R社(2015年度)

(1)企業概要

社名
R社(2015年度)
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業種/事業概要
卸売業・小売業/コンピュータ、ネットワーク、情報システム等に関連する各種ソリューションを提供
従業員規模
800名程度(2015年4月1日現在)
本社所在地
東京都
労働時間制度
始業終業時間 9:15~17:30(所定労働時間7時間15分)
休憩12:00~13:00(60分)
フレックスタイム制(7:30~20:00、コアタイム※10:30~15:45で清算期間1ヶ月)
※人事部への申請でコアタイム無しのフレックス勤務も可能

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
年次有給休暇の取得目標値を設定し、社内イントラネットで社員が閲覧可能な状態にしている。2015年度の目標は、全社員が年次有給休暇付与日数の50%を取得(参考:全社平均数値は2013年度40%、2014年度42%)。
社長の「ワーク・ライフ・バランス」に関するメッセージをイントラネットの社内報に掲載している。
飛び石連休を年次有給休暇取得推奨日とする施策も行っている。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
当社の状況に対して第三者(外部)視点による診断及び各種提言を行って頂き、長時間労働・休暇取得に関わる抜本策の検討・導入を、組織的・全社的に行う起爆剤となる事を期待している。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
長時間労働及び休暇取得が困難な状態が慢性的な社員がいる。
働き方・休み方の改善に対して意識が向けられていない。
年次有給休暇取得促進の取得目標実現への取組が、大きな改善に繋がっていない。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織体制
【組織】
東京に本社を構え、全国主要都市に支店・営業所を持つ。職種は、営業技術・営業、SE、技術系専門職、事務系専門職がある。
各部署において、総合職は基幹的な業務を担い、一般職は営業のサポートや庶務業務を担っている。男女比はおおよそ男性8:女性2である。
全社平均年齢は42歳である。年代別では40歳代が最も多く36%、20歳代が最も少なく12%程度である。

【主事業の動向等】
主軸のシステムインテグレーション事業は、業界全体が堅調であり、ここ数年業績目標を達成してきた。本事業の一部は、事業会社に移管し、当社社員が在籍出向している。
人材流動性の高い業界である。当社は、業績が堅調(仕事が増加傾向)である中、入社人数と退職人数が年間で同程度であるため、社員一人あたりの負荷が高まり、労働条件の良い会社を求めて人材が流出するケースがある。

②働き方
 SEの所定外労働が多い。また、システムの保守を担当する現場等では、顧客の主な稼働時間である平日の日中にシステム作業等を行うことができないため、土日や夜間に勤務することも多い。そのため、コアタイムなしのフレックスタイム制を採用し、出勤時間の調整を行っている。
公共インフラに関わる部門は年度末に向け多忙になる。
コールセンターのシステム構築を担当する部署は、業務受託期から忙しい。
一般職は営業をサポートするため、担当する営業社員の繁忙の具合により所定外労働が発生するが、他の職種と比べて所定外労働は少ない。

③休み方
所定休日は土曜、日曜、祝祭日に加え、創立記念日、年末年始(12月29日~1月3日)休暇がある。また、飛び石連休は、間の出勤日を年次有給休暇の取得奨励日として周知している。
年次有給休暇以外の有給休暇として、特別休暇を5日付与している。取得は1日単位でもよく、また、時期を特定せずいつでも取得可能としている(夏季に取得されることが多い)。
年次有給休暇の取得日数が年5日以内の社員の割合は、全社で40%である。
年次有給休暇の取得促進に向けて行った社員アンケートにおいて、「もっと年次有給休暇を取得したい。会社に取得日を指定してほしい」等の意見があった。7・8・9月の夏季に休暇を取得する社員が多い傾向から、人事部としては、「休暇日がはっきりしていれば、各自で準備をして確実に休暇を取得することができ、必要な成果も確保できる」と考えている。
課長クラスはプレイング・マネジャーが多く、先頭に立って現場で働いており、年次有給休暇を取得できていない状況にある。特に、技術及び営業部門に所属する課長は業務が多いことに加え、部課の成績等のプレッシャーも大きいため、年次有給休暇取得の意識を持つことができていない。

