北海道テレビ放送株式会社

(1)企業概要

社名
北海道テレビ放送株式会社
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業種/事業概要
放送業
従業員規模
100~999人
本社所在地
北海道
労働時間制度
所定労働時間(標準) 9:30~17:30(休憩12:00~13:00)
一部の職種については24時間放送対応のためシフト制を採用

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
・毎月労働時間についてモニタリングを実施している。各月15日に、所定外労働が50時間を上回る社員には、所定外労働が当月100時間を超えないように本人に警告を行う。更に安全衛生委員会で実名を報告し、改善対策を検討する。
・5営業日連続休暇取得推奨のため取得時の報奨金を設定(取得率100%を達成)。
・管理職に対して、残業についての研修を実施。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
今年4月に、「ワークライフバランス・ダイバーシティ推進部」を新設したところである。今回、「働き方・休み方改善指標」を活用することで、自社の課題を明確にして、多様な働き方・休み方を推進するための様々なアドバイスをいただきたい。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
他社を報道する立場にあるため、以前から自社の課題も積極的に外部に発信してきた。
2020年のオリンピック開催時に従業員を10人程度削減する予定でいるため、削減された体制の中でも事業遂行できるよう、業務効率化を徹底して進めたいと考えているがどこから手をつければ良いか悩んでいる。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織体制
正規社員については、非管理職が100人前後、管理職を含めて190人程度である。契約社員や嘱託社員等の直接雇用による非正規社員を含むと230名程度勤務している。男女比は6:4で男性が多い。年齢構成は、30歳代と45歳前後が少し膨らむが全体としては適正な人員構成ピラミッドである。
主な売上は、テレビ放送を元にしたCMや番組のスポンサーへの販売である。事業収入の7割程度がスポンサー売上である。その他、グッズ販売やイベント収益と映像販売がある。
社員はグレード制で、A~Hグレードがある。A~Dグレードが非管理職であり、Eグレード以上が管理監督者(労基法41条適用対象)であるが、Eグレードには管理監督者と一般職が混在する。Fグレードが部長クラス、Gグレードが局次長クラス、Hグレードが局長クラスである。Hグレードまで社員扱いである(取締役兼務社員はいない)。
60歳定年制を採用しており、65歳までは、再雇用制度の下で働くことができる。グレードは在位年数が規定されており、入社時にAグレードからスタートし、3年でBグレードに上がり、更に4年後にCグレードに昇格する。モデル設計上はEグレードに45歳前後で昇格する仕組みになっており、全員がEグレードまでは昇格する仕組みとなっている。Fグレード以上は選抜登用である。
テレビは視聴習慣が重要であるため、15年程前から帯番組の強化やマルチメディア展開による副収入の強化、海外展開を行っている。
道内の他局と比較すると、社内で実施している事業数が多く、それに伴って仕事内容や仕事の種類が多い為、業務負荷を高めている。
現在業界全体で、東京オリンピックを見据えた人材の引き抜き、奪い合いが起こり、同業他社への転職が増えている。

②働き方
天災、スポーツイベント、選挙等の突発的なイベントに緊急対応しなければならないため、業務負荷の事前コントロールが難しい。台風や大雪などの現場では道路が寸断されて帰社できない、などの状況になり厳格な労務管理自体がかなり難しい状態も生じる。番組は、時間通りに放送をしなければならないため、締め切り時間への対応で労働時間超過が起こることがある。そのため現場では、業務コントロールに四苦八苦している。
残業時間が多いのは、番組の制作現場とイベント運営の現場である。天災やオリンピック等の大型スポーツイベント等、放送すべきイベント発生時に長時間労働になる。
スポーツシーズン中にはカメラマンなどの技術スタッフに負荷が集中する。
朝番組のスタッフは80人~100人程度であるが、そのなかで自社の社員は10人程度である。派遣社員等の直接雇用以外のスタッフの時間外労働時間もかなり厳しく管理している。
報道部門では、コンテンツ制作業務はシステム化が進んでおり、誰でも一定程度の期間で業務を習得する。また特徴として、待機時間が長い。一方で、バラエティ等の制作現場は、制作にかけた時間と番組の内容・質は一致しないという課題がある。作業時間が短くても内容が良いケースもあるが、そういう人にはかえって業務が集中する傾向がある。
月の法定時間外労働が80時間を超える労働者には、強制的に健康診断を受診させている。合わせて管理監督者も、長時間労働者には面談を義務付けている。所定外労働が55時間以上の状態が3ヶ月継続すると、健康診断を受診させている。さらに、4ヶ月継続の場合には他部署等への異動検討対象者となり、継続5ヶ月を超えると異動辞令が発動される。
フレックスタイム制度、裁量労働制などの労働時間制度は活用していない。

