兵庫ベンダ工業株式会社
事例カテゴリ
- 所定外労働削減
- 年休取得促進
- 多様な正社員
- 朝型の働き方
- テレワーク
- 勤務間インターバル
- 選択的週休3日制
- ワークエンゲージメント
企業情報

企業名 |
兵庫ベンダ工業株式会社
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所在地 |
兵庫県
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社員数 |
52名(単体)(時点:2024年6月時点)
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業種 |
製造業
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取組事例
取組の目的 |
・製造ライン中心のいわゆる労働集約型製造業とみられる「ブルーカラー」の職場から、知識集約型製造業としての「マリンブルーカラー(ブルーとホワイトの中間)」へ進化することを目指して活動を行っている。
・取組に共通する目的は、「潜在的なリソースの掘り起こしと新しい血の確保」。新規採用や新規応募数増加といった「採用」よりも「離職率低下」を重視して取組を実施している。 ・主要な製品が大型構造物の部品のため、従業員側の目線として「自分の作ったものが見えないため直接的なやりがいにつながらない」という課題もあった。そのため、「やりがい」をどう従業員に感じてもらうかということで、「目に見える小さなものからやりがいを」ということに着目して取組を進めてきた。例えば、自社開発の大型ビジョンレンタルサービスが多くの人の目に触れるイベント会場で利用されるなど、従業員が周囲の人に「ヒョウゴベンダで働いている」ということを言えるような機会創出に取り組んできた。 ・仕事の面白さは人によって違うと考えている。そのようななかで「家族に自慢できる会社」であることを目指して取組を進めてきた。製品アピールの他に若者支援、サッカーチーム支援などを通して、社名の周知機会を増やして、モチベーションにつなげている。 ・「地方の中小企業」「給料が安い」といったイメージがあり、採用において競争力が低いという課題があった。 ・地域の工業高校の統廃合が進むなかで採用母集団が減少していくことへの危機感や、(ヒアリングご協力者)自身が跡取りであるにも関わらず「働きたい会社」とは思えないこと等が問題意識の背景にあった。 ・高年齢者雇用安定法の改正もあり、高齢者が働ける職場をつくる必要性に迫られていた。 |
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取組の概要 |
○働きがいに関連する人事施策の全体像
・10年前から、社内制度改革を実施。特に近年は人的資本経営に注力。ハイモチベーション/雇用・働き方/社会への還元の三本柱で取組を実施。 ・ハイモチベーションは、(a)経営の従業員への見える化(決算資料等の開示等)(b)給与等の処遇の改善(賞与改定、毎年ベースアップ宣言)を実施。また、2019年からは奨学金返済支援も開始した。 ・働き方に関する大きな施策はテレワークの導入。2013年からテレワークが可能な職場になった。テレワークとは別に出勤時間の選択も可能である。 ○主な取組内容 ①働きがいの把握 ・働きがいの把握は主に日々の不定期な会話を活用している。対話を重視しているが、それは「面談」ではなく、現場にふらっと経営者が立ち寄って、休憩時間に雑談をしながら…等の仕事の合間の会話や、イベントや懇親会での交流など、非公式の場でのコミュニケーションを重視し、積極的に実施するようにしている。 ・上記のような非公式なコミュニケーションを重ねるなかで、離職予兆があるなどさらに密な対話が必要そうな人がいる場合や、従業員側から求めがある場合は、面談の形をとる場合もある。離職は高卒採用者が多く(大卒以上はいない)、予兆としては出勤時刻にばらつきが出る等勤務態度から察している。理由として多いのは、大学進学した周囲の人と自身とのギャップを感じたことによるモチベーション低下と公務員志望の2つ。