有給休暇取得率が高まってきたのはここ5年ほどであり、5年前は全社平均で年10日前後の取得日数だったものを、毎年1日前後ずつ増やしてきているという状態である。
年次有給休暇取得の促進に向けて、社員本人と上司で相談した上で、上司が時期を指定して年間4~5日休暇の取得日を決める指定年休制度をとっており、指定年休を確実に取得させることで、最低限の日数は取得できるようにしている。

④マネジメント
36協定による最大延長時間は月45時間、年間360時間であり、特別条項は月65時間、年間480時間である。月の所定外労働が45時間を越えた場合には、月の途中で本人及び上司の課長に対して警告がでる。
部の運営にあたり定期的に組織機能図が作成される。これは部単位で誰が何を担当しているのかを表したもので、個々人の業務担当範囲もこの中で決定される。また、年間の実施計画を部単位で作成し、目標や評価制度を所属長と課員の間で共有している。それ以降の業務については、週次、月次のレポートを通して管理されている。
組織運営を担っている課長が、社員の負担の管理や調整についての裁量権をもっており、負担の大きい社員がいる場合には、未然・事後を考えて業務配分の見直しを適宜行っている。
一般社員の労働時間の把握については、現業の社員については管理監督者の代行が、また、事務部門の社員については、各人が始業・終業時間の自己申告を行っている。あわせて、各人のPCのログイン・ログオフの時間と自己申告時間との照合も行っている。管理職の労働時間の把握についても、本人の始業・終業時間の自己申告時間をもとに把握している。
労働時間の状況は、社員本人の他上司も確認することができ、さらに課長に対しては、部下の労働時間の集計結果を毎日自動配信している。上位職である部長・本部長に対しては月次で配信している。勤怠の管理は原則課長が行っており、上記のメール配信を通じて管理のための必要な情報を提供しているが、特別条項の申請が必要な場合でも人事からのフォローがないと申請を行わない等適切な管理に活かされていないケースもまだ多い。

⑤その他
社員数のピークは数年前で、16000人強在籍していた。採用のピークは2011年ごろであり、現在は新卒は100名、中途採用は20~30名ほど採用されている。
工場でも人手不足に対しては、アルバイトや人材派遣などで随時対応しているが、今年から来年にかけて正社員登用を再開している。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
同じ内容の指示が複数の部署から来ることがあり、統合してほしいという声があるが、具体的な問題点を把握して対策を実行するまでには至っておらず、会社全体として業務の効率化に取り組むことができていない。
長時間労働の抑制のため、所定外労働時間に目標を設定することも検討しているが、目標を達成することそのものが目的化してしまうことが懸念され、対策を講じることができていない。また、業務効率化と生産性の改善による長時間労働の抑制に関して、どのようにコンセンサスを作りつつ発信、明文化に繋げていけばよいか思案している。
36協定の順守のため、協定した最大延長時間以上は、一般社員に所定外労働をさせられなくなるため、管理職が代わりに業務を引き受けざるを得ない状態も見られ、近年管理職の労働時間が増加している。
周囲が残業している中で早く帰れる雰囲気にないという意見が多数存在し、また、資料作成が非常に多く、所定外労働の原因として最も多く声が挙がっている。
社内向けの資料は細かい文言まで指摘を受けるため、作り直しも多く時間がかかる。年間を通して資料作成に追われており、資料作りに追われ他の業務に手が回らないのでは本末転倒だという意見が出てきている。
ワーク・ライフ・バランスの実現のため在宅勤務制度を導入している。週3日まで利用することができ、育児・介護以外の理由でも利用することができるが、在宅勤務制度の利用条件等に関する認知度は低く、育児と仕事の両立などの必要に駆られて在宅勤務を選択したという人がほとんどである。利用者は圧倒的に女性社員が多く、男性社員にはほとんど利用されていない。
会社全体で、ノー残業デーを実施し、該当日に定時退社を促す館内放送や労使での巡回が行われている。しかし工場では効果があるものの、本社や技術センターでは3割ほどしか定時退社していない。
労働時間の状況は、社員本人の他上司も確認することができ、さらに課長に対しては、部下の労働時間の集計結果を毎日自動配信している。上位職である部長・本部長に対しては月次で配信している勤怠の管理は原則課長が行っており、上記のメール配信を通じて管理のための必要な情報を提供しているが、特別条項の申請が必要な場合でも人事からのフォローがないと申請を行わない等適切な管理に活かされていないケースもまだ多い。

2)休み方
スタッフ系職場においては、仕事が個人に紐づき、属人化してしまっているために、その社員がいないと仕事が回らないということが起きている。そのため業務の見える化・標準化を進めているが、部門によって取り組みレベルにバラつきがある。