③休み方
会社休日は土日祝日と年末年始5日(12月30日~1月3日)。祝日であっても番組は放送する為、出勤者は代休の取得で対応する。
繁忙期終了後には休暇を取得するように部門長が管理職を指導している部署もある。報道部門のように、部内人数が多くシフト制を採用する部署は休暇も取得しやすい一方、人数が少ない部門や属人的な業務を担当する社員は、ES調査等をみると「休みにくい」と感じているようである。
制作現場では、法定休日や祝日にも出勤が必要な場合も多い。その結果、代休の取得をどうにか行う程度であり、年次有給休暇の取得ができていない。振替休日の取得が難しい場合には、2年間休暇をプールさせて、2年間は時期を選ばずに自由に取得できるようにしている。2年後は病気や介護等を理由とする休暇として活用可能になる。

④マネジメント
36協定の水準を決める労使協議の際に、現場の働き方・休み方に対する意見が組合経由で提示される。組合員はA~DグレードにEグレードの非役職者を含め、100人程度である。36協定の上限は、通常期45時間、繁忙期(特別条項)100時間である。
トップは、働き方改革を経営課題と考えるが、意識は高いとはいえず具体的な施策は打ち出せていない。
管理監督者に登用される際に、部下の労働時間についての研修は行われているものの、働き方に対する考え方が変わらない。もっと意識改革の研修等を行っていきたい。
新卒採用は年3人程度である。若年者の退職は10年間で5人程度である。
能力が高い人材には、「希望する職務への登用」や、「昇格」でモチベーションの維持向上を図っている。
長時間が前提の労働習慣があり、改善のため外部に社内業務を委託する内容が増えた。委託内容は、AかBグレードの軽度の職務である。また、派遣人材も活用している。
年次有給休暇の取得促進について、トップメッセージは発信されておらず、年次有給休暇の取得日数や取得率の目標も設定していない。
記念日、誕生日等を休みにするような制度はない。
年次有給休暇の取得に関する管理職向けの研修は行っていない。
長時間労働や休暇の取得等に関する、相談窓口はない。
長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得に関する一般社員向けの研修は行っていない。
タイムカードやIDカードなどの勤怠管理ツールを利用した労働時間の管理が行われていない。
管理職の自身及び部下に対する長時間労働の削減や休暇の取得に関する意識が低く、管理職のマネジメントも標準化されていない。
他の社員が業務を代替しにくい。
通常の労働時間制度以外の労働時間制度は活用していない。

⑤その他
他の地方局と比べると自社制作比率が高い。自社制作比率を高めると労働時間が増える傾向にあるため、かつて、労使交渉の結果、番組を7本廃止した。
会社全体で、部署・職務を跨ぐジョブ・ローテーションを実施するため、多能工化は出来ている。
裁量労働制の検討:労働時間の峻別(が難しい?)。実際に導入が必要であれば、実施はできるのではないかと考えている。
所定外労働への割増賃金を生活給として期待している社員もいる。
意識調査でキャリア志向を分析すると、「管理職になりたくない」と考える社員が多い。理由としては、「現場が好き」、「収入が減る(残業代が出ない)」という考えがあり、管理職に登用されることにメリットを感じていない。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
タイムカードやIDカードなどの勤怠管理ツールを利用した労働時間の管理が行われていない。

