サッポロビール株式会社

事例カテゴリ

  • 所定外労働削減
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  • 多様な正社員
  • 朝型の働き方
  • テレワーク

企業情報

サッポロビール株式会社
企業名
サッポロビール株式会社
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所在地
東京都
社員数
2,336名(無期契約含む直接雇用の社員数)
業種
製造業
労働時間・休暇制度
■労働時間関連
・労働時間制度:9時~17時半の7時間半勤務。本社間接部門・営業部門ではスーパーフレックス制度を導入(コアタイムなし、フレキシブルタイムは5時~22時、短時間勤務制度の適用対象者も制度の対象)。工場部門では変形労働時間制を導入。
■休暇関連
・年間所定休日数:121日
・時間単位での年次有給休暇の取得が可能。
・ライフステージ休暇:勤続10年目以降、5年ごとにキャリアの振り返りを目的とした有給の休暇を年5日付与。
・失効年次有給休暇の積立:年7日ずつ、最大60日まで積立可能。私傷病のほか自己啓発、家族の介護・看護等の目的で利用が可能。

新しい働き方として新規に開始した取組

1 新しい働き方として新規に開始した取組

・新型コロナウイルスの感染拡大を機に、2020年3月上旬頃から、物流部門及びライン部門等出社が必須となる者を除く全社員を原則在宅勤務とした。オフィスに出社する際は、事前に所属長の了承を得ることを義務付けた。
・また、2020年3月以降の学校の一斉休校により、子どもがいる社員で業務が難しい場合、社内の既存制度である「被災休暇」(有給)の取得を認めた。
・同年4月の緊急事態宣言下では、製造部門以外は出社禁止とし、原則在宅勤務を徹底(~5月31日まで)。一方、工場勤務で出社を余儀なくされた社員に対しては、特別手当を支給した。
・さらに、6月から「新しい生活様式」を踏まえた勤務ルールを策定・実施。全社的には4~5割程度の出社率(製造部門含めて)で推移している。
・休暇制度に関して、コロナ禍で、長期休暇を取得しても旅行等へ行くことが難しいため、ライフステージ休暇を取得できる期間を延長している。
・単身赴任中の社員に対しては、それまで月2回分までの交通費を支給していたが、新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、月の回数制限をなくし支給する形に変更した。

新しい働き方を推進する背景や目指すこと

1 背景・理由

・食品製造業のため、社員に対しても常々、社員の健康・安全が第一と伝えている。感染症の拡大防止は企業の社会的責任でもあると捉え、2020年6月に「新しい生活様式」を踏まえた勤務ルールを策定・公表した。

2 新しい働き方により目指すこと(事業展開、人材育成など)

・「新しい生活様式」を踏まえた勤務ルールでは、感染症の防止と業務継続の両立を目的として、出勤する場合は部署ごとの出勤率の上限を50%に設定することや、執務室は間隔を空けて着席すること、会議室を収容人数の半数以下としオンライン会議での参加を併用すること、同年7月以降はオフィスの密を避けるため3割を上限とすること等を定め、社員に呼びかけている。
・新入社員には、入社式でノートPCを渡した後、全てリモートで研修を行った。これまでと全く異なる環境で業務を開始しているため、各部署に配属されてすぐなじめた社員もいるが、会社や職場とのつながりが心配なケースもある。周囲の様子が見えづらく、仕事の進め方に迷ったり、自信を持ちにくいため、人事担当者が新入社員と個別面談をしてフォローしたり、保健師・医療スタッフと所属長が連携して健康面に配慮するなどしている。新入社員については、真に必要な場合、出勤率のルールに縛られずオフィスに出社してよいこととしている。
・人事評価については、リモート中心の働き方に変わった後も、社員には従来どおり業務の成果に基づいて評価することを伝えており、難しいという声はさほどあがっていない。