後者は本人のキャリア志向の大きな転換であるため引き留めないようにしているが、前者は密な対話を通して、引き留めを行うようにしている。 ・「面談でxxを行う」「目標設定にxxを必ず書く」等の固定ルールはなく、日々のコミュニケーションも交えてバランスよく働きがいの把握や従業員の変化の把握を行っている。 ・定期的なサーベイは実施していない。全社で52名と企業規模が小さいため、サーベイする理由がない。経営としては、回答側もわざわざ「調査に回答」という形をとると、負担が大きいと感じる人がいるのではないかと考えている。また、調査として情報を取得しても、社内で職種が違う人が働いているため、評価や解釈の難しさもある。 ②人事評価や報酬による働きかけ ・人事評価では、技術力よりも社会貢献と人間力の2つを重視している。目標設定は賞与の支給に向けて半年に1回程度行うが、固定の確認項目などはない。 ・製造部門の人事評価は、直属の上長による評価→他部署の上司による評価→経営層、の3段階で実施。結果については必ず「平均」をとるようにしており、特定の1名の評価が大きく影響しないようにしている。また、他部署の上司であっても自分の部下以外にも目配せしなければいけない、というのが重要なポイントである。 ・現在の方法で基本的には運用はうまくできている。「誰に対しても話が上手い人」が高評価になるという課題はゼロではないが、それはある種の「人間力がある」ということで、納得している。 ・夏と冬の賞与以外に決算賞与(8月)があり、この決算賞与は利益を均等分配にしており、評価は関係ない。経営の見える化もあり、どのくらい決算賞与が出せそうかを従業員側もわかるようになっておきており、生産性向上につながっている。 ③処遇(若手抜擢やベテラン層の活躍) ・ベテラン層については、マイスター制度を導入。役員になれる方は少ないが、従業員側で役員的な立ち位置(部長と執行役員の間位)の存在としてマイスターを位置づけ、会社にとって必要な方を適切に処遇していきたいと考えている。 ・若手抜擢については、具体的事例として29歳で部長昇進や31歳で部長に昇進した事例がある。この2名の昇進については、従業員側からの推薦もあった。会社としても、「若手と子育て中の従業員の活躍に期待している」ことは昔から伝えているため、登用について社内でのハレーションはなかった。現在は製造の工場長も若い。中間管理職になった方の年齢を問わず、誰でもサポートする雰囲気が全社にあると考えている。 ④テレワークの導入 ・テレワーク導入のきっかけは育児中の方と介護中の方の離職防止。また、東京など遠方に在住の専門家に支援をお願いしたい時等に、テレワークを選択肢に入れることで可能性が広がるため、導入した。 ・当初から利用要件の設定などは行わず誰でも利用が可能だったこともあり、2014年には周知が進んでいた。コロナ禍をきっかけに利用はより広がったが、感染症拡大のタイミングで大きく制度を変えた等の変更はなかった。 ・2024年現在は利用が定着しており、1年に1回程度しか対面では会わない従業員もいるが、そのような方でもイベントには来るような社内の雰囲気がある。イベントを経由して採用する方も多いので、そういった「密な雰囲気」に対して適合的な人を採用するようにしている。 ⑤採用における工夫 ・採用においては、例年は高卒採用が最も多い。中途と新卒は半々程度の採用。 ・一般職、専門職としての大学生・中途採用は、原則として一般応募は受け付けていない。基本的には従業員と知り合いであることを前提としてコネクションがある方からの採用が中心。また、一芸に秀でた方や、人物や性格に着目した採用としている。 ・大卒以上について上記方針を採用しているのは、入社前から社風がわかっている人の方が離職率が低いことを経験則で実感しているため。そのため、履歴書は重視しておらず、採用前のコミュニケーションでの人物評価を重視している。 ・求める人材像については、「自社にとって望ましくない人」を言語化している。新3Kとして、「空気読みすぎ/被せたがり/比べたがり」として規定。成長と拡大を目指す少数精鋭の企業としては、チャレンジ精神旺盛な人や失敗を恐れない人であることが重要であるため、そのような視点を持って整理した。 ・同時に欲しい人材像も整理している。端的には「調べることがとても好きな人」。