株式会社丸井グループ
事例カテゴリ
- 所定外労働削減
- 年休取得促進
- 多様な正社員
- 朝型の働き方
- テレワーク
- 勤務間インターバル
- 選択的週休3日制
- ワークエンゲージメント
企業情報
企業名 |
株式会社丸井グループ
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所在地 |
東京都
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社員数 |
4,435名(2023年3月時点)
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業種 |
小売業
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取組事例
取組の目的 |
・2021年から5か年の中期経営計画においてWell-beingとサステナビリティを事業全体の目的とし、KPIを設定した上で、各事業の具体的な取組に落とし込んでいる。社員のエンゲージメントを高めることだけでなく、すべてのステークホルダー(お客さま、取引先さま、社員、将来世代、地域・社会、株主・投資家の6ステークホルダー)の利益と幸せの重なり合いを拡大することをWell-being経営と定義しているのが一番のポイントである。
・丸井グループでは、「将来世代の未来を共に創る」「共創のエコシステムをつくる」「一人ひとりの『しあわせ』を共に創る」を「インパクト」と呼び、創造性の高い企業文化を基盤として、インパクトと利益を両立させることをWell-being経営の目的としている。 |
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取組の概要 |
○主な取組内容
・2005年以降、①企業理念の制定、②対話文化の促進、③働き方改革(残業時間は年間40時間程度)、④多様性の推進、⑤手挙げ文化の醸成(昇進昇格やプログラムへの参加等)、⑥職種変更異動、⑦人事評価制度の刷新、⑧健康経営から発展してきたWell-beingの取組、といった形で様々な企業文化変革を行ってきた。ワークエンゲージメントはその中の一部という認識である。 ○Well-being経営の取組における本社の関わり方 ・グループ一体経営で人事異動も頻繁である為、本社と事業所という分断構造はそもそも発生しにくい。Well-being経営の取組は事業所主体で取り組んでおり、本社での中央集権的な側面はない。全社横断のWell-being推進プロジェクトでは、1期50名のメンバーを手挙げ制で集め、毎月1~2回、就業時間中にプロジェクトを実施している。手挙げ文化によって、ワークショップ・イベントがボトムアップで行われている。その他の全社的な取組として、中期経営推進会議のような経営の根幹にかかわる会議への参加を手挙げ制度に変更した。 ○レジリエンスプログラムについて ・自身と組織の幸せを高めることのできる、活力あるトップ層を養成するプログラムとしてレジリエンスプログラムを実施している。1期1年間で手挙げ制で行われており、まず初めに、1泊2日のキックオフ合宿を行い、社員の健康が目的ではなくWell-being経営自体が目的であるということをしっかり認識させる。自分自身だけでなく、職場やその人に関わる人すべて(家族や友人)も幸せにすることを目的としており、家族から手紙をもらうこともある。 ○取組の普及・促進策 ・企業におけるワークエンゲージメント等の取組が奏功するためには、「なぜ自社がワークエンゲージメント等に取り組むのか」ということが、企業価値創造ストーリーの文脈の中に違和感なく組み込まれている必要がある。社員を健康にすることを目的に事業を行っている企業は無く、「社員の健康を改善する」という目的意識だけでは成功しづらい。丸井グループは、創造性の高い仕事を通じて「フローを体験できる」企業文化をつくることで、新たなビジネスやサービスを生み出そうとしており、事業の実例も複数生まれている。 ・ワークエンゲージメントという考え方に触れたことのない中小企業であっても、その企業の文脈に沿ったストーリーの中に、ワークエンゲージメントを取り込めるかどうかが肝である。「社員の健康を高めるため」だけでは事業活動と離れた位置付けになり浸透しにくく、「外部発信のため」という目的だけでも表面的で成功しないように思う。 ○手挙げ文化が実際の行動に移されている背景 ・残業時間が年間40時間程度であるにも関わらず、手挙げで参加するプロジェクトやイニシアティブが盛んに行われている背景には、手挙げが人事評価につながっていることも大きくかかわっている。上司・同僚・部下による「バリュー評価」において、グループの一員として経営理念を実現する言動が求められ、自発的な言動が高く評価される仕組みになっている。