新しい働き方を掲げる以前の働き方・休み方や実施していた取組

1 新しい働き方を掲げる以前の働き方や休み方の状況

【年間労働時間の長さ】
・2017年に「働き方改革2020」の取組をスタートさせた。取組開始直前の2016年と比べて、年間労働時間は減少傾向にある。
・働き方改革の一環として、自己啓発施策の充実や、働き方改革サイトの構築、好事例の社内共有等も進めてきた。一連の取組を進めるにあたって、「残業時間」だけでなく、営業職の外勤等も含む「総拘束時間」を指標とし、拘束時間にも配慮している。

【部署や時季等による偏りの解消】
・部署による偏りとしては、工場部門では労働時間が短く、営業部門では長い傾向にある。

【柔軟な働き方(時間・場所)】
・社員が働きやすい環境の整備として、2017~2018年にかけてテレワーク制度、スーパーフレックス制度、勤務間インターバル制度、時間有休制度等、柔軟な働き方を導入した。社員も多様な働き方が可能であることを実感できていると考える。
・勤務間インターバル制度について、営業部門、特に業務用の営業を担う社員は、営業先との情報交換や懇親などのため、勤務時間が深夜に及ぶことも多かった。そこで、社員の健康確保・生活の充実を図るため、終業時間から次の日の始業時間までに最低10時間を確保する勤務間インターバル制度を導入した。会社として、「健康経営」を打ち出していることもあり、業界の中では当社が最も早かった。
・制度導入にあたり営業部門の社員が心配したのは、顧客にどう説明するかという点であった。社長から都度々々メッセージを発信したり、担当役員が全国を回って現場の社員に制度導入の説明をしたり、必要な場合には部門のマネージャーが顧客に説明に行ったりした。会社のWEBサイトにも掲載し、顧客から理解を得られるよう努めた。
・2017~2018年にかけて、メディア等で柔軟な働き方の導入を取り上げられたことで、採用時に応募してくる学生の増加にも一定の効果があった。

2 新しい働き方を掲げる以前の働き方や休み方の状況

【年次有給休暇の取得状況の変化】
(平均取得率)69.7%(2016年)
(平均取得率)80.7%(2019年)

・年次有給休暇の取得率は上昇傾向にあり、2019年の平均取得日数は約15日、平均取得率は約8割と順調に伸びていた。
・しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響により、年次有給休暇の取得ペースにブレーキがかかっている。

【部署や時季等による偏りの解消】
・部署による偏りとしては、工場部門は取得率が高い一方、営業部門は取得しにくいという傾向にある。

3 新型コロナウイルス感染症が広まる前までに取り組んでいたこと

【働き方の取組】
・2017年から中期経営計画と連動する形で、「仕事の生産性向上」「生活の充実」「心身の健康」を掲げ、「働き方改革2020」に取り組んできた。2012年頃から働き方改革に取り組んでいたが、当時は「残業時間削減による人件費抑制」に主な焦点が当たっていた。2017年以降の取組では、「1時間当たりの営業利益増加」を目標指標としている。
・在宅勤務制度は2013年に導入したが、当初は3ヵ月前から利用申請が必要など、手続が非常に煩雑であった。在宅勤務をした場合、日々の業務報告も求めていた。年間利用回数は延べ30~40回程度にとどまり、利用者のほとんどが育児と両立しながら働く社員であった。
・2017年にテレワーク制度を改定し、利用できる部門や対象者を限定せず、派遣社員も利用可能とした。申請は「1ヵ月前から」であったところ「当日申請」を可能に、事後の業務報告は不要、自宅以外でも機密が守れる場所であれば実施を認めるなど、条件を緩和し、利用の拡充を図った。
・当時、テレワークの自由度を上げて大丈夫なのか、という意見も社内にはあったが、世の中の流れもあり、優秀な人材の獲得や採用面への影響を考え改定を行った。コンプライアンスの遵守は必要だが、必要以上に社員を管理することに注力する時代ではなく、社員を信じて性善説にたって結果が出れば良いというスタンスであった。
・働き方改革の取組を進めるに際は、労働組合との協議・交渉がベースとなるが、この改革は開始当初から人事部及び労組の中央執行部の課題認識が合致しており、一緒に取組を進めてきた。新しい制度導入の際には、まずやってみようということで試行期間も長くとるなど、労組の協力が得られたことも大きかった。
・テレワーク制度を改定する前も、2017年5月を試行期間とし、その後1ヵ月で結果を検証するなど、導入まで時間をかけて検討を進めた。管理職にも、全員一回はトライアル実施を義務付けた。これにより、常に社員を見ていないことに対する不安感の払拭や、テレワークでも成果が出せるという納得感を管理職が持てたことが大きかった。
・製造部門でもテレワーク制度は他の部門と全く同じであり、「利用して効果が出るなら、使ってよい」というスタンスである。ラインでも利用できる可能性があるということは、実際やってみてわかった。
・テレワークと勤務間インターバルの制度をほぼ同時に導入したが、これはさまざまな方策を用意したうえで、社員が自身の業務内容や繁忙状況をふまえて、多様な選択肢の中から自分に合った働き方を選べるようにと考えたためである。ただ、社員間の不公平感や部門間の温度差は社内にあり、営業や製造部門でテレワークを利用できるのは、管理の仕事に就いている一部の人だけだ、といった反応もみられた。

