ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社

(1)企業概要

社名
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社
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業種/事業概要
製造業/日用品・食品メーカー
従業員規模
521名
本社所在地
東京都目黒区上目黒 2-1-1
労働時間制度
始業終業時間 9:00~ 17:30(休憩時間 55分)、1日の所定労働時間 7時間 35分
在宅勤務は原則月 8日間が上限
工場の一部の社員を除き、フレックスタイム制度を導入

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
自分の仕事の進捗は上司のサポートを得ながら、自身で管理するという方針となっている。柔軟な働き方にするため、フレックスタイム、在宅勤務を導入し、毎週水曜日のノー残業デー、毎週金曜日の U-Time(原則、会議は無しで自己成長に時間を使う時間)、年次有給休暇の取得の奨励を行っている。残業は原則として 21時までとし、それ以降の残業は上司の事前承認を必要としている。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
これまでにも、業務の効率化、ワークライフバランスの観点から残業を減らすための制度や取組を導入しているが、残業時間の大幅な削減には至っていない。改善指標を活用することで、実感として「残業が減った」という感覚を全社で持ち、社員各自がプライベートの時間をより充足できるようになることを期待している。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
少数精鋭でビジネスを行っていること、グローバル企業のため時差の大きい海外とのミーティングも多いことから、部門や人によって改善されてきているとはいえ残業時間が劇的に削減されたという状況には至っていないことが課題である。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織体制
サポート部門(管理部門)、営業内勤、営業外勤、マーケティング、 R& D(研究・開発)、サプライチェーン(製品が工場で生産されてから最終消費者に届くまでの製品供給の全プロセスを担う部署で工場及び工場以外の物流などを含む)となっている。
②仕事特性
マーケティングは、主に商品企画・広告開発を行うチームと、製品や広告を活用していかに売上を伸ばし利益を出すか、というビジネスマネージメントを行うチームがある。マーケティングは全部門のハブとなり、また外部の広告代理店等の多くの関係者のカウンターパートとなっているため、連携・調整業務が多い。プロジェクトごとの上司はほぼ同じだが、カウンターパートが異なっているため、ステークホルダーの数が非常に多くなること、また複数のプロジェクトを同時並行して行う点が特徴的である。
③働き方
特にマーケティングの商品企画・広告開発を行うチームは、海外との会議が多く、海外の時間に合わせた会議に参加せざるをえない場合が多い。プロジェクトの進行の中で何らかの変更が余儀なくされるケースが発生したり、業務に対して、自分が納得するまでやりたいという気持ちがあるため、残業につながることもある(決まり事で縛るカルチャーではない)。
月間残業時間(所定労働時間超)が 80時間を超える人が 5人前後(全社員数の 1%)いる。
水曜日に 18:30以降の残業を原則禁止するノー残業デーを実施しているが、業務の繁忙期や締め切りもあるため、部門により徹底度は異なっている。1か月あたりの残業時間 45時間を超えることは望ましくないことの啓発は毎月行っており、100時間を超える、あるいは 2ヶ月連続 80時間を超える場合、産業医面談を行っている。
社員は各々のグレードに応じた職務となっており、一般的に社員の責任感は高い傾向にある。残業時間が多い社員は入れ替わりがあり、管理職、一般職のいずれが多いという傾向はない。
④休み方
年次有給休暇取得率は 80%を超えており、休暇取得は定着している。
⑤その他
会議室の壁に提示されている『ともに勝つためのマニフェスト』は経営陣が作成したもので、社員(及び来客者)に対して、長時間労働を抑制し、より効果的な働き方をすることで、公私ともに充実し、それがまた一人ひとりの生産性を上げる旨のメッセージを発信している。
マネジメント層は、社員を大事にする意識が強い。労務管理は行うが、基本的には社員に仕事を任せている。仕事の進捗管理を自分でもきちんと行い、期日を守っていればいつ休みをとっても良いという風土である。人事は部門担当制(ビジネスパートナー制)となっており、部門における問題等に対する相談窓口になっている。
新卒採用者にも綿密に最初のトレーニングを行い、人事部において約 1ヶ月半の研修を行った後、部門で2ヶ月間にわたるトレーニングを行ってから実務に移る。中途採用者は早く会社になじみ、業務を行うことができるように、上司は入社後の 90日間アクションリストを作り、何を行うべきかをサポートしている。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
1か月あたりの残業時間が 60時間前後の状況が数カ月続く社員も若干いるため、疲弊しないように、その原因となっている課題を解決したい。
ビジネスの中で忙しい時期は必ずあるが、残りの時期はバランスがとれていることが望ましい。多忙でも、自分とチームが行った仕事の結果が見え、手ごたえを感じられれば良いと考えている。
長時間働くことを良しとする文化はないが、ミーティングが多い、メールが多いのが実情であり、いかに業務効率を高めていくかということは引き続き取組むべき課題であると考えている。より効果的なコミュニケーションツールとして、社内チャット等も導入しているが、メールの数の減少にはつながっていない。会議の多さに対しては、出席している会議に完全に集中(メールや電話は禁止等)、貴重な時間を最大限有効に活用するように会議を実施(明確な意思決定、会議に必要な人のみが出席等:マニフェストにも記載)等の取組みを行っている。また、少数精鋭の中で、人事異動時、育児休暇取得時などで、業務の引継ぎが発生すると、その際の負荷は大きく、残業が発生する要因となっている。

2)休み方
年次有給休暇取得率が 81.6%と非常に高く、『ともに勝つためのマニフェスト』において、「有給休暇を 18日取得することが奨励され、それに対する積極的な取り組みを期待します」と明記している。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時60時間以上の雇用者の割合は1.5%(繁忙月)であった。

