M社(2016年度)

(1)企業概要

社名
M社(2016年度)
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業種/事業概要
卸売・小売/計測・制御装置の設計・製造・販売及びソリューション提供
従業員規模
100~999人
本社所在地
東京都
労働時間制度
始業終業時間 9:00-17:30(7時間45分)
休憩時間 11:50-12:35(45分)
フレックスタイム制(コアタイムは10:50‐15:30)※一部の部署を除く

(2)働き方・休み方改善に関するこれまでの取組と指標活用のきっかけ

1)これまでの取組
・残業の根本原因の分析をパイロット部署にて試験的に実施中。
・毎月、時間外労働状況と休暇取得状況を各部署の管理職へ配信し、100時間以上の時間外労働が発生した場合は、毎月の経営会議で対策(対象者の過去数か月の労働時間の推移、所属本部長ヒアリング、対応策ヒアリング、対策実施)を審議する。
・飛び石休暇の間の出勤日等を全社一斉休暇にすることで休暇取得率の向上を図っている。

2)「働き方・休み方改善指標」活用のきっかけ
第三者を交えて自社の状況分析を行い、世間一般の企業とのギャップを把握して改善策のヒントを得たい。

(3)働き方・休み方の現状・背景

1)人事部の課題認識
年次有給休暇の取得促進に対して行うべきことはまだいろいろとあると思うが、社員によっては閑散期に休みを取得しメリハリをつけて働く者も多い。長時間労働是正は喫緊の課題であり、早期に改善を図りたい。

2)仕事特性と働き方・休み方の現状
①組織体制
事業領域は大きく3つであり、制御システム統括本部→関東事業所(製造拠点)、情報系事業は情報事業統括本部、装置販売事業は産業機器事業本部が、主に対応している。うち、労働時間の長い傾向が見られるのは関東事業所の設計・製造を行う社員と、情報事業統括本部のシステムエンジニアである。
組織階層は「統括本部-本部-部-課」であり、「課」は1~10数人、「部」は平均2~3課、「本部」は6本部で構成されている。
顧客との関係は10~20年間と長い。そのため、新製品・サービスの提供よりも、既存製品・サービスの更新・改良需要への対応が多い。
関東事業所は高齢化が進んでいる。若年層が少なく、年配技術者の経験値の中に重要な技術がストックされており、若い世代への技術の伝承・形式知化が課題。顧客ごとに開発仕様は大きく異なり、主に一品生産である。人間関係をベースとした昔ながらの営業スタイルが主流で、製品・システム面からの他社との差別化が難しい。若年層が長期的展望を持って、これからスキルを積みキャリアを形成していくイメージを持ちにくい面がある。

主な診断・改善の対象は、課題の中心である主力事業の制御システムを担う「関東事業所」と、情報事業統括本部、総務・人事・経理等の管理部門である。

②働き方
ソリューション事業統括本部は納期的な制約が大きい業務が大半のため、繁忙期には長時間労働になる。
関東事業所の業務量は比較的一定である。
財務等の管理部門は同規模の他組織と比べ、手厚い人員配置になっているものの、グループ連結決算のため、四半期ごとに年度末と同じレベルの情報を整理しなければならないなど、上場企業並みの会計情報を収集・作成することが求められており、労働時間は常に長めである。システム化が十分になされておらず、同じ情報を複数個所・複数回入力するなど、効率性の面で改善の余地がある。
社内書類作成の非効率性は、管理部門に限らない。例えば、来期の方針を踏まえて作成した予算編成の情報と同じ情報量(ボリューム)を、期の途中に業績予想資料として現場に再び作成依頼するため、現場からは不満が上がっている。
関東事業所、情報事業統括本部のいずれも、管理職(課長)は部下のマネジメントのほか、自分自身の業務も抱えている。プレイングマネジャーの傾向にあり労働時間が長い。
管理職の人事評価に、部下の労働時間管理状況について評価する項目はない。
長時間労働の抑制に関して、管理職、中堅・主任クラスには教育・研修を行っているが一般社員に対しては、自由参加の研修はあるが、強制ではない。

