J社(A部)(2014年度)

(1)企業概要

社名
J社(A部)(2014年度)
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業種/事業概要
情報通信業/システム構築・ネットワーク構築・運営業務等
従業員規模
63名(企業全体:1000名超規模)
本社所在地
神奈川県
労働時間制度
始業終業時間9:00-17:36(休憩時間11:50~12:50)
1日の所定労働時間7時間36分
フレックスタイム制度を導入

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
社員活性化に向けた制度(フレックスタイム、リフレッシュ休暇、社会貢献休職、教育休職)、両立支援に向けた制度(半日有給休暇、失効有給休暇の積立、育児休業、育児退職者再雇用、家族介護休暇(法定の介護休暇)、育児・介護のための勤務時間短縮、1日介護休業(法定外の制度:月5日を限度に休業ができる制度で、有給休暇ではないが援助金を支給))等の制度拡充や、営業社員・SEへのモバイルPCの導入を実施した。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
社員の主体性発揮に重きを置き、社員自身の動機づけや意識改革の視点でどのように改善すべきかアドバイスを受けたい。社員一人ひとりが自身のあるべき姿を思い描くことができ、そして正しい方向を向くことで、一丸となって歩んでいけるのではないかと考え、その一歩を踏み出すためのツールとして、本指標の活用を考えた。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
トップメッセージとして「ワーク・ライフ・バランスの実現」が発信されてはいるが、各部署の社員までは浸透しておらず、社員自らがワーク・ライフ・バランスについて考え、実践するまでには至っていない。また、労働時間や休暇に関する様々な制度を導入しているが、それが有効に機能していないと感じている。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織
課→部→統括部→本部とある。女性比率は全社で14%、A部では19%である。また、A部の年齢構成は平均年齢20代と若く、20代と40代の社員が多い(30代の社員は少ない)。
②働き方
フレックスタイム制度を適用している社員及び適用していない社員がおり、海外とのやりとりが多い社員等については、コアタイムの無いフレックスタイム制も適用している。また、週に2日、在宅勤務ができる制度を導入している。現在は、育児・介護を行う社員が対象だが、今後は現場の声を参考にしながら対象者の拡大の検討を行う。
全社的に長時間労働の抑制の意識は高く、2013年度の時間外労働の平均は月21時間であったものが、2014年度は月17.9時間となり、15%程度削減できている(目標は対前年比25%削減)。20時以降の残業は事前申請が必要であり、また、長時間労働が深夜に及んだ場合などは、翌日の勤務時間まで7時間以上間隔をあける勤務時間のインターバル制度を設けている。
ノー残業デーは水・金曜日の週2回で、リマインドメールを部門全体に配信する。
③休み方
アニバーサリー休暇が年次有給休暇取得推進の施策の一つとしてある。ただし、取組の周知、利用勧奨がなされていないため、一部の部署・社員は利用しているものの、全社的に浸透しているわけではない。
所定の休日が土日祝祭日に加え2日あり、その2日分は期初に自身で自由に設定できる。また、夏季休暇があり、7月から9月の間に5日間の休暇を取得することができ、取得率は100%である。
年次有給休暇の取得に対する部門全体の意識が低かったこともあり、年次有給休暇の取得率が低い社員に対して、管理部門や上司等から休暇の取得を奨励する情報の提供は行われていないのが現状である。また一部の社員は、仕事の量が多いことが原因で労働時間が長く年次有給休暇も取得しづらい状況もある。
休日出勤はあるが頻繁ではない。
④マネジメント
企業として、働き方・休み方の改善についてのメッセージは発信しており、全社的な年次有給休暇の取得日数の目標値等もあるが、部門には浸透していない。
勤怠は、システムに出勤時間、退勤時間を本人が直接入力する自己申告制で、上司は部下の勤怠状況、年次有給休暇取得状況をシステム上で確認できる。また、併せてPCのログ確認による出退勤の管理を行っており、この2つの出退勤の記録について、同じ日に30分以上の差がある場合には、理由を求めている。管理職の評価は業績評価を基本としており、部下の働き方・休み方のマネジメントについての項目はない。
年次有給休暇は、年16日取得を全社的な目標として掲げ、部門長会議でも年次有給休暇の取得推進について人事から説明を行ったが、それ以外に推進に資する仕掛け・取組についての検討がなされていないため、部門には取組の意識が浸透していない。また、アニバーサリー休暇等の休暇取得推進も部門長に働きかけているが進まない。これまで長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進についての、全社的な研修は行われていない。
時間当たりの生産性は、人事評価には紐づいておらず、長時間労働であっても成果が高いようであれば評価は高くなる仕組みとなっている。しかし、トップが総労働時間の削減もメッセージとして発信しており、限られた時間で成果を出す意識が高まっていることから、生産性は重要なテーマになりつつある。
社員の意識調査等は定期的に行っており、トップダウンで社員満足(ES)・顧客満足(CS)向上の推進を行っている。
2013年に、ダイバーシティ促進のワークショップを開催したところ、子育て中の社員などが今よりさらに活躍しさらに管理職へも挑戦していくためには、長時間労働が大きな障害であると考えていることが分かった。
⑤その他
組合役員、マネージャー・部長クラスをメンバーとする職場懇談会を半期に1~2回開催しているが、テーマ設定が明確でなく、具体的な議論がなされていない。
また、残業代を生活費の一部として期待している社員もあり、長時間労働の抑制により、「残業が減る=賃金が減る」と考える社員が一部不満・不安を抱える可能性がある。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
全社的なトップメッセージはあるが、具体的な施策が確保されておらず、トップの考えが部門にまで浸透していない(休み方共通)。
職場懇談会があるが、テーマ設定がなく具体的な議論がなされていない(休み方共通)。
管理職の人事考課と、自身・部下の働き方・休み方のマネジメントがリンクしていない(休み方共通)。
仕事の効率性が評価される仕組みがない。
社員の長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進に対する意識を向上させるような研修が行われていない(休み方共通)。
労働時間の状況を把握しているものの、それを活かした取組・対策などは行われていない。