これにより、自分の部署だけのことを考えてしまうサイロ化は良くないことであるという認識が、評価面でも文化面でも浸透している。 ・通常業務と両立しながら手挙げによるさまざまな取り組みへの自発的な参加を実現するには、トップのコミットメントが重要と考えている。丸井グループの場合、Well-beingがトップの考え方そのものであるため、トップダウンで企業のビジョンが浸透しやすい。 ○Well-being推進の体制 ・経営目的がWell-beingであり、全事業を通して向上を目指している。 ・狭義の健康経営については、健保組合とWell-being推進部が役割分担をおこなうコラボヘルスの形で運営している。早期対応、病気予防といったマイナスから0にする部分を基盤のヘルスケアと位置づけ、健保組合が担っている。一方で、ワークエンゲージメントを高める取組はWell-being推進部が担っている。 ・この点、Well-being推進部所管の専務が、健保組合の常務理事と人事部の担当役員を兼務しているため、健保組合を含む他部門とWell-being推進部が連携する際にも、一貫した考えで施策を進められている。実務レベルでは、Well-being推進部、健保組合、人事部が月次でコラボミーティングを行っており、実務上の対応について連携している。 ○活用している指標 ・社員のWell-beingに関する指標について、大別して「規定演技」と呼んでいる比較可能性のある指標と、「自由演技」と呼んでいる丸井グループが独自に作成した指標の2種類を採用している。 ・「規定演技(比較可能性)」としては、例えば、厚生労働省も推奨している新職業性ストレス調査票を活用している。負がないことを確認する57項目に幸せの項目をプラスしたものである。また、指標をホームページで公開し、丸井グループとして数値を高めることを宣言している。 ・「自由演技(独自性)」としては、特に丸井グループとして力を入れたい項目について、10年以上測定している。特に重要視している項目は下記3点。 ①自分の強みを活かしてチャレンジしている人の割合 ②困難に直面した時に、前向きに取り組むことができる人の割合 ③自分が職場で尊重されていると感じる人の割合 ・2017年に評価制度を刷新したことで、自由演技の指標の値が大きく向上した。従来の個人成果評価(とにかく成果を上げれば評価される)から、個人の働く姿勢評価(行動が経営理念を達成するためのものになっているかどうか)およびチーム評価に変更した。評価制度の刷新にあたっては、いきなり新制度を導入するのではなく、2年間かけて、社員のべ3,000人程度が制度づくりの対話に参加した。 ○指標測定を行い、業務改善に生かすPDCAの流れ ・自社の数値は小売業と金融業の平均と比較すると高い状態にあるものの、部門ごとにストレスチェック結果の見える化(横軸ストレス・縦軸ワークエンゲージメント)を行い、さらに向上するよう促進している。ワークエンゲージメント・ストレス度が全国平均を下回る部門については、Well-being推進部からも積極的に介入している。 ・アクションプランを各部門が作成して実施し、3-4か月でリトライ分析(再測定)を行っている。また、アクションプランの作成時に個別フィードバック資料と良好事例を合わせて配布することで、より効果が出やすいアクションプランを作成できるように支援している。短期間で成果を出すこと(リトライ分析での結果向上)に向けた工夫のひとつとして、2020年から偏差値50以下の部門に絞って実施することで費用対効果を高めている。 ・分析と見える化までを社外に委託し、社内の対話・アクションプランの考案に社内組織のリソース(Well-being推進部が主体)を割くようにしている。ただし、データの見方等は、適宜社外にオンラインでアドバイスを受けている。 ・社員の率直な回答を得るため、指標導入に当たっては、自分の部門の結果だけを共有し、競争ではなくあくまで自分の部署をよくするための取組であるという認識づけを行っている。こうしたことから、順位づけ等は行っておらず、偏差値50以下のリトライ分析についても、各部門に改善の意識をもってもらうために該当部門に共有している。 ・昇進・昇格も手挙げ制度で実施しており、ブラックボックスではないため、社内制度に対する社員からの信用が高いことも率直な回答が得られやすい要因ではないかと考えている。 |
現状とこれまでの取組の効果 |
・2017年に評価制度を刷新し、従来の個人成果評価(成果を上げれば評価される)から、個人の働く姿勢評価(言動が経営理念を達成するためのものになっているかどうか)およびチームのパフォーマンス評価の二軸評価に刷新したことで、Well-being指標の値が大きく向上した。
・手挙げ文化の推進が上司・同僚からの評価に直結している等の理由から、自分の部署だけのことを考えてしまうサイロ化は良くないことであるという認識が評価面でも文化面でも浸透し、手挙げでのプロジェクトなどへの参加が盛んにおこなわれている。 |
(R5.6)