株式会社福井

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制
  • ワークエンゲージメント

企業情報

株式会社福井
企業名
株式会社福井
PDF
所在地
大阪府
社員数
123名(正社員64名)(2023年10月時点)
業種
卸売業

取組事例

取組の目的
・1912年創業。近年は13期連続増収で売り上げ・企業規模共に拡大傾向にあった。売上増加と比例するように社員が増えてきたが、採用者と同じくらい離職者が発生しており、社員の定着に課題があった。当時の社内コミュニケーションは一方通行で、社員から突然「来月に辞めたい」と言われることも多かった。
・2012年に創業100周年を迎え、当時専務だった現社長が大学院で学んでいたことが、自社を見直すきっかけの1つとなった。
・ワークエンゲージメントに着目した理由は、現社長の大学院時代の恩師が偶然、ワークエンゲージメントサーベイを提供している企業の担当者と知り合いだったためである。導入以前は、社員に業績ばかりを追求していたが、社員に対して向き合う必要性を感じ、ワークエンゲージメントサーベイを導入した。
・当時の自社の状況として、社外関係者とは良好な関係を築けていたが、社員と同様の関係は築けておらず、社員に対する会社の対応がフェアなものではなかったかもしれないという気づきがあった。こうしたことから、社員に対してフェアな会社を目指そうと取組を開始した。
取組の概要
○主な取組内容
①サーベイを活用した社員の意見の吸い上げとそれに基づく社内改革、②1 on 1ミーティングの実施、の大きく2つの取組を行っている。

①サーベイを活用した社員の意見の吸い上げとそれに基づく社内改革について
・利用しているサーベイは、計測頻度を選択できる仕様になっており、自社では月次で収集している。設問は毎月ほぼ同じであり、全体で15~20問程度をそれぞれ5段階で回答する。また、フリーコメントも記入できるようになっている。
・導入1年程度は社長のみが結果を閲覧し、チームごとのスコアを見ていた。ただ、閲覧していくうちに管理職全体で閲覧・共有したほうがよいと考えるようになり、現在は管理職に展開している。なお、管理職は自分のチームの結果のみ閲覧できる。
・サーベイ結果の数値そのものも興味深いが、フリーコメントも参考になった。匿名ということもあり厳しい意見もある。特に導入当初は職場や社長・経営に対するネガティブコメントが多かった。社員の立場に立つと、サーベイ導入以前は会社に対してもの申す場所もなければ機会もなく、離職で初めて不満が発覚するような状況だったのではないかと考えている。
・サーベイ導入当初、社員のエンゲージメントを下げる主な要因は、「暑い・寒い・忙しい」であった。この点、「暑い・寒い」については、エアコン導入などの設備投資で対応した。「忙しい」については、休暇をとりやすくする等で対応してきた。忙しさは、増収に対して人が足りていないことが主な要因で、この点、中小企業は人や物流機能にバッファを持ちづらく、顧客を追いかけるようにして人や機能を増やすことが多いが、増収が続く中で、最近になってようやく先回りして投資できるようになった。休暇については、休暇日数を少しずつ増やす、有給休暇をとりやすくする、1日単位だった休暇を半日単位とする等、少しずつ変更してきた。出張についても、アポイントの時間帯が朝早い場合は前泊を許容するよう制度を変更した。働き方に関わる施策改善は現在も取り組んでいる。

②1 on 1ミーティングの実施
・1on1ミーティングは、当初は社長が自ら全社員と面談を実施していたが、社員数が増えた現在は部署単位で階層ごとに頻度を定めた面談と社長が全員に対して行う面談を組み合わせている。
実施の頻度等は以下の通り。
(1)月1回、社長は管理職と実施。部長は課長と実施。また課長と担当者で実施。
(2) 3か月に1回、社長は担当を含む総合職全員と実施。
(3)半年に1回、社長は事務職を含む全正社員と実施。
・1on1は漫然と継続していると社員に飽きられてしまうため、質の担保にも取り組んでいる。具体的には、「デスクで出来ない話をしましょう」「あなた(部下)のための時間です」「腹を割って話しましょう」を三大原則としている。こうした取組を通じて、一方通行から双方向のコミュニケーションに徐々に変わってきていると感じている。
・特段マンネリ化の工夫をしているわけではないが、とにかく社員にしゃべってもらうように心がけている。また、社長独自の工夫として、最初と最後の質問を決めている。最初は「ストレスを含め、体調はどうか」。最後は、「今回の1on1で最も印象的だったやり取りは何か」。
・導入当初から、意外と腹を割って話してくれるという印象を受けた。社員から見ると、「また社長が新しいことを始めたな」くらいの感覚だったのではないかと思っている。
・1on1ミーティングが、聞き手であるはずの上長からの業務連絡になったり、いわゆる「お説教タイム」になったりしてしまうと、エンゲージメントが低下するため、その点は注意している。
・開始当初は管理職が「忙しい」と言ってやりたがらないことが障壁になっていた。取組が定着するまでは、面と向かって話をすること自体に苦手意識を持っていたようだ。耳の痛い話を聞くことを避けようとしていた側面もあったかもしれない。最終的に規定を作り、現在は抵抗する人もいなくなった。

○その他の取組
・2014年にサイボウズを導入し、「ポジティブ推奨・ネガティブ禁止」を基本ルールに全員が日報を記入し、全員が読めるようにしている。特にエンゲージメント関連の取組を開始してからは、チーム内外で感謝の言葉が飛び交うようになってきたと感じる。
・不要な会議も廃止した。社員30名程度の頃は、営業と物流から全員が参加する会議を半日がかりで開催していたが、コロナを機に廃止し、その代わりサイボウズへの書き込みを従来以上に責任をもって行うようにした。その結果、共有される情報の量も質も上がり、加えて、商談が終わった時点で定例会議を待たずに全社へシェアされるため、情報共有のスピードも向上した。
・他方で、全社で一堂に集まるイベントは再開させた。コロナをきっかけに定例会議を廃止して全体イベントも中止していたが、2022年にコロナが少し落ち着いたこともあり、全体イベントを再開した。イベントでは、3時間の座学の後、全員で食事をしながらMVP表彰を行う。受賞者は管理職の投票+社長評価で決定する。表彰の基準は「今年頑張った人」で、細かくは定めず総合評価としている。挑戦した人を表彰する等、「こういった社員が表彰されるのだ」という気づきになってくれたら良いと考えている。
現状とこれまでの取組の効果
・社内の雰囲気の変化が大きい。双方向のコミュニケーションが定着する中で、社員同士でも相互に教え合う雰囲気が醸成されてきた。また、社長と管理職との一体感の向上により、経営を一丸となって進めていく雰囲気もより強くなった。以前は、新たな挑戦をした人が失敗すると怒られる社風があった。例えば、新規顧客開拓をしたが既存の得意先よりも利益率が低いために評価されない、といったケースがあった。現在は、失敗を奨励する文化も若干生まれてきている。
・1 on 1ミーティング等で管理職層が重要な役割を果たしていく中で、管理職層の当事者意識が醸成された。以前は、「社長と社員」という立場だったが、「管理職」という新しい階層が生まれ、エンゲージメント向上に取り組んだことで、社長と管理職層とで一体感が醸成されてきたのはよい傾向だと感じる。管理職層に当事者意識が醸成されたことによって、社長から管理職層への権限委譲が進み、より自律的・主体的な組織になってきたと考えている。
・エンゲージメント向上の取組は、社員の定着と新規採用に好影響を与えている。突然の退職が減ったことに加え、採用において「エンゲージメントの高さ」をアピールすることができている。
(R5.6)

事例を評価する