③休み方
所定の休日は土曜、日曜、祝祭日である。休暇は夏期5日、年末年始5日程度(カレンダーによる)である。
顧客の要請に応じ、緊急の場合は昼夜を問わない働き方である社員が多く、急な要望への対応に追われるため年次有給休暇やリフレッシュ休暇の取得が十分に進んでいない。
年次有給休暇の取得促進をトップメッセージとして掲げるものの、数値目標はない。
管理職の人事評価に、部下の年次有給休暇の取得管理状況について評価する項目はない。
年次有給休暇の取得に関して、管理職には教育・研修を行っているが一般社員に対する特別な教育・研修は行っていない。
他の社員が業務を代替しにくく、休暇中に他の社員が顧客等をフォローできる体制が構築されていない。

④マネジメント
36協定に定める限度基準は、月80時間、3か月239時間、年間841時間であり、特別条項では、月133時間、3か月400時間、年間1278時間である。
出退勤は自己申告でありイントラネット上で管理する勤怠システムに入力している。月の労働時間が一定(45時間、60時間、80時間、100時間)を越えるとアラートを発する仕組みはあるが、常態として労働時間の長い社員はアラートを軽視している可能性があり、抑制効果があるかは疑わしい状態である。
先に帰りにくい、休みを取りにくいような職場の風土が少なからずある。
業務を共有し、支援しあう職場風土があるとはいえない。チームビルディングを管理職に学ばせる必要性を感じている。
制御事業は異なるスキルが要求されるため現状では人材の代替対応が難しいが、システムエンジニアはほぼ同じスキルを保有しているので、代替したり、支援しあったりできる余地はあると考えられる。
管理職の、自身及び部下に対する長時間労働の抑制や休暇の取得に関する意識にバラつきがある。
誕生日を休暇にするような制度はない。

⑤その他
現在のところ女性管理職は2名である。役員登用については、対象者層の母集団を拡大するところから行う必要がある事を認識している。

(4)働き方・休み方に関する課題

1)働き方
社内のシステム化が十分になされておらず、同じ情報を複数個所・複数回入力するなど、効率性の面で改善の余地がある。
管理職の人事評価に、部下の労働時間管理状況についての評価を追加検討。
長時間労働の抑制に関して、一般社員への働き方改革研修導入検討。
月の労働時間の基準時間到達前に対応する方策を検討。
労使で、協定された法定時間外労働の上限数値が高い。

2)休み方
急な要望への対応に追われるため年次有給休暇やリフレッシュ休暇の取得が十分に進んでいない。
年次有給休暇の取得促進をトップメッセージとして掲げるものの、数値目標はない。
管理職の人事評価に、部下の年次有給休暇の取得管理状況について評価する項目はない。
年次有給休暇の取得に関して、一般社員への働き方改革研修導入検討。

他の社員が業務を代替しにくく、休暇中に他の社員が顧客等をフォローできる体制が構築されていない。
誕生日を休暇にするような制度はない。

3)働き方・休み方共通
管理職の、自身及び部下に対する長時間労働の抑制や休暇の取得に関する意識にバラつきがある。
先に帰りにくい、休みを取りにくいような職場の風土が少なからずある。
業務を共有し、支援しあう職場風土があるとはいえない。

(5)「働き方・休み方改善指標」診断結果

働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
働き方・休み方に関するアウトプット指標
「働き方・休み方改善指標」による診断結果は以下のとおり。
【労働時間】
週労働時間60時間以上の雇用者の割合は10.8%であった。
→貴社の週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、全国の雇用者の平均値である8.2%(従業員規模100人~999人のカテゴリ)を超え、長時間労働者割合が高い状態にある(注1)。
(注1) 繁忙月
【年次有給休暇取得率】
年次有給休暇取得率は全従業員平均57.0%であった。
→主要産業の平均値である46.0%(従業員規模100人~999人のカテゴリ)はクリアしているものの、国の定める目標値70.0%には達していない。
貴社の長時間労働の社員の割合は従業員規模別の平均値を超え高い状態にあるため、働き方の改善が強く求められる。一方、年次有給休暇の取得率は目標値に達していないことから、休み方の改善も求められる。
※「1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超える社員の割合」を「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」と見なした。
働き方
休み方

