東急建設株式会社
事例カテゴリ
- 所定外労働削減
- 年休取得促進
- 多様な正社員
- 朝型の働き方
- テレワーク
- 勤務間インターバル
- 選択的週休3日制
- ワークエンゲージメント
企業情報

企業名 |
東急建設株式会社
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所在地 |
東京都
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社員数 |
2,877名(連結含む)(時点:2024年3月時点)
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業種 |
建設業
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取組事例
取組の目的 |
・エンゲージメントを「従業員一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」と定義。従業員が会社との間でよりよい関係を築き、前向きに働ける状態を目指している。
・同社では、直近では20代~30代の従業員の離職率が上昇傾向にある。建設業全体としても人材確保に大きな課題を抱えているなかで、人材を獲得し、離職防止を図るうえで、従業員が持続的に働ける環境を整備することが必須と考えている。 ・さらに、組織風土を検討するなかで、従業員の年代ピラミッドのいびつさも影響し、上司と部下の間でコミュニケーションの捉え方にギャップがあることが明らかとなった。このことが上位下達のコミュニケーションスタイルを見直すきっかけにもなった。 |
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取組の概要 |
○主な取組内容
・①エンゲージメント調査の活用、②作業所における労働環境の改善、③採用活動における工夫、④管理職向けの支援、⑤相互承認の推進、⑥ビジョン対話等を実施している。 ①エンゲージメント調査を活用した組織改善のPDCAサイクル ・2018年より、満足度調査にかわりエンゲージメント調査を導入。年2回の頻度で実施しており、契約従業員を含む東急建設グループ全体の従業員を対象としている。 ・導入当初の調査結果では、仕事のやりがいを感じており、上司・部下の関係性も良好である一方で、会社全体の方針を従業員全体へ浸透させるところに課題があることが明らかとなった。そのため、管理職(部長・グループリーダー相当)を通して会社方針や全社施策の意図を伝えることに取り組むこととした。 ・取組の開始にあたっては、「経営層のコミットメントを示すこと」「従業員の自主性を尊重すること」「小さくスタートして成功体験を積み上げていくこと」「負担感を抑えること」の4点に留意した。 ・まずは経営層へ調査結果を報告するとともに、経営層と人事部およびコーポレートコミュニケーション部との間で議論し、方針を決定した。次に全管理職を対象として説明会を実施し、調査結果レポートの見方の説明を行うとともに、参加者アンケートを実施して後述する管理職向けの支援施策への参加希望を募った。初年度は希望した管理職に対して研修やコーチングを実施してモデル部署を設定し、スコアが平均以下の部署に対しては人事部から各組織の総務担当へデータを送り研修への参加を促した。 ・エンゲージメント調査に前向きかつ率直に回答してもらうために、社内イントラネットの特設ページで(a)調査の目的、(b)エンゲージメントとは何か、(c)これまでの結果の推移、(d)調査結果を踏まえどのような施策を講じているか、を紹介している。特に(d)のように、調査に回答すると会社からフィードバックがあることを示すことが重要だと考えている。また、匿名調査であることを役員からも繰り返し伝えているほか、役員が自由回答を全て読んでいることを伝えて経営層の本気度を示している。 ②作業所における労働環境の改善 ・「4週8閉所(4週のうち8日は作業所を閉所)」の実現に向けて、まずは「4週8休(作業所は開いているが一部メンバーは交代で休暇を取得する)」から導入し、実質週休2日制となるよう取り組んでいる。実施にあたり、作業所に対する本社からのフォローを強化し、写真整理等、従来作業所が全て実施していた作業を本社からのフォロー人員が担うようにした。 ・DXツールの導入による業務効率化にも取り組んでおり、電子黒板や協力会社とのチャットツール等を導入している。作業所(特に協力会社の従業員)側から導入の要望があるほか、ICT担当部署が社内セミナーで好事例を共有することで徐々に普及が進んでいる。 ・なお、作業所を働きがい向上の取組に巻き込むにあたり、「エンゲージメントのスコアを高めるために」という言い方をしないよう留意している。