文理問わず探索者・研究者的な志向の人を求めている。 ⑥その他の取組 ・福利厚生として、「育児教育手当」という名称で子供の習いごとの半額を会社が負担する仕組みを導入。若い従業員や若齢で結婚する従業員が多く、子育て時に十分な所得がないことがある。子供の体験機会創出の為に費用支援を行っている。 ・社内体制の変革としては、法務部の新設もあげられる。事業実施におけるコンプライアンス対策等もあるが、「法務部」がきちんと独立している会社ということが、新卒採用において重要なポイントとなっている。就職活動の企業決定時に重要な発言者である保護者にとっては、この点が信頼獲得に繋がる。 ・従業員の育成・能力開発との関係では、リカレント、リスキリング教育の支援も行っており、学費を全額会社が負担し、大学院への派遣を行っている(2024年6月時点では、在学は東京大学へ1名) ○取組にあたる体制構築 ・現在の取組の前段として、ほぼ同時期に起こった業績悪化と経営層交代が大きな変化のきっかけとなっている。現社長の入社が2011年。リーマンショックの影響もあり、急速に業績が悪化したなかでの入社だった。この時に企業存続の為に、事業継続と復活に向けた再挑戦を開始した。 ・事業戦略の転換としては、公共事業への依存からの脱却。業績悪化前は公共工事比率が業績の8割で、安定的な成長の為には民間事業比率を上げることが必要だと判断した。新規民間顧客獲得のためには、「社外の人とのつながりをつくることができる人材」や「民間企業に営業に出ていける人材」を育成する必要があり、結果として若手の抜擢につながった。10年以上の取組が成功し、現在は民間6割、公共事業4割の比率に転換。 ・上記の一連の取組によって、変革を受け入れやすい社内の状況ができ、現在まで続いている。当時会社に残った方は、現社長が昔から知っている人達でもあり、一緒に改革を進めやすかった。 ・20代部長の所属先は事業戦略部。そこに全社横断でメンバーを集めて、施策を検討している。社内での展開時は役員が旗振り役になることが多いが、実際は事業戦略部発のアイデアであることは多い。また、全社のteamsに意見が入ってくることが頻繁にあり、そこを起点に事業戦略部が内容を検討することもある。問い合わせが来た内容や施策を他本部に担当してもらう等の差配もこの部署が行っている。 ・人事系の部署としては、総務・人事系の部署と人材開発戦略部があるが、こちらはいわゆる労務管理等の定常業務対応を行っている。 ・リカレント・リスキリング等の施策(大学進学等)は事業戦略部発での教育事業部での所掌となっている。人材開発戦略部は製造現場の従業員育成に関する施策を検討している。 |
現状とこれまでの取組の効果 |
○取組に対する従業員の反応
・新しいものを導入した際に、従業員から「面倒くさい」という声はもちろんある。ただ、基本的には施策については受容する雰囲気が強い。 ・従業員と会社とで目指す方向性が一緒であることが重要な組織になっている。そのため、経営層と方向性が違う方とのコミュニケ―ションには相当の工夫が必要となる。毎年1名程度はそういったケースが発生するが、状況の改善に向け、若手従業員の場合はより年齢の近い先輩従業員が話しかけるなどの工夫をしている。 ○採用における変化 ・採用前のコミュニケーションを重視する方針もあって、「会社がおもしろそうだから」という理由で応募・入職する人が多い。特に近年新規で採用した方は、デザイナーやコンサルティングファーム出身等、多様なバックグラウンドを持つ人が揃っている。 ・近年の採用の変化として、高卒区分(主に製造現場担当)では当社を志望し応募する高校生が増えた。この背景として、就職にあたり重要な発言者である保護者が会社見学に同伴し、本人と共に会社理解を深めるようになったという点があげられる。また、女子学生からの応募の増加も特徴的である。更に近年各所から取材を受けたことにより、自社の取組の認知度が上がり、高校の先生から講演依頼を頂くようになり、高校生や高校と接点を持つ機会が増えた。 ・現在は姫路市を中心に、中高生や大学生を含む若い世代とのネットワーク形成を目指している。学生とのコミュニケーションが結果的に異分野とのネットワーク形成につながっている。 |
(R6.8)