④マネジメント
 【トップによるマネジメント・推進体制等】
働き方・休み方に対してトップも徐々に意識が高まってきている。
ワーク・ライフ・バランスに関するトップメッセージをウェブ社内報に掲載するものの、働き方・休み方改善への意識の変化が感じられない。その原因として、ウェブ社内報が他の「任意確認」情報と同一に位置づけられているため、確認していない可能性が考えられる。
働き方・休み方改革に対する意識は役員会などでも共有されているが、現場への落とし込みができていない。課長の上位職である部長まで巻き込むことにより、プレイング・マネジャーである課長に、働き方・休み方の改善を意識させることができるのではないかと考える。
長時間労働抑制や年次有給休暇の取得促進に関する社内体制、相談窓口、労使の話し合いの機会はない。

【採用等】
新卒採用は年15~20名程度である(総合職・一般職合計)。定年退職者は毎年一桁の人数であるが4年後に二桁になり、15年後に定年退職者のピークを迎える予定であり、同時期に総人員もピークに達する予定である。

【労働時間管理】
36協定は、月45時間、年360時間、特別条項で月80時間、年720時間※で締結している。
※それぞれ、法定の時間外労働上限時間   
労働時間管理は、社員各自による始業終業時間の自己申告を基本とするが、会社に入退社するためのIDカードによるログ情報を活用し、自己申告とログ情報との乖離のチェックを行っている。乖離が認められた場合は、本人に理由を確認し、必要に応じて改善を促している。
日々の所定外労働の遂行には管理職への申請及び承諾を要することを周知しているもののルール化されておらず、現場運用となっているため、一部の社員は、事後報告となっている。

事業本部長には当該事業本部に属する社員の毎月の所定外労働の情報が提供されている。
月の所定外労働時間が60時間を超える社員がいる場合は、当該社員の上長に対し、超過理由と改善方法に関する報告書の提出を義務付けており、要員計画の見直し方策も報告書にまとめる。この報告書は、部長、統括部長、事業本部長、統轄役員の確認を必要とするが、報告すれば足り、その後のフォローはない。また、2カ月連続で60時間を超える所定外労働が認められた社員の上司には、統括部長によるフォロー面談を導入しているが、その後の改善状況までフォローしていないため改善が見られず、毎月同じ社員の名前がリストに上がっている状況にある。
36協定の1年間の最大延長時間を超過するおそれがある場合は、勤怠管理システムから当該社員及びその上長に注意喚起のメールが送信されるが、1か月の最大延長時間を超過する恐れがある場合は、当該社員に対してのみ注意喚起が行われるだけである。
働き方・休み方改善を啓発するポスターの掲出等は行っていない。

【休暇管理】
記念日等に年次有給休暇の取得を促す制度はない。
年次有給休暇の取得が低調な社員に対する、個別の取得奨励などは行っていない。

【評価制度・教育研修】
人事評価は、各人の業務実績で評価する。
評価の項目①翌年度の賞与算定のための評価(目標管理制度による)、②昇給昇格のための評価(コンピテンシー、能力遂行実績を評価による)の2つに分かれる。
②①は、目標管理制度により期初に目標を立て、期末に目標の達成度合いを確認し評価する。
②は、一般社員はコンピテンシー評価、管理職はスキル評価及び保有スキルをどの程度発揮できたかを測る行動評価を行い、次年度の昇給・昇格を決定する。考課者訓練は、新任課長研修で行っている。
自己申告制度では、年1回上長と部下で面談を行い、コミュニケ―ションや昇進意欲を把握している。また人事課に、直接人事労務に関する様々な意見を申告することができる。
管理職の人事評価に、本人及び部下の働き方・休み方管理に関する項目はない。また、一般社員の人事評価にも本人の働き方・休み方改善に関係する項目はない。
一般社員に対して、働き方・休み方改善の推進につながる研修等は行われていない。
管理職に対して、働き方・休み方改善の推進につながる研修等は行われていない。