スコアを向上させることが目的化し、調査結果が恣意的なものとなることを避けるためである。代わりに、「スコアそのものに一喜一憂する必要はなく、職場改善のためのツールとして活用してほしい」と伝えている。 ③採用活動における工夫 ・作業所見学を実施のうえで入社した従業員は入社後のギャップが小さく、スムーズに組織や仕事になじみやすい。作業所側の負担に配慮しつつ、作業所見学を通年で実施している。 ・アルムナイ採用を実施しており、ヒアリング実施時点では2名が内定している。該当者からは「一度他の会社で働いたことで、風通しがよく自由な社風やシステマチックな品質管理など、改めて東急建設株式会社の良さに気づいた」という声があった。 ・勤務地域を限定する「エリア採用」は中途採用から導入し、予想よりもニーズがあることが明らかとなった。また、エリア採用で入社したうえで、育児が落ち着いた段階で全国勤務に切り替えるケースも存在する。導入当初は育児や介護など私生活との両立を促進することを想定していたが、地方で生まれ育った学生が大都市での案件に携わるために東京エリアを希望するなど、キャリア志向を理由としてエリア採用を希望するケースも存在する。 ④管理職向けの支援 ・同社では、組織のメンバーを主役として、リーダーはメンバーの成長や発展を支援する「サーバントリーダーシップ」の考え方を採用しており、管理職に対してもサーバントリーダーシップによるマネジメントができるような支援施策を行っている。 ・サーバントリーダーシップに着目した背景として、従来建設業ゆえに指示型リーダーシップが中心であったところ、今後は(a)会社として新しい価値を創造しつづけるために自律型人材を育成する必要が高まっていること、(b)建設業以外からの中途採用も増加し従業員の多様化が進むなかで一律的なマネジメントがそぐわなくなってきたこと、が挙げられる。 ・支援施策の一つである「サーバントリーダーシップ研修」は3日間にわたり実施する。参加は希望制を基本としており、連続してエンゲージメント調査のスコアが芳しくない組織に対しては人事部から参加を促す場合がある。 ・上司向け1on1コーチングでは、月1回×半年間の計6回、社外の専門コーチが管理職に対してコーチングを行い、マネジメント力の向上を支援する。 ⑤オンラインツールを活用した相互承認の促進 ・社内の風通し向上のため、「サンクスカード」および「サンクスボード」を導入した。時間や場所にとらわれずに感謝や称賛のメッセージを送り合うことが可能である。例えば、作業所に対して寄せ書きを行うことがある。 ⑥ビジョン対話 ・2030年に向けた長期ビジョンであるVISION2030の策定にあたり過去を振り返った際に、会社のビジョンを全社説明会で説明するのみでは従業員は腹落ちしないのではないかと考え、対話によるビジョン浸透を実施することとした。 ・各回進行役となる経営層1名と従業員5名で、オンラインにて実施している。従業員5名は部署・年齢・職種などの属性が多様となるよう組み合わせている。 ⑦その他の取組 ・2022年度に人事制度の大改定を行い、キャリアパスの考え方としてマネジメント系と技術専門系のそれぞれでキャリアアップできる仕組みを完全導入した。高い専門性を認定し、マネジメント職と同程度の処遇とすることを可能にした。 ・キャリア形成については、年1回「キャリア申告」を人事部に提出させている。記入内容は異動に直結しないものの検討にあたり考慮されるという立て付けにしている。 ・2030年度までに新事業である戦略事業の収益に占める割合を25%にする目標を掲げており、事業ポートフォリオ変革を進める一環で、新規事業アイデアコンテスト「MOON SHOT CONTEST」の実施を通してイノベーション文化の醸成に取り組んでいる。従業員からの手あげ式で応募し、第1段階を通過すると新事業担当部署と現在部署の兼務になり、第2段階を通過すると専任として異動し新事業開発に取り組む。新事業のアイディアのプレゼンテーションは全従業員が閲覧することが可能で、入賞者の紹介もなされる。 |
現状とこれまでの取組の効果 |
・エンゲージメント調査の回答傾向として、自社のビジョンを知っている人は約98%、他者に説明できる人は約30%で推移している。ビジョン対話等を通して会社方針の浸透が進んでいると考えられる。
・ビジョン対話では異なる部署や職種の従業員が交流するため、互いの仕事内容について理解が進むなど、会社全体における風通しの向上にもつながっている。 ・エンゲージメント調査により組織状態が可視化されることで管理職の組織マネジメントに対する意識が向上したほか、管理職向けの研修やコーチングによって上司としての役割理解が進んでいる。 ・エンゲージメント向上や人材育成の施策に携わる中で、会社が大切にしている価値観を明瞭に共有できていれば、若手従業員含めて働きがいを感じやすくなるのではないかと考えている。 |
(R6.9)