新潟県厚生連 佐渡総合病院

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
  • 年休取得促進
  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク
  • 勤務間インターバル
  • 選択的週休3日制

企業情報

新潟県厚生連 佐渡総合病院
企業名
新潟県厚生連 佐渡総合病院
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所在地
新潟県
社員数
330名(看護職員のみ)
業種
医療・福祉

取組事例

取組の目的
佐渡は少子高齢化の進む離島です。島内人口は現在約5万人。医療・介護・福祉に関わるリソースも限られた中で、唯一の急性期医療を担う総合病院として、島内医療に貢献しています。島内における手術、リハビリ、放射線治療、分娩、重症新型コロナウイルス感染症入院は当院でしか対応できないため、島内に於ける救急搬送率は約9割を占める状況です。その背景には、島には回復期・慢性期を主に対応している病院が当院を含め2施設しかないため、全ての機能が当院に集中し、業務内容も多岐にわたり、多様な対応が求められています。
島の医療を守るためには①職員が健康を維持しながら、就労を継続できること、②職場の労働環境を改善しワーク・ライフ・バランスを実現することで離職防止と人材確保に繋げることが重要です。このことを目的に、勤務間インターバル11時間以上を確保する取組を継続的に行っています。
取組の概要
<勤務間インターバル11時間以上>
シフトを組む際、日本看護協会の「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)の勤務編成の「基準1:勤務と勤務の間隔は11時間以上あける」を遵守することで、インターバル確保に取り組んでいます。インターバルを確保するためには原則1ヵ月中の公休を使用するようにしています。休日は4週8休で、看護職員等の変則勤務を行っている職員は、月2回の2連休(あるいは月1回4連休)を付与するようにしています。
勤務間インターバルを確保するためには、まずは定時に帰宅できるようにすることが重要と考え、勤務体制の見直しと業務効率化に取り組んでいます。

<勤務間インターバル時間の確保に向けた工夫・サポート>
■勤務体制
当院看護部は3交代制勤務(日勤8:30-17:00、準夜勤16:30-翌1:00、深夜勤0:30-9:00)における勤務間インターバル11時間以上に取り組んできましたが、3交代制勤務と比較し2交代制勤務の方が勤務間インターバル11時間以上の確保が容易になると考え、一部病棟において2交代制勤務(12時間変則)の検討も実施しています。
2交代制勤務の試行にあたっては、ガイドラインの「基準2:勤務の拘束時間は13時間以内とする」を遵守し、勤務時間を設定していきたいと考えスタッフと検討を重ねているところです。
11時間の勤務間インタ-バルを実施していくためには、時間外労働を削減し休息時間の確保を行うこと、その為には業務整理が最重要課題であると考えています。3交代制勤務の中、当院では予定外入院が7割近くあることに加え、夜間帯での入院や緊急手術も対応しなければなりません。そのため、当院では継続的に、業務内容の見直しと業務負荷の削減に取り組んでいます。

■業務効率化
看護師が実施すべき業務を洗い出し、以下の2点に取り組みました。
①看護業務の標準化への取組
申し送り業務と看護記録の削減、特に看護記録では記録定型文とテンプレートの作成を実施しています。テンプレ-トは、急変時記録、カンファレンス記録、転出・転入時記録等、様々な様式を作成し活用しています。退院指導パンフレットの標準化も進めているところです。
記録定型文と各種テンプレートの作成は、記録時間の削減ができるだけではありません。テンプレ-トにすることで必要な観察視点やケアのポイントが、スタッフのスキルに左右されることなく一定の水準で記載が可能となります。更に、経験の少ない若い看護師にとっては学習の視点ともなります。退院パンフレットは、全病棟で活用可能な標準的内容とし必要時は個別に合わせて対応できるようにしています。
また、当院では、緊急入院も多いため入院時の看護業務についても整理しています。入退院支援室を設置し嘱託職員や臨時職員の看護師を配置し、入院に伴う情報収集・スクリ-ニング、説明は入退院支援室の看護スタッフが担当し、入院病棟では看護計画の立案から関わるよう、業務を分担して対応できるよう整理しました。以前は入院を扱った担当看護師が情報収集から看護計画の立案、入院時の様々な記録を実施していたため膨大な時間がかかり、それが時間外労働に繋がっていました。特に夜間の緊急入院においては、数名の看護師でその業務を行っていたので夜勤看護師にかかる負担が大きくなっていました。そこで、夜間の緊急入院においては、病棟看護師は、病状の安定と苦痛の軽減を主として関わり、連絡先やケアに必要な最低限の情報確認と記録を実施し、翌日、入退院支援室の看護師が改めて情報収集・整理を行うことで、夜間入院に伴う負担軽減と時間外労働の削減につなげられるようにしました。入退院支援室の看護スタッフは定年退職後の方(プラチナナ-ス)やキャリアの長いスタッフを配置しています。対象者との関係づくりや情報収集の技術、生活上の課題などの気づきや配慮に富んでおり、良質なケア提供と共に若い病棟スタッフ達を支援してくれています。また、それと同時に、看護師として長く働ける職場提供にもなっていると考えています。

②ICTの活用
電子カルテは定期的に更新され、その都度、活用しやすくなっています。電子カルテには、マニュアルや院内情報はもちろん文献も搭載されており、患者のアセスメントや看護ケア立案の参考になっているだけでなく、現場を離れずどこでも学習できる環境を整えました。
その他、現在は、入院説明動画、検査説明動画(転倒予防やせん妄に関するコンテンツも含む)を用いての患者対応ができるよう計画を進めています。動画説明を活用することで、スマートフォン等で患者と家族が自宅や離れている所からでも視聴が可能となります。来院前に説明できることで、患者、看護師双方の負担軽減となっていると思われます。また、外来ではAI問診を導入することで、診療や看護業務の負担軽減につなげています。
業務効率化にあたってのITの活用は、導入することが目的ではありません。導入を機会に、その使用方法を検討する際に改めて業務を見直し、改善することで業務効率化につながっていると感じています。

<今後の課題・取組>
当院は新潟県厚生連のグル-プ病院ですが、11時間の勤務間インタ-バルは厚生連全ての病院で実施されています。
3交代制勤務における深夜勤務では、通常では寝ている時間の途中で起きて出勤となるため、充分に休息をとって業務に入ってもらうことは職員一人ひとりの健康管理という視点だけでなく、高いパフォ-マンスを発揮してもらえる事に繋がります。当院でも、11時間の勤務間インタ-バルは既に定着していますが、引き続き継続できるようにしていきたいと考えています。11時間の勤務間インタ-バルの確保はできていますが、時間外勤務はゼロではありません。そのため、時間外勤務の削減は引き続きの課題です。
今後は、より一層、職員の休息確保を重要視し、勤務間インターバル11時間以上の継続をはじめとして、多様な働き方に適応できる勤務体制、時間外勤務の削減について継続して検討するとともに、“生活も仕事も頑張る!!”という価値観を大切にした労働環境の改善を職員と共に実現していきたいと考えています。
現状とこれまでの取組の効果
11時間の勤務間インターバル確保については、継続的に業務改善にも取り組んできた結果、定着することができました。職員からは「深夜勤の前に自分の時間が確保できる」「疲労感が残らないので楽になった」といった声も聞かれており、好評です。また、併せて業務の見直しと効率化を進めてきたことで、職員も積極的に業務の見直しや改善に取り組んでくれるようになり、業務負担の軽減にもつながりました。
今後も引き続き、勤務間インターバルの確保・定着に向け、勤務体制や業務の見直し、業務効率化に向けた取組を推進していきたいと考えています。
(R5.12)

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