【その他】
多様な働き方に関する制度設計・構築等の検討材料とするため、社員インタビューにより働き方の現状把握を行った。保守部門(夜間勤務)の担当者からは「休めない」「早く帰ることができない」という意見が出た。また、営業からは、自身が残業をする必要がなくても帰りづらい雰囲気から残っていることもあるという意見が見られた。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
1か月の所定外労働が、特別条項の最大延長時間である95時間を超過する恐れがある場合は、当該社員に対してのみ注意喚起が行われるだけである。
所定外労働が60時間を超えた社員がいた場合に上司が提出する報告書は、部長、統括部長、事業本部長、統轄役員の確認を必要とするが、報告すれば足り、その後のフォローはない。
2カ月連続で60時間を超える時間外労働が認められた社員の上司には、統括部長によるフォロー面談を導入しているが、その後の改善状況までフォローしていないため改善が見られず、毎月同じ社員の名前がリストに上がっている状況にある。
管理職の人事評価に、本人及び部下の働き方の管理に関する項目はない。また、一般社員の人事評価にも本人の働き方の推進に資する項目はない。
一般社員対して、働き方の改善推進につながる研修等は行われていない。また、管理職に対して、働き方の改善推進につながる研修等は行われていない。
日々の所定外労働の遂行には管理職への申請及び承諾を要することを周知しているもののルール化されておらず、現場運用となっているため、一部の社員は、事後報告となっている。

2)休み方
記念日等に年次有給休暇の取得を促す制度はない。
年次有給休暇の取得の低調な社員に対する、個別の取得奨励などは行っていない。
管理職の人事評価に、本人及び部下の休み方の管理に関する項目はない。また、一般社員の人事評価にも本人の休み方の推進に資する項目はない。
管理職に対して、休み方の改善推進につながる研修等は行われていない。また、一般社員対して、休み方の改善推進につながる研修等は行われていない。
技術及び営業部門に所属する課長は業務が多いことに加え、部課の成績等のプレッシャーも大きいため休暇取得の意識を持つことが出来ない。

3)働き方・休み方共通
ワーク・ライフ・バランスについて、トップメッセージをウェブ社内報に掲載するものの、働き方改善への意識の変化が感じられない。
働き方・休み方改革に対する意識は役員会などでも共有されているが、現場への落とし込みができていない。
長時間労働抑制や年次有給休暇の取得促進に関する社内体制、相談窓口、労使の話し合いの機会はない。
働き方・休み方改善を啓発するポスターの掲出等は行っていない。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合は9.2%(注1)であった。

→全国の雇用者の平均値である8.7%(社員規模100人~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%ともに下回っている。
(注1) 繁忙期における値
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全社員平均41.9%であった。