2)休み方
年次有給休暇の取得促進について、トップメッセージは発信されておらず、年次有給休暇の取得日数や取得率の目標もない。
記念日、誕生日等を休みにするような制度はない。
年次有給休暇の取得に関する管理職向けの研修は行っていない。

3)働き方・休み方共通
トップは働き方改革を経営課題と考えるが、意識は高いとはいえず具体的な施策は打ち出せていない。
管理監督者に登用される際に、部下の労働時間についての研修は行われているものの、働き方に対する考え方が変わらない。
長時間労働や休暇の取得等に関する、相談窓口はない。
長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得に関する一般社員向けの研修は行っていない。
管理職の、自身及び部下に対する長時間労働の削減や休暇の取得に関する意識が低く、管理職のマネジメントも標準化されていない。
他の社員が業務を代替しにくい。
通常の労働時間制度以外の労働時間制度は活用していない。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合は12.0%であった。
→貴社の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である8.2%(従業員規模100人~999人のカテゴリ)を超え、長時間労働者割合が高い状態にある(注1)。
(注1) 繁忙月
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全従業員平均16.7%であった。
→主要産業の平均値である46.0%(従業員規模100人~999人のカテゴリ)及び、国の定める目標値70.0%ともにクリアできていない。
貴社の長時間労働の社員の割合は12%と高い。一方、年次有給休暇の取得率も主要産業の平均値にも達していない。働き方・休み方ともに改善が強く求められる。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
年次有給休暇の取得促進について、トップメッセージは発信されておらず、年次有給休暇の取得日数や取得率の目標もない。

