株式会社松宮

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制
  • ワークエンゲージメント

企業情報

株式会社松宮
企業名
株式会社松宮
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所在地
愛媛県松山市
社員数
55名
業種
食品卸

取組事例

取組の目的
より多様な人材を確保し、在籍社員に長く勤めてもらうため、社内制度や雰囲気を整えることをはじめの目標とした。意欲を持って働くためには、公私の「私」の部分を充実させられることが近年は大事になっている。そのため脱長時間勤務、業務の効率化をはじめ、業界的にも遅れていた女性の管理職割合を高め、女性の働きやすい職場は皆が働きやすい職場ということで制度的にも社内の雰囲気的にも普段から休みを取りやすくなるように働きかけた。小さい子どもがいる家庭でも、介護が必要な家族がいても、自身の体調に不安があっても働きやすい会社を目指している。
取組の概要
<現在の取組>
○トップメッセージ
・弊社は食卓を通じて健康とよりよい循環型社会を目指します。「地産地消」を通じて地域に貢献できる成功体験を社員と共有します。社員一人ひとりが「楽しい食卓の演出家」として成長します。

○所定外労働時間の削減
●お客様を含めたフローの見直し
弊社の業務はお客様の注文から配達に至るまでのフローが長く、受注の締め切り時間のギリギリに注文があるとすべての部署の作業が後ろ倒しになり、全社的に所定外労働時間増加の温床となっていた。きめ細やかな対応をすることが弊社の売りであるが、それも見直す時期になってきた。そこでまずはお客様との注文のルールを再確認してもらうためお知らせ文書や電話等でお伝えし、イレギュラーな注文を減らした。時が経つとお客様の方の担当が変わられたり、ついなおざりになってルールが緩くなりがちなので、定期的に文書を出してお願いを繰り返したり、相手に理解いただけるようベテラン社員に代わって電話口でお伝えしたりして、日々注文の前倒しに注力している。
●社内フローの見直し
上記に加え、社内的にも絶対にその流れを変えたらいけないわけではないと考え、ある業務でその日一番最後にしていた作業を、午後の一番最初にすることにより、格段にロジスティック部の時間外労働が減少した。ロジスティック部の作業が前倒しになったことにより、営業事務作業も業務の効率化につながった。
●シフト制の導入(ロジスティック部冷凍係)
部署ごとで全員が同じ時間の勤務体制だったが、冷凍庫係だけは、朝の入出庫の関係と、夕方最後のピッキングの時間のために他の部署よりも長時間勤務になりがちだった。そこで、早朝において入出庫を重点的に担当する早番チームと夕方最後にピッキングを済ましてから帰る遅番チームの2時間帯を3チームシフト制で廻すことにした。現場の冷凍庫係から会社への提案により、実現した。加えて前述の社内フローの見直しにより夕方の遅番チームが更に早く帰れるようになった。
●衛生委員会の機能
衛生委員会の議題の中で、定期的にどこの部署の誰の所定外労働時間が多いかデータで明らかにして、部署間でどのような問題があるのかを話し合い持ち帰り、改善できるところは小さなことでも直していくようにした。これにより個人で突出して多かった人が所定外労働時間を意識するようになった。

○年次有給休暇の取得促進
●チーム制及びマニュアルの共有化(内勤事務)
これまでは事務作業はお客様の要望に対応するために属人化された手順が多く、年次有給休暇も消化しづらい環境だった。特に営業事務は休んだ人の仕事は誰が補助するか前もって決まっておらず、あいまいになっていたために緊急でない限りは自分の仕事が残ることになってしまっていた。これを解消すべくチーム制を導入し、お互いの業務を可視化した。併せて各々がバラバラで作っていたマニュアルを統一の書式で同じ共有ファイルに入れることとし、常に担当者が書き換えて新しい情報にしておき、他の人もいつでもそれを見られるようにした。
●休みやすい雰囲気
各部署のリーダーが働き詰めのままでは、次期リーダーを担っていく若い世代が自分もそのようにしないとけないのではないか、というマイナスのロールモデルになってしまいがちであった。自分の仕事が心配でなかなか休まなかったリーダーたちには、積極的に仕事をチームに任せて休むよう意識を変えてもらい、計画的に部署の年次有給休暇取得を管理してもらうように促した。
また、弊社は年間の変形労働制を導入しており、繁忙期の祝日は営業日としている。通常の営業日よりは電話・FAX等の注文が少なかったり、荷物の配達件数も少なかったりと業務量が少なめであることから、そのような日は、部署内で話し合って半分ずつ休みを取るようにして計画的に年次有給休暇の取得を進めている。
●時間単位の年次有給休暇の取り方の工夫
以前より弊社は時間単位での年次有給休暇の取得は実施している。小さい子どもを持つ家庭や持病を抱えて通院をする人には好評で、よく利用されていた。しかし、1時間単位に取得できる気軽さから、半日休、1日休みを取得できるような場面でも、3時間、6時間といった取り方をして、無理に出社する人もいた。そこで、今年度(2023年)からそのようなときには半日休や1日休を取得するように改めて総務部から声がけを行い、さらなる年次有給休暇の取得率アップに努めている。