(6)課題の整理と改善提案

働き方・休み方に関する課題の整理と改善提案は以下のとおり。

指標項目
現状と課題
対策案
Vision(ビジョン)
項目1
方針・目標の明確化
年次有給休暇の取得促進をトップメッセージとして掲げるものの、数値目標はない。
トップメッセージとして労働時間の削減目標や年次有給休暇取得促進を目標数値と共に掲げる
 労働時間の削減や休暇の取得促進に当たっては、トップの意識、トップの声が重要であり、それによる全社統制の効果が高い。貴社は、トップの働き方・休み方改善メッセージも発信されている。
そのような中、従業員の休暇の取得推進を図るためには、取組の推進にさらに一定の力を持たせることが貴社の働き方・休み方改善の鍵であると考える。
そこで、トップメッセージに数値目標を示して、働き方・休み方の改革を明言する。
具体的な目標数値の設定には、安全衛生委員会等、労使による協議の場の活用が有効である。
※現場の業務量が明らかに過多である場合、トップが闇雲に休暇取得促進や数値目標の設定について声を発するだけでは、現場のモチベーションを逆に下げてしまう恐れもあるが、貴社は、トップの決定に対する社員の実現意識は高く、さらに来年度以降、新たに社員が増員される予定であり、労使一体による取組を今にも増して推進していくための体制が整いつつあると考える。
後述する「業務の棚卸」と併せて行うことにより、来年度予定している増員による休暇取得促進の効果は高まると考える。休暇の取得推進が社員満足度の向上に繋がること、社員満足度の向上は業務の質や定着など多方面の好影響に繋がることを意識して、トップからメッセージとして発信する。
System(システム)
項目2
改善・推進の体制づくり
労使で、協定された法定時間外労働の上限数値が高い。
設定された労使協議の場において、36協定の上限数値の引き下げの検討
 現在36協定で定める、法定時間外労働の上限は、国の定める限度基準を大きく上回るものである。この数値がこのままでは、社員の労働時間に関する削減目標や意識の改善を推進が難しい。労働時間に関するアラートを軽視する傾向にあることも、現在の労使による法定時間外労働の上限を守って働いているのであれば、アラートも会社からのメッセージも説得力もない。
前項にて記載した、残業の根本原因の分析結果は、36協定の上限の引き下げの検討を行う際にも非常に有用な情報である。前項の労使における分析結果に対する残業の削減方法の協議、そしてそれをもとにした本項の36協定引下げの検討と、自社が行う取組を有効に活用することにより、取組推進が加速すると考える。
項目3
改善促進の制度化
誕生日を休暇にするような制度はない。
「誕生日・誕生月休暇」等の休暇の設定
誕生日・月等に年次有給休暇の取得を促すメモリアル休暇制度を設ける。
誕生日は必ず誰しもにあり、また、事前に部署で情報共有できる休暇予定である。
ただし、例えば誕生月が年間における繁忙月であれば、前後の月への休暇の振替を前もって行うルールを設けておく等柔軟な対応を行い、業務への影響を最小限に抑える。
まずは、1~2日の休暇取得ニーズへの対応の手掛かりとして計画的に誕生日休暇を推進することを検討する。
管理職の、自身及び部下に対する長時間労働の抑制や休暇の取得に関する意識にバラつきがある。

月の労働時間が一定(45時間、60時間、80時間、100時間)を越えるとアラートを発する仕組みはあるが、常態として労働時間の長い社員はアラートを軽視している可能性があり、抑制効果があるかは疑わしい状態である。