トップは働き方改革を経営課題と考えるが、意識は高いとはいえず具体的な施策は打ち出せていない。
トップメッセージとして労働時間の削減目標や年次有給休暇取得促進を目標数値と共に掲げる
一般事業主行動計画など、トップから働き方・休み方に関するメッセージは出されるものの、具体的な数値の目標はない。
働き方・休み方改善の取組をより一層図るため、トップダウンによる一定の力を与えることが貴社の働き方・休み方改善の鍵であると考える。
そこで、トップメッセージとして数値目標を掲げ、働き方・休み方の改革を明言する。
具体的な目標数値の設定には、既存の安全衛生委員会等、労使による協議の場の活用が有効である。
また、上述の一般事業主行動計画の宣言項目が達成できているのかについても、委員会で協議することにより、まずは既に立てている目標の確実な実施・達成に向けて労使一体となって改革を推進する。
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
長時間労働や休暇の取得等に関する、相談窓口はない。
働き方・休み方についての相談窓口の設置
社内に働き方・休み方の悩み等に関する相談窓口となる担当者を設置し、例えば社内アンケート等では拾う事の出来ない、現状・将来への不満・不安等を把握して職場環境の改善に繋げる。窓口は、人事労務を取りまとめる部署、また、人事労務やメンタルヘルスに関する社外の専門家(例えば産業医・社会保険労務士)の活用なども検討する。
把握した情報は、相談した本人への対応の他、全社的な課題であると認識して今後の対応に活用する。育児による働き方への対応を行っている企業は多いが、これからは、家族・親族介護による働き方・休み方への不安が表面化する社員も現れる可能性があるため、不安を相談する窓口の設置と適切な運用は社員に安心感をもたらす。
項目3
改善促進の制度化
記念日、誕生日等を休みにするような制度はない。
「誕生日・誕生月休暇」等の休暇の設定
誕生日・月等に年次有給休暇の取得を促すメモリアル休暇制度を設ける。
誕生日は必ず誰しもにあり、また、事前に部署で情報共有できる休暇予定である。
ただし、例えば誕生月が当該部署の年間における繁忙月であれば、前後の月への休暇の振替を前もって行うルールを事前に設けておく等柔軟な対応を行い、業務への影響を最小限に抑える。
まずは、1~2日の休暇取得ニーズへの対応の手掛かりとして計画的に誕生日休暇を推進することを検討する。
通常の労働時間制度以外の労働時間制度は活用していない。
柔軟な労働時間制度の活用
管理部門等で、年間のイベント周期が決まっている部署などがあれば、例えば、1月単位、1年単位の変形労働時間制の活用やフレックスタイム制度の活用により、労働時間の調整を行うこともできる。例えば、給与計算事務担当者であれば、各月の労働時間の締め日翌日以降給与計算業務のピークを迎えるため、フレックスタイム制度により月の内業務が落ち着く期間の労働時間を調整して、1ヶ月の労働時間を一定の時間数に納めることもできる(部署内での定期ミーティングなど、必要であればコアタイムを設けておく必要あり)。
全社で一斉にルールを適用するという形でなくても、トライアルとして一部の社員がフレックスタイム制度(その他の柔軟な労働時間制度)を活用してみてもよい。運用方法の確認や労働時間実績の収集などにより、改善が見られる、社員の評判が良いなど好事例となるようであれば、横展開を行う等、全社一斉運用による実務上のトラブルのリスクを大きく軽減させることもできる。
事業場外みなし労働時間制度・裁量労働制の活用
貴社は現在、裁量労働の適用はない。しかし、社内外において専門的であったり、特殊な仕事を遂行している社員も多い。そこで、営業職の社員等、事業場外での仕事が中心である場合で、本人が事業場外で逐一指示を受けながら職務遂行しているのではない社員などは、事業場外みなし労働時間制度の適用(事業場内での労働が一定時間ある場合には、その時間を除いて算出)により、ある程度見込みの時間で労使協定を締結して、運用することを検討できる
