株式会社GSユアサ

事例カテゴリ

  • 年休取得促進
  • 計画的付与制度
  • 時間単位年休
  • 特別休暇

企業情報

株式会社GSユアサ
企業名
株式会社GSユアサ
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所在地
京都市南区
社員数
単体2,323人(連結14,217人)(2019/3/31現在)
業種
電気機器製造業
労働時間・休暇制度
■労働時間関連
・労働時間制度:フレックスタイム制度
フレキシブルタイム(7時始業、8時始業が可能)
育児・介護フレックス、短時間勤務制度
・所定労働時間:7時間50分
■休暇関連
・年間所定休日数:126日
・年休(個人別計画休暇、一斉計画休暇、間接職場計画休暇、サイクル休暇、半日休暇、時間単位休暇)のほか、特別休暇の「マイメモリアルホリデー」と「永年勤続特別休暇」がある

働き方・休み方の現状と課題

1 働き方の現状(平均所定外労働時間、部署や職位、時季等による偏りの有無等)

・所定外労働時間の全社平均は、1か月あたり18.0時間である(2018年1月~12月、管理職を含まない一般社員の値。以下に記載する実績値も同様)。
・職種別に比較すると、事務系が15.0時間、製造系が12.5時間、技術系が23.7時間で、技術系の所定外労働時間がやや長くなっている。
・直近3年間(2016~2018年)の所定外労働時間は、減少傾向にある。

2 働き方に関する課題(労働時間の長さ、時間や場所の柔軟化、育児・介護等との両立者の働き方等)

・総実労働時間の全社平均は、年間1,924.7時間(2018年1月~12月)で、直近3年間(2016~2018年)は、所定外労働時間と同様、減少傾向にある。この値は、労働組合の上部団体が目標とする「総実労働時間2,000時間/年」もクリアしている。
・ただし、職種別に比較すると、事務系が1,886.8時間、製造系が1,842.3時間に対して、技術系が2,006.0時間で、やはり技術系がやや長くなっている。この要因は、開発競争が激しいためであると考えている。

3 休み方の現状(平均年次有給休暇取得率(日数)、部署や職位、時季等による偏りの有無等)

・年休取得率の全社平均(2018年9月~2019年8月)は、一般社員のみで79.3%、管理職・有期雇用社員を含めると73.9%であり、国の目標である70%を超えている。
・一般社員の取得率を職種別に比較すると、製造系の取得率は89.5%だが、技術系が73.4%、事務系が77.5%と、取得率に差が見られる。

4 休み方に関する課題(休暇取得日数、連続休暇取得状況、希望する時季での休暇取得の状況等)

・事務系には営業職も含まれているため、労働時間が比較的長い技術系に加えて、事務系の年休取得率も低めになっている。休暇取得を予定していても、急な顧客対応が必要になり、取得できなくなるケースがあると聞いている。

休暇取得促進に係る取組

1 働き方・休み方改善(特に休暇取得促進)に関する方針・推進体制

・当社では、年休取得促進を中長期的なスパンで進めており、2014年10月からの取組を「第Ⅰフェーズ」、2017年12月からの取組を「第Ⅱフェーズ」、2019年9月からの取組を「第Ⅲフェーズ」と位置付けている。
・第Ⅰフェーズでは、テーマを「年休の取得しやすい環境づくり」とし、メリハリのある働き方を意識してもらうことを目的に、一般社員の年間10日の年休取得義務化(管理職は努力義務)を開始した。
・第Ⅱフェーズでは、第Ⅰフェーズ期間中に年休取得が一定程度進んだことを踏まえて、テーマを「休暇を活用したワークライフバランスの推進」とし、第Ⅰフェーズの取組を継続しつつ、新たに、連続休暇の取得促進に取り組んだ。
・第Ⅲフェーズでは、10日間の年休取得義務化の対象を、管理職と有期雇用社員にまで拡大(全社員に拡大)するとともに、一般社員については、個々の年休取得付与日数の70%を取得目標として設定している(一般社員の目標は、3年後(2021年度)の達成を目指すもので、現状は努力義務としている)。
・当社には、労働時間に関するテーマを労使で話し合う「専門委員会」があり、各フェーズにおける取り組みも、その場で検討することとした。また、制度や環境整備等、賃金以外の事項について交渉する秋季交渉があるが、短期間での回答となるため、労使でもう少し時間をかけて検討し、より良い取組を進めようという趣旨で、別途設置している。

2 導入している休暇関連の制度及び取組内容

・年休取得を促進する制度には、「個人別計画休暇」(年間2日)、「一斉計画休暇」(年間2日程度)、「間接職場計画休暇」(年間6日)のほか、「サイクル休暇」、「半日休暇」、「時間単位休暇」がある。
・「サイクル休暇」は、年休起算日(9月1日)において、勤続満5年、15年、25年、35年の社員が対象で、3~5日の連続休暇の取得を奨励するものである。
・また、特別休暇には、「マイメモリアルホリデー」(年間1日。前年12月に各自で設定するが、変更も可能)と、「永年勤続特別休暇」がある。
・「永年勤続特別休暇」は、4月1日において勤続満10年、20年、30年、40年の社員が対象で、5日の休暇が付与される。併せて、永年勤続慰労金(旅行クーポン)も支給される。
・本来、「個人別計画休暇」、「一斉計画休暇」、「間接職場計画休暇」の制度を全て利用すれば、自動的に年休を10日取得できるが、第Ⅰフェーズの取組開始前は、10日未満取得者が約24%おり、それらの社員と長時間労働との関連性が強く見受けられた。そのため、第1フェーズでは、仕事の効率化や業務に対する創造性の向上を目的に、10日の取得義務化に踏み切った。
・第Ⅱフェーズでは、10日の年休取得に加えて、「マイメモリアルホリデー」、「サイクル休暇」、「永年勤続特別休暇」の取得と、4連続休暇の取得を奨励した。4連続休暇は、例えば、土日を挟んだ金月、ハッピーマンデーの土日祝の前後、祝日と土日に挟まれた平日に年休を取得することで、4連続休暇にすることを想定している。