休暇明けに、自身の業務負荷が高まることを好ましくないと考える傾向がある。

業務を共有し、支援しあう職場風土があるとはいえない。
働き方・休み方に課題を抱える社員に、働き方・休み方の全社員の状況と比較した自身の状況に気づきを与えるルールを運用する
他者の働き方・休み方の状況や、自身の働き方・休み方との違いに気づいていない社員は多い。
他の社員より働きすぎていること、休暇が取得できていない事等について、本人に気づきを与えられるように労働時間や休暇についての全社員の残業時間、年次有給休暇の取得率順データを作成する。
そして、例えば各月で課題有りレベル※1(あらかじめ課題有りのレベルを決めておく)とされた社員について人事から上司に報告・情報共有を行い、上司が当該社員と面談して、課題有りレベルであった事を伝える機会を設けるなど、本人に対して気づきを与えられる機会を設ける。
それにより、部下に指示を与える上司への気づきの機会にもなり、上司からの業務の共有・分散についての指示、業務量の偏りに対して意識させるための機会にもなりうる。
※1 「課題有レベル」とした呼称は仮であり、社内で検討いただければよい。※数値を公にした場合または個人に知らせた場合に、それが頑張り証である、とか、頑張っている社員のリスト化である等、誤った認識を与えないように、上司及び本人にきちんとした認識を持たせるとともに、次項の評価等も併せて検討する。
項目4
改善促進のルール化
管理職の人事評価に、部下の労働時間管理状況について評価する項目はない。

管理職の人事評価に、部下の年次有給休暇の取得管理状況について評価する項目はない。

管理職の、自身及び部下に対する長時間労働の抑制や休暇の取得に関する意識にバラつきがある。

先に帰りにくい、休みを取りにくいような職場の風土が少なからずある。
管理職の人事評価に部下の労働時間・年次有給休暇取得の状況を評価項目に入れる
企業の発展のためには、人材確保・人材育成を長期的視点でとらえることが重要である。
このため、部下の労働時間及び年次有給休暇取得の状況などを項目に設定し、管理職の意識改善を促す。
評価と少しでもリンクしていることで、自身・部下の働き方・休み方に対する意識も変化するものと考える。
適正な労働時間の管理、年次有給休暇の取得促進は、社員の労働生産性を高め、質の向上、優秀な人材の確保その他さまざまな効果が期待できる。トップ以下、管理職の意識と行動が重要である。
Action(アクション)
項目5
意識改善
管理職の、自身及び部下に対する長時間労働の抑制や休暇の取得に関する意識にバラつきがある。

先に帰りにくい、休みを取りにくいような職場の風土が少なからずある。

業務を共有し、支援しあう職場風土があるとはいえない。
管理職層以上に対する働き方・休み方マネジメント力向上等を目的とした研修を行う
管理職本人の働き方・休み方改善を推進するための、働き方・休み方への意識改革を含めたマネジメント研修を行う。また、働き方・休み方に課題のある部下の長時間労働の抑制及び年次有給休暇取得を促進するため、部下(メンバー)の働き方・休み方のマネジメントに関する教育・研修を行う。
研修を通じて、業務量や業務内容の把握を意識すること、部下の労働時間管理は業務遂行と共にマネジメントの基本的な要素であることの認識を深める。
その後、具体的な職場における所定外労働削減に向けての取組について、グループワークなどによる実際に即した対策を討議し、取組内容を策定する実習型の研修を行う。
なお、自社の働き方・休み方改善の好事例を事前に収集した上で、研修の中で参考事例として取りあげることも検討する。
長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進に関して、管理職、中堅・主任クラスには教育・研修を行っているが一般社員に対しては、自由参加の研修はあるが、強制ではない。

月の労働時間が一定(45時間、60時間、80時間、100時間)を越えるとアラートを発する仕組みはあるが、常態として労働時間の長い社員はアラートを軽視している可能性があり、抑制効果があるかは疑わしい状態である。
休暇明けに、自身の業務負荷が高まることを好ましくないと考える傾向がある。

業務を共有し、支援しあう職場風土があるとはいえない。
一般社員向けの意識改善に向けた研修
長時間労働と健康・仕事効率の関係、休養の重要性などを従業員に認知してもらうため、全職員の受講を義務とする教育・研修を行う。
上記の研修は、集合研修に限らず、個別研修やe-ラーニング等でも可能である。例えばe-ラーニングシステムによる座学と、習熟度テストによる理解度チェックにより、研修を進めることもできる。e-ラーニングで行う場合は、研修受講・習熟度テストの最終期限を定め、受講が完了していない職員には、トップや上司から研修受講を促すようにする。
労働時間が長いことが当たり前となっている社員の意識は、特に改革を行う必要がある。
※資料の回覧等で終わらせるのであれば実効性に乏しく効果は期待できない。
ただし、明らかな業務過多の状況で意識変革の研修を行っても、モチベーションの大幅な低下を招く恐れもある。「項目7」の業務の棚卸を行うなど、多角的に取組を行う事が必要である。また、「なぜ取り組みが必要であるのか」を理解した上で働き方・休み方の改善推進を行うのでなければ、取組自体も、そしてそれが評価に紐づいていることも職員には単なるストレスとなる。
項目7
仕事の進め方改善
システム化が十分になされておらず、同じ情報を複数個所・複数回入力するなど、効率性の面で改善の余地がある。

