働き方・休み方改革シンポジウムの概要(福岡会場)

~企業と社員が一緒に取組む「働き方・休み方改革」の可能性~

平成28年10月31日(月)、天神クリスタルビル 大ホールにおいて、働き方・休み方改革シンポジウムを開催しました。辻田博福岡労働局長のご挨拶を皮切りに、本シンポジウムが始まりました。

【第1部】基調講演

「日本人の休暇と労働時間」

早稲田大学 商学学術院 教授   小倉一哉氏
  • 年次有給休暇を取得しない理由として「混雑する、お金がかかる、多忙、急用のため(病気や急な用事のために)残しておく」などがあるとのこと。ヨーロッパで先進的に運用されている休暇制度や、休暇カレンダー、仕事の仕分け、失効年休活用等を例に、休暇取得促進について述べられました。
  • 残業が多い最も大きな理由は、個々の抱える仕事量であるとし、その他の労働時間に影響する要因を説明されました。
    残業削減の考え方として、仕事の仕分けの他、丁寧すぎる打ち合わせの見直し、過剰品質な資料や作業の棚卸、労働時間の実績評価、ノー残業デーの実施等の社内ルールの徹底を挙げられ、長時間労働の縮減、解消について語られました。
  • 多様なライフイベントに対応する制度には、法律上認められた短時間勤務制度があります。所定(法定)労働時間8時間の会社で6時間勤務であれば2時間の短縮にとどまるが、周囲の社員の勤務実態が12時間労働である場合には心理的に短時間勤務制度の利用がしづらいため、全社的に長時間労働を削減する取組が重要である、と述べられました。終わりに、「働き方・休み方改善ポータルサルト」の有効性・活用方法についてご紹介いただきました。

【第2部】事例紹介 働き方・休み方の改善において進んだ取組を実施している企業の事例紹介

「ワークライフマネジメント向上と在宅勤務制度推進~日産自動車の取り組み」

日産自動車株式会社   ダイバーシティデベロップメントオフィス マネージャー   三田村真希子氏
  • 日産自動車では、女性の管理職登用等の女性の活躍推進、ダイバーシティ推進、働き方改革をすすめており、現在、働き方改革の一助として在宅勤務の推進に取り組んでいる。在宅勤務により、アウトプットの質等を高めつつ、所定外労働の削減と通勤時間削減が実現し、「プライベートが充実した。その結果、気持ちに余裕を持つことができた。」など社員の声をご紹介いただきました。
  • 成果を出す在宅勤務が可能な職場環境の6要素は、「在宅できる業務の切り分け」「業務の透明性」「アウトプットに対する適切な評価」「自立した社員」「多様な働き方を認める風土」「ダイバーシティマネジメント」とのこと。実際に在宅勤務を導入する際には、パイロット活動により「まずはやってみよう」という意識を醸成し、そこから収集した生の声を本格稼働に生かした、と取組について述べられました。
  • 在宅勤務推進月間を設け、制度の推進を図っているが、「社員全員が制度を利用すること」を目指しているのではないとのことです。社員のニーズを把握したうえ、希望する社員全員が効果的に活用できる環境づくりの推進に取り組んでいると締めくくられました。

「「働き方・休み方改革」の成功をめざして」 シスコのワークスタイル変革の取組み」

シスコシステムズ合同会社   戦略ソリューション・事業開発担当 専務執行役員   兼   東京オリンピック・パラリンピック推進本部担当   専務執行委員   鈴木和洋氏
  • はじめに、働き方・休み方改革に取り組む必要性について、デジタル化の加速化、競争環境の激変、それに対応するための俊敏な組織の必要性などから新しい働き方が求められていることが述べられました。
  • 同社の取組として、ワークスタイルイノベーションを取り巻く3つの要素として、企業風土、プロセス・制度、技術の活用が挙げられ、企業風土については、コラボレーション文化の醸成と浸透など、プロセス・制度については、ビジネスを成功に導く行動特性及びリーダーシップモデルの運用、時間で仕事をする概念からの脱却など行っています。その上、ICTを活用して、在宅オフィス仮想環境ツールなど社員に提供しています。
  • 取組の順序としては始めに企業風土、次に制度、最後にIT化など手段で、5年後の社員の年齢構成を考えた上で今から始めると締めくくられました。

