B社(2015年度)

(1)企業概要

社名
B社(2015年度)
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業種/事業概要
サービス業/法人向けサービス開発・提供
従業員規模
880名(2015年4月現在)(正社員379名)
本社所在地
東京都
労働時間制度
始業終業時間9:00~18:00(休憩60分)(1日の所定労働時間8時間)
一部の部署でフレックスタイム制度を採用(コアタイムは11:00~14:00)
コールセンターはシフト勤務

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
所定外労働時間については年間360時間以内、年次有給休暇取得については繰越分を含めて取得率50%以上とすることを目標としている。
部署ごとにノー残業デーを設定している。
夏季休暇として6月~9月の間に、年次有給休暇を2日間、特別休暇を2日間、計4日間の連続休暇取得を推奨している。
月1日の年次有給休暇の取得を部門毎に推進している。業務目標設定時にあわせて所定外労働時間の目標も設定し、考課実施時に業務効果指数として評価に加味している

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
残業の要因について、様々な要因が複合的に絡んでいると思われるだけに、自社だけでは分析しきれないところがあると考えている。外部の視点が入ることで気付かない箇所への指摘をいただけるのではと期待している。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
年次有給休暇の取得状況については、月1日の年次有休取得推進等の施策が奏功し、取得率も上がってきており、大きな課題はないという認識であるが、一部シフト勤務となる部門については他部門に比べて取得が進みづらい状況。
所定外労働については、経年で全社では改善傾向にあるものの、特定部署では所定外労働が慢性的に多い状態であり、課題と感じている。
働き方・休み方改善の取組に当たっては、部門特性も有り、取組を全社的に徹底することが難しい。一方で、既に多くの取組が実施されている部署もあり、社内会議の場でノー残業デーの実施や朝型勤務、業務後の楽しみ方の紹介など残業を削減する取組が紹介されることはあるが、全社で一元的に取組を共有及び推進する仕組みがない。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織体制・職種
営業部門、企画部門、システム部門、コールセンター部門の組織からなっている、
法人向けサービスを提供する事業形態で、顧客企業毎にカスタマイズしたサービスを提供する
ため、営業、企画、システム、コールセンターの連携が必要となっている。
職種としては、部門異動の制限のない職種と、勤務エリアや業務内容が制限された職種の2種類がある。

②働き方
4月に顧客のサービス導入が集中することが多いため、10月以降が繁忙期であり、特に1~3月が忙しい。
企業へのサービス導入や新規サービスの構築など、部門間連携を必要とする事項が多く、会議やメールのやりとりが多い。特に営業・企画・システム部門の場合は、1日休むと100通以上のメールが溜まっているケースなどある。
2014年度の営業部門・コールセンター部門の労働時間の状況としては、年間平均で月45時間以上の所定外労働を行っている者がおよそ4分の1を占める。

③休み方
2014年度の年次有給休暇の取得率は67%である。昨年度は中途入社者が多く、年次有給休暇の付与日数の少なさから取得日数も少なくなっているが、実体的には取得しにくい状況ではないと考えている。
閑散期を利用した休暇の取得促進に向けた取組は行われていない。

④マネジメント
管理職の評価項目は業績評価と定性的評価で構成されているが、業績評価の中に人件費が評価内容として入っており、結果、所定外労働を抑制することが評価につながっている。しかし、部署ごとの総額で評価しているため、特定の人に所定外労働が偏っていても、評価が下がらないケースもある。
毎月行われる部長会議では所定外労働時間数が月60時間超又は振替休日の取得が低調な社員を報告し、個人ごとの改善報告レポートを各部から提出させている。
社員の平均年齢が若く、全般的に「上からの指示で実施する」よりも「自分たちで自主的に取組むよう働きかける」方が浸透する傾向がある。
社員に対する意識調査で、労働時間に関する事項を実施しているものの、休み方に関する事項については調査を行っていない。

