東京三八五流通株式会社久喜営業所

(1)企業概要

社名
東京三八五流通株式会社久喜営業所
PDF
業種/事業概要
運輸業/一般貨物自動車運送事業(特別積合せ貨物運送)、一般貨物自動車運送事業、倉庫業 [普通倉庫・定温倉庫・冷蔵倉庫 ]、利用運送事業 [鉄道・航空・自動車 ]
従業員規模
久喜営業所: 74名(社員のうち 63人 85%は乗務員(運転手)、その他は管理、事務)(グループ全社: 2,459名、東京三八五流通株式会社: 163名)
本社所在地
久喜営業所所在地:埼玉県(本社所在地:東京都)
労働時間制度
乗務員: 1年単位の変形労働時間制
事務:始業終業時間8:00~ 17:00(休憩1時間)、1日の所定労働時間 8時間、
シフト勤務

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
施設の修繕、作業環境整備等を行ってきた。
久喜営業所では、所長が「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」に抵触する可能性の高い悪質な顧客の業務について 2年かけて業務を減らし、収支には影響したものの、従業員の健康管理を優先し、残業時間の削減に繋げた。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
人員不足や高齢化等について、会社として将来に不安を抱き、 65歳定年後の高齢者の再雇用を行う等対処はしているものの、いずれは運転手の人員確保が難しいことが予想される。
現在の取組が適切か、またはこのような改善を進めたらより良い働き方に関する将来が描けるかを検討するきっかけとしたい。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
乗務員は、休みはいらないが、収入を増やしたいという考えを持っている人が多く、いかに休みをとってもらうことが大事かという点を納得させることが課題である。
事務員は中堅ということもあり、運行管理の責任者となっていることなどから残業が多く、プライベートな自由時間が取れない状況が発生している。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織
乗務員は、長距離トラック運転手( 34名)とミキサー車の運転手 (25名 )が在籍。長距離トラック運転手の 8~ 9割が東北出身で働き者が多い。長距離トラック運転手の不足に対しては本社からの出向者で対応している。
所長の他、事務員は、社員 5名、パート5名。
②働き方
時間管理に関しては、乗務員、事務員ともタイムカードで出勤、退勤を管理し、日報を出している。
(乗務員)
ミキサー車の運転手は週休 2日で規則正しい勤務となっているが、長距離トラック運転手の働き方に課題がある。
8~9割は固定顧客の貸切輸送を行っており、限られた車両と運転手で固定顧客に対応している。3月の引っ越しによるピーク時にはグループ内からの応援提供で対応している。
長距離トラック運転手は、出勤時間から24時間を1日と捉え、24時間のうち 8時間、休息期間を設けることになっている。運行ごとに出勤時間が異なる。時間の有効活用、運転手の体調管理が最大の課題である。
1日平均の運転時間は 9時間以内という基準があり、運行ごとに基準ダイヤを作成して示している。基準ダイヤを作成する際には、積み下ろしにかかる時間は 1トン 10分という基準を設定し、勤務ダイヤ表(勤務時間)を作成している。勤務時には運転、積み下ろし、燃料を記録する。勤務時に走行から休憩に入るときと休憩が終わって走行開始時に事務所の運行管理者に電話連絡をする。4時間走行中に 30分以上の休憩をとることになっている(分割も可、ただし 1回の休憩は 10分以上)。
(事務員)
事務職についても長時間労働となっている。休みがなかなか取りづらい。顧客との電話のやり取りや配車、トラブル対応を行っている。
③休み方
(全社員)
お盆、ゴールデンウィーク、正月には最低でも 6日連続の休暇を、年次有給休暇も含めて取るように目標を定めており、これについては概ね取得できている。
(長距離トラック運転手)
週 1回の休み。週 40時間勤務。申請すれば休みは取得できるが、休みを取らない人が一部存在する。休日出勤すると、人手不足のため、なかなか代休が取れない。月を超えた代休も取得できるが、給与上取得したがらない。
長距離トラック運転手は、出身地を配慮して出身地の配送先を割り当て、地元で休めるようにしている。
なお、無事故運転優良ドライバーに対する表彰制度があり、5年以上無事故者には国内旅行、35年以上無事故者には海外旅行を本社招待で実施し、これに合わせて休暇(特別休暇)を支給しており、そのような場合には休暇をとる。
④その他
運送業界における競争は厳しいが、安定した経営ができている。
乗務員の給料は、日給月給制。日給分は運搬した荷物による業績給。月給分は固定。
なお、近いうち、クラウド式のデジタコを導入予定であり、待機時間、運転時間など正確に把握できることから、これを用いて勤怠管理が可能になる。さらに、待機時間が予定より長くなったような場合、それが荷主都合によるものか否かなど把握でき、対策を検討することができる。
このほか、出退勤の記録に用いているタイムカードについて、現在は旧式のため、別途入力集計など行う必要があり、データの集計分析など営業所で働き方の実態を常時把握できていない。
社員意識調査は特に実施していない。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
長距離トラック運転手が不足しており、運転手に負荷がかかり、休日出勤が増えている。
タイムカードで出勤、退勤を管理し、日報を出しているが、その働き方の状況を見て問題点など常時把握できていない。