3)働き方・休み方共通
今後、多様な人材が能力を発揮できる環境の整備に向けて、与えられた時間の中で効率よい業務遂行、従来のやり方の見直し、時間当たり生産性を評価する組織風土への変革を進めること、また、柔軟な働き方を支える勤務制度を更に整備していくことが重要な課題と考えている。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合※1は0.2%であった。
→貴社の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である8.0%(社員規模1000人以上のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%ともにクリアしている。
(36協定で定める労働時間の延長の限度基準である1か月45時間を超える社員は33.4%※2いる。)
(注1)繁忙月
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全社員平均69.5%であった。
→主要産業の平均値である54.6%(社員規模1000人以上のカテゴリ)を上回っているものの、国の定める目標値70.0%をわずかに下回っている。
貴社の長時間労働の社員の割合は目標値以上だが、36協定で定める労働時間の延長に関する国の限度基準である1か月45時間を超える社員が存在しており、特に、繁忙月に限ると、長時間労働を行っている社員が多く、また、年次有給休暇取得率は主要産業の平均値を上回っているものの、国の定める目標値をわずかに下回っており、働き方、休み方のいずれも改善が求められる。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
同じ内容の指示が複数の部署から来ることがあり、統合してほしいという声があるが、具体的な問題点を把握して対策を実行するまでには至っておらず、会社全体として業務の効率化に取り組むことができていない。
長時間労働の抑制のため、所定外労働時間に目標を設定することも検討しているが、目標を達成することそのものが目的化してしまうことが懸念され、対策を講じることができていない。また、業務効率化と生産性の改善による長時間労働の抑制に関して、どのようにコンセンサスを作りつつ発信、明文化に繋げていけばよいか思案している。
多様な人材が能力を発揮できる環境の整備に向けて、与えられた時間の中で効率よい業務遂行、従来のやり方の見直し、時間当たり生産性を評価する組織風土への変革を進めることが重要な課題と考えている。
経営トップによる長時間労働抑制及び年次有給休暇取得促進及び業務効率化に関するメッセージを発信
組織として全社で所定外労働削減、年次有給休暇取得促進の取組を行うためには、これらを経営課題の一つとして位置づけ、その取組の方針について、経営トップの全社に向けた発信が不可欠である。
内容としては、限られた人員で如何に生産性を上げるか、そのための業務の効率化、仕事の進め方の改革が必要であること、所定外労働削減、年次有給休暇取得促進が社員皆の「生活と仕事」の質の向上につながること、などの方向性を示すものとする。
また、具体的な進め方、取組の内容については次項に記載する、各部署の社員からなる検討ワーキングなどを作って検討していく。
なお、メッセージ発信に当たっては、社内イントラネットや社内報など様々な媒体を活用し、全社員に届くよう工夫する。
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
長時間労働の抑制のため、所定外労働時間に目標を設定することも検討しているが、目標を達成することそのものが目的化してしまうことが懸念され、対策を講じることができていない。また、業務効率化と生産性の改善による長時間労働の抑制に関して、どのようにコンセンサスを作りつつ発信、明文化に繋げていけばよいか思案している。(再掲)
多様な人材が能力を発揮できる環境の整備に向けて、与えられた時間の中で効率よい業務遂行、従来のやり方の見直し、時間当たり生産性を評価する組織風土への変革を進めることが重要な課題と考えている。(再掲)
柔軟な働き方を支える勤務制度を更に整備していくことが重要な課題と考えている。
働き方・休み方改革及び業務効率化に向けた具体的な取組みを検討する委員会や検討ワーキングなどの設置
限られた人員で如何に生産性を上げるか、そのための業務の効率化、仕事進め方の改革、所定外労働削減、年次有給休暇取得促進を進める具体的な取組内容について検討する委員会やワーキング等を設置する。メンバーは各部門から選び、人事部を始め企画部門など関係部署が事務局を務める。
項目3
改善促進の制度化
会社全体で、ノー残業デーを実施し、該当日に定時退社を促す館内放送や労使での巡回が行われている。しかし工場では効果があるものの、本社や技術センターでは3割ほどしか定時退社していない。
ノー残業デーを対象に所定外労働の事前許可申請ルールを実施
計画的に業務を遂行する習慣を定着させるためノー残業デーに所定外労働※を行う際には、上司への事前許可申請を義務づけ、所定外労働の予定時間及び理由を明らかにして申請を行うルールを設ける。
上司は所定外労働の予定時間及び理由を精査し、部下の所定外労働の発生を必要最小限にとどめる。
上記のルールを徹底するため、事後申請が行われた場合には、部署長に対し、その理由の分析及び再発防止対策を実施させる。
※フレックスタイム制の対象者の場合は、当日の勤務開始時から1日の標準所定労働時間が経過した時間を終業時間として、当日はそれを超えた時点で所定外とみなし、事前許可申請の対象とすることも検討する。
上記の取組が一定程度定着した時点で、効果が認められた場合は、対象をノー残業デーから全所定労働日に拡大する。
項目4
改善促進のルール化
労働時間の状況は、社員本人の他上司も確認することができ、さらに課長に対しては、部下の労働時間の集計結果を毎日自動配信している。上位職である部長・本部長に対しては月次で配信している勤怠の管理は原則課長が行っており、上記のメール配信を通じて管理のための必要な情報を提供しているが、特別条項の申請が必要な場合でも人事からのフォローがないと申請を行わない等適切な管理に活かされていないケースもまだ多い。
人事評価項目に労働時間及び休暇取得の適正管理に関する項目を盛り込む
適正な労働時間の管理、年次有給休暇の取得促進は、社員の労働生産性・質の向上、優秀な人材の確保その他さまざまな効果が期待できる。このため、特に部長級の管理職層の人事評価項目にワーク・ライフ・バランスについての項目を盛り込み、管理職本人及び部下の長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得を促進させる。