3 休暇取得促進に係る課題(取組を進める上での失敗談など)及び改善に向けた工夫

・年間の年休取得日数が10日未満の社員については、その上司と人事部が面談を実施し、取得できなかった要因や、次年度10日取得を達成するための方策等をヒアリングしている。また、取得が進まなかった社員には、人事部の管理職が直接職場に出向いて個別に面談を行い、共に方策を検討している。現状では、10日未取得の社員も、ほとんどは10日に近い日数の休暇を取得している。
・第Ⅱフェーズでは、「自分のじかんproject」と銘打ち、社内広報を展開している。まず、社内報に特集ページを組み、政府が進める働き方改革・休み方改革の背景を説明するとともに、休暇取得によって期待される効果と、当社の取組の方向性を紹介した。また、「休むことは大切なこと。」と大きな文字で書かれたポスターを、会議室や執務フロアの空きスペースなど、貼れる場所にどんどん貼っていき、自然に目に入るようにして、意識付けを促している。
・第Ⅱフェーズの取組開始1年後には、サイクル休暇取得対象者とその上司を対象に、サイクル休暇の取得に関する実態調査(アンケート)を行った。その結果、「連続休暇の取得がワークライフバランスの向上に効果的であること」、また、取得に際しての「早めに周知し、周囲の協力を得ること」と「休暇計画を早めに立てること」の重要性が把握された。また、対象者がサイクル休暇を取得することで、他の課員の年休取得が進むなど、環境づくりにも良い影響があったことも把握された。
・一方で、第Ⅲフェーズ開始前の2019年4月に「年休を希望通りに取得できているか」の現状把握のために実施したアンケートでは、「ほぼ希望通り」(42%)までを含めると、完全な希望通りではない回答者が60%にのぼった(「希望通り」、「ほぼ希望通り」の回答は、全体の82%)。また、希望通りに休暇を取得できない理由の上位は、「業務量が多い」、「連続休暇を取得しづらい」、「社内会議や打ち合わせの予定が多い」であった。そのため、管理職にアンケート結果をフィードバックする際に、「業務の見直し」、「会議の見直し」、「年休を取得しやすい環境づくり」の3つの業務改善への取組を依頼し、具体的なチェックポイントも提示した。

4 社員の休暇の質を高める取組(休暇の事前計画、休暇中の連絡ルール等、安心して休むための工夫、休み方のアドバイス、自己啓発・家族との時間の確保等)

・「自分のじかんproject」の一環で、キャッチフレーズとイメージ写真を組み合わせて、休暇の質的向上を啓発するポスターを作成している(例:「自分を楽しむ時間」+陶芸体験のイメージ写真、「仕事も大事 家族も大事」+庭での家族との食事のイメージ写真 など)

休暇取得促進による効果(職場における変化や、社員満足度への貢献等)

・第Ⅰフェーズの3年間で、年休の年間10日未満取得者数が大きく減少し、年休取得促進の効果が出ていることが確認された(年休10日未満取得者は、取組開始時(2013年9月~2014年8月)の342人(23.7%)から、直近には(2017年9月~2018年8月)13人(0.7%)にまで減少)。
・第Ⅱフェーズに入った2017年度は、2016年度と比較して、管理職・一般社員とも長時間労働者が大幅に減少するとともに、時間外労働時間数の減少傾向もみられた。2017年4月から始めた長時間労働の抑制に関する取組(1か月の時間外労働時間上限設定、所定休日の2日連続勤務原則禁止、深夜時間帯における時間外労働の原則禁止)とともに、休暇の取得によって、仕事と休息のメリハリがついていると推察している。

働き方・休み方改善(特に休暇取得促進)に関する今後の展望

・休暇取得の促進により、個々の仕事の仕方に対する意識も高まったと思われ、一定程度の削減は達成できている。そのため、これ以上の労働時間削減に取り組む場合は、手法を抜本的に変え、業務改善とセットで取り組まなければならないと考えている。
・第Ⅲフェーズの開始にあたって発信された社長メッセージにも、「限られた時間の中で最大の成果を生み出す働き方にチャレンジしていただき、それをサポートする制度も今後一層充実させていきたい」とあり、それをさらに推進するための取組として、社員の能力開発を支援するための研修(スキルアップ支援、管理職のマネジメント力アップ支援、社員同士のつながり強化による組織活性化の支援)の提供を検討中である。研修の内容としては、必ずしも新しいものだけではなく、これまでに実施してきたものもあるが、そこに「働き方改革」という切り口を追加して、内容をブラッシュアップしていきたい。

(R2.3)

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