⑤その他
健康経営の観点から社員の健康増進・改善活動を推進するプロジェクトがあり、BMI改善や喫煙率の低下、運動習慣の定着を目指し、セミナーやキャンペーン等さまざまな取組を企画・実行している。
しかし、所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進については会社として公式に権限を持って推進する組織がない。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
働き方・休み方改善の取組に当たっては、部門特性も有り、取組を全社的に徹底することが難しい。また、全社で一元的に取組を共有及び推進する仕組みがない。
所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進については会社として公式に権限を持って推進する組織がない。
管理職の評価項目は業績評価と定性的評価で構成されているが、業績評価の中に人件費が評価内容として入っており、結果、所定外労働を抑制することが評価につながっている。しかし、部署ごとの総額で評価しているため、特定の人に所定外労働が偏っていても、評価が下がらないケースもある。
会議が多く、また、顧客や業務上の関係者とのメールのやりとりも多く、その処理に時間を割かれてしまう。

2)休み方
閑散期を利用した休暇の取得促進に向けた取組は行われていない。
社員に対する意識調査で、労働時間に関する事項を実施しているものの、休み方に関する事項については調査を行っていない。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0%であった。
→貴社の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である8.7%(従業員規模100人~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%ともにクリアしている。
(36協定で定める労働時間の延長の限度基準である1か月45時間を超える従業員は63.0%(注1)いる。)
(注1) 繁忙月
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全従業員平均67.0%であった。
→主要産業の平均値である40.1%(社員規模100人~999人のカテゴリ)はクリアしているものの、国の定める目標値70.0%には達していない。
貴社の長時間労働の社員の割合は目標値以上だが、36協定で定める労働時間の延長に関する国の限度基準である1か月45時間を超える社員が存在しているため、働き方の改善が求められる。一方、年次有給休暇の取得率は目標値に達していないことから、休み方の改善も求められる。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
働き方・休み方改善の取組に当たっては、部門特性も有り、取組を全社的に徹底することが難しい。また、全社で一元的に取組を共有及び推進する仕組みがない。
トップによる所定外労働削減・年次有給休暇取得促進を徹底する方針について発信
組織として全社で一元的な所定外労働削減、年次有給休暇取得促進の取組を行うためには、これらを経営課題の一つとして位置づけ、目指している「健康経営」の実現に重要であるという認識と、その取組の方針について、経営トップの全社に向けた発信が不可欠である。
発信の媒体は社内イントラネットや社内報など様々な媒体を活用し、全社員に届くよう工夫する。
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進については会社として公式に権限を持って推進する組織がない。
働き方・休み方改革に向けたプロジェクトを推進する、会社として公式に位置づける
所定外労働削減や年次有給休暇の取得を推進するに当たっては、それらを実行するための権限を付与した担当部署を設置して推進のための実務を行わせることが有効である。
このため、現在の健康増進・改善活動を推進するプロジェクトを活用し正式権限を持った担当部署に位置付けることで、所定外労働削減や年次有給休暇の取得を推進する体制を整備する。
項目3
改善促進の制度化
働き方・休み方改善の取組に当たっては、部門特性も有り、取組を全社的に徹底することが難しい。また、全社で一元的に取組を共有及び推進する仕組みがない。(再掲)
月1日の年次有給休暇取得の全社制度化
各部署での任意の取組とされている毎月1日の年次有給休暇取得を全社で制度化し、統一的な取組を行う。
取組に当たっては、人事で各部署の毎月の年次有給休暇の取得計画及び取得実績を把握し、その結果を集計して、定期的に、部署ごとの集計結果を比較できる形で全社的に公開する。また、取得促進のための工夫は各部門に任せることで、各部署で取得実績を競い合う気運を醸成する。
閑散期を利用した休暇の取得促進に向けた取組は行われていない。
閑散期などに年次有給休暇の計画的付与制度導入
主に閑散期を対象として、年次有給休暇の計画的付与制度を活用し、飛び石連休の間の出勤日を休暇日として連続休暇とする等、年次有給休暇の取得しやすい環境を作る。
項目4
改善促進のルール化
管理職の評価項目は業績評価と定性的評価で構成されているが、業績評価の中に人件費が評価内容として入っており、結果、所定外労働を抑制することが評価につながっている。しかし、総額で評価しているため、特定の人に所定外労働が偏っていても、評価が下がらないケースもある。
管理職の人事評価に部下の労働時間・年次有給休暇取得の状況を評価項目に入れる
企業の発展のためには、人材確保・人材育成を長期的視点でとらえることが重要である。
このため、例えば現在の管理職の業績評価の項目である人件費の代わりに、部下の労働時間年次有給休暇取得の状況を項目に設定し、管理職の意識改善を促す。
Action(アクション)
項目7
仕事の進め方改善
会議が多く、また、顧客や業務上の関係者とのメールのやりとりも多く、その処理に時間を割かれてしまう。
会議の効率化を推進
会議の開催状況について検証を行い、不必要な会議の廃止や会議の回数の削減を実施する。また、必要な会議についても、効率化のためのルールを設けて実施する。
具体的なルールを設定するに当たっては、以下参考とする。
・会議の開催時間を設定し、いたずらに長期化することを防止。設定に当たっては所定労働時間内に終了することを念頭に置く
・出席している会議に完全に集中させる(関係のないメールや電話は禁止等)
・会議で明確な意思決定を行う
・必要な人員だけで開催する
・会議に提出する資料枚数の上限を定める
メール作業の効率化
メール作業を効率化する観点から、利用ルールを定め、社員に周知・徹底を行う。
例えば、メール送信の際に、宛先を必要最小限にすることで、受信者のメール確認の作業を削減することができ、作業の効率化が期待できる。
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
働き方・休み方についての社員の意識が十分把握できていない。
社員意識調査の充実及び分析
労働時間に関する社員の意識は調査しているので、その調査の内容を拡張して、社員のモラール、働き方、休み方、評価、処遇に関する社員の意識を定期的に調査し、企業としての必要な施策検討の資料とする。
あわせて、残業の多い部署、個人に対して個別にヒアリング等を行い、実態を調査し、実効性の高い取組を行う。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。