→主要産業の平均値である43.4%(社員規模100人~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値70.0%をともに下回っている。
貴社の長時間労働の社員の割合は主要産業の平均値に到達しておらず、働き方の改善が強く求められる。また、年次有給休暇の取得率についても主要産業の平均値に到達しておらず、休み方の改善が強く求められる。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
ワーク・ライフ・バランスについて、トップメッセージをウェブ社内報に掲載するものの、働き方改善への意識の変化が感じられない。
メッセージの発信方法及び内容を改善
 トップメッセージであるにもかかわらず、イントラネット(ウェブ社内報)のみによる情報発信であるため、他の「任意確認」情報に埋もれ、確認すらされていない可能性がある。ウェブによる周知は、積極的に情報を取得しなければ情報を得ることができない。
そこで、例えばトップのメッセージとして「働き方・休み方改善推進」ポスターを掲出すること、トップメッセージの詳細内容は別冊社内報として、冊子にするなど、社員に確実にメッセージが届く方法に変更する。
ウェブを活用する場合は、確認を必須とする仕組みを設け、社員の確認結果を人事で把握できるようなシステムにするなど、掲載サイトへのアクセスと内容の確認を促す工夫を行う。
 また、メッセージの内容についても、「働き方改革を進めよう」等の定性的なものに比べ、定量的な目標を掲げるメッセージは効果が高いことから、例えば、社長自ら所定外労働時間や年次有給休暇の取得日数についての全社的な数値目標を設定し、その目標値をポスターにして掲出を行う等の対策を実施する。
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
長時間労働抑制や年次有給休暇の取得促進に関する社内体制、相談窓口、労使の話し合いの機会はない。
働き方・休み方改善の推進に向けた社内体制の構築
労働時間等設定改善委員会の設置や、安全衛生委員会における協議事項とするなど、働き方・休み方の改善推進について労使で検討するための社内体制を構築する。
労使が話し合える体制を整えることで、人事主導で運営する場合に比べて、他の部門の社員が「自身が取組の一翼を担っている」という意識が高まり、取組への協力姿勢が向上することが期待される。
相談窓口として、社内に働き方・休み方の相談窓口となる担当者を設置し、さらに、社員に対して積極的な利用を促す。または、社外の専門家(例えば社会保険労務士)の活用なども考える。
項目3
改善促進の制度化
記念日等に年次有給休暇の取得を促す制度はない。
「誕生日・誕生月休暇」等の休暇の設定
誕生日・月等に年次有給休暇の取得を促すメモリアル休暇制度を設ける。
項目4
改善促進のルール化
所定外労働が60時間を超えた社員がいた場合に上司が提出する報告書は、部長、統括部長、事業本部長、統轄役員の確認を必要とするが、報告すれば足り、その後のフォローはない。

2カ月連続で60時間を超える働き方であった社員の上司には、統括部長によるフォロー面談を導入しているが、その後の数字の変化を追うものではないため改善が見られず毎月同じ社員の名前があがる。
把握した実態・改善提案の経過観察を進め改善を推進する
改善報告書等は、ただ報告させるだけではなく、報告後の経過の観察、フォローまで行うことで実効性が確保される。
まず、改善報告書等については、報告の内容の精査を行う。具体的には、①原因が適格に分析されているか、②改善対策は、分析した原因に対応したものであるが、③改善対策は実現可能なものであるか、④改善目標をいつまでに達成するのか、等の点について審査を行う。
改善対策によっては、該当部課だけで推進することが難しいものも考えられるので、その場合は、企業全体で対策を推進するための体制を整備する。
管理職の人事評価に、本人及び部下の働き方・休み方の管理に関する項目はない。また、一般社員の人事評価にも本人の働き方・休み方の推進に資する項目はない。
管理職の人事評価項目にワーク・ライフ・バランス管理に関する項目を設定する
適正な労働時間の管理、年次有給休暇の取得促進は、社員の労働生産性を高め、質の向上、優秀な人材の確保その他さまざまな効果が期待できる。このため、管理職の人事評価に管理職本人及び部下のワーク・ライフ・バランス管理についての項目を組み込み、上位層になるにつれ、ワーク・ライフ・バランス評価の重要度を高める。
実施に当たっては、労働時間及び年次有給休暇の取得について、管理職本人や組織としての目標値を設定し、併せて部下一人ひとりの目標値を設定し、現在のパフォーマンス・コンピテンシー評価の一部に組み込む。
一般職員の人事評価項目にワーク・ライフ・バランス管理に関する項目を設定する
本人のモチベーション等にも配慮した上で、所定外労働時間及び年次有給休暇取得の個人目標値を設定し、達成度合いを人事考課にも反映させることで、社員全体のワーク・ライフ・バランスに対する意識を高める。
実施に当たっては、上記と同様、現在のパフォーマンス・コンピテンシー評価の一部に組み込む。
日々の所定外労働の遂行には管理職への申請及び承諾を要することを周知しているもののルール化されておらず、現場運用となっているため、一部の社員は、事後報告となっている。
所定外労働の事前申請制度を試験的に導入する
所定外労働を実施するに当たり、本当に必要な所定外労働が行われているかどうかを事前にチェックできる体制が整備されていない。
そこで、所定外労働を実施する場合に、部下から上司に対し、事前に所定外労働を実施する理由及び所要時間数を申告、上司が承認を行った上で実施する制度を導入する。
上司は、部下からの申告内容が適正かどうか、加えて当日に遂行すべき内容かを精査し、申告の承認を行う。
また、上司にとって、部下の現在の業務の状況を正確に把握する機会となることも期待される。
Action(アクション)
項目5
意識改善
管理職に対して、働き方・休み方の改善推進につながる研修等は行われていない。

