株式会社グラットン

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企業情報

株式会社グラットン
企業名
株式会社グラットン
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所在地
広島県
社員数
500名(時点:2024年9月時点)
業種
飲食業

取組事例

取組の目的
・広島県を中心に飲食業を営む同社は、中長期的な店舗数の拡大を考えるなかで人材不足に直面していた。そこで、2015年頃から業界では珍しい大学卒業生の採用を開始した。
・当時は、自社の労働環境について状況の認識が不足していたため、1人も採用できない状況が続いた。経営陣に「このままではいけない」という危機感が芽生え、待遇の改善や休暇取得の促進など、労働環境の改善に取り組み始めた。同時に、事業拡大の支柱となる人材育成にも注力するようになった。
取組の概要
○主な取組内容
・同社では、待遇改善や人材育成、社内SNSの活用やイベントの開催等の多岐にわたる取組により、社員の働きがい向上を目指している。

①休暇制度の整備
・長時間労働が常態化していた同社では、まず休暇制度の拡充に取り組んだ。
・現在は、年間105日の休日や出産休暇・育児休暇に加え、誕生日休暇、アウトドア休暇、勉強休暇等多種多様でユニークな休暇制度を導入している。

②報酬・評価制度
・飲食業に人材が集まらない理由の一つは「将来性の欠如」であると同社の経営陣は考えている。多くの飲食業界では、社長直属で各店舗に店長が配置される組織体制が一般的で、キャリアステップが欠如していることが少なくないと同社は考えている。
・取組開始当時、当初は店長以下の階層が2層しかないなど、組織内のキャリアステップが不十分であった。そのため、着実なキャリア形成を求める大卒人材の獲得には特に苦戦していた。
・店舗数の拡大に伴い、経営層が一般社員の働きぶりを把握しづらくなったため、昇進制度の整備が不可欠と判断。階層を14段階に増やし、各階層における評価基準や報酬体系を明確にしたうえで、査定の回数を年4回に増やした。これにより、社員が努力に応じて評価される仕組みを構築し、全員が店長を目指せる環境を整えた。
・報酬・評価制度の見直しと並行して、各階層で必要なスキルや知識を整理・体系化を行い、後述する「グラットンアカデミー」を中心とした育成体制を整備している。
・人材が揃えば、店舗拡大のための資金や物件が準備できる状態になる。実際に店舗数が拡大すると、新たなポジションが生まれるため、キャリア上の選択肢がさらに増えることにつながると考えている。

③社内人材育成機関「グラットンアカデミー」の設立
・社内人材育成機関として「グラットンアカデミー」を設立し、体系的な研修を通じて人材育成に取り組んでいる。アルバイトリーダー、新入社員、調理部社員、店長候補、幹部など、7つの階層別に研修を設定し、年間60回の研修を実施している。
・飲食業において店長の役割が非常に重要であることを踏まえ、10年ほど前に「店長育成塾」を開始した。これが社内研修制度の原点となる。その後、経営陣が社外研修で学んだ内容や過去の経験を基に独自の研修を作り、徐々にその数を増やしてきた。
・近年特に力を入れているのが、新卒社員向け研修である「ルーキー会」である。新卒社員は店長候補として異なる店舗に配属され、シフト制を基本とした勤務形態で働く。そのため、新入社員同士の交流の機会は少なく、孤独感を抱きやすいという。この研修では新卒社員同士の横のつながりを強めることで、離職率の低下に貢献している。また、会社経営やSNS映えする商品開発など、通常の業務とは異なるビジネス視点を学ぶことで、新卒社員のスキルアップにもつながっている。
・アルバイトからの社員登用を促進するため、非正規社員向けの研修にも力を入れている。特に2ヶ月に1回開催される「アルバイトリーダーのミライ塾」では、採用候補となるアルバイトリーダーを対象に、飲食業をビジネス視点で捉える研修を実施している。同社は、大学生アルバイトの正社員登用を新卒採用の主軸に据えており、同社を「アルバイト先」ではなく将来的な「就職先」として見直してもらうことも研修の目的の1つとしている。以前は、他社で内定を得られなかった学生が登用されるケースが多かったが、最近では同社を第一志望とする登用例が増加している。