→貴社の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である8.0%(社員規模100人~999人のカテゴリ)及び国の定める目標値5.0%をクリアしているが、36協定で定める労働時間の延長に関する国の限度基準である45時間を超える社員は20%(繁忙月)となっている。
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全社員平均で 81.6%であった。
→主要産業の平均値である 43.4%(社員規模 100人 ~999人のカテゴリ)及び国の定める目標値 70%いずれも上回った。
貴社は、長時間労働の社員の割合、年次有給休暇の取得率ともに目標値を達成しています。引き続きこの状況を維持し、よりよい働き方・休み方の実現をめざしてください。なお、36協定で定める労働時間の延長に関する国の限度基準である1か月45時間を超える社員は20%で、改善の余地があります。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
System(システム)
項目3
改善促進の制度化
長時間働くことを良しとする文化はないが、ミーティングが減らない、メールが多い(減らない)ことがネックとなっている。
役員承認の必要な退社時間の繰り上げ
現在、役員承認の必要な退社時間は 21時となっているが、これを 19時ないし 20時に繰り上げる。
Action(アクション)
項目7
仕事の進め方改善
長時間働くことを良しとする文化はないが、ミーティングが減らない、メールが多い(減らない)ことがネックとなっている。
会議の効率化
会議の効率化に関しては、既に経営陣の発信による「出席している会議に完全に集中(メールや電話は禁止等)」、「貴重な時間を最大限有効に活用するように会議を実施(明確な意思決定、会議に必要な人のみが出席等)」等の取組を行っているが、この徹底を促進する。これに加えて、決められた会議時間内に決定をする、会議に提出する資料枚数の上限を定める等具体的な目標を設定する。
会議を開かないという選択肢の検討
会議の必要性に関しては、既に必要な会議に限定しているが、更に会議を減らすため、権限の委譲も含めて会議を開かないケースを増やすことができないか検討する。
メールにかかわる時間の削減・効率化とメールそのものの削減
既にメールの利用ルール、たとえばメールの削減に向けて、メールを転送する、または他の宛先を追加する前に、それが本当に必要か再確認する。メールの TOや CCに誰を入れるのかも重要。 TOはメールへの返信をしてほしい相手、 CCはそのやり取りがあったことを知っておくべき人間に絞ることにより、必要最小限のメール送信とすることにより、受け取る相手にとっても無駄なメールを削減する、などはプロジェクト化して全社員に発信をしているが、更に徹底をする。
長時間働くという文化はないが、ミーティングが減らない、メールが多い(減らない)ことが最大のネックとなっている。
意志決定の効率化
意志決定に必要な資料、会議の資料の分量を制限し、業務の効率化を図る。上司は、限定した資料の中で決裁するルール作りを行う。
「本当に必要なアクションか?」を全員が意識しながら業務に取り組むマインドセットを醸成する。
退職や人事異動、育児休暇取得時など、業務の引継ぎに時間をとられ、付加が増大することも残業の増加要因となっている。
人事異動や退職、育児休暇等に伴う業務引継ぎの効率化
異動や退職、育児休暇等の際に、引継書を作成して上司が承認し、引継ぐことが行われているが、さらなる効率化に向けて、実施方法の改善を図る。
引継書は、業務全体が俯瞰できるものとし、業務の流れ、社内外の関係者とのつながり、資料を明示する。資料についてはエクセル等により資料一覧と格納先をリストアップし整理しておく。
引継書については、過去に作成したものをベースに、半期や四半期、プロジェクトの節目などに、引継書の改訂を行っておくことにより、引継ぎ時の負担軽減を図る。
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
1か月あたりの残業時間 60時間前後の状況が1年近く続く社員も若干いるため、疲弊しないように、その原因となっている課題を解決したい。
一定時間以上の残業に対し、残業が必要な理由の報告義務づけ
毎月 45時間以上ないし 60時間以上残業の社員に対して、残業が必要だった理由・原因の(簡単な報告フォームによる)報告を義務づける。これにより、合わせて実施する業務の効率化の注力すべきところを明らかにして、重点的な取組を行う。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。
1)役員承認の必要な退社時間の繰り上げ
すぐに実施は難しいが検討したい。
2)会議の効率化
すでに一部の会議では、使用するパワーポイントの枚数は 10枚以内、また、事前に資料を送付するなどの取り決めを行い、会議を運営している。
3)会議を開かないという選択肢の検討
すぐに実施は難しいが検討したい。
4)メールにかかわる時間の削減・効率化とメールそのものの削減
既に 2年前に社内でプロジェクト化し、メール配信の重要なポイントを全社員にシェアし、また新入社員研修でも同じ資料を用い研修を行っているが、徹底ができていないため、劇的な削減につながっていない。マインドセットの問題でもあるので、小さな部門では可能な限りメールではなく口頭で伝えることも選択肢として常にリマインドする。
5)意志決定の効率化
会議の目的を事前に明確化して共有し、終了時間までに何を決めるのか、またその時間以内に決定することをマネジメントよりコミュニケーションし、実践している。
6)人事異動や退職、育児休暇等に伴う業務引き継ぎの効率化
実施に向けて検討する。
7)一定時間以上の残業に対し、残業が必要な理由の報告義務づけ
すぐに実施は難しいが検討したい。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

既に取組実施中の対策もあり、特に会議の効率化及び意思決定の効率化によって検討内容がより明らかになり、決定が早くなっている。このほかの対策についても一層の取組推進を行いつつあり、今後の進展が期待される。

(平成26年度事業)

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