働き方・休み方改革に対する意識は役員会などでも共有されているが、現場への落とし込みができていない。
管理職向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進を推進するためには、管理職の意識改革を行うことが重要である。
そこで、①管理職本人の働き方・休み方改善を推進するための研修を行う。
また、働き方・休み方に課題のある部下の長時間労働の抑制及び年次有給休暇取得を促進するため、②部下の働き方・休み方のマネジメントに関する教育・研修を行う
上記の研修は、集合研修に限らず、個別研修やe-ラーニング等でも可能であるが、本部作成の資料の回覧による閲覧を行うのみでは実効性に乏しいことに留意し、効果的な方法により実施する。
一般社員について、働き方・休み方の改善推進につながる研修等は行われていない。
一般社員向けの働き方・休み方についての教育・研修を行う
休養の重要性、長時間労働と健康・仕事効率の関係などを社員に認知してもらうため、全社員の受講を義務とする教育・研修を行う。
働き方・休み方改善を啓発するポスターの掲出等は行っていない。
働き方・休み方改善啓発ポスターの掲出を行う
働き方・休み方改善を啓発・推進する上で、全社員が常に意識を持つためのツールとして、部課単位等でのポスターの掲出は有効である。【項目1】の通り、現在ウェブで公開されている社長メッセージも参考にしながらポスターを作成する。
また、部署等で所定外労働時間や年次有給休暇に関する目標値を記入できるデザインにするなど効果的なポスターを作成することも有効である。
項目6
情報提供・相談
年次有給休暇の取得の低調な社員に対する、個別の取得奨励などは行っていない。
年次有給休暇の取得が低調な上司本人及び取得率が低い部下を持つ上司に対して、定期的に注意喚起を行う
そこで、事業の年度初めに、【項目4】を参考に全社的、部署毎等で年次有給休暇の取得率や取得日数の目標値を定める。
目標設定後は、定期的に取得状況について把握を行うとともに、目標を下回る部署が見られた場合は、当該部署等に対し、トップの代理として、定期的にメール等で注意喚起を行う。
所定外労働95時間(特別条項の上限)を超えそうな社員にはシステム上で注意喚起されるが、本人のみへのアラートに留まる。
本人に加え、上司にも注意喚起のメールを送信する
36協定の年間最大延長時間を超えそうな社員に対してルール化されている、「本人及び上司への注意喚起」システムを、月の特別条項の最大延長時間を超えそうな場合についても導入する。
ただし、現在の注意喚起システムは、あくまで特別条項の最大延長時間に対する注意喚起であり、既に相当の所定外労働となっている。60時間を超える社員(部下)のいた上司は、本人と共に改善報告を出すもののその後の改善効果が乏しい結果からも「月60時間」という数字に対して、定期的に社員に意識させるためにも、通常の36協定の協定時間、60時間を超えるような社員への注意喚起を行うようなルール設定を行うことも検討する。
項目7
仕事の進め方改善
技術及び営業部門に所属する課長は業務が多いことに加え、部課の成績等のプレッシャーも大きいため休暇取得の意識を持つことが出来ない。
課長の業務及び責任の棚卸を行う
課長の休暇取得が低調な主な原因を、業務量が多く、成績も求められている現状にあると把握されていることを踏まえると、現状の業務量のままで上述の改善対策を実施しても効果的とは言えない。
そこで、業務の棚卸を行い、課長職の業務を効率化する。課長に課された業務のうち、課長ではなくてもできる業務の洗い出しの他、業務処理の効率化(事務処理のペーパーレス化や会議時間の短縮等)を図る。