近年、課長級を中心に管理職の労働時間が増加していることを考え合わせると、課長級の上長が課長級を支援して業務効率の向上を図り、課長級以下の長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得を促進させる必要がある。
Action(アクション)
項目5
意識改善
労働時間の状況は、社員本人の他上司も確認することができ、さらに課長に対しては、部下の労働時間の集計結果を毎日自動配信している。上位職である部長・本部長に対しては月次で配信している勤怠の管理は原則課長が行っており、上記のメール配信を通じて管理のための必要な情報を提供しているが、特別条項の申請が必要な場合でも人事からのフォローがないと申請を行わない等適切な管理に活かされていないケースもまだ多い。(再掲)
管理職層に対するマネジメント力向上等を目的とした実習型研修
管理職層に対して、所定外労働削減や年次有給休暇取得促進に向けた取組の推進、自身及び部下のワーク・ライフ・バランス、創造的な業務遂行の意義などについて講義を行う。
次に、研修を通じて、部下の労働時間管理は業務遂行と共にマネジメントの基本的な要素であることの認識を深めさせる。併せて、業務の効率化に向けた研修を行い、定時に仕事を終えることを前提とした仕事の割り振り・時間管理について習得させ、マネジメント力の向上を図る。
その後、具体的な職場における所定外労働削減に向けての取組について、グループワークなどによる実際に即した対策を討議し、取組内容を策定する実習型の研修を行う。
なお、自社の働き方・休み方改善の好事例を事前に収集した上で、研修の中で参考事例として取りあげることも検討する。
周囲が残業している中で早く帰れる雰囲気にないという意見が多数存在し、また、資料作成が非常に多く、所定外労働の原因として最も多く声が挙がっている。
一般社員向けの意識改善に向けた研修
仕事は所定内で終えるのが基本であり、効率的に仕事を遂行して早く退社し、家族と過ごす時間を大事にし、自己啓発や休養、趣味なども含めて、人間性を高めるために使うことを推奨する研修を実施し、社員の意識改善を図る。研修の実施に当たっては、ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方は、仕事の質の向上につながることを実感できるようなものとし、その実例についても紹介することを通じて、残業に対する意識の変革を図る。
項目6
情報提供・相談
労働時間の状況は、社員本人の他上司も確認することができ、さらに課長に対しては、部下の労働時間の集計結果を毎日自動配信している。上位職である部長・本部長に対しては月次で配信している勤怠の管理は原則課長が行っており、上記のメール配信を通じて管理のための必要な情報を提供しているが、特別条項の申請が必要な場合でも人事からのフォローがないと申請を行わない等適切な管理に活かされていないケースもまだ多い。(再掲)
課長への部下の労働時間集計データの配信方法の工夫
現在、課長には部下の労働時間の集計データが毎日メールで配信されているが、その情報を見て労働時間管理等に有効に活用してもらうための方法を検討する。
例えば、部下の労働時間管理上、特別条項の申請が必要になりそうな部下の情報を、ファイルに黄色マークなど警告を付けて表示するか、メールのタイトルにその対象者が居る旨表示するなど、把握すべき情報が配信時に容易に解るように工夫する。
項目7
仕事の進め方改善
同じ内容の指示が複数の部署から来ることがあり、統合してほしいという声があるが、具体的な問題点を把握して対策を実行するまでには至っておらず、会社全体として業務の効率化に取り組むことができていない。(再掲)
社内向けの資料は細かい文言まで指摘を受けるため、作り直しも多く時間がかかる。年間を通して資料作成に追われており、資料作りに追われ他の業務に手が回らないのでは本末転倒だという意見が出てきている。
36協定の順守のため、協定した最大延長時間以上は、一般社員に所定外労働をさせられなくなるため、管理職が代わりに業務を引き受けざるを得ない状態も見られ、近年管理職の労働時間が増加している。
資料内容の簡素化及び枚数上限設定
資料の内容について必要性の再検討を行い、簡素化・標準化を検討する。検討にあたっては、社内横断的に各部署から構成される委員会又は検討ワーキングなどを作り、各部署から資料の簡素化に対する意見を収集し、簡素化の案を取りまとめる。その際、資料枚数の上限を設定し、その範囲内で作成するルールを定める。
さらに、取りまとめた案をもとに、各書類の提出先との調整を行う。提出先の了解を得るために、必要に応じて従来通りの資料作成コストと簡素化を行った場合の資料作成コストを計算し、費用対効果の数値を提示する等により理解を求める。
上記の取組を他の業務にも適用し、業務全般における作業量の削減を図り、労働時間の削減につなげる。
スタッフ系職場においては、仕事が個人に紐づき、属人化してしまっているために、その社員がいないと仕事が回らないということが起きている。そのため業務の見える化・標準化を進めているが、部門によって取り組みレベルにバラつきがある。
業務の組織的遂行体制の構築
業務を社員一人で抱え込む状況は、その社員が不在になれば担当業務が停滞するなど、会社組織としてリスクを含んでおり、また、業務の抱え込みそのものが働き方・休み方の改善に向けた課題とも考えらえる。
そのため、業務を組織的に遂行する体制を整備する。
例えば、業務について主担当、副担当等複数で担当することとし、主担当が休んだ場合は副担当がバックアップする等組織的に対応する体制を構築する。
あわせて、人事評価において組織的な業績を評価の対象とするよう検討する。
在宅勤務制度を導入している。週3日まで利用することができ、育児・介護以外の理由でも利用することができるが、在宅勤務制度の利用条件等に関する認知度は低く、育児と仕事の両立などの必要に駆られて在宅勤務を選択したという人がほとんどである。利用者は圧倒的に女性社員が多く、男性社員にはほとんど利用されていない。
柔軟な働き方を支える勤務制度を更に整備していくことが重要な課題と考えている。(再掲)
在宅勤務制度の利用促進
在宅勤務制度は、働き方の選択肢を増やすことにつながり、効率的な業務遂行にも資するものであることから、積極的に利用促進する。
現状で普及が進んでいない点を踏まえ、社員意識調査において、在宅勤務制度の利用上の問題点を把握し、その結果を踏まえて利用促進に向けた対策を検討する。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。