2)休み方
年次有給休暇の取得が低い社員に対して、対策や情報の提供を行っていない。
一部の社員は、業務量が多い為に休暇が取得しづらい。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合は0%であった。
→貴社の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である8.0%(社員規模1000人以上のカテゴリ)及び、国の定める目標値5.0%をクリアしており、36協定で定める労働時間の延長に関する国の限度基準である1か月45時間を超える社員も5%である。
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全社員平均で31.3%であった。
→主要産業の平均値である54.6%(社員規模1000人以上のカテゴリ)及び国の定める目標値70%を下回っている。
貴社の長時間労働の社員の割合は目標値を達成しており、36協定で定める労働時間の延長に関する国の限度基準である1か月45時間を超える社員も少ない。
一方、年次有給休暇の取得率は平均値にも達していないことから、休み方の改善が強く求められる。そのため、休み方の改善を中心に、働き方についても改善策の検討を行う必要がある。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
経営トップは働き方・休み方の改善についてメッセージを発信しているが、部門においては意識が充分に共有できていない。また、アニバーサリー休暇などの休暇が存在するものの、部門では浸透しておらず、休暇の取得が進んでいない。
経営トップによるメッセージを部署トップが改めて部署内に発信する
部門のトップは、経営トップによるワーク・ライフ・バランスの実現に向けたメッセージを改めて部門会議などで部下であるマネージャーに共有し、マネージャーは部下全体に共有する。そして、部門トップ及びマネージャーを先頭に、部門の社員全体で、働き方・休み方改革に向けた取組の推進を行う。
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
働き方改善の推進を行うための「職場懇談会」が存在するが、テーマ設定が明確でないため、具体的な議論がなされていない。
職場懇談会の運営方法を改善する
あらかじめ検討テーマとゴールを設定して、終了時間も決めたうえで開催する(育児短時間勤務利用者等もメンバーとして参加できる所定労働時間内に開催・終了することが望ましい)。
※時間管理意識の向上、だらだら会議の排除(目的達成を意識した議論)が可能となり、効率的な会議の運営ができるようになる。
項目3
改善促進の制度化
人事部より、部門長会議において、「年次有給休暇の取得しやすい環境」の促進について説明されているが、取組として実施されていない。
休暇の取得しやすい仕組みを制度として導入
アニバーサリー休暇制度の周知、利用勧奨を行うとともに、取得率をグループごとにとりまとめ、低調なグループには改善を求める。また、年次有給休暇の計画的付与制度を活用し、飛び石連休の間の出勤日を休暇日として、連続休暇とする等、年次有給休暇の取得しやすい環境を作る。
項目4
改善促進のルール化
管理職の人事考課(評価)が、部下の長時間労働抑制・年次有給休暇取得促進とリンクしていない。
人事評価項目に部下の労働時間・年次有給休暇取得状況の項目を組み込む
管理職の人事考課における評価項目に部下の労働時間、年次有給休暇取得率を組み込む。
評価は、評価項目に沿って行われて初めて透明性が高く納得性を得られる。そこで、貢献度と投入時間を分析し、所定労働時間内で効率よく職務を遂行できている社員に対して、正当な評価がなされるような仕組みを作り、それをもとにフィードバックできる仕組みを取り入れ、評価に対する社員の納得性を高める。
目標管理・達成目標が適正であり、生産性が評価される正当な仕組みがあれば、仕事へのモチベーションはさらに高まり、長時間労働の抑制・年次有給休暇の取得促進に資する。
残業の承認を必要とする時間を20時以降に設定している。
残業の事前申請・承認を要するルールを設定する
管理職は、時間外労働が部下の業務量・業務の性質から、本当に当日必要な業務か、明日遂行すれば良い業務かを判断することにより帰宅を促し、労働時間の削減に繋げる。
所定労働時間以降の残業は、事前申請・承認を要するルールを設定し、終業時刻の前に、①業務量と残業する理由、②残業終了時間の2点を申請して、上司は①と②を総合的に検討し、必要であると判断した時間についてのみ残業を承認する。また、部下は必ず残業の申告時間を守り、管理部門はシステム上やIDカードの入出記録で、残業申請書と実際の退社時間の乖離を把握し、本人の評価、上司の評価に反映するルールを設定する。
Action(アクション)
項目5
意識改善
長時間労働の抑制・年次有給休暇の取得促進を進めるにあたり、社員向けに教育・研修が行われていない。
社員向けの教育・研修を行う
長時間労働は、業務効率の低下やメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性が高くなる。そこで、長時間労働と健康・業務効率の関係などを社員に認知してもらうため、全社員の受講を義務とするEラーニング、集合研修などにより周知する。
長時間労働は、女性の活躍、育児や介護等により時間的な制約のある社員の管理職へのチャレンジの障壁ともなっている。長時間労働を抑制することが、組織の持続的な発展や多様な人材の活躍による組織活性に繋がる重要な要素であることを全社的に理解するような内容も盛り込む。
項目6
情報提供・相談
年次有給休暇の取得率の低い社員に対して、積極的な取得促進に繋がる情報提供が行われていない。
部門トップから定期的に改善促進メールを送信する
例えば、年次有給休暇取得率や取得日数の目標値を定め、目標を下回る場合、本人及びその上司に対して、アラートメールを送信し改善を促す。また、項目4の「管理職の評価」及び「社員本人の評価」と連動させることで、上司及び本人の改善意識効果を高める。
項目7
仕事の進め方改善
業務量が多いために、労働時間が長くなり休暇も取得できない社員が存在する。
業務の棚卸を行い社員の能力と業務量を正確に把握し、業務量調整を行う
仕事の棚卸・分析及び業務の適正な配分を行ってもなお、業務が長時間労働に繋がるほどの量である場合は、新規人材の登用も検討する。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。
1)職場懇談会の運営方法を改善する
職場懇談会の開催案内時に、検討テーマとゴールを明記し、事前に参加者に周知させた上で実施するようにする。また、開催案内文の中には可能な限りタイムスケジュールも記載することで、参加者全員が時間管理を意識できるようにするなど、運営方法の改善を検討していきたい。
2)休暇の取得しやすい仕組みを制度として導入
休暇取得を促進する施策、制度を検討していきたい。例えば取得目的が明確になっているネーミングにすることで、取得しやすい環境づくりを検討していきたい。