2)休み方
長距離トラック運転手を中心に、休みはいらないが、収入を増やしたいという考えを持っている乗務員が多いなかで、いかに休みをとってもらうことが大事かという点を納得させることが課題。働き者が多く、休めといってもなかなか休まない。
年次有給休暇取得促進をしているが、周囲が休まないので休みづらい傾向にある。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合は6.9%であった。

→貴社(事業所)の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である9.3%(社員規模30~99人のカテゴリ)はクリアしているが、国の定める目標値5.0%は達成していない。
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全社員平均で 11.8%であった。
→主要産業の平均値である 40.1%(社員規模 30~99人のカテゴリ)及び国の定める目標値 70%を下回っている。
貴社(事業所)の長時間労働の社員の割合は、平均値以上ですが、国の定める目標値には達していないことから、働き方の改善が求められます。一方、年次有給休暇の取得率は平均値にも達していないことから、休み方の改善が強く求められます。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
人員不足や高齢化等について、会社として将来に不安を抱き、高齢者再雇用を再度延長する等対処しているものの、いずれは運転手の人員確保が難しいことが予想される。多様な人材が条件面も含めて働くことができるようにする必要がある。
多様な人材を活用できるよう労働条件改善方針の策定とトップによるメッセージ発信
運輸業界は人手不足状況にあり、高齢者や女性の活躍が期待されていることもあり、多様な人材が働き続けることができる労働条件に改善することが必要。それを見据えて具体的
な労働条件改善の方針を明確化し、社内にトップから発信してもらうことが他の施策を推進する助けとなる。
System(システム)
項目3
改善促進の制度化
休みはいらないが、収入を増やしたいという考えを持っている乗務員が多く、いかに休みをとってもらうことが大事かという点を納得させることが課題。
年次有給休暇取得促進月間を設定
年度初めに、年次有給休暇の取得促進月間を設定し、該当月は必ず年次有給休暇を 1日は取得出来るように前月に希望日をヒアリングしてシフトを作成する。
成績優良ドライバーに対する表彰制度があり、旅行と休暇を支給しているが、そのような場合には休暇をとる。
「記念日休暇」、「誕生月休暇」等のメモリアル休暇を設定
就業規則に、「記念日休暇」、「誕生月休暇」等のメモリアル休暇を規定する。現場管理者は、翌月のシフト計画を立てる際に、記念日の対象となる社員に希望日をヒアリングし、必ず反映する。
Action(アクション)
項目5
意識改善
休みはいらないが、収入を増やしたいという考えを持っている乗務員が多く、いかに休みをとってもらうことが大事かという点を納得させることが課題。
職場の安全にとって休養が重要であることを認識できる体験教育
睡眠時間を削ると、目覚めているつもりでも運転が下手になり、本人は一定の速度で運転しているつもりでも、実際にはスピードにばらつきが大きく、車間距離を一定に保つことが難しくなること、毎日少しずつ睡眠不足が蓄積していくと、本人が睡眠不足であることすら自覚できずに、交通事故を起こしてしまう危険が高まることなど、休養の重要性を体験できる教育を行うことによって、労働時間削減、年次有給休暇取得促進の意識付けを行う。
項目6
情報提供・相談
年次有給休暇取得の少ない乗務員に対して、本人は社内的に見てどの程度有給休暇取得日数が少ないのかを把握していない
年次有給休暇取得日数の少ない乗務員に、自身の取得状況を通知する
年次有給休暇取得の状況について、乗務員自身の認識を明確にし、休暇取得促進に向けての意識を高めるため、一定水準(目標)を下回る場合には、本人に通知し、改善の意識付けにつなげる。
項目7
仕事の進め方改善