1)経営トップによる長時間労働抑制及び年次有給休暇取得促進及び業務効率化に関するメッセージを発信
 生産性改善の観点から経営トップによるメッセージ発信を検討中。

2)働き方・休み方改革及び業務効率化に向けた具体的な取組みを検討する委員会や検討ワーキングなどの設置
 労使で働き方・生産性改善に関する意見交換を実施中。

3)ノー残業デー、ノー残業ウィークを対象に所定外労働の事前許可申請ルールを実施
 実施に向けて検討。

4)人事評価項目に労働時間及び休暇取得の適正管理に関する項目を盛り込む
 実施に向けて検討。具体的な項目については今後検討予定。

5)管理職層に対するマネジメント力向上等を目的とした実習型研修
 実施に向けて検討。管理監督者向けのワークショップを中期的に計画予定。

6)一般社員向けの意識改善に向けた研修
 実施に向けて検討。具体的な内容については今後検討予定。

7)課長への部下の労働時間集計データの配信方法の工夫
 既に、システム上で課員の勤務状況に関してはタイムリー確認できるが、適宜改善点を洗い出し改善していく。

8)資料内容の簡素化及び枚数上限設定
 仕事の進め方改善の具体的な施策は各部門にて検討する予定。

9)業務の組織的遂行体制の構築
 仕事の進め方改善の具体的な施策は各部門にて検討する予定。

10)在宅勤務制度の利用促進
 既に在宅勤務制度は導入中だが、多様な人材が、各自の状況に応じ柔軟な勤務ができる環境整備をさらに促進していく。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

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(平成27年度事業)

事例を評価する