1)トップによる所定外労働削減・年次有給休暇取得促進を徹底する方針について発信
健康経営推進について、経営トップから方針・メッセージを発信予定。

2)働き方・休み方改革に向けたプロジェクトを推進する、会社として公式な組織を設定する
既にある、社員の健康増進・改善活動を推進するプロジェクトにて、働き方・休み方改善に向けた活動も推進する。

3)月1日の有給休暇取得の全社制度化
シフト勤務の部署もあるため、すぐに実施は難しいが検討したい。

4)閑散期などに年次有給休暇の計画的付与制度導入
今年度より試験的に年末の最終営業日を有給取得促進デーとして告知した結果、シフト勤務の部署を除いて有給取得者は75.8%と非常に効果が高かった。今後も飛び石連休の間の出勤日を有給取得促進デーとする等の施策を検討したい。

5)管理職の人事評価に部下の労働時間・年次有給休暇取得の状況を評価項目に入れる
考課制度の見直しとなるため、すぐに実施は難しいが検討したい。

6)会議の効率化を推進
「時間外設定の禁止」「必要最低限の人員での実施」「資料の事前展開」等、改めて会議の設定ルールを設け周知を行いたい。

7)メール作業の効率化と情報共有化の仕組みの工夫
数年前にメーリングリストの使用ルール周知や情報共有ツールの見直しを実施したが、まだ十分ではないため、「安易にメーリングリストを使用しない」ということについては改めて啓蒙を行いたい。

8)社員意識調査の充実及び分析
現状実施している労働時間に関する意識調査の範囲を広げ、休み方への意識、ワークエンゲージメント、パフォーマンスについても調査を行い、実態把握から必要施策検討へつなげたい。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

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(平成27年度事業)

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