人員不足や高齢化等について、会社として将来に不安を抱き、高齢者採用を再度延長する等対処はしているものの、いずれは運転手の人員確保が難しいことが予想される。多様な人材が条件面も含めて働くことができるようにする必要がある。
働き方・休み方改善推進につなげるための受託業務の条件改善交渉
久喜支店では、所長が運行管理上問題となるような受託条件を要求する顧客からの業務について 2年かけて業務を減らしてきた。これによって当座は収支には影響したものの、従業員の健康管理を優先し、残業時間の削減につながった。
これを更に進めて働き方・休み方改善促進に支障を来すような受託業務について、顧客と交渉して輸送条件の改善を進める。
さらに、一層の働き方・休み方改善に向けて、運賃体系について、輸送効率を向上させるもの、輸送サービスの内容や条件に応じたものなど運賃体系の一層の工夫の余地がないか検討する。さらに、拠点整備も含めた一括物流サービスの提供といった形での、優良顧客との代替のきかないパートナーとなることによって優位性を高める工夫の余地がないか検討する。
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
タイムカードで出勤、退勤を管理し、日報を出しているが、その状況を見ている人がいない
社員各人の働き方などの実態把握
タイムカードによる出勤、退勤管理と日報の勤務時間の関係についてズレがある場合については、その理由を把握し、正確な労働時間の把握に努める。把握した実態から問題点を明らかにして、企業としての必要な施策の検討に活用する( PDCAサイクルを実施する)。
社員意識調査は実施していない
社員意識調査の実施
「社員意識調査」を定期的に実施することで、社員のモラール、働き方、評価、処遇について社員の意識を把握し、企業としての必要な施策の検討に活用する( PDCAサイクルを実施する)。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。
1)多様な人材を活用できるよう労働条件改善方針の策定とトップによるメッセージ発信
既に支店内にポスターの掲示を行い、店所長訓練でのトップからの具体的な指示を行った。この結果、有能な人材が残ってくれた。
2)年次有給休暇取得促進月間を設定
今後、労使で相談しながら決定してきたい。
3)「記念日休暇」、「誕生月休暇」等のメモリアル休暇を設定
記念日休暇等は、今までは週休とういう形の取得が主であったが、このような提案を受け、プラスαでの年次有給休暇取得をぜひ実施していきたい。
4)職場の安全にとって休養が重要であることを認識できる体験教育
安全衛生委員会等では休養の重要性は周知してきたつもりではあるが、まだまだ不足している。従業員にとって最高の教育は何かまだまだ考える必要がある。今までの日常が日常ではないことを認識させ、管理者の意識改革を推進し、後継者を育成し、組織として人が変わっても持続可能な体制づくりをする。
5)年次有給休暇取得日数の少ない乗務員に、自身の取得状況を通知する
既に、給料明細に取得状況明示している。社員各人が生活運営していく上で、何日年次有給休暇を取得しているか、計算できるので生活の質の向上に貢献している。
6)働き方・休み方改善推進につなげるための受託業務の条件改善交渉
荷待ち時間の短縮等、条件改善できない荷主からの輸送の撤退を含めて、引き続き条件改定は進めていきたい。これに取組むことで、回転率・生産性の向上と長距離乗務員の事故の減少につながってきた。
7)社員各人の働き方などの実態把握
長距離乗務員に関しては、管理が非常に難しい分野であるが、運行状況を正確に把握することができるクラウド型デジタコを順次導入してくことを決定した。
8)社員意識調査の実施
メンタルヘルスチェックを実施したが、さらに、別な視点の調査方法があるならば実施してみたい。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

一部、既に実施してきた取組が効果を挙げつつあり、今後その取組を進めるとともに、そのほかにも検討を開始した取組もあるので、今後の一層の改善が期待される。

(平成26年度事業)

事例を評価する