○女性活躍促進
●行動計画から女性のリーダー(管理職)の登用
弊社は平成31年4月から令和4年3月までの間に女性の管理職を20%以上にするという数値目標を掲げ、行動計画を提出した。それによってこれまで0人だった女性管理職が3年後には3人になった。計画書提出から3年後の比率としては20%を超えていた(現在は男性管理職が増えたことにより20%を切っている。)。
●女性リーダーの育成
女性活躍の行動計画を提出後、ひめボス宣言をして、愛媛県ひめボスメンター制度に4年連続でメンティとして参加することとなった。3年目には、1年目にメンティとして参加した女性管理職が3年目の女性管理職の上司として参加した。長年女性社員の中でも年長者としての立場にいたことに違いはないが、メンター制度を受けてからはさらに会社の管理職としての俯瞰的な目線や、上司としての役割を考えて行動するように考え方が変わった。また女性のリーダーが複数人いることにより、それぞれのリーダー同士が話し合いで問題を解決したり相談しあったりすることができ、リーダーのメンタルにも余裕ができた。
●育児休業支援
妊娠から出産、復帰後の育児時代にも適用される弊社独自の社内規程を整備し、公的なサポートと併せて女性のワーク・ライフ・バランスのお手伝い、ひいては男性も一緒にワークとライフを充実させていく雰囲気づくりに取り組んでいる。
新しい規程の特徴としては、妊娠が判明し、「母性健康管理指導事項連絡カード」を提出すると、つわりのひどいときや、気分がすぐれず仕事に出られない、あるいは横になりたいなど、ちょっとしたことにも申請が可能な『マタニティ休暇』(5日間の特別有給休暇)を取得することができる。入社年数の浅い女性が妊娠をした場合に、体調不良があったとしても年次有給休暇が少ない状況ではなかなか休みを取りづらい状況があるということもあり、この『マタニティ休暇』が有効に活用されている。また、勤務時間内の通院時は有給対象とし、復帰後は年間2日の育児目的有給休暇を取得できる(看護に限らない)ようにした。これらを含めた社内的なガイドブックとして『妊娠から産休育休復職ガイドブック』を作成し、産休及び育休取得予定者への説明を行った。
また、育児休業中の社員に、復帰した際の溝をなるべく埋めるべく定期的(月1回)に「Matsumiyaニュース」として社内の情報文書を作成し送っている。

○人材確保と育成について
●自社HPにて紹介
弊社は部署によって仕事内容が大きく異なっており、さらに卸売業の仕事の内容はあまり知られていない。一般の人でも分かりやすいように部署ごとに仕事内容、仕事の流れ、実際に働いている先輩社員の声を紹介している。

●人材育成について
年に1~2回は社内研修を行っており、対象は年度によって異なる。中堅社員のときもあれば、若年層のときもあり、その年によってその目的とターゲットを絞り、公的な法人会から外部の講師を紹介していただいて行っている。また、サブリーダー以上(係長職以上)であれば社外や、さらに県外の研修やセミナーにも積極的に参加をさせて全国の同業他社や全国規模の組織に入会する同業会員、及び関連メーカーさんなどと顔を会わせ、情報交換などに参加する機会を設けている。これにより社員たちの視野が広がったほか、よりよい情報や社内運用などのあらたな知見を持ち帰り、その後の業務にエッセンスを取り入れるなどしている。

<今後の課題・取組>
●実情への意識改革
今後も各部署のリーダー、サブリーダー(課長クラス、係長クラス)は、それぞれの自分の部署やチームを管理する立場として課員の所定外労働時間削減や年次有給休暇を取りやすい環境づくり等の意識改革と全社的な雰囲気づくりを進めていく。
さらに、これらの目的を進めていくためにも意識改革だけでなく、実際の業務改善も必要であり、新しい考え方の下、新しい制度やシステムを取り入れる事に消極的にならず果敢に取り組んでいく。
まずは最初に掲げたトップメッセージから、『よりよい循環型社会を目指し』『地域に貢献できる成功体験を社員と共有』『社員一人ひとりが「楽しい食卓の演出家」』とあるように、自分の会社を誇りに思えて働ける場所、仕事を楽しみながら成果を出すためにまずは会社の中からできることを取り組んでいきたい。
現状とこれまでの取組の効果
●所定外労働時間の状況(年間通じて在籍していた人の平均)
2019年…月平均27.69H(営業26H、常温倉庫19H、冷凍倉庫54H、営業事務16H、仕入27H、総務18H)
2022年…月平均17.28H(営業22H、常温倉庫6H、冷凍倉庫24H、営業事務11H、仕入9H、総務5H) 3年前と比べて2割減から7割減 平均で4割減
●年次有給休暇の取得率
2018年…20.3%
2022年…56.34%
●育児休業取得者
2023年…男性1名(1ヶ月) 女性2名(取得中)
(R5.12)

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