また、専門業務型裁量労働制の対象業務に「取材」の業務、「プロデューサー」の業務、「ディレクター」の業務が列挙されている。これらの業務で、業務の遂行について大きな裁量が社員に認められている場合には、制度導入の検討の余地はある。適用することにより本人の労働時間の有効活用に繋げることもできる。
続いて、社内の中核として企画立案、調査分析等を行う社員の内、法41条適用対象の管理監督者となる者以外の社員には、企画業務型裁量労働制の適用も可能である。対象者となる可能性があるならば、適用することにより本人の労働時間の有効活用に繋げることもできる。
Action(アクション)
項目5
意識改善
年次有給休暇の取得に関する管理職向けの研修は行っていない。

管理監督者に登用される際に、部下の労働時間についての研修は行われているものの、働き方に対する考え方が変わらない。

管理職の、自身及び部下に対する長時間労働の削減や休暇の取得に関する意識が低く、管理職のマネジメントも標準化されていない。
管理職向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
左記の通り、管理職の意識改革が重要であることを認識しており、また、意識改革研修をもっと行いたいと考えている。
そこで、まずは①管理職本人の働き方・休み方改善を推進するための研修を行う。
また、働き方・休み方に課題のある部下の長時間労働の抑制及び年次有給休暇取得を促進するため、②部下の働き方・休み方のマネジメントに関する教育・研修を行う。
上記の研修は、集合研修に限らず、個別研修やe-ラーニング等でも可能である。例えばe-ラーニングシステムによる座学と、習熟度テストによる理解度チェックにより、研修を進めることもできる。ただし、e-ラーニングで行う場合は、研修受講・習熟度テストの最終期限を定め、受講が完了していない社員には、人事や上司から研修受講を促すようにする。※資料の回覧等で終わらせるのであれば実効性に乏しく効果は期待できない。
「なぜ取り組みが必要であるのか」を理解した上で働き方・休み方の改善推進を行うのでなければ、取組自体も、そしてそれが評価に紐づいていることも社員には単なるストレスとなる。
特殊な業界であるため、仕事が生き甲斐、と考える従業員もいるかもしれないが、「休んでもすることがない、仕事していたほうが良い」等の考えについては、「何かを行うために休む、という意識ではなく、身体を休めるために休む(何もない日でも休んでのんびりする)」ということを伝え、会社が従業員の健康のために労働時間の削減・休暇の取得を強く推し進めようとしていることへの管理職の意識の醸成を行う。
長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得に関する社員向けの研修は行っていない。
一般社員向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
長時間労働と健康・仕事効率の関係、休養の重要性などを従業員に認知してもらうため、全社員の受講を義務とする教育・研修を行う。研修方法やツール等は、管理職と同様である。
「なぜ取り組みが必要であるのか」を理解した上で働き方・休み方の改善推進を行うのでなければ、取組自体社員にとってストレスとなるため各自の業務量等の他、仕事や働き方・休み方について社員の意識を把握した上で推進するように注意する。
管理職と同様、仕事が生き甲斐、と考える従業員もいるかもしれないが、「休んでもすることがない、仕事していたほうが良い」等の考えについては、「何かを行うために休む、という意識ではなく、身体を休めるために休む(何もない日でも休んでのんびりする)」ということを伝え、会社が従業員の健康のために労働時間の削減・休暇の取得を強く推し進めようとしていることへの社員の意識の醸成を行う。
項目7
仕事の進め方改善
他の社員が業務を代替しにくい。

