旭化成株式会社
事例カテゴリ
- 所定外労働削減
- 年休取得促進
- 多様な正社員
- 朝型の働き方
- テレワーク
- 勤務間インターバル
- 選択的週休3日制
- ワークエンゲージメント
企業情報
企業名 |
旭化成株式会社
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所在地 |
東京都
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社員数 |
48,897名(連結)(2023年3月31日時点)
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業種 |
化学
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取組事例
取組の目的 |
・人と組織の活力向上と成長を実現するにあたって、現状のモニタリングを行い、各職場での組織を良くする取組につながるフィードバックを行うことは不可欠であり、従業員意識調査はこの目的を達成するための施策として位置づけられている。
・10年以上前から意識調査を実施していたものの、サーベイ結果を経営に報告する以上の活用ができていなかった。設問数が多く狙いが不明瞭、集計結果の報告・共有以上の活用ができていない、3年に一度の調査であり情報の鮮度に限りがある、委託先による分析結果が不明瞭かつ時間がかかる等、人と組織の活力と成長に資する機能が弱かった。 ・そこで、従業員意識調査の見直しを行い、調査を活用した“人と組織の活力向上と成長”の実現を目指し、2020年度から「活力と成長アセスメント」(通称KSA、以降KSAと記載)の活用に注力している。 ・中期経営計画では終身成長と共創力を打ち出しており、人財戦略のKPIの一つとしてKSAの“成長行動”指標を用いている。ただし、あくまで目標数値ではなく、モニタリング指標として活用している。 |
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取組の概要 |
○主な取組内容
・日本国内で働く約27,000名を対象にしたKSAを実施している。2023年度は7月に調査を実施し、対象者の約90%が回答した。 ・KSAの特徴は、調査後に各職場に対して結果のフィードバックを行い、各職場がフィードバックに基づき職場対話等を実施した上で、「活力と成長」の向上につながる取組を行う点にある。一般的に組織開発は、診断型と対話型の2つのアプローチがあるが、診断型組織開発は、客観的な数字で状態を把握することができる一方、組織メンバーの受け身的な姿勢を生み出してしまう恐れがある。これに対して対話型は、対話を通して自分たちの組織のありたい姿を明確にし、主体的な取組を生み出していくアプローチであり、人々の想いから取組が生まれてくるため、当事者のモチベーションを高く保つことができる。“職場で組織サーベイをきっかけとした対話”を推奨する同社の取組は、両者の混合型と言える。 ・KSAで取り入れている指標は、①上司部下関係、職場環境、②個人の活力、③成長につながる行動、の3つである。KSA指標は大阪大学の開本浩矢教授の監修を受け作成した。①~③の指標にはさらに下位指標があり、組織の資源、個人の資源(心理的資本)、ワークエンゲージメントやアウトプットとしての成長行動には経験学習行動やジョブクラフティングなどの要素を含めている。 ・KSAを活用した取組(KSA活動)は、①7月末までに調査実施、②事業部長以上へのフィードバック、③部課長へフィードバック、④メンバーへフィードバック・対話、⑤改善アクションという流れで進められる。 ○取組の普及・促進策 ・KSA活動では、特定の職場に支援者(人事部門)が支援に入る「点」の活動と、職場推進者(主にマネージャー)が主体的に活動する「面」の活動を同時に展開していることも特徴である。「面」の活動からもわかる通り、KSA活動においては特にマネジメント層の役割が大きく、「KSAに関連する活動はマネジメント活動の一環である」と訴え続けている。 ・KSAを現場で活用するための基盤づくりとして、①(人事部門の)職場支援者の育成(「点」の支援)、②マネージャー支援(「面」の支援)、③マネジメント力向上施策(人財開発)との連動、という3つの取り組みを行っている。 ・①人事担当者への組織開発、職場支援のための継続的な教育、情報提供はもちろんのこと、②「面」の支援(部課長向け支援策)として、ありたい姿から考える“職場づくり”の基礎を学ぶ講座、対話スキルを学ぶ講座、各職場での取組事例を共有する講座等を実施している。KSA活動を「点」から「面」に広げていくためには、自走できるマネージャー層には自走してもらう必要があるため、各講座は、課題認識や主体性がある人を対象とし、毎年、手挙げ式で開催している。③また、マネジメント教育との連携にも注力している。マネジメント層への研修ではKSAを活用した取組事例も紹介しており、職場での1on1やキャリア面談への展開、チームビルディングへのクリフトンストレングス®(各自の強みを可視化するアセスメント)の活用、業務効率化、技術継承、後進育成等職場での取組は多様になっている。 ○現状の課題や解決策 ・KSAを踏まえた職場での取組状況を見ると、職場対話や取り組みの実施は増えている一方で、上司やメンバーにやらされ感がある組織や心理的安全性が低い組織での取り組みには課題が見えつつある。課題に対する取組事例として、メンバーの当事者意識を高めるために係長やリーダークラスの巻き込みを意識している職場もある。ただし、エンゲージメントスコアに取組結果が反映されるまでには、時間がかかることが予想され、粘り強く活動を継続していく必要があると考えている。 ○社内外の連携 取組を進める上でアカデミアの他、組織開発コンサルタントや産業カウンセラーの力も借りている。また、社内では産業保健スタッフ、労働組合と連携している。KSAサーベイ実施者のみならず、現場と部門人事(HRBP)、社内外連携等幅広い連携により、調査結果を活動に落とし込み職場の改善に結びつけていく必要がある。 |
現状とこれまでの取組の効果 |
・これまでに4回KSAサーベイを実施した。上記の取り組みにより、年々、職場対話実施率、対話後の取り組み実施率は向上している。また、調査結果を回帰分析や決定木分析(解析手法のひとつ)等により統計的に検証したところ、職場対話、職場での取り組み実施の有無は活力(前向きさ、ワークエンゲージメント)に影響があること、加えて、職場対話、取り組みに対するメンバーのポジティブな意識(その活動で組織が良くなりそうという実感)が活力に影響が大きいことがわかった。
・エンゲージメント向上へのアプローチは多様であり、KSA活動以外にもキャリア自律支援、自律的学習支援、DE&I推進等総合的に施策展開を行っている。 |
(R5.8)