来期の方針を踏まえて作成した予算編成の情報と同じものを、期の途中に業績予想資料として現場に再び作成依頼するため、現場からは不満が上がっている。

他の社員が業務を代替しにくく、休暇中に他の社員が顧客等をフォローできる体制が構築されていない。

休暇明けに、自身の業務負荷が高まることを好ましくないと考える傾向がある。

業務を共有し、支援しあう職場風土があるとはいえない。

急な要望への対応に追われるため年次有給休暇やリフレッシュ休暇の取得が十分に進んでいない。
仕事の棚卸と平準化・多能工化を推進する
仕事の棚卸を行う。
まず、同じ入力や処理で共有できるデータや資料等は2度手間を取るような効率の悪い作業手順を無くす。
その為のシステム化について、予算が確保できるのであれば、現状のシステムを改修し作業効率を高める。既に、データ入力等の重複につき社員から不満があがっており、問題が明確であり効率化が図りやすい課題であるから、業務の棚卸(手順の見直し)を行ったうえで、システム改修を含めた対応を検討する。
また、紙ベースの場合、報告のための資料などの内容について必要性の再検討を行い、簡素化・標準化を検討する。検討にあたっては、社内横断的に各部署から構成される委員会又は検討ワーキングなどを作り、各部署から資料の簡素化に対する意見を収集し、簡素化の案を取りまとめる。
作業手順のマニュアル化・形式知化
作業手順・ルールのマニュアル作成とそれを活用した多能工化の推進を行い、休暇中の職員の業務の一部でも他の職員が処理することが出来れば、休暇後の業務量が休暇取得分そのまま積み上げられた状態となる事を避けることができる。また、棚卸した業務をマニュアル化することで、業務の重要性の階層が見えてくる。
効果的に運用できるようになれば、負荷の分散に繋がり、日々の所定外労働の削減にも寄与する。また、それぞれの業務の主担当・副担当制の導入も有効である。
制御部門では、若年層への技術伝承が課題であるが、それを解決するのもやはりマニュアル化であり、年配社員の持つ暗黙知の形式知化である。その為には、作業内容、手順等のマニュアル化の推進が有効である。
一時の手間を面倒くさがらず、また、技術を伝承することにより自身の特別感が薄れるから教えたくない等といった意識があるかも知れまいが、技術伝承は重要な業務であることを自覚させて、徐々に若い世代に継承させる。
また、休みにくい意識については、休暇取得時に他の社員に何らかの負担があることは、「お互い様」であることを皆が理解しなければならない(意識の改善研修に大きくかかわる)。

(7)改善提案の活用

提案の活用、取組状況に関しては以下のとおり。
1)トップメッセージとして労働時間の削減目標や年次有給休暇取得促進を目標数値と共に掲げる
1ヶ月あたりの残業上限20時間、年間の年次有給休暇取得日数20日などの数値目標を入れて、当社独自のスローガンを策定して周知する。
3)「誕生日・誕生月休暇」等の休暇の設定
2017年4月1日付で導入予定である(加えて、家族の記念日やペットの誕生日も同様に休暇イベントとして設定予定)。
4)働き方・休み方に課題を抱える社員に、働き方・休み方の全社員の状況と比較した自身の状況に気づきを与えるルールを運用する
時間外労働が常態化している社員に対して、個別面談を検討している。
5)仕事の棚卸と平準化・多能工化を推進する
業務プロセス分析を部門ごとに実施し、社長と部門長が対策案を検討した。

(8)「働き方・休み方改善指標」活用の効果(結果)

5)の棚卸等を実施した結果、適切な業務の配分が実現し、特定の社員に偏っていた業務が平準化され、長時間労働が是正された。

(平成28年度事業)

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