「職員一人一人が働きがいを持って働きやすく働き続けられる職場づくり」

医療法人寿芳会   芳野病院   院長   芳野元氏
  • まず、「職員満足度を犠牲にして顧客満足度は得られない」とのコメントがありました。職員満足度(ES)向上策としては、キャリア形成の支援、ワークライフバランス(WLB)の充実(出産や育児などのライフイベントに影響されることなく働き続ける)が重要であり、この2つの制度でより良い人材を育成しているとのこと。当院には人財育成基本方針があり、現任教育の充実のため外部研修へ積極的に参加するようにし、それだけでなく個人の目標管理にも力を入れて能力開発を行っていると述べられました。
  • WLB充実の施策の柱は、「男女を問わず育児休業取得奨励」「育児・介護のための常勤短時間勤務制度」「1週間連続休暇取得奨励制度」「57種類の勤務シフト」で、効果として、ワーク・モチベーションが高く、WLBの取れた生産性の高い組織になったといいます。
  • これらが実現した理由は、「トップのリーダーシップ」があり、「職員の声に耳を傾ける」ことと「決断のスピード」に拠るものであると語られました。
  • 現在、取組から10年以上経過し、当院で制度を利用して育児の時期を乗り切った職員が管理職になっている。そのため、次世代への推進がスムースであるようです。
    「来場された皆様も、1日も早く取り組みをスタートさせましょう。」と自信を持って訴えていた表情が印象的でした。

【第3部】パネルディスカッション

【ファシリテーター】
小倉一哉氏(早稲田大学 商学学術院 教授)
【パネリスト】
  • 三田村真希子氏(日産自動車株式会社 ダイバーシティデベロップメントオフィス マネージャー)
  • 鈴木和洋氏(シスコシステムズ合同会社 戦略ソリューション・事業開発担当 専務執行役員 兼 東京オリンピック・パラリンピック推進本部担当 専務執行委員)
  • 芳野元氏(医療法人寿芳会 芳野病院 院長)

各社の取組に対する補足

  • ファシリテーターの小倉氏より、第2部を補足する内容について、3社へ問いかけを行いました。
    日産自動車株式会社の三田村氏より、在宅勤務はパソコン支給、業務の開始終了は、ログオン・オフによる管理とメールによる在宅勤務開始報告、終了報告を行うこと、勤務内容の予定を上司とグループに共有することが説明されました。毎年度、在宅勤務利用者はEラーニングで教育研修を行った上で利用するそうです。また、在宅に適した環境が自宅にあることが在宅勤務の条件であるが、条件に当てはまらない場合もあるため、現在トライアルで事業所内サテライトスペースの活用を行っているとの補足をいただきました。
  • 「今のサービス経済は首絞めの連鎖である。」とのファシリテーターの言葉に、シスコシステムズ合同会社の鈴木氏からは、日本の社会システムは、高コスト体質であるといわれるとの回答がありました。フォー9(精度99.99%等)からファイブ9(99.999%等)にするために、社員への大きな負担を強い、さらに何千億円もかけるが、欧米は、その財源を他に使う、と高コスト体質である日本の社会システムが働き方の現状の課題を生んでいる要素のひとつであると説明されました。
  • 働き方に合わせた57シフト、フレキシブルな短時間勤務については、医療法人寿芳会芳野病院の芳野氏から「周囲の同業者から、これだけ多様な制度・運用を行っていて、まだ改善点があるのかと聞かれるが、医療業界は離職・転職は激しい。そうなると意識が異なる職員が入れ替わりの状態である。そこへの教育が問題と考える。」と、取組の今後についてもお話いただきました。
  • 介護と働き方については、芳野氏より、「アンケートを取ったが、想定以上の職員が潜在的に家族等介護の必要性を抱えている。計画の立てにくい介護というライフイベントについて改めて検討が必要と感じている。」とのご意見をいただきました。また、三田村氏より、「介護両立者は時短勤務と在宅を併用することができる。また介護に対して対応した在宅勤務制度として在宅上限を月の所定労働時間の50%としている」とのご発言がありました。そして鈴木氏は、「認知症など回復が難しくなるケースもあり、個別の対応を行っていく」とのことでした。

パネラーによる働き方改革へのアドバイス

  • 三田村氏より、「皆が制度を利用して在宅勤務を行うことが解決策であると考えているのではない。活用できる選択肢がそこにあることにより安心感を与え、多様な社員が活躍するための施策の一つと考えながら運用している。」とアドバイスをいただきました。
  • 鈴木氏より、「職場風土改革が肝であると信じている。そのためにはトップのコミットメントと実践が重要で、創業理念に戻ってトップが考えるほど重要なことである。それによって大きな岩が動いてくると考えている。」とアドバイスをいただきました。
  • ブラザー工業株式会社の青木氏に対しては、「今後、業務量を減らすなど全社的な効率化に取り組む」という説明について、開発部門のように残業時間のギャップを設け難い部署対してどのような取り組みを考えているのかという質問がなされました。
  • 芳野氏より、「良い人材の育成にはESの向上が必要である。個人の意見ではなく、経営者として発信している。この取組が仕事の質の向上につながり、生産性が高まればよい。トップのリーダーシップによる取組であるということが重要。」と述べられました。来場者に向け、「トップの方は、ぜひ発信してください。人事の方は、トップに発信を求めてください。取組に尻込みする社員・職員がいても、どんどん突っ走ってください。山を後ろから押すのではなく、前に出て突っ走っていきましょう。」と力強いご意見をいただきました。