また、課長の業務成績の評価に当たっては、これまでの数値目標の一部を本人及び部下の働き方・休み方の改善に振り替え、業務成績のみを評価する方法を改める(「項目4」参照)。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。
1)メッセージの発信方法及び内容を改善
「ワーク・ライフ・バランス」(所定外労働削減・年次有給休暇取得促進)に関する社長メッセージを社内ポータルに掲載する。
2)働き方・休み方改善の推進に向けた社内体制の構築
仕事のやり方・質の見直し・改善に関する取組を各部で行い、所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進、ワーク・ライフ・バランスの充実を図る。各部門にて、5カ月を1タームとして、施策を1~3個出し、実施する。実施後はその活動内容を事務局でとりまとめて、全社員に展開し全社員が評価する。その評価結果を元に最優秀活動を選定し、社内ポータルに掲載する。
※事務局:人事部および事業本部から1~2名選出。事業本部の意見収集・取りまとめを補助。
衛生委員会の活用
所定外労働時間数等に関する情報の公開:全社で、全社員の四半期ごとの月平均所定外労働時間時間・年次有給休暇取得日数を公表する。
※政府が発表している同業種・同規模の企業の所定外労働時間・年次有給休暇取得状況等の同業同規模等の信頼性の高い情報等を利用して他社情報を展開・自社との比較することで、社員のワークスタイルについての意識を高める。
3)「誕生日・誕生月休暇」等の休暇の設定
年次有給休暇の計画的付与制度を導入し、夏季・冬季期間にそれぞれ2日間付与する。
夏季期間:7・8・9月の間に、2日取得
冬季期間:11・12・1月の間に、2日取得   
期間終了後に、各部に取得の状況をフィードバックする。    
4)所定外労働の事前申請制度を制度化した上で、試験的に導入する
20時以降の所定外労働を行う場合は、事前申請を義務化する。
5)管理職向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
「ワーク・ライフ・バランス」の実現に資する情報提供・ワーク・ライフ・バランスの重要性を説明する資料を作成し、全社員に配布し、意識の改善を図る。
現在、内容は検討中であるが、気軽にみてもらえる内容にしたいと考えており、所定外時間とストレスチェックの結果や健康診断の結果の影響等に関する情報の掲載を検討している。
・技術、営業職の職から、課長クラス・非管理職クラスそれぞれの社員をメンバーとしてディスカッションを実施し、自身の理想の働き方・休み方について議論してもらい、あわせて、理想の実現のために、本人が取り組んでいきたいこと、上司にお願いしたいこと、部下や同僚にお願いしたいことについて話してもらう。ディスカッションの内容については、社内報に掲載し、全社員へ周知を行う。
6)一般社員向けの働き方・休み方についての教育・研修を行う
上記5)にならって実施する。
7)働き方・休み方改善啓発ポスターの掲出を行う
働き方・休み方改善に向けたキャッチコピーを社員から募集し、社内ポータルに掲載する。
8)年次有給休暇の取得が低調な上司本人及び取得率が低い部下を持つ上司に対して、定期的に注意喚起を行う
年次有給休暇取得が低調な社員がいる場合、当該社員及びその上司に対して、取得促進に向けた働きかけを、メールを活用して行う。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

検討を開始した段階であり効果の検証等はこれからである。

(平成27年度事業)

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