【休み方の取組】
・2017年12月、1時間単位での有給休暇取得を可能とする時間有休制度を導入。最大、年間40時間(5日分)まで取得できる。

4 新しい働き方において、これまでの取組が活かされている点/これまでの環境整備が功を奏している点

・新型コロナウイルスの感染拡大以前から、テレワークができる環境になっていたことは大きかった(制度整備、モバイルPC・携帯電話の支給等)。それでも、これまで全くテレワークをしたことがない人も少数ながらいたり、全社的な規模で実施するのは初めてのことで、社員に戸惑いはあった。
・勤務時間の面でも、テレワーク中に家事・用事を行う必要がある場合、以前からスーパーフレックス制度や時間有休制度を導入しているため中抜けで対応するなど、柔軟に働くことができている。

新しい働き方を推進する上で課題だったこと・工夫したこと

・最も課題となったのは、外部から社内ネットワークに接続するための回線の容量が不足していたこと。2018~2019年にテレワーク・デイズに参加し、環境整備を進めていたが、全社的にテレワークを行うと回線が逼迫するため、社内ネットワークが不要な業務であればオフラインで勤務することなどを呼びかけた。
・テレワークへの移行により長時間労働になったということは特にないが、春・秋の定期異動後、コミュニケーションがとりづらいことなどの理由から、これまでよりキャッチアップに時間かかる傾向がみられる。
・当社では異動の前後など、社員同士が節目・節目でお酒を飲みながらコミュニケーションを図る文化があるが、コロナによりそうしたコミュニケーションができなくなった点は寂しいと感じている社員が多いのではないか。
・工夫点としては、書類の捺印は週2回とし、経理部門では会計伝票への捺印を不要とする等、簡素化を図ったり、社員が自宅で使う机や椅子を購入したり、wi-fiの設備を増強したりする際は一定の補助を出すなど、環境整備のサポートを行っている。
・通勤手当については、勤怠管理システムで出社が5割以下の場合は定期代を支給せず、実費精算に切り替えている。

現状の課題・展望

・新型コロナウイルスの影響を受けて、家庭用市場が好調な反面、業務用市場には大きな打撃があり、ビジネスモデルの再構築を図る必要があると考えている。ただ、夜間の営業活動が減って、社員の健康面にはよい影響があった。新しい働き方に移行後、社員のストレスチェックの数値や健康診断の有所見率は、いずれも若干改善傾向がみられる。
・当社としては、新しい働き方として、テレワークが必ずしもベストであると考えているわけではなく、あくまでも社員が効果的、効率的に働くことに寄与するのであれば利用してもらうというスタンスである。社員同士が対面のコミュニケーションを図ることも重視したい。
・社員の健康や生活等の重視を掲げた「働き方改革2020」は2020年末で終了。次年度からは「自律・コミュニケーション・ワークライフバランス」をキーワードとして、社員の「働きがい」と「働きやすい」環境の実現に取り組んでいく。

(R3.3)

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