また、提案いただいたその他の取組についても検討を行い、働き方・休み方の改善を推進したいと考えている。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

項目3、「休暇の取得しやすい仕組みを制度として導入」の改善提案を参考にすることにより、飛び石連休前や年末年始に入る前に、マネジメント層より部下に対して年次有給休暇の取得を促す案内があり、取得しやすい環境づくりが出来ていた。数値上でも、前年度と比較し年次有給休暇取得率が上がっている。
また、項目4、「各人が個人ベースの残業計画を策定し管理する」との提案を参考に、当人による個人ベースの残業計画を実施する方向で検討を行った結果、予め予測できる残業に対しては、事前にマネジメント層へ報告する体制になっている。
また、項目5、「マネジメント層向けの意識・行動変革研修等を実施」の提案を参考に、マネジメント層向けに下記を実施した。
1)有効時間捻出のため、週報や月報による集合ミーティングを廃止し、チームリーダーによる報告のみにした。
2)目標の重点化(選択と集中)
3)部署における大型連休取得の推進
働き方・休み方に関する実績値で確認すると、指標活用当初そして現在共に、週60時間以上の従業員の割合は0%である。また、年次有給休暇の取得率は、前回31.3%であったが77.9%に大きく改善し、指標活用当初は、従業員規模別の平均値すら下回っていたが、取組推進の結果、規模別平均値及び国の目標値をクリアした。

(平成26年度事業)

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