管理職の、自身及び部下に対する長時間労働の削減や休暇の取得に関する意識が低く、管理職のマネジメントも標準化されていない(再掲)。
仕事の棚卸と平準化・多能工化を推進する
仕事の棚卸を行い、複数人で業務が遂行できるように業務の一定程度のマニュアル化を行う。
業務の性質上もあり、少数精鋭で各人その職務を全うすることは素晴らしいが、他の社員が業務を代替しにくいままでは、所定外労働時間の縮減や年次有給休暇の取得の推進のスピードを鈍化させてしまう。
管理職のマネジメント標準化についても、例えば中途入社した社員の場合、様々なバックグラウンドがあることは当然である。しかしその中で数字の管理は、産業が違っても部門や個人の数字上の目標達成についての管理が管理職に与えられた責務であり、教育研修も丁寧になされていることが多い。しかし、その達成のためには部下の業務マネジメントが必須であり、業務に付随する労働時間管理を含む健康管理のマネジメントは管理職に課された責務であるものの、部門の達成目標優先の研修が中心で、部下のマネジメントに必要となる、部下の観察、メンタル・フィジカルケア、評価マネジメント等はあまり時間を割いて研修が行われていないことが多く、個人によってその能力・知識は、ばらつきがある。
そのため、手薄でばらつきのあるそれらのマネジメントに対する研修を一定の管理職層に対して丁寧に行うことで、標準化を進める。
 その他、企業として大きな判断としては、仮に要員計画に対して、現在の番組数(事業数)が過剰であることが棚卸等によって明らかになれば、過去に行ったことのある事業数の削減も検討する。
Check(チェック)
項目8
実態把握・管理
タイムカードやIDカードなどの勤怠管理ツールを利用した労働時間の管理が行われていない。
タイムカード等の利用による、適切な労働時間の管理を行う
自己申告勤怠入力による労働時間の管理のみでは、使用者として適切に社員の労働時間の管理が出来ているとは言えない。現状、実労働時間と社員の申告時間にずれが生じていなくても、今後働き方・休み方改革を進める上では、きちんとした労働時間の管理はかかせない。
出勤時、退勤時にタイムカードによる打刻やPCのログチェック等による勤怠管理を行い、例えば、前段で提案した専門業務型裁量労働制などの適用を行った場合にも、使用者の安全配慮義務として、適切な労働時間の管理を行うことで労働時間の実態把握を適切に行うことができる。
もし現在利用中の給与システムがあれば、タイムカードにはシステムと連動するものもあるため、労働時間の転記、入力の際のミス等による後戻りの時間も削減されるため、労働時間の管理と、それらに時間を割く全社員そして、給与事務担当者等の負担軽減の両方に有効である。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。
1) トップメッセージとして労働時間の削減目標や年次有給休暇取得促進を目標数値と共に掲げる
今回のコンサルティングが後押しとなって2016年10月に企業としてのイクボス宣言を行い、経営管理職層の個別宣言も2017年1月の社長をはじめとして、3月までにすべての管理職が企業とは別に個人のイクボス宣言を行った。宣言には長時間労働削減を軸としたワークライフバランス(休日取得の要素含む)、女性活躍をはじめとした育児介護を含むダイバーシティ経営への転換、他者の価値を尊重しあい、地域とともに成長することなどの内容を盛り込んだ。
2) 働き方・休み方についての相談窓口の設置
2016年4月新設されたワークライフバランス・ダイバーシティ推進部、既存の総務部が中心となり相談窓口を検討。これまでも育児や介護に関して等の相談窓口として個々対応してきたが、もっと広く相談を受けられるようにしなければならないと分かった。また毎月19日のイクボスの日に発行する社内新聞にも相談について情報発信を予定。
3) 「誕生日・誕生月休暇」等の休暇の設定
2017年度上期中に新たな休暇制度について労組と協議し決定したい。同業他社では土日に祝日が重なった場合、直前の金曜を会社休日としているが、それに倣って実施か、誕生月のアニバーサリー休日程度が現実的かと思われる。なお2016年12月は有給休暇取得促進のために年末の営業日を1日分短くし、正月休みを長く設定した。
4) 柔軟な労働時間制度の活用
制作現場では、取材先の時間都合やアナウンサーの出演スケジュールなど、実態に即した勤務シフトで労働を調整している。各部署の判断による運用であり、かなり柔軟性のある勤務になっている。今回のアドバイスを受けて、これまで以上の健康管理を軸とした細やかな労務管理が必要ととらえ、入退館ログの徹底管理など今後さらに本気で取り組む。
5) 管理職向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
会社としてのイクボス宣言、管理職それぞれの宣言を進めた。同時に、顧問社労士や外部講師を招き、働き方改革に関するセミナーも実施。2017年度業務計画の策定では全社の業務計画に長時間労働改善を軸としたワークライフバランスの実現、女性活躍をはじめとするダイバーシティ環境の実現などについて具体的な施策を「記述させる」ことにしている。
6) 一般社員向け「働き方・休み方教育・研修」による改善に向けた意識の醸成
社員に向けてのワークライフバランス・ダイバーシティ通信「イクボスへの道」を2016年12月から毎月発行し、業務効率化の実践ポイントを案内。管理職向けセミナー内容をクラウド共有することやワークライフバランスに関して人事担当者が個別解説を行うこと、育児や介護に関する説明会の開催などを始めた。管理職向け教育を重点的に進めてきた2016年度であったので、2017年度は一般社員へ普及を進める計画。
7) 仕事の棚卸と平準化・多能工化を推進する
働き方の見直しの一環として、2017年度を実践の年と設定し、業務チェック、マネジメントの在り方について自己採点(チェックシート)を実施、情報提供、研修を行う。
8) タイムカード等の利用による、適切な労働時間の管理を行う
今後、過重労働監視のための勤怠管理、労働時間の「見える化」がこれまで以上に重要になると認識し、様々なログを組み合わせて社員等の健康維持に努めたい。2016年期中からは、一部では部署独自のタイムカードの導入により、より細かな勤務管理を行うなど前進している。また勤怠管理システムについて、システムの見直しなども検討していく。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

・WLBやダイバーシティのトップメッセージは過去繰り返し行っており2016年度は新しい部を新設し、単に人事の福利厚生や労務課題の域から、全社喫緊の「経営課題」であることを宣言。これまでにない強さで改革を進めたことで社内の雰囲気が変化している。
・一般社員も、積極的に働き方改革セミナー聴講に参加し、情報交換も活発になった。また、人事部門への働き方・休み方に関する問い合わせが増えてきた。
・全社で派遣を含む平均の総労働時間が2016年12月頃から徐々に減少してきている。

(平成28年度事業)

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