④独自アンケートの実施
・3か月に1回、全社員・全アルバイトを対象に独自のアンケートを実施している。
・店舗ごとにスコアが算出され、各店舗の組織としての健全性やチームビルディングの状況を評価する。70点未満の店舗では、事業部長による店長との面談が実施され、改善策を検討する。
・各店舗のスコアはランキング形式で、経営陣及び店長間で共有される。
・サーベイは離職率の予防も目的としている。スコアで離職のリスクが高い従業員を特定し、事業部長やスーパーバイザーが直接面談を行う。

⑤社内SNSの活用
・従業員同士で感謝の気持ちを「コイン」として送りあうことができる社内SNSを10年ほど前から導入している。
・導入前は、店長が従業員に給与明細を渡す際に「ありがとうカード」として感謝のメモを挟んでいたが、従業員全員が承認し合う仕組みの必要性を感じ、導入に至った。
・専門のプロジェクトチームが導入・運用を担当している。チームは毎年メンバーが変わり、現在はメンバーを公募して、運用を任せている。若手がプロジェクトを通じて成長できる場としても機能している。
・アルバイトを含む全従業員が利用しており、店舗単位で稼働率向上のための施策が講じられている。店舗ごとの稼働率は評価基準に組み込まれ、店長は月給、副店長以下は賞与に反映される。

⑥グラットンアワード
・「グラットンアワード」は年に一度、全社員・アルバイトや取引先の社外関係者を集めて開催されるイベントであり、イベントを通じた愛社精神の向上を目指している。
・毎年3月に約300人規模で開催され、3部構成となっている。
・第1部では、経営陣から来期以降の経営方針や中期経営計画を全社員・アルバイトに向けて発表する。
・第2部で各種表彰と最優秀店舗グランプリが実施される。グランプリでは、優秀店舗3~4店舗が選出され、選出された店舗は、店舗のメンバー全員で一年間の店舗運営の取組やその成果についてプレゼンテーションを行い、最優秀店舗を選出する。併せて、最優秀社員/パートナー賞などの、各種表彰式も実施される。
優秀店舗による業績のプレゼンテーションが行われるほか、各種表彰式が行われる。
・第3部は懇親会となっており、その他の表彰と食事会、店舗対抗の余興等が行われる。

⑦プロジェクトチーム制度
・「プロジェクトチーム制度」は、店舗業務以外の特定のプロジェクト業務が発生した際に公募・推薦を行い、専門チームを発足させる制度である。
・社員であれば誰であっても参加することができ、新卒社員でもリーダーを務められるようになっている。プロジェクト業務ならではの、通常の店舗業務では得られない多様な経験を積んでもらうことで、社員の成長を促している。
・具体のプロジェクトとしては、新商品開発プロジェクトや、子供たちに飲食業の体験を提供したりサッカー大会を開催するグラットンドリームプロジェクトなどがある。
現状とこれまでの取組の効果
・各種施策によって働きがいが向上した結果、離職率が減少し、生産性の向上が見られるようになったと感じている。
・飲食業界で人材が定着しない原因は、労働環境やキャリアの不透明さ、人間関係に関連していることが多いと考えている。特に、店長以下の階層の社員は、「毎日同じことをしている」感覚に陥りやすく、自身のキャリアに対して不安を感じやすいと同社は考えている。
・働きがいをもって勤務出来る環境を整えることで、離職が減り、同一の価値観やベーススキルを持った人たちで構成されるようになり、生産性が向上している。
・現在、NEW 3K(「かっこいい」「稼げる」「叶えられる」の頭文字をとったもの)プロジェクトを発足し、大卒人材も含めた多くの人材が働きたくなるような会社を作り上げることを目指している。その第一歩として、他業界と比較しても見劣りしない給与水準を目指す。また、転職が一般化するなか、マネジメントやマーケティングなど他業界でも通用するスキルの育成にも